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ウラン濃縮研究開発基本計画


昭和44年8月28日
原子力委員会決定


 ウラン濃縮の研究開発は、次に示す基本計画に基づき実施するものとする。

1.研究開発の目標
 ウラン濃縮の研究開発は、ガス拡散法および遠心分離法の両方式について、ウラン濃縮に関する技術的諸問題の解明の見通しを得ることを第1段階(昭和45年度を初年度とし、昭和47年度完了予定)の目標として推進するものとする。
 なお、第1段階の終了時に諸外国における進展状況を勘案しつつ、各方式の研究開発の成果を評価するとともに第2段階以降(昭和48年度以降)の方針を定める。


2.研究開発の内容

(1) ガス拡散法
 (ⅰ) 隔膜の開発
 高性能隔膜の材質、製造条件等を選定するため、各種の特性試験を行なうとともに実用寸法の管状隔膜の量産技術を開発し、六ふっ化ウランによる耐久試験を行なう。

 (ⅱ) 六ふっ化ウラン循環ループの開発
 軸流圧縮機の軸封、軸受けおよび回転翼、拡散筒等循環ループ構成要素の試験を進め、圧縮機、熱交換器、拡散筒等を組み込んだ六ふっ化ウラン循環ループ(圧縮機容量約200Kw配管直径約300mm程度)を試作する。また、このループの運転試験により、各構成要素の性能試験を行なうとともにシステムとしての運転性能の確認およびその改善を行なう。

(ⅲ) 関連技術の開発
 濃縮工程のシステム解析、システム制御技術、六ふっ化ウラン分析技術、六ふっ化ウラン耐食性新材料等の研究開発を行なう。また、以上の研究開発の成果を取り入れて、カスケードによる総合試験のために必要な設計を行なう。
(2) 遠心分離法
(ⅰ) 分離機構の開発
 各種分離機構の遠心分離機(周辺速度約350m/秒程度)を試作し、濃縮試験および長期耐久試験を行なうとともに、その信頼度の確認および最適分離機構の選定を行なう。

(ⅱ) 高性能遠心分離機の開発
 高速回転胴(周辺速度400m/秒以上)の成型加工技術ならびに非接触型軸封および軸受け(7~10万回転/分)の開発を行ない、超高速遠心分離機、二重円筒型遠心分離機および集約化遠心分離機の試作および運転試験を行なう。

(ⅲ) システム試験
 システムとしての運転性能の確認およびその改善のため、遠心分離機数台の組み合わせによる運転試験を行なう。

(ⅳ) 関連技術の開発
 濃縮工程のシステム解析、六ふっ化ウランの分離精製技術、原料六ふっ化ウランの製造技術等の研究開発を行なう。また、以上の研究開発の成果を取り入れて、カスケードによる総合試験のために必要な設計を行なう。

3.研究開発の体制

(1) ウラン濃縮研究運営会議の設置
 この研究開発の総合的かつ効果的な推進を図るため、原子力局に各実施機関の関係者および学識経験者からなるウラン濃縮研究運営会議を設けることとする。

(2) 研究開発の分担
(ⅰ) ガス拡散法の研究開発のうち、隔膜の製造技術の開発については民間企業に委託し、隔膜の特性試験については理化学研究所が実施し、六ふっ化ウラン循環ループの開発等その他の研究開発については日本原子力研究所が実施するものとする。

(ⅱ) 遠心分離法の研究開発は、動力炉・核燃料開発事業団が実施するものとする。

(ⅲ) なお、両方式の研究開発を推進するに当っては、可能な限り大学および民間企業の技術および人材の活用を図るものとする。


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