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個人被ばく線量等の登録管理について


(経 緯)
 47年2月14日原子力局に放射線被ばくを伴う業務に従事する者の被ばく線量の中央管理に係る具体策を検討するために個人被ばく線量の登録管理調査検討会を設置した。

 以降、検討会3回、ワーキンググループ4回を開催し、放射線被ばくを伴う業務を行なう企業の実状および諸法規等の関連をもふまえて、個人被ばく線量等の中央管理の目的、効果、実施方法等について活発な検討を行ない、47年7月28日にその結果がとりまとめられた。

Ⅰ 個人被ばく線量の登録管理と評価

1 基本的考え方および目的


  全国的規模で放射線作業従事者等の個人被ばく線量および健康管理の記録を現行の形態の大幅な変更を行なわないで、中央管理制度を確立し、次の目的を遂行するとともに、安全管理の徹底と増大する業務量に対処して行くことが必要である。

(1)放射線作業従事者等の
A 個人および集結に関する被ばく線量管理に役立てる。
B 健康管理に役立てる。
C 許容線量の検討に役立てる。
D 被ばく線量および健康管理記録の散逸防止に役立てる。
(2)国民遺伝有意線量の推定に役立てる。

(3)被ばく線量と身体的、遺伝的影響の究明に役立てる。

2 中央管理のための機関

(1)性  格
 客観性、社会的影響を考慮し、国またはこれに準ずべき性格をもたすことが必要である。

 また、既設の機関の兼業では積極的な活動が期待されぬため、新規、独立の機関として設立することが望ましい。運営経費については、国が十分に考慮し推進すること。

(2)業務内容
A 個人別の3ケ月・年間の線量、集積線量の算出と事業所への回答
B 事業所別、業種別の個人被ばく線量等を算出し、関係官庁等に提供
C 従事者等の平均被ばく線量を算出し関係官庁に提供
D 事業所別、業種別、本籍地別、性別に区分した集団としての被ばく線量と疾病件数等の把握
E 事業所別、業種別の健康管理内容の調査
F 個人被ばく線量関係記録の管理と散逸防止
G 個人的、集団的影響に関する疫学的検討、その他、国民衛生、産業安全衛生に必要と思われる基礎資料の提供ならびに統計的調査研究
H 計測の手法、測定器の精度等の調査

3 管理対象項目

(1)個人的影響関係
 事業所名、所在地、業種、氏名、生年月日、性別、本籍、現住所、モニタの方法、被ばく線量、内部被ばく、本別度実施以前の集積被ばく線量および過剰被ばく、高度の被ばくの医療措置

(2)集団的影響関係
A 事業所名、所在地、業種、性別区分による人数、対象集団の出生年度区分および本籍地別区分、対象集団の放射線によっても起因する疾病発生の有無(放射線業務退職後の経続調査は再検討する。)

B 疾病範囲(白血球減少症、貧血、出血性素因、白血病、白血病様反応、皮ふがん、皮ふ潰瘍、慢性放射線皮ふ炎、白内障、骨えそ、骨肉腫、肺がん)

4 管理の対象となる者

 「障害防止法」「原子炉等規制法」「医療法」「電離障害防止規則」「人事院規則」に基づく
 、放射線作業従事者および管理区域随時立入者。

5 報告義務者


 事業所ごとの使用者
 (放射線業務退職後の報告義務者は再検討する)

6 処理の方法

(1)電算化処理のための様式の統一化

(2)3ヶ月毎に報告する。始期は4月1日とする。
 報告〆切は4月末日、7月末日、10月末日、1月末日とする。健康診断結果は4月1日を始期とし、年2回で報告〆切を10月末日、4月末日とする。

7 記録の整理

 記録の整理・保管および調査、研究を効果的に行なうためコンピューターを導入する。

 また、被ばく線量の計測サービス業者もコンピューター処理を考える必要がある。

 記録は永久保存する。

8 記録の信頼性

 個人被ばく線量測定値の信頼性を確保するため、線量計等の校正、品質管理、定常的取扱技術等の技術指導等の行ない得る機関を設立する必要がある。

9 医療等による被ばく

 国民遺伝線量への寄与率の高い医療等による被ばく線量については、種々困難な問題が予想されるので、具体的な把握の方策について別途、放射線審議会で検討する必要がある。

10 そ  の  他

(1)秘密保持
 個人の身体的秘密に関する事項については、充分配慮する必要がある。

(2)官庁報告(届出)事項の省略化
 従来諸官庁に提出されている資料のうえにさらに上積みされると事業所側の負担となるため、関係官庁の連絡、調整が必要である。

(3)法的措置
 登録管理制度の運営には、法的「力」の裏付けが必要と考えられる。

(4)線量の計測
 測定方法は「個人被ばく線量の測定マニュアル」が適当である。

Ⅱ コンピューター処理システムについて

1 設   計

 コンピューターにより、個人別事業所別に統計処理し、更新、追加、統計的レポート等を出力作成する。

2 被ばく書名簿の作成

 事業所別に生年月日順、人名順のファイルを作成する。また、補助ファイルとして個人別に生年月日順、人名順のファイルを作成して、離転職者の追跡用とする。

3 集積線量記録の作成

 被ばく者名簿ファイルに対応して、被ばく記録を入力したファイルを作成する、データの入出方法には①カードにせん孔または黒塗りする方法、②線量測定器に変換器を取り付け磁気テープに記録し、これをコンピュータに入力する方法、③②より直接コンピュータにリアル、タイムまたはオン・ラインで入力する方法が考えられる。

4 レポートの出力

 上記のファイルにより、被ばく者記録の各種資料を出力する。
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