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昭和45年度原子力平和利用研究委託費交付概要



1 原子炉配管系の構造設計基準に関する試験研究

(社)日本溶接協会

(研究目的)
 原子炉の安全性に直接重大な影響を及ぼす原子炉配管に関して、わが国では、目下、その合理的な安全設計基準確立のための努力が払われているが、わが国が範としようとしている1969年11月度制定USAB31.7「原子炉配管構造設計規格」は1950年代の研究成果に基づいているため、最近の学術技術の観点からすれば検討を要する点が少なくない。
 とくに各種配管要素の応力計算式に用いられる応力指数およびたわみ係数数値ならびに配管溶接継手の溶接欠陥に対する考え方等に関しては疑問が多い。本試験研究は主としてこれらの事項に関して理論的、実験的に評価し、原子炉配管の構造設計基準の確立に資することを目的とする。

(研究内容)

(1)配管要素の静応力指数およびたわみ係数の解析に関する研究

(ⅰ)分岐管
 STPT38相当材の外径約200mmの母管に取付角度、口径比を種々変えたSTPT38枝管を取付け、内圧荷重およびモーメント荷重を弾性範囲内で静的に加え、生ずるたわみ変形およびひずみ分布を計測する。また、理論解析および光弾性応力測定法を用いた試験も実施し、あわせ検討する。

(ⅱ)わん曲管
 90°わん曲管を対象とし、外径約200mmおよび約700mmの2種について、それぞれSUS27およびSS41によって製作し、(ⅰ)と同様な試験を実施する。また理論解析もあわせて行なう。

(ⅲ)レデューサ
 大径側の口径を約200mmとし、小径側の口径を種々変えたレデューサをSUS27によって製作し、(ⅱ)と同様な研究を行なう。

(2)配管継手の欠陥が疲労応力指数に及ぼす影響に関する研究

(ⅰ)内部溶接欠陥を有するシーム溶接円筒の内圧疲労に関する研究
 STPG38に用いて、ブローホール、アンダーカット等の溶接欠陥を含んだシーム溶接継手円筒試験片(外径約400mm、厚さ約15mm、長さ約200mm)を製作し、これに片振繰り返し内圧を加えて破壊させ、溶接欠陥が疲労応力指数に及ぼす影響を考察する。また一部の試験片についてフラクトグラフィに関する研究を行なう。

(ⅱ)外部溶接欠陥を有する突合せ溶接円筒の曲げ疲労試験に関する研究
 STS38を用いて突合せ溶接円筒試験片(外径約140mm、厚さ約20mm、長さ約1,000mm)を製作する。試験パラメータを突合せ継手部の目違い量、余盛およびその形状とし、(ⅰ)と同様な研究を行なう。

(3)総合評価
 上記各項目の試験結果を総合評価する。




2 原子炉施設の建物、機器および配管系の
地震時における振動特性に関する試験研究

(社)日本電気協会

(研究目的)
 原子力発電所の原子炉建屋およびその中に据付けられている機器、配管は立地盤とともに複雑な振動系を構成するが、わが国の特殊事情にかんがみ、早急に動的耐震設計法を確立する必要がある。このために、43年度から地盤-建物-機器-配管を一連の系とした模型構造物をつくり、これらの動的な相互関係について、外力として自然地震(松代群発地震)を利用して、諸種の観測および解析を行なってきた。
 本試験研究は、これまでに実施したものと同一型の3階建構造物を大型振動台にて加振し、これまでに明らかとなった理論解析および自然地震観測上の問題点を解決し、より合理的な耐震設計法の確立に質するとを目的とする。

(研究内容)

(1)模型構造物の剛性の研究
 これまでの自然地震観測において使用した模型建屋と同一型の鉄筋コンクリート3階建構造物を振動台上に作製し、振動時における壁、床が柱、はり等の建屋剛性におよぼす影響を実測し、振動方程式における剛性評価を行なう。

(2)模型構造物の減衰性の研究
 模型構造物の材料および形状による内部減衰性に関する実証試験を行なう。

(3)地下逸散減衰および地震人力波の研究
 振動台上に土層模型を作成し、この上に小形の模型構造物を乗せ、地盤-建屋系の応答観測を行ない、実地震記録と比較検討する。

(4)機器・配管系の多入力解析の研究
 建屋模型に機器、配管多入力模型を取り付け、これまでの自然地震観測における計器ドリフト誤差および近接地震による初期外乱の影響について検討を行なう。




3 原子炉用活性炭フィルタの経時変化に関する試験研究

(社)日本空気清浄協会

(研究目的)
 原子力発電所に設置される非常用原子炉フィルタは、原子炉等の事故時に高濃度の核分裂生成物が格納施設外に排出されるのを防止するための安全防護設備のひとつであり、環境の安全確保のためにきわめて重要なものである。しかしながら非常用原子炉フィルタの設置現場における性能把握の問題として、とくに設置後気体中に含まれている不純物ガスや温度等雰囲気条件によって、フィルタ性能がいかに経時変化するかについては、未だ世界的にも十分究明されていない。
 本試験研究は、原子炉フィルタ活性炭の経時変化についての諸試験を行ない、原子炉フィルタの検査基準設定のための基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)

(1)大気ふん囲気における実験
 大気ウエザリング装置を用い、4種の添着活性炭を一定期間、自然条件における空気の流通により劣化させ、この試料について種々の温度、湿度等の条件下で、放射性ヨウ素で標識したヨウ化メチルの捕集実験を行ない、活性炭の劣化の程度を評価する。

(2)静的不純ガスふん囲気における実験
 実験室規模のウエザーリング装置を設計試作し、常温度下種々の湿度の空気に不純ガス(SO2、NO、NO2)を混入し、各種添着活性炭と強制的に吸着反応させ、得られた試料を上記項目(1)と同様にして評価検討を行なう。




4 原子炉格納容器の漏えい率の測定基準に関する試験研究

(社)日本電気協会

(研究目的)
 原子炉格納容器は、原子炉の事故発生に際して有害な放射性物質が原子炉周辺に飛散するのを防止するための究極的な安全防護設備であるが、耐圧性とともに高度の気密性が要求され、容器の完成時および運転開始後の定期的の漏えい率試験が実施される。
 現在わが国では、この漏えい率測定法として絶対圧力法または基準容器法により実施されているが、要求される漏えい率に比して、精度が十分でない等、種々検討を要する問題がある。
 本試験研究は問題を実験的、理論的に検討し、漏えい率試験法に関する基準確立に資することを目的とする。

(研究内容)

(1)漏えい率の測定精度に関する研究
 既存の原子炉格納容器縮尺模型(高さ約6.9m、内径約3.5m)を利用し、絶対圧力法および基準容器法による漏えい率試験を実施し、試験圧力、相対湿度、容器内温度分布等と漏えい率精度との関係を検討する。
 なお、この場合に、漏えい率の直値は、漏えい空気をガラス目盛容器に捕集して測定するものとする。

(2)格納容器の空気漏えい特性の研究
 実際の格納容器からガスが漏えいする場合の流出特性を推定するために次の実験を行なう。

(ⅰ)人工漏えい部の漏えい間隙を変化させて容器圧力と漏えい率の関係を求める。

(ⅱ)模型容器に実物バルブ、相似形エアロックをとり付け容器圧力と漏えい率の関係を絶対圧力法によって求める。



5 使用済核燃料輸送容器の落下衝撃に関する試験研究

(社)日本機械学会

(研究目的)
 原子力発電の具体化に伴い、多量の使用済核燃料を輸送する機会が必然的に増大するので、輸送時の公衆の人命および財産の安全を確保する見地から、使用済核燃料輸送容器に関する安全性の確立は国内的にも国際的にも重要な課題となってきている。
 この点に鑑み、主として軽水炉用使用済燃料キャスクの対衝撃を、ショックアブソーバを含めた形で総合的に検討し、キャスクの安全設計およびその評価方式を確立することを目的とする。

(研究内容)

(1)キャスクモデルおよび製作
 形状は円筒模置型、横造は胴部、端部とも鋼板に鉛を挟んだものとし、1/4縮尺モデル(約1.25t)3個を設計製作する。

(2)ショックアブソーバの設計および製作
 1/4縮尺キャスクモデル用ショックアブソーバ12個を設計、製作する。

(3)落下衝撃試験
 ショックアブソーバのついたモデルおよびモデルのみの9mの高さからの落下試験を行なう。

(4)解析
 ショックアブソーバの設計に必要なデータを収集し、かつキャスクモデルの水平落下時とコーナードロップ時の対衝性の関連性を明らかにする。




6 軽水炉燃料体からの核分裂生成物の放出に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)
 軽水型動力炉の安全解析を行なうには、核分裂生成物の挙動を精度よく推定することが必要であり、このためには燃料および燃料体からの核分裂生成物の放出率の研究が緊要である。本試験研究は、特にVO2燃料の高温過熱時における核分裂生成物の挙動および燃料体からの核分裂生成物の放出率についての諸試験を行ない、軽水型動力炉に関する安全解析の精度の向上に資することを目的とする。

(研究内容)

(1)燃料ミートの加熱時における核分裂生成物の挙動に関する研究
 数グラムの照射済VO2焼結体(天然濃縮度)を石英容器内で、高周波加熱装置により高温に加熱する。容器の中の雰囲気ガスを水蒸気、炭酸ガス、メタン等を含む空気とし、この中に放出される各種の核分裂生成物およびVO2エアロゾルの量をγ線スペクトル分析装置を用いて測定する。また未照射VO2焼結体を加熱し放出されるエアロゾルの量および粉末サイズを測定する。

(2)照射VO2パレットから水中への核分裂生成物の放出に関する研究
 軽水炉燃料の被覆管が破損した場合、燃料ペレットは水と接融し、燃料中に生じた核分裂生成物が水中に放出される。本研究では、VO2ペレット(天然濃縮度)を原子炉で照尉しつつ、照射燃料ペレットからどの様な核種がどの程度放出されるかを水ループを用いて解析する。




7 舶用炉用圧力抑制格納方式に関する試験研究

(社)日本造船研究協会

(研究目的)
 小型軽量を要求される舶用炉の格納方式として現在最も適当なものと考えられるのは、湿式圧力抑制格納方式である。この方式にも種々の型があるが、いずれについても今日まで舶用としての研究開発は、ほとんど実施されたことがなく、従ってこの方式を舶用炉に利用するためには、その基礎な諸問題を予め解明しておく必要がある。
 本試験研究は、舶用炉湿式圧力抑制格納方式に関する基礎的諸問題を実験により解明し、今後の研究開発および評価のための資料を求めることを目的とする。

(研究内容)

(1)蒸気の加圧水中における凝縮に関する実験研究

(ⅰ)空気を含む蒸気の加圧水中における凝縮の実験研究
 試験タンク内の加圧水(3~10kg/cm2)中に、空気混合蒸気を放出し、その凝縮過程を検討、解析する。

(ⅱ)加圧水中における蒸気泡の凝縮速度の実験研究
 試験タンク内加圧水中の電熱線に短時間通電し、少数の蒸気泡を発生させ、その凝縮消減過程を解析する。
 また、ノズルから水中に放出された蒸気泡についても同様な研究を行なう。

(2)大口径ノズルによる大気圧下水中での凝縮および水の利用効率に関する試験研究

(ⅰ)大口径ノズルによる大気圧下水中での凝縮の実験研究
 試験タンク内の水中に空気混合蒸気をノズル(口径約19cm~50cm)から放出し、その凝縮過程を解析する。

(ⅱ)圧力抑制室内の水の利用効率の実験研究
 試験タンクの水を均一な温度にし、ここに空気混合蒸気を放出し、タンク水の各部の温度を計測し、その温度分析から利用効率を求める。

(3)高圧サブクール水および高乾度2相流の水中ならびに空気中への流出に関する実験

(ⅰ)高圧サブクール水圧力容器にサブクール水をたくわえ、ラプチャアディスクを破断して瞬間的に水中および空気中へ噴出させ、その衝撃力、拡り角等を測定する。

(ⅱ)高乾き度2相流
 上記(ⅰ)と同様な実験を高乾き度2相流について行なう。

(ⅲ)加熱加圧水の水中への放出
 数気圧の飽和水およびサブクール水を、ノズルより常温常圧水中に放出し、その際水中に発生する衝撃について解明する。

(4)総合評価
 上記実験研究結果を総合的に評価検討する。




8 動力炉におけるトリウムの利用に関する研究

(株)日立製作所

(研究目的)
 動力炉へのトリウムの利用に関しては、資源的立場からその有用性が論じられているが、具体的な形での検討は進んでいない。これを行なうにはまず、炉特性に関する広いサーベイが必要である。
 そこで本研究においては、トリウムを用いた動力炉に関する炉心特性、燃料サイクル特性を広くサーベイして炉の諸特性を把握するとともに核的な面での問題点を明確にし、トリウム炉に関する基礎資料を得る。

(研究内容)

(1)トリウム炉に関する調査およびトリウムに関する種データの蒐集
 諸外国のトリウム炉に関する炉心特性、燃料サイクル特性を調査するとともに、トリウム、ウラン-233などの各種断面積および核分裂生成物のイールドと断面積などに関するデータを蒐集する。

(2)炉心特性、燃料サイクル特性のサーベイ計算
 前項(1)で蒐集した各種データおよび既存のゴードを用いて、高温ガス炉を対象として、炉心特性について、燃料の富化度、燃料棒直径を燃料棒間隔、燃料対減速材体積比をパラメーターとして計算を行ない、また、燃料特性および燃料サイクルについても広いサーベイ計算を行ない、高温ガス炉におけるトリウム利用について考察を加える。




9 ウラントリウム混合系燃料の特性評価に関する試験研究

住友電気工業(株)

(研究目的)
 現在では、酸化ウラン燃料の開発が進み、すでにこれによる原子力発電は商業ベースにのっているが、ウランの資源状態等を考慮すると、トリウム燃料の開発が必要とされている。このため、本試験研究では、ウラントリウム混合炭化物燃料の製造に関する基礎開発および燃料特性の評価を行なうことを目的とする。

(研究内容)
 ウラントリウム混合系燃料の化合物形態および形状に関して、セリウム化合物等の熱分解物質を添加した混合酸化物燃料体、更にこれらに炭素被覆を行なった燃料体、ならびに燃料体に行なった被覆と同様の性質を有する被覆のついたデイスク状透過性アルミナ膜等を製造し、これらについて次のような試験研究を行なう。

(1)燃料体の物性測定
 セリウム化合物等の添加を行なったウラン-トリウム混合系燃料体について密度の測定等を行なう。更に、炭素被覆を行なった燃料体、ディスク状炭素被覆アルミナ膜について金相学的観察を行ない、被覆の物性値を測定する。

(2)気体透過度試験
 ディスク状透過性アルミナ膜および炭素被覆を行なったアルミナ膜について気体透過度等の測定により、炭素被覆の孔径、有孔数等の測定を行なう。

(3)高温特性試験
 物性測定を行なった各種ウラン-トリウム混合物燃料について高温における放出ガス等について検討をする。

(4)(1)(2)および(3)の測定結果より、ウラン-トリウム混合系燃料として望ましい化合物形態および同燃料より放出される物質の挙動についての考察を行ない、また炭素被覆の性能と合わせその必要性について評価を行なう。




10 新型炭化物燃料の炉外評価に関する試験研究

古河電気工業(株)

(研究目的)
 炭化物燃料は熱伝導度、ウラン密度等の熱的および核特性の点で酸化物より優れているため将来の高速炉用燃料等として期待されているが、高燃焼時におけるスエリング、核分裂生成物の発生あるいは被覆管との両立性の問題が残されている。これらの問題のうち、特に高燃焼時の問題を解決するため、被覆粒子燃料の燃料炉外評価試験を行ない、本燃料の実用評価に関する資料を得る。

(研究内容)

(1)ウラン炭化物粒子に、多孔性炭素層、炭化硅素層等を被覆した粒子およびこれに熱硬化性樹脂黒鉛粒末等を注入し加熱硬化、炭化した燃料等を製造する。

(2)(1)で調整した種々の炭化物粒子および燃料棒について、それぞれ次の試験を行なう。

(ⅰ)高温加熱試験を行ない、被覆層の厚さと種類および厚さと耐熱性の相関性を定量的に調べる。

(ⅱ)熱サイクル試験を行ない、被覆層の種類および厚さと耐熱性の相関性を定量的に調べる。

(ⅲ)熱衝撃試験を行ない、酸浸出率を求め、被覆層の種類および厚さと耐熱衝撃性の相関性を定量的に調べる。

(ⅳ)燃料棒については、特に、中心加熱試験を行ない、熱伝導係数および物質移動の程度を調べる。



11 食品照射における照射効果に関する試験研究

(社)日本放射性同位元素協会

(研究目的)
 原子力委員会の開発基本計画に基づく食品照射研究として、これまで馬鈴薯、玉ねぎ、米、小麦、ウインナーソーセージについて放射線照射効果を検討してきたが、さらに米の蛋白質や小麦の澱粉および蛋白質の変性、ウインナーソーセージでは添加した発色助剤に対する照射の影響と低線量照射後に生存する微生物の放射線抵抗性、試料の産地別による照射馬鈴薯の黒変発生などを検討する必要がある。また、本年度より水産ねり製品の照射研究が開始されるが、まず、かまぼこの品質、添加物、付着微生物に対する照射効果の検討する必要があり、魚肉では低線量照射におけるボツリヌス菌の毒素生産性に対する影響を検討する必要がある。本試験研究は、これらの諸点を取上げ、食品照射の実用化に貢献することを目的とする。

(研究内容)

(1)照射米の蛋白質中のアミノ酸変化に関する試験研究
 水稲粳米に20および40kradのガンマ線を照射し、照射直後ならびに室温で2ヶ月貯蔵後に米の蛋白質中のアミノ酸の変化を測定する。

(2)照射小麦の澱粉および蛋白質の変化に関する試験研究
 小麦に25および50kradのガンマ線を照射し、照射直後ならびに室温で2ヶ月貯蔵後に小麦の澱粉および蛋白質の変化を測定する。

(3)ウインナーソーセージの照射効果に関する試験研究
 250および500kradのガンマ線をウインナーソーセージに照射し、照射直後と5℃で1週間および2週間貯蔵後に、添加した発色助剤の変化と、遺留微生物の放射線抵抗性を検討する。

(4)かまぼこの照射効果に関する試験研究
 かまぼこに300kradのガンマ線照射を行ない室温および5℃で貯蔵し、おのおの貯蔵期間を変えた時のかまぼこの弾性、色、揮発性成分、付着微生物の変化を測定する。また水産ねり製品の保存用添加剤などに対する照射の影響も検討する。

(5)魚肉の低線量照射におけるボツリヌス型菌の毒性生産性に関する試験研究
 たらのすり身にボツリヌスE型菌の芽胞を接種し、300krad照射後に5および10℃貯蔵し毒素生成を経時的に測定する。

(6)産地別の照射馬鈴薯の黒変発生に関する試験研究
 産地別の馬鈴薯に、収穫後3期間にわけて10kradのガンマ線照射後、室温に1週間貯蔵し黒変発生を観察する。




12 ウラン濃縮用隔膜に関する試験研究

理化学研究所

(研究目的)
 ウラン濃縮に関する研究は昭和44年8月原子力委員会により原子力特定総合研究として指定され、遠心分離法とともに、気体拡散法によるウラン濃縮についても必要な技術的、経済的評価に関する資料を得ることが要請されている。このために、昭和44年度に引き続きウラン濃縮用隔膜の特性をさらに高精度で測定、評価し、ウラン濃縮用隔膜に関する基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)

(1)6段型定圧式分離装置の製作および運転
 濃縮用隔膜の特性評価を行なうため、6段型定圧式分離装置を製作し、既設の3段型定圧式分離装置と合せて9段型とし、これを用いて試作したアルミナおよびテフロン隔膜について、ウラン同位体分離試験を行なう。

(2)隔膜の六弗化ウランに対する耐触試験
 既設の長期耐蝕試験装置を使用し、耐蝕試験を引き続き行なう。

(3)アルゴン同位体分離試験
 既設のアルゴン同位体分離装置を用いて、試作した種々の隔膜について1気圧以上におけるアルゴン同位体分離試験を行なう。




13 核融合を目的としたプラズマの生成加熱用
高出力レーザーの開発に関する試験研究

ウシオ電機(株)

(研究目的)
 核融合研究は、昭和43年7月原子力委員会により特定総合研究として指定され、目下研究が進められている。
 本試験研究は、高温高密度の不純物の少ないプラズマ源の生成、プラズマへのエネルギーの追加等に必要な高出力レーザーを開発し、核融合の研究開発の推進に資することを目的とし、その基礎となるレーザーの発振機、積層円盤型増幅器およびフラッシュ・ランプの開発、試作を行なうものである。

(研究内容)

(1)レーザー発振機および積層円盤型増幅器の開発試作

(ⅰ)発振機の開発、試作
 色素セル、偏光子、ケル、セルおよびLTSG(Laser Triggerd Spark Gap)を用いてレーザー・ロッドから発注するレーザー光をQスイッチとモード・ロッキング方式を用いて、10-9秒から10-12秒程度のパルス・レーザー光を発生する発振機を開発、試作する。

(ⅱ)積層円盤型増幅器の開発、試作
 積層円盤型増幅器の試作を行ない、これに5~6%のNdを含む各種の円盤型レーザー素子を組み入れ、最適Nd含有量を求める。
 また、同素子の配置構成について実験的に検討を行ない、高出力レーザーの増幅器の設計指針を得る。

(2)高入力フラッシュ・ランプの開発
 ガラス・レーザーに適したクリプトン・フラッシュ・ランプの開発をすすめるため、ランプへのクリプトン・ガスの最適混入率を実験的に求めるとともに、従来高エネルギー・ランプの欠陥となっている排気孔をランプ端部に設けたランプの開発を行ない、その結果をもととして、20KJ級の高入力フラッシュ・ランプの開発、試作を行なう。




14 放射性廃棄物固化体からの放射性核種の
溶出と環境での移動に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)
 放射性廃棄物の海洋投棄を考えるに当っては環境汚染を防ぐための固化体安定度と溶出率の低減をはかりまた溶出された放射性廃棄物の濃縮係数や海中および陸上の食物連鎖における挙動を定量的に求める必要がある。
 また地中処分を考えるに当っては放射性核種が地中特に帯水層においてどのような挙動をするかを把握し且つ移動する状況を定量的に推定予測する必要がある。これらの諸点を取上げ、放射性廃棄物の海洋投棄の実用化に貢献することを目的として研究を行なう。

(研究内容)

(1)高水圧下における放射性物質の溶出に関する試験
 137Cs、60Co等の核種を含む濃縮スラッジ、樹脂、ホウ酸等についてアスファルト、セメントもしくは両者の混合物を使用したそれぞれの固化体を作り200~400kg/cm2の人工海水中に浸漬して浸漬水中の放射能度を測定し、固化体の性状と溶出率等の関係を調査する。

(2)裸の固化体試料の安定性に関する試験
 三軸試験器を使って所定水圧(100~400kg/cm2)の横圧、縦圧による裸の固化体試料の変形量を測定し、また破壊強度を測定しその安全度を求める。廃棄物としては、イオン交換樹脂、ホウ酸を含む廃液をとり上げ、形状効果も調べる。

(3)海産生物及び畜産物における60Coのとりこみに関する試験

(ⅰ)海水中から60Coが魚類にとり入れられる場合、これに及ぼす共存物質の影響についての検討を行なうほか、底土から飼料生物への転移についても研究する。

(ⅱ)海に由来する60Coの畜産物への転移を研究する。すなわち産卵鶏を飼育し、餌料に60Coを添加してその卵に転移してくる60Coの量を測定する。また鶏自身の体内分布をも測定する。

(4)放射性核種の地下帯水層での移動に関する試験
 放射性廃棄物固化体を地上又は地中処分した際の環境の汚染を検討するに必要なAg、Mn、Zn、Feの分配係数について硅砂を中心とする砂を詰めたガラス円筒を用いて測定する。つぎに実験室内に帯水層模型を作りそこに土砂を敷設して放射性廃棄物固化体を埋め地下水を連続的に流しその放射能を連続的に計測することによって固化体から漏洩する放射性物質の挙動を調べる。




15 放射性物質取扱用防護衣の安全性に関する試験研究

(社)日本保安用品協会

(研究目的)
 全身防護服および呼吸保護具の防護効果に関する信頼性については系統的な検討が行なわれていないのて各形の防護衣の防護に関する信頼限界について実験的検討を行ない、その選択、使用および保守について必要な技術情報を確保しておく必要がある。このデータにより、製品規格を改訂して、信頼限界を明確にすると共に、ユーザー側の誤用を防ぐために必要な技術情報を提供することを目的とする。

(研究内容)

(1)防護衣材料およびその接合部における放射性汚染浸透を経時的に検討する。

(2)防護衣材料およびその接合部からの放射性ガスおよびエアロゾルの透過について検討する。

(3)レスピラブルダミーに換気式全身防護服および防議服と呼吸保護具を着用させて、放射性テストガスおよびテストエアロゾルを添加した雰囲気中におき定格使用条件および送風中断の際の服内へのテストガスおよびエアロゾルの侵入について試験する。

(4)換気式全身防護服および呼吸保護具と防護服を被検者に着用させ、非放射性テストガスおよびテストエアロゾルを添加した雰囲気中で運動させ、服内へのテストガスおよびテストエアロゾルの侵入について試験する。




16 放射線障害回復促進物質に関する試験研究

(社)日本放射性同位元素協会

(研究目的)
 放射線被曝後における放射線障害の回復を促進する有効な物質はまだ開発されていない。このため、本試験研究は、放射線障害の回復を促進させる諸因子を段階的に分析し、これを組合わせた効果を試験し、放射線障害の薬物的治療法の基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)

(1)細胞での回復促進物質等の検討
 哺乳動物の培養細胞ならびにマウスの実験腫瘍細胞および体細胞にⅩ線またはγ線を照射した後に、核酸および関連物質を投与し、回復促進作用を追求する。

(2)個体での回復促進物質とその投与条件の相関に関する検討
 メダカおよびマウスに致死線量を照射した後に核酸および関連物質を単独および組合せて注意し、死亡率等を指標として回復の程度を判定し、回復に有効な物質およびその組合せを検索する。

(3)哺乳動物での総合判定
 上記(1)、(2)により得られた回復物質等を致死線量を与えたマウスに投与し、その生存率を指標として治療としての効果を判定する。




17 熱ルミネツセンス線量計による被曝線量測定の適用範囲
および他の線量計との比較検討に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)
 本研究は、熱ルミネツセンス線量計の諸特性を明らかにするとともに、在来の各種線量計に関する試験研究結果との比較、検討を行ない、適正な個人被曝管理のための基礎的知見をえることを目的とする。

(研究内容)
 熱ルミネツセンス線量計について以下の試験研究を行ない、その結果を既知の他の各種線量計に関するそれと比較検討を行なう。

(1)ばらつき、再現性および照射前線量に関する検討
 同種の素子に同一の条件下で照射した場合における線量計の指示値のばらつきの大きさ、1個の素子に所定の条件下で照射し、繰返した場合における線量計の指示値の再現性をそれぞれ検討する。また、未照射素子の熱ルミネツセンス指示値について検討する。

(2)エネルギー、線量率、線量に対する指示値の依存性に関する検討
 素子に照射する放射線(光子)のエネルギー、線量率の変化による線量計指示値の変動ならびに線量計指示値と照射線量の相関性について検討を行なう。

(3)経時変化および方向依存性に関する検討
 素子に照射後、時間経過に伴う線量計指示値の変化および照射方向の変化による指示値の変動について検討を行なう。




18 特定微量指標核種の系統分離分析法および簡易迅速分析法に関する試験研究

(財)日本分析化学研究所

(研究目的)
 放射性廃棄物の多くは、最終的には海域に入り、海水から海産生物を経て、人間に影響を与えるものと考えられる。
 本試験研究は、原子炉の冷却水等に含まれる核種を対象とし、それらの系統的分離分析法および簡易迅速分析法の確立し、環境放射線管理に資することを目的とする。

(研究内容)

(1)特定微量指標核種の系統分離分析法の開発
 指標核種として、51Cr,59Fe,60Co,63Ni,64Cu65Zn,90Sr,137Cs,144Ce,182Taをとり上げ、試料は、海水、海底土および海産物を対象とする。

(ⅰ)指標核種の放射能測定法の比較検討
 放射能測定は、低バックグランドβ線測定装置、γ線波高分析装置およびβ線スペクトロメーターを用い、測定条件として測定試料の厚み、形状等による計数効率および有効測定時間等について検討する。

(ⅱ)β線スペクトロメーターによる系統分離迅速分析法の開発
 指標核種を系統的に分離して単独に測定する場合と系統的な分属分離を行ない測定する場合について、試験試料を用いて検討を行なう。特にβ線スペクトロメーターによるβ線のエネルギー分布の確認の限度について、他の測定装置による場合と比較を行ない、微量指標核種の迅速な分析法を検討する。

(2)特定微量指標核種の簡易迅速分析法の開発

(ⅰ)指標食品の選定と検査用指標生物の調整
 原子力施設ごとに海産生物の生態分布等を調べ、γ線スペクトロメトリーにより指標食品を選定する。また、59Feによる海産生物の汚染機構を解明しつつ、実験的に汚染漁具類を作成し、簡易迅速分析法用の試料を供する。

(ⅱ)簡易迅速分析法の開発
 上記指標食品中の59FeについてGe(Li)半導体検出器によるγ線スペクトロスコピーと化学的分離操作後の低バックグランドGMメトリーについて比較検討し、簡易迅速分析法を開発する。



19 保障措置システムに関する研究

(財)工業開発研究所

(研究目的)
 わが国の核燃料サイクルを対象とする情報管理システムを検討し、わが国の原子力平和利用産業の発展を防げない合理的、効果的な保障措置システムとその適用のあり方および具体的措置について明確化することを目的とする。

(研究内容)

(1)計量管理システムの検討
 現時点および1980年頃までの時点でのわが国の核燃料サイクルおよび核分裂物質の計量方式を見積り、国内の核分裂物質計量管理についての詳細モデルを作成する。

(2)計算機処理およびオンラインデータ伝送システムの開発
 核分裂物質収支を計るために必要な計算データの評価および計量データをオンラインで処理するためのデータ伝送方式を検討し、小規模のモデル実験を行なう。

(3)査察モデルと検証方式の検討
 国際原子力機関のわが国国内査察システムに対する検証方式を検討する。

(4)費用対効果等の解析
 保障措置システムの最適化を図る上の前段階として費用対効果等の解析手法を具体化するため、特に被査察側の迷惑度、疑惑度の定量化を行なう。

(5)保障措置システムの最適化プログラムの作成
 (1)~(4)までの結果を用いて保障措置システムの最適化プログラムを作成する。



20 二酸化ウラン転換および成型加工施設における効果的査察と
最適化工場運転を考慮した計量管理システムに関する研究

三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 二酸化ウラン転換加工施設へのフロー式計量管理システムの適用についての検討および成型加工施設についての最適計量管理システムの開発を行ない、効果的な査察技術を確立することを目的とする。

(研究内容)

(1)フロー方式に基づいたUO2転換加工施設の計量管理システムの開発
 UO2転換加工工程を解析し、既にUO2成型加工施設について開発されているフロー方式の計量管理システムを拡張してUO2転換加工施設への適用を検討する。

(2)UO2成型加工施設における工場運転最適化計量管理システムの開発
 核燃料物質の取扱量(受注・生産)を確率模型としてインプットするようなUO2成型加工施設を操業するときの滞留核燃料物質の秤量方法を検討し、加工施設の秤量精度、納期、コスト等で表現できる目的関数を最適化する工場運転最適化計量管理システムを開発する。




21 高濃縮ウランの計量管理に関する試験研究

住友電気工業(株)

(研究目的)
 高濃縮ウラン板状燃料成型加工工程について、信頼性の高い計量管理システムを開発するとともに、これを、実際の工程に適用し、その解析によって核燃料物質管理上の保障措置の問題と、管理に関する経済性の問題との検討を行ない、査察に対応した合理的で信頼性の高い計量システムの開発を行なうことを目的とする。

(研究内容)

(1)高濃縮ウラン板状燃料工程の計量管理システムの開発
 板状燃料加工工程におけるウラン・アルミ溶解から燃料コア打抜き工程までの燃料の移動、滞留状態や各工程の性能を解析するため計量管理システムの開発を行ない、工程中における燃料の所在、状況を常時把握する方法を検討解析する。

(2)システムの実際工程への応用
 本システムを実際の作業工程に適用しその実際のデーターを解析することによって、計量管理手段および運用方法等の検討を行ない、さらに各工程での収率、損失量や不明損失量についての情報の解析を行なう。




22 ファン・デ・グラフ型加速装置を使用した熱中性子による
U-235濃縮核燃料捧の非破壊濃縮度検査に関する試験研究

日本原子力事業(株)

(研究目的)
 未使用U-235濃縮核燃料棒の濃縮度検査を非破壊で迅速に行なう手法、技術の知見を得ることにより、核燃料保障措置に関する核燃料物質を計量する機器開発の基礎技術を確立することを目的とする。

(研究内容)
 ファン・デ・グラフ型加速装置からの荷電粒子ビームで誘起される各種核反応を中性子源として、その熱中性子で核燃料に照射し、U-235から発生する即発、遅発中性子を熱中性子計数管または高速中性子計数管等を使用して検出する。
 S/N比、検出感度等を判断の基準として、非破壊分析法として最もよい測定手法を開発する。




23 核燃料物質の管理技術に関する基礎的試験研究

(学)近畿大学

(研究目的)
 核燃料物質の高エネルギーγ線による光核分裂反応の特異性に着目して、査察技術を簡素化の前提となる核燃料物質の非破壊的管理技術を確立するための定量的基礎質料を得ることを目的とする。

(研究内容)
 U-235、Pu-239およびU-238を16MeVのライナックで照射し、照射試料からのγ線強度の時間的変化等を測定することにより、

(1)U-235、Pu-239およびU-238の光核分裂反応実効しきいエネルギーの決定

(2)これらの光核分裂反応生成物のγ線強度の時間的変化およびγ線スペクトルの高分解能の測定

(3)γ線スペクトルの解析から、光核分裂反応生成物の質量-収率の照射エネルガ一依存性を求め、核燃料物質の簡素な査察管理方式を開発するため、光核反応による核分裂に関する基礎的質料を得る。




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