IAEA(国際原子力機関)総会の報告
国際原子力機関(IAEA)の第14回総会は、昭和45年9月22日から28日までウィーンのノイエ・ホッフブルク会議センターにおいて開催された。その概要は次のとおりである。
1 加盟国、国際機関等の参加数
加盟国 |
84 |
国際連合および専門機関 |
3 |
その他の国際機関 |
9 |
非政府機関 |
6 |
その他の国 |
1 |
2 参加人数
加盟国 |
378 |
国際連合および専門機関 |
4 |
その他の国際機関 |
14 |
非政府機関 |
12 |
その他の国 |
1 |
3 日本国政府代表団
代表 |
新関 欽哉 |
在オーストリア大使 |
代表代理 |
橘 正忠 |
在オーストリア大使館公使 |
|
田宮 茂文 |
科学技術庁原子力局次長 |
|
大沢 弘之 |
在オーストリア大使館参事官 |
|
石井 享 |
在オーストリア大使館一等書記官 |
特別顧問 |
山田 太三郎 |
原子力委員会委員 |
4 会議議事
(1)開会式
第14回総会開会式は、9月22日午後3時からウィーンのノイエ・ホッフブルク会議センターにおいて行なわれた。
(2)議長選出
議長に、インド代表のサラバイ氏が選出された。
(3)第14回総会代表者の信任状
(a)信任状委員会の任命
(b)信任状委員会の報告
(4)副議長の選出
副議長として、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、ガボン、日本、ルーマニア、ソ連および英国の8ヵ国の代表が選出された。
(5)一般委員会委員の任命
(6)事務局長演説
IAEAが保障措置にのみ目を奪われているという不満が開発途上国の間に広まりつつあることから、事務局長の演説は、保障措置については、重要問題としてふれながらもナショナルシステムの活用等による保障措置コスト節減を強調することに努め、演説の重点は、もっぱら技術援助の問題に置いてIAEAの技術援助活動、先進国の果たすべき役割等を強調した。その他環境問題、核融合、ウラン資源調査、INIS等IAEAで行なっている活動に言及した。
(7)国連事務総長代理演説
(8)議題採択および議事割当
(9)一般演説および理事会報告
第2日目から3日間、各国の代表が演説を行なったが、核兵器不拡散条約発効後の初めての総会として核兵器不拡散条約関連問題、特に保障措置問題に言及するものが多く、その他環境問題、技術援助、地域協力、憲章6条(理事会の構成)改正に関する意見が多く述べられた。
わが国代表は、第3日目に演説を行ない、まず、計画を大幅に上回わる急いで進展しつつあるわが国の原子力発電について紹介した後、高速増殖炉、新型転換炉、高温ガス炉の研究開発等わが国の原子力開発利用状況について説明を行なった。続いて環境問題にふれ、特に放射性廃棄物の処理処分の問題についてIAEAの果たすべき役割を強調した。最後に核兵器不拡散条約下における保障措置の問題にふれ、7月理事会で承認された保障措置委員会第一回報告書において①IAEAの保障措置は締約国の核物質管理制度による認定を確認する方法で実施されること②最適の費用対効果を確保する方法がとられること③施設に関連する情報の提供は核物質の保障措置に必要な最少限のものに限られること等の原則が確立されたことは画期的なものであることを強調し、10月の保障措置委員会で行なわれる第Ⅱ部の審議に当たっては、上述の原則に合致するように保障措置適用の原則、保障措置手続き等を具体的に規定するよう強く要望した。また保障措置の財政問題について保障措置を受ける非核兵器国が不当な負担を課せられてはならなことを強調した。
(10)第15回総会開催期日
第15回総会を、明年の第4回原子力平和利用国際会議直後の9月21日に開会することが決定された。
(11)1971-76年事業計画および1971年予算の承認
1971年から76年までの5ヶ年事業計画および1971年予算が、計画技術予算委員会報告通り異議なく採択された。この結果1971年の経常予算は、前年の10.1%増の1,300万ドル(4,680百万円)となった。なお、10.1%の伸び率のうち5.0%は保障措置関係経費の増加に起因するものであった。このほか任意拠出金総額が200万ドルから250万ドルに引き上げられた。
(12)1971年の各加盟国の分担率の承認
1971年の各加盟国の予算分担率が、計画技術予算委員会の報告通り異議なく採択された。なおわが国の分担率は3.78%で全加盟国中の第7位にあたる。
(13)原子力計画の財政
計画技術予算委員会報告通り異議なく採択された。
(14)国連に対する年次報告
異議なく承認された。
(15)IAEA職員年金委員会委員の任命
(16)1971年一般資金への任意拠出金
議長より1971年任意拠出金の誓約額が目標額の45%であることが報告され主要国の早期誓約が要請された。
(17)理事国の選出
任期満了のアルゼンチン、イラン、イタリア、シンガポールおよびヴェネズェラにかわり、新しく、チリー、ブラジル、シリア、タイおよびオランダが総会選出理事国に選ばれた。なお理事会指定理事国にも変動があり、第15回総会までの理事会構成は〔参考1〕のとおりとなった。
(18)憲章6条(理事会構成)の改正
憲章6条改正委員会報告の後、わが国を含む34ヵ国共同の憲章6条改正決議案が票決に付され、賛成54、反対9、棄権13で有効投票の3分の2を獲得し、採択された。この結果、全加盟国の3分の2が憲法上の手続きに従って受諾書を寄託すれば、すべての加盟国につき憲章6条改正の効力を生ずることとなった。この改正の主たる内容は、①理事国数を34または35ヵ国(現行25ヵ国)とし、②技術最先進国を9ヵ国(現行5ヵ国)とし、③原料物質生産国および技術援助提供国の区分を廃止する等である。なお、この改正が効力を生じた後に予想される理事会構成は〔参考2〕のとおりである。
(19)閉会
5 山田委員による記念講演
9月25日山田原子力委員会委員は「日本の原子力開発」のテーマについて記念講演を行なった。(発表論文は10月号に掲載)
〔参考1〕
(A)理事会指定国(13ヵ国)
(1)技術最先進国(5ヵ国、任期1年、再選可能)
米国、カナダ、英国、フランス、ソ連
(2)(1)以外の地域の技術先進国(5ヵ国、任期1年、再選可能)
アルゼンチン、南アフリカ連邦、インド、オーストラリア、日本
(3)原料物質生産国(2ヵ国、任期1年、再選不可)
ベルギー、ポーランド
(4)技術援助提供国(1ヵ国、任期1年、再選不可)
デンマーク
(B)総会選出国(12ヵ国、任期2年、再選不可)
ウルグアイ、スペイン、ハンガリー、ナイジェリア、モロッコ、パキスタン、ベトナム、チリー、ブラジル、シリア、タイ、オランダ
〔参考2〕
(A)理事国指定国(12または13ヵ国)
(1)技術最先進国(9ヵ国、任期1年、再選可能)
米国、カナダ、英国、フランス、西ドイツ、イタリア、ソ連、インド、日本
(2)(1)以外の地域の技術先進国(3または4ヵ国、任期1年、再選可能)
アルゼンチン、またはブラジル、南アフリカ連邦、オーストラリア((1)でインドの替りにスウェーデンが指定されると、この区分にインドがはいる。)
(B)総会選出国(22ヵ国、任期2年、再選不可)
ラ米・・・5ヵ国、西欧・・・4ヵ国、東欧・・・3ヵ国、アフリカ・・・4ヵ国、中東・南アジア・・・2ヵ国、東南アジア・太平洋・・・1ヵ国、その他、アジア、アフリカおよび太平洋地域から2
|
|