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(株)東京原子力産業研究所原子炉施設の
設置変更について(答申)


44原委第289号
昭和44年8月29日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

株式会社東京原子力産業研究所の
原子炉施設の設置変更について(答申)

 昭和44年5月24日付け44原第2647号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 株式会社東京原子力産業研究所の原子炉施設の設置変更に関し、同社が提出した変更の許可申請は核原料物質・核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に規定する許可の基準に適合しているものと認める。
 なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は次のとおりである。


株式会社東京原子力産業研究所原子炉施設の
設置変更に係る安全性について

昭和44年8月26日
原子炉安全専門審査会

原子力委員会
委員長 木内 四郎 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

株式会社東京原子力産業研究所原子炉施設の
設置変更に係る安全性について

 当審査会は、昭和44年6月2日付け、44原委第161号(昭和44年8月22日付け、44原委第282号をもって一部訂正)をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

Ⅰ 審査結果

 株式会社東京原子力産業研究所原子炉施設の設置変更に係る安全性に関し、同社が提出した「原子炉設置変更許可申請書」(昭和44年5月24日付け)、および「原子炉設置変更許可申請書の一部訂正について」(昭和44年8月18日付け)に基づいて審査した結果、本原子炉施設の設置変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。



Ⅱ 変更事項

 本原子炉のパルス運転において、制御棒のスクラムの時間遅れの影響を実験的に確認するため、ならびに、原子炉燃料および材料の熱的、核的特性を研究するため、下記の変更を行なう。


1.変更 I

1.1 単発パルス運転において、シム棒および安全棒Ⅰの切外し遅れ時間を現在の0.15sec以下から1.0sec以下に変更する。

1.2 1.1の条件でパルス運転を行なう場合は、最大投入反応度を従来の0.013Δk/kから0.012Δk/kに切下げる。


2.変更 Ⅱ

2.1 30秒以上の間隔をおいて、1時間あたり10回以下の反応度投入ができる繰返しパルス運転を行なう。

2.2 繰返しパルス運転における最大投入反応度は0.011Δk/kとする。

2.3 繰返しパルス運転におけるスクラム信号設定点を次のとおりとし、0.15secの切外し遅れ時間でシム棒および安全棒Ⅰが落下する。
 イ 炉出力高スクラム 80MW
 ロ 炉周期短スクラム 19msec

2.4 炉心燃料中心温度2,000℃以上またはパルス実験用制御棒の誤動作(引抜き開始から1.8secたっても挿入が完了しない)の信号で安全棒Ⅱが落下することとする。(変更前、反応度投入後2secで自動落下)

2.5 炉心格子の1つに実験用原子炉燃料および材料を入れることのできる照射用容器を入れる。
 なお、変更Ⅱは、変更Ⅰの実験終了後に行なわれる。



Ⅲ 審査内容

1.変更Ⅰの安全対策
 スクラムの時間遅れを0.15secから1secに変更したことによっても、最大投入反応度0.012Δk/kにおける瞬時最大熱出力125MW、最大熱流束75cal/cm2secは、それぞれ変更前と比べて変化はなく、従来からの制限値(500MW、200cal/cm2sec)を下廻る。また、燃料の中心最高温度は、0.012Δk/kの反応度投入において、スクラム遅れ時間0.15secの場合の1,450℃(実測)に比し、1,550℃と、約100℃程度の上昇に止まると解析されており、制限値2,200℃を下廻る。
 したがって、従来に加えて新たな安全対策を講ずる必要はなく十分安全と考えられる。


2.変更Ⅱの安全対策
 パルス制御棒は、加圧空気によって約0.1secで引き抜かれ、待ち時間1sec以下で、炉心に再挿入され始め、挿入完了は引き抜き後約1.8secである。繰返しパルス運転の際は、以上の動作を30sec以上の間隔で繰り返す。
 しかし、変更Ⅰの場合と同様に、出力増加に伴うドップラー効果による負の反応度の付荷により上記制御棒が働くまでに同効果で出力は減少する。解析によれば、最大投入反応度0.011Δk/k投入間隔30secで、10回の繰返しパルス運転を行なった場合の第1パルスの瞬時最大出力は約68MW、ピーク値までの放出エネルギーは約14MWsec、第2パルス以後の瞬時最大出力は約50MW、燃料中心温度の最高は約1,100℃となり、いずれも従来からの制限値を下廻る。また、1時間当りの積算出力も約83kwh程度である。
 この変更に伴う安全対策については、次のような措置がとられるので、本繰返しパルス運転の安全は、確保できると考えられる。

2.1 出力および炉周期、スクラムを前述のとおり設定する。

2.2 パルス棒の誤動作および燃料中心最高温度の異常上昇によるスクラムを設定する。

2.3 繰返しパルスの間隔設定回路を設け、30sec以上しか設定できない構造とする。

2.4 繰返しパルスの回数設定回路を設け、1時間あたり10回以下の反応度投入しかできない構造とする。


3.平常時の線量率
 投入反応度0.011Δk/k、30sec間隔1時間あたり10回の条件で、繰返しパルス運転を行なった直後の被曝線量率は、最も値の高い炉頂においても、1.7mrem/hを超えることはない。


4.災害評価
 変更に係る本原子炉の各種事故について検討したが、制御棒の切外し遅れ時間、それらのスクラム設定点および繰返しパルス運転と変ったことにより、新たに問題となる点はない。
 また、災害評価についても前回の変更の際の審査における評価の内容と変わることはなく、周辺の公衆に対し障害を与えることはないと認める。



Ⅵ 審査経過

 本審査会は、昭和44年6月4日、第70回審査会において、次の委員からなる第53部会を設置した。

審査委員
弘田 実弥(部会長) 原研
江藤 秀雄 放医研
浜田 達二 理研
調査委員
海老塚 佳衛 東工大
望月 恵一 動燃

 同部会は、本設置変更の安全性について、次表のとおり調査審議を行なって来たが、昭和44年7月30日の部会において部会報告書を決定し、同年8月26日第72回審査会において本報告書を決定した。



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