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ウラン濃縮研究懇談会報告


44.8.28

まえがき

 原子力委員会は、核燃料懇談会報告を受けて昭和43年6月ウラン濃縮に関する研究開発の基本方針を定めたが、この方針に沿って今後の研究開発を効果的に推進するための具体的方策について、関係有識者の意見を聴取することを目的として、昭和44年5月懇談会を設置した。
 当懇談会は、下記の構成員によって約2ケ月にわたり審議を重ね、ここにその審議結果をとりまとめた。

ウラン濃縮研究懇談会構成員
座長 山田 太三郎 原子力委員
武藤 俊之助 原子力委員
大山 義年 東京工業大学名誉教授
菊池 正士 東京理科大学学長
理化学研究所招聘研究員
高島 洋一 東京工業大学教授
村田 浩 日本原子力研究所副理事長
今井 美材 動力炉・核燃料開発事業団副理事長


1.研究開発の目標

 ガス拡散法および遠心分離法の両方式について研究開発を推進し、昭和47年度末までにウラン濃縮に関する技術的諸問題の解明の見通しを得ることを当面(第1段階)の目標とする。
 なお、研究開発の効果的推進を図るうえから第1段階の終了時に諸外国における進展状況を勘案しつつ、各方式の研究開発の成果を評価するとともにそれ以降の研究開発計画を検討する。


2.原子力特定総合研究の指定について

 ウラン濃縮の研究開発の重要性にかんがみ、各研究機関(民間企業を含む)の研究計画の調整あるいは研究成果の交流を盛んにし、もって計画の総合的かつ効果的な推進を図るため第1段階の研究開発を原子力特定総合研究に指定することが望ましい。


3.ガス拡散法の研究開発

(47年度までの研究開発)
(1) 隔膜の開発
 隔膜の製造技術については、実用寸法の管状隔膜の品質管理技術を含む量産化技術を開発するとともに、UF6による耐久性試験を実施する。また、隔膜の材質形状等について各種の特性試験を行ない、高性能隔膜の材質とその製造条件、管状隔膜の形状寸法および拡散筒内における配列を選定する。

(2) UF6循環ループの開発
 軸流圧縮機の軸封、軸受け、回転翼、拡散筒等各構成要素の試験を進め、圧縮機、熱交換器、拡散筒、計装等を組み込んだUF6循環ループ(実用規模の約1/10程度、圧縮機容量約200KW、配管直径約300mm)を試作する。
 この循環ループの運転試験により、圧縮機、熱交換器、バルブ等の各構成要素の耐食性、漏洩防止および性能試験を行なうとともにシステムとしての運転性能の確認およびその改善を行なう。

(3) 関連技術の開発
 上記(1)および(2)の研究開発に関連して濃縮工程のシステム解析、システム制御技術、UF6分析技術、UF6耐食性新材料等の研究開発を行なう。また、以上の研究開発の成果をとり入れて、カスケードによる総合試験のために必要な設計を行なう。

 (48年度以降に予定される研究開発)
(4) カスケードによる総合試験その他
 (1)~(3)で開発した隔膜、圧縮機、熱交換器、計装等の組合せによるカスケード試験施設を建設し、パイロット前段階における実証試験として総合試験を行なう。この試験により各種運転条件における段分離係数の算出およびシステムとしての信頼度の確認を行なう。
 また、軸流圧縮機の大型化、高効率化、隔膜の製造技術の改良等のための試験を引続いて行なう。


4.遠心分離法の研究開発

 (47年度までの研究開発)
(1) 遠心機の分離機構の開発
 周辺速度350m/秒の各種分離機構の遠心機(実用規模)を試作し、濃縮試験および長期耐久試験を行なうことにより、軸封、軸受等各機構または部材の改良をはかるとともに、単機の分離性能およびその信頼度の確認ならびに最適分離機構の選定を行なう。

(2) 高性能遠心分離機の開発
 周速400m/秒以上の回転胴の成型加工技術の開発および毎分7~10万回転の非接触型軸封、軸受けの試作開発を行なうとともに、これらの成果を適宜活用して、超高速遠心機、二重円筒型遠心機および集約化遠心機の試作および分離試験を行ない、高性能化についての技術的な見通しをつける。

(3) システム試験
 遠心機数台の組合せによるシステム試験を行ない、単機性能および信頼度の試験、UF6ガス循環における回転数、圧力等各種変動要因がシステム全体に与える影響およびそれらの制御方法の開発ならびにシステムとしての運転性能の確認および改良をはかる。

(4) 関連技術の開発
 上記(1)~(3)に研究開発に関連して遠心分離法の濃縮工程のシステム解析、プロセス中のUF6の分離精製等の開発を行なう。
 また、以上の研究開発の成果をとり入れて、カスケードによる総合試験のために必要な設計を行なう。
 なお、原料UF6の製造技術については、47年度までに製造技術を確立することを目途として、試験研究を行なう。

 (48年度以降に予定される研究開発)
(5) カスケードによる総合試験、その他
 (1)~(4)で開発した分離機構、高性能遠心機、システム試験の成果を総合して、パイロット前段階における実証試験としてカスケード総合試験を行なう。この試験により、各種試験条件における段分離係数の算出およびシステムとしての信頼度を確認する。
 また、遠心機の性能の向上および量産化等のための試験を引き続いて行なう。


5.研究開発の分担

 ガス拡散法の研究開発のうち、隔膜の製造技術の開発については民間企業に委託し、隔膜の特性試験については理化学研究所が実施し、UF6循環ループの開発等その他の研究開発については日本原子力研究所が実施する。
 遠心分離法の研究開発は、動力炉・核燃料開発事業団が実施する。
 なお、両方式の研究開発を推進するに当っては、可能な限り大学および民間企業の技術および人材の活用を図る。


6.所要経費

 以上研究開発に要する経費として昭和45~47年度の間にガス拡散法約27億円、遠心分離法約30億円、計約57億円が見込まれる。


Ⅰ 研究開発計画


 (1) ガス拡散法




 所要経費




 (2) 遠心分離法



 所要経費



Ⅱ 審議経過



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