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国際原子力機関(IAEA)第13回総会報告




 国際原子力機関(IAEA)の第13回総会は、昭和44年9月23日からウィーン・ノイエ・ホックブルク会議センターに於て開催され、9月29日に7日間にわたる会議を終了した。その概要は次のとおりである。

1 加盟国、国際機関等の参加数
加盟国 73
国際連合および専門機関 3
その他の国際機関 8
非政府機関 8
その他の国 2

2 参加人員
加盟国代表 351名
国際連合および専門機関 6名
その他の国際機関 14名
非政府機関 14名
その他の国 3名
388名
3 日本代表団
代表 新関 欽哉 在オーストリア大使
平泉 渉 科学技術政務次官
代表代理 橘 正忠 在オーストリア大使館参事官
川島 芳郎 科学技術庁原子力局国際協力課長
大沢 弘之 在オーストリア大使館一等書記官
藤本 芳男 在オーストリア大使館一等書記官
代表顧問 江口 暢 外務省国際連合局科学課
4 会議議事

(1) 開会式
 第13回総会開会式は、9月23日午後3時ウィーン・ノイエ・ホッフブルク会議センターにおいて行なわれた。

(2) 議長選出
 議長には、チュニジア代表のBéchir Torki氏が選出された。

(3) 信任状委員会委員の任命

(4) 副議長選出
 副議長として、日本、オーストラリア、チリー、フランス、イタリア、ソ連、米国およびブルガリアの8ケ国代表が選出された。

(5) 一般委員会委員の任命

(6) 加盟申請
 アイルランドの加盟が承認された。

(7) 事務総長声明
 事務総長の演説のうち注目された点は次のとおりである。
 憲章9条の改正問題については、困難な問題であるが、これまでの進展からみて遠からず解決が得られよう。
 核爆発の平和利用については、時期がくればIAEAのわく内にこのための組織を設立することに困難はないと思うが、それまでは関連情報の提供に限られよう。
 核物質基金については、米国は核物質を2国間ベースと同様の条件でIAEAへ提供する用意があるとの意向を示し、仏も現在以上の核物質を提供する用意があることを示した。英ソもこの問題につき積極的反応を示すと信じる。
 低開発国へのプロジェクト援助については、事業の優先順位および動力源としての有利さの問題はあるが、経済的な条件が備わっていれば同情的な考慮が払われるであろう。
 保障措置については、NPTへの適合の問題に関し関係国間で十分討議することが望ましく、このため例えば全体委員会の開催が考えられる。
 原子炉の建設は、全世界の極めて限られた部分しか占めず、将来のエネルギー・ギャップをもたらそう。
 その他多目的炉の開発、IAEA予算INIS等の問題に言及した。

(8) 国際連合事務総長代理の演説

(9) 議題採択および議事割当

(10) 一般演説および1968−69年度理事会報告
 第2日目から3日間、本会議で43カ国の代表が演説を行ない、わが方からは第4日目に平泉科学技術政務次官が代表演説を行なった。その要点は次のとおりである。
(イ) わが国においては原子力に対する一般国民のイメージが変りつつある。
 これまで長い間の政府の安全性についての施策がようやく効果をあらわしはじめたと考えられる。安全問題は重要であり、この問題の解決の上にたってこそ原子力平和利用の発展が望める。

(ロ) わが国は、IAEAの保障措置をはじめて受け入れた国であって、しかも現在IAEAの保障措置適用原子炉70基のうちの22基(30%)が日本にある。他の諸国もIAEAの保障措置を受け入れることを期待している。とくにNPTに関連して、米英両国が平和利用における活動をIAEAの保障措置の下におくと表明したことを歓迎し、他の核保有国もこれにならうことを希望する。今後の原子力発電の発展を考えると、IAEAの保障措置は合理的かつ能率的なものとしなければやっていけなくなるであろう。その点でIAEAが進んだ方式を検討しはじめたことは高く評価すべきである。最少の費用で最大の効果をあげるには、国または多国間の保障措置をIAEAが監査ないし検証するという考え方が必要になろう。また保障措置については核保有国と非核保有国との平等ということも重要な要件である。

(ハ) 科学技術情報の国際交流の保進は必要であり、機密の理由のなくなったものはすみやかに機密を解除すべきである。核爆発平和利用に関する情報の交流をはかることも必要である。

(ニ) 理事会の拡大は、その能率を損なわないよう、できるたけ控え目にとどめるべきである。理事国については地理的に公平な分布をはかることが重要である。
(11) 閉会期日
 9月29日閉会することに決定

(12) 第14回IAEA総会開催日程
 1970年9月22日に開会することを決定

(13) 総会選出の理事国選出
 ハンガリー、パキスタン、ウルグアイ、南ベトナム、スペイン、モロッコおよびナイジェリアの7ケ国が選出された。(全理事国名は後記)

(14) 1970年度IAEA予算案の承認

(15) 1970年度における各加盟国の分担率の承認その結果、わが国はIAEAの経常予算の3.43%を分担し、全加盟国中の6位を占めることとなった。

(16) 核爆発平和利用決議の採択

(17) 1968年度IAEA決算案の承認

(18) 政府間機関とのIAEAの関係に関する報告の承認

(19) 憲章6条改正問題に関する決議の採択

(20) 特殊核物質基金に関する理事会のメモランダム等の国連総会への送付

(21) 事務総長の任命
 次期IAEA事務総長にS.Eklundが任命された。

(22) 国際連合提出用のIAEA年次報告の承認

(23) 会計検査官の任命

(24) 事務局年金委員会委員の任命
 わが国の橘在オーストリア大使館参事官が任命された。

(25) 1970年度IAEA一般資金への任意拠出金に関する議長の要請

(26) 閉会




〔参考〕 

理事国の新しい構成

(A) 理事会指定(13ケ国)
(1) 技術最先進国(憲章6条A−1、5ケ国、任期1年、再選可能)
米、加、英、仏、ソ連

(2) (1)以外の地域の技術先進国(憲章6条A−1、5ケ国、任期1年、再選可能)
 オーストラリア、ブラジル、インド、日本、南アフリカ

(3) 原料物質生産国(憲章6条A−2、2ケ国、任期1年、選出1年おき)
 チェコ・スロバキア、ポルトガル

(4) 技術援助提供国(憲章6条A−2、1ケ国、再選不可)
 スウェーデン
(B) 総会選出(憲章6条A−3、12ケ国、任期2年、再選不可)
 アルゼンチン、ハンガリー、イラン、イタリア、モロッコ、ナイジェリア、パキスタン、シンガポール、スペイン、ウルグアイ、ヴュネズェラ、南ベトナム



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