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アイダホ原子炉実験所における
非常用炉心冷却設備の実験について



1 経緯

 (1)本年5月6日ニュークレオニックスウイーク誌は、アメリカ原子力委員会が原子炉の安全性に関する研究の一環としてかねてよりアイダホ原子炉実験所において実施していた原子炉非常用炉心冷却設備の実験で同設備は当初予想していた程安全余裕が大きくないという結果がでたという記事を掲載し、また同月26日ワシントンポスト紙が、同様の主旨を掲載し、さらにわが国の各紙も、同記事を原子炉の安全性の問題として取り上げた。

(2)このため、5月15日在米大使館に対し、本件についてのより詳細な実情、アメリカ原子力委員会の見解等について調査するよう依頼した。
 さらに、5月27日わが国原子力委員会は、アメリカ原子力委員会に対して本件に関する同委員会の正式の見解を照会するとともに、より詳細な資料の送付を要請した。

(3)5月27日アメリカ原子力委員会は、本件に関し、今回の非常用炉心冷却設備の実験は、小規模かつ1ループであり、現在稼動中の実験の炉を十分に模擬したものではなく、現在、運転中の炉の停止を必要とするような問題ではないが、同実験結果等より、非常用炉心冷却設備の機能について検討しており、その結果は2〜3週間以内に明らかになろうとの見解を発表した。

(4)このような状況にかんがみ、6月1日原子力委員会は、本件について次のような、原子力委員会委員長談話を発表した。


2 アイダホ原子炉実験所における非常用炉心冷却設備の実験に関する原子力委員会委員長談話

 わが国の原子炉の設置許可の審査に当っては、炉の安全性について従来から万全を期してきたところである。
 今回のアメリカ原子力委員会のアイダホ原子炉実験所における原子炉の非常用炉心冷却設備の実験に関する報道については、安全に関する問題であり、本委員会は、とり急ぎ5月27日アメリカ原子力委員会に対し、本件に関する見解と、より詳細な資料の送付を依頼するとともに調査を行なってきている。
 これまで得られた情報を総合すれば、同実験は小規模、かつ、1ループのもので、実験の非常用炉心冷却設備を十分に模擬したものではないが、その実験結果は、一部の機能について、その安全余裕が当初予想されていた程には大きくないのではないかということを示唆しているものと解される。しかし、実際の炉には、各種の安全施設が重複して設けられており、アメリカにおいても既設炉の運転に何ら変更を加えていない現状にあり、原子炉の停止を必要とするような問題ではないと考えられる。
 しかしながら、本問題の重要性にかんがみ、本委員会および原子炉安全専門審査会においてさらに慎重に検討を進めるとともに、早急に専門家をアイダホ原子炉実験所、アメリカ原子力委員会その他関係機関に派遣し、調査させることとした。
 原子炉の安全問題については、原子力委員会においても十全の体制をとって対処しているので、国民各位におかれても政府および原子力委員会を信頼し、慎重な態度でのぞまれることを希望する。


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