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東京芝浦電気株式会社の原子炉の
設置変更について(答申)



46原委第314号
昭和46年8月19日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長


東京芝浦電気株式会社の原子炉の設置変更について(答申)


 昭和46年8月12日付け46原第5775号諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。


 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準に、適合しているものと認める。
 なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は別添のとおりである。


東京芝浦電気株式会社の原子炉の設置変更に係る安全性について


昭和46年8月17日
原子炉安全専門審査会

原子力委員会
 委員長 平泉 渉 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄


東京芝浦電気株式会社の原子炉の設置変更に係る安全性について


 当審査会は、昭和46年8月12日付け46原委第305号をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

Ⅰ 審査結果

 東京芝浦電気株式会社の原子炉の設置変更に関し、同社が提出した「原子炉施設変更許可申請書」(昭和46年8月10日付け申請)に基づいて審査した結果本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保しうるものと認める。

Ⅱ 変更内容

 ナトリウム内における核分裂生成物の挙動に関する種々の実験を行なうため、ナトリウムインパイルループFPL(フィションプロダクトループ)を設ける。
 本装置は既設の水平放射孔にとりつけられるインパイルプラグと炉外のナトリウム系より成る。ナトリウム系には加熱器、コールドトラップ、熱交換器、膨張タンク、電磁ポンプ、ウエストタンク、ダンプタンクおよび実験用のためのテストセクション等が設けられる。
 ナトリウムは、圧力4kg/cm2G以下、温度500℃以下の範囲で使用され、照射燃料に直接接触して冷却しつつ循還する。
 照射試料は天然ウランであり、最大使用量は二酸化ウラン150gである。

Ⅲ 審査内容

 本変更は、以下に述べるような安全設計および安全対策が講じられることになっており、十分な安全性を有するものであると認める。

 1 原子炉への核的・熱的影響

 本装置のインパイルプラグによる反応度効果は-0.3セント以下であり、原子炉動特性に対する影響は安全上無視できる。
 また、本装置のインパイルプラグ部で発生するγ熱と照射試料の核分裂による発熱量は最大15W以下であり、これは原子炉出力100KWに比してわずかであり、原子炉への熱的影響は無視できる。

 2 安全保護設備

 本装置には、アルゴンガス系、窒素ガス系、インパイルプラグ冷却系および格納容器等の安全保護系が設けられるとともに、異常状態の程度に応じて、アラーム、ナトリウムドレンおよび炉スクラムの装置が設けられる。
 また、非常時操作として手動によるドレンおよびスクラムができるようになっている。

 3 ナトリウム、FPガスの漏洩および火災の防止炉外ナトリウム系は全体を気密構造の格納容器内に格納し、炉室へのFPガスの漏洩を防止し、かつ、容器内には窒素ガスを充満させてあるためナトリウム漏洩により火災が発生することはなく、かりに発生しても密閉消火できるようになっている。
 インパイルプラグ部分では、ナトリウム配管は4重構造となっており、最外管部は炉心内温度の上昇を防ぐため、サームエス600によって冷却される。
 また、全系統の必要な個所にナトリウム漏洩検出器および温度測定装置が設けられ、配管全体はドレンを完全にするために傾斜をつけてある。

 4 放射線管理

(1)放射線しゃへい

 インパイルプラグおよび機器類には必要なしゃへいが設けられるほか、格納容器は鉄、コンクリートおよびパラフィンでしゃへいされ、炉室内で常時作業する者が立ち入る場所において線量率は1mR/hr以下となるように設計されている。

(2)廃棄物処理

 格納容器は炉室より常時負圧に保たれており、容器から出る窒素冷却系の排気は通常は放射化されていないが、排気ガスモニタで監視しながら排気筒から放出される。
 また、カバーガスを排出する際には、ベーパトラップを介して排気するようになっており、排気ガスモニタで監視しながら排気筒へ送り、希釈して放出される。
 放射性物質を含むナトリウムはウエストタンクにドレンし、気密のままFPループからきりはなして保管し、短寿命の核種が主であるから、十分減衰させた後、化学的に安全な物質に変え、廃棄物処理業者に処分を委託する。

 5 事故評価

 電源喪失、窒素及びアルゴン圧力変化、ナトリウム漏洩、インパイルプラグ冷却ポンプ故障、圧縮空気圧低下等の各事故について検討を行なったが、いずれも十分な対策がなされており、安全は確保されている。
 とくにナトリウム漏洩が起った際にも影響は最小限に止まるようになっており、原子炉への影響はまったくないと考えられるが、必要に応じては炉をスクラムするようになっている。したがって本原子炉の安全性は十分確保し得るものと認める。
 さらに、本装置の最大事放として、格納容器内で配管が破断し、系の中のナトリウム全部(48kg)が格納容器内に放出され、その前に格納容器の窒素が完全に空気と置き換っていて火災が発生した場合を検討した。その結果は次のとおりで周辺の公衆に対して障害を与えることはないと認める。
 事故は膨張タンク液面下、カバーガス圧力計、配管部温度計、格納容器内温度計、格納容器内放射線モニタ等によって検出され、原子炉運転者への連絡により原子炉をスクラムする。漏洩ナトリウムは格納容器内に密閉し、窒息消火する。
 そこで次の仮定を用いて格納容器外での被ばく線量を計算する。

① 格納容器からのガスの漏洩は正圧時だけでその漏洩量は20cc/sec(標準状態で)とし、漏洩時間は30分とする。

② 格納容器内(約8m3)の酸素量によって決まる燃焼しうるナトリウム量は約6kgとなるが、ナトリウム使用量に応じ5kgが燃焼し、そのうち10%が煙状になるものとする。その時の放射能は最大約43mCiである。

③ 生成した核分裂生成物の5%(定常移行量の10倍を仮定)がナトリウム中に入り、洩れたナトリウムから格納容器内ガス相への核分裂生成物の移行割合は、希ガスについては100%、よう素については10%とする。

④ 炉室の換気は200m3/分とする。(炉室の容積は約4,600m3

⑤ フィルター、プレートアウト効果は無視する。

⑥ 照射時間は1日4時間1日おきに5年間運転するものとする。
 解析の結果、格約容器から洩れたガス状核分裂生成物および煙状ナトリウムによる被ばく線量は無限時間炉室にいたとして甲状線に対して約10mrem全身に対して、14mremであり、十分小さい。
 したがって、従事者はもちろん、敷地外の一般公衆に対して障害をもたらすことはない。

Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和46年8月17日の第94回審査会において本件を検討し報告書を決定した。


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