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動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの
原子炉の設置変更(重水臨界実験装置施設の変更)
について(答申)



46原委第235号
昭和46年7月8日


内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長


動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉の設置変更
(重水臨界実験装置施設の変更)について(答申)


 昭和46年5月20日付け46原第3931号(昭和46年7月6日付け46原第4994号で一部訂正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。


 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準に適合しているものと認める。
 なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は別添のとおりである。


動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センター原子炉の
設置変更に係る安全性について


昭和46年7月6日
原子炉安全専門審査会


原子力委員会
  委員長 平泉 渉 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄


動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉の設置変更
(重水臨界実験装置施設の変更)に係る安全性について


 当審査会は昭和46年5月20日付け46原委第167号(昭和46年7月6日付け46原委第226号で一部訂正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

Ⅰ 審査結果

 動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉の設置変更(重水臨界実験装置施設の変更)に係る安全性に関し、同事業団が提出した「原子炉(重水臨界実験装置)設置変更許可申請書」(昭和46年5月17日付け申請および昭和46年7月3日付け一部訂正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保しうるものと認める。

Ⅱ 変更内容

(1) プルトニウム富化燃料の追加使用

 現在使用中の二酸化ウラン燃料体、ウラン・アルミニウム合金燃料体に加え、0.54w/o富化プルトニウム・天燃ウラン混合酸化物燃料体(以下プルトニウム燃料体という)を最大37体使用する。

(2) 燃料取扱い貯蔵施設の増設

 既設の燃料取扱い室に加え、新に燃料取扱い室および貯蔵室を作り、プルトニウム燃料体の取扱い、貯蔵を行う。

(3) ポイズン注入除去設備の新設

 原子炉停止中にポイズン(最大B1020PPm)を重水減速材中に注入、除去する設備を設ける。

Ⅲ 審査内容

1 安全設計および安全対策

 本変更に係る原子炉施設は、次のような安全設計および安全対策が講じられることになっており、十分な安全性を有するものであると認める。

(1) 炉心構成
 
 本変更により、プルトニウム燃料体が従来の燃料体と一緒に装荷される他は、格子間隔、制御装置等既設の施設の変更はない。

(2) 燃料

 本変更に係る燃料棒はプルトニウム・ウラン混合酸化物ペレットをジルカロイ-2被覆管に入れ、端栓部を溶接密封構造とする等プルトニウムの漏洩の生ずる可能性がないよう設計、製作、検査等配慮することになっている。プルトニウム燃料体は分割用燃料棒も含め28本の燃料棒で形成されるが、従来の燃料体と本質的変更はない。

(3) 核特性

 本変更により従来の燃料体も併せて装荷する炉心となるが、燃料体の種類別本数、格子間隔、ボイドの有無ポイズンの有無等を変えた場合も本原子炉の燃料温度係数及び冷却材温度係数は正にならない。
 なお、低速給水回路には給水量を制限するための補助タンクを設け最大付加反応度を0.5%k/kにおさえているが、プルトニウム燃料体を使用する場合は0.4%k/kをこえないようにタンクの容量を制限し、低速給水溢流管の高さも0.4%k/k相当位置に設定することにしている。

(4) 燃料の管理および取扱い

 プルトニウム燃料棒は被覆管の色、刻印によって識別出来、混用されることがないようになっている。また、プルトニウム燃料の取扱いについては、使用の前後にαサーベイを行ない、α放射能の漏洩のないことを確認することとしている。取り扱い中に取り落すことはないよう慎重に行なうことにしているが、万一取り落した場合にも安全上十分な対策がなされることになっている。
 照射実験に用いた燃料棒からの照射箔の取り出し作業は新設の燃料取扱量に設けるグローブボックス中で行ない、外部への汚染の波及を防止している。
 なお、この燃料取り扱い室等は負圧に保ちながら必要な換気を行なうようになっており、排気はフィルタを通し常時監視しながら放出する。その他、エリアモニタ、警報回路、非常用電源等も設けられることになっている。

(5) ポイズン注入除去設備の新設

 本設備の運転操作は原子炉運転中は行なえないようになっているので、運転中にポイズンの注入除去はありえない。またポイズンの濃度は20PPmとうすいものを用いている。

2 平常時の被ばく評価

 本変更後も年間積算出力は最大50kwhrと変らないので、敷地外の一般公衆の受ける被ばく線量は許容被ばく線量より十分小さい。また、従事者の被ばくについては、十分な放射線管理を行なうことになっており、内部被ばくの生ずる恐れはなく、外部被ばく線量は従来と差はないので、許容被ばく線量をこえることはないと認められる。

3 事故評価

 本変更に係る原子炉について各種事故について検討した結果、それぞれ適切な対策が講じられており、本原子炉は変更後も十分安全性を確保しうるものと認める。
 さらに最大想定事故として起動時の重水水位、異常上昇事故を想定した。その結果、放出エネルギーは、22.5cmピッチの100%ボイド炉心において最大の563MWSとなる。また、燃料、被覆管とも温度上昇は25cmピッチの100%ボイド炉心において最大となり約272℃となる。
 この温度上昇では、燃料の溶融、被覆管の破損には至らない。
 またこの放出エネルギーに伴なって生ずる放射線被ばく線量は制御室で0.40rem、炉室外の最大地点で0.87remで、敷地外で最大なるのは敷地境界(原子炉から約180m)で0.036remとなる。
 従って、本変更に係る原子炉は敷地外の一般公衆に対して安全であると認められる。

Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和46年5月25日第91回審査会において次の委員よりなる第78部会を設置した。

審査委員 都甲泰正(部会長) 東京大学
江藤 秀雄 放射線医学総合研究所
弘田 実弥 日本原子力研究所
三島 良績 東京大学

 審査会および部会において審査を行なってきたが昭和46年7月2日の部会において部会報告書を決定し、同年7月6日第93回審査会において本報告書を決定した。


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