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IAEA6月理事会報告


 1969年度IAEA6月理事会は、6月10日から13日までの4日間、ウィーンのIAEA本部において開催された。当方からは、礒西原子力局次長が出席した。その概況は次のとおりである。


議題1 13回総会議題

 トルコ等低開発国から、非核保有国会議決議全体についてのレビューを総会で行なう必要があるとし、議題の追加要請がなされたが事務局案通り決定した。


議題2 1968年度決算 承認


議題3 理事会年次報告

 日本代表は、保障措置関係につき、事務局が、個々の非核保有国のみに対するモデル協定案を作成したことに反対し、その旨を記録にとどめることを要求した。また、南アフリカ代表は、「モデル協定」の問題に関する正式協議はまだ行なわれていないのであるから、その関係部会は削除すべきである旨発言し、それを、イタリア、オーストラリアが賛成した。インドは、核兵器不拡散に関する条約は発効していないが、その原子力平和利用に対する影響や、保障措置、安全保障は、既に広く討議されており、IAEAの任務に影響を与え始めていることをつけ加えるべき旨述べられた。


議題4 1970年度IAEA 予算

 ソ連、東欧諸国、低開発国等は、予算の増加率は大き過ぎるとして反対したが、結局、事務局案通り、承認された。
 各国の意見は、ほとんど保障措置に関するものに集中した。保障措置予算案については、米国、ソ連、英国が積極的に支持し、これに対してフランス、インド、イタリア、フィリピンがその増加に反対した。保障措置業務予算を検討する専門家パネルについては、事務総長がその開催の意向を表明し、ソ連を除くほとんど全ての国がその開催に賛成した。しかし、パネル開催を支持する意見の中には、今後の保障措置経費の増大が予想されることにかんがみ、その費用を現在の分担金から支出する形でなく、別途の負担方法をとるよう制度改正することをねらっているものが多かった。これは、一種の受益者負担の考え方を含むものであり、技術援助予算への圧迫に対する反発と考えられる。例えばフィリピンは、保障措置費用は、加盟国のGNP、全原子力施設の量および核兵器国内にある核燃料の量の三点を考慮して分担率を定めるべきである等の意見を述べた。


議題5 理事国の指名

 先進国の指名については、従来どおり日本を含む10ケ国、原料国の指名については、チェコおよびポルトガル、技術提供国の指名については、スエーデンを、それぞれ異議なく決定した。


議題6 政府間機関との関係 承認


議題7 国連機関への報告 承認


議題8 加盟申請 申請なし


議題9 非核兵器国会議決議

 低開発国から、技術援助に関する事務局案の内容に積極性が見られないこと、核物質の基金を創設すべきであること、大原子力施設の建設のための財政援助をすべきであること等の要求が出たが、これに対し、米国、英国、ソ連、カナダが反対意見を述べ、また事務局から従来の調査結果の説明等があり、結局事務局原案どおり承認された。


議題10 IAEA 憲章第6条

 米国から、(a)ad hoc委員会の報告について協力した加盟国に対して感謝をし、理事会議長に継続審議を要求する決議案および(b)ad hoc委員会報告を総会に提出することについての決議案の二つの決議案の提出があった。これに対し、セイロンから、今後の継続審議をできるだけ促進する等の内容を盛り込むよう修正要求が出され、各国の意見表明の後、(a)決議案については原案通り、(b)決議案についてはセイロン修正案に対するイタリア修正案を採用して決定した。


議題11 核爆発平和利用

 事務局案(ad hoc委員会に提出された原案と実質的には概ね同じ)をほぼ原案どおり決定した。


議題12 保障措置 承認


議題13 技術援助

 フィリピンから、技術援助のための資金拠出状況の詳細な表を作成すべきであるとの要求があり、これに対し、米国、英国、オーストラリアから反論がなされたが、結局は承認された。


議題14 炉計画 承認


議題15 事務総長の任命

 理事会代表のみの会合とし、事務局からは、ホール次長が出席して開かれた。議長からエクランド事務総長の再任の提案があり、承認された。ついで、事務総長の給与の増加を承認した。


議題16 科学諮問委員の任命

 現委員全員の解任および英国のペニイの後任としてクロンバーガーの任命を承認した。


議題17 事務総長報告

 フィリピンから、アジア地域協力計画に対してIAEAが十分な支持をするよう要請があり、また、南アフリカ連邦共和国から、第4回原子力平和利用国際会議の準備状況について報告するよう要請があり、報告をテークノートした。


議題18 会議予定

 イタリアから、理事会開催時間を午後とすること(原案は午前)および9月理事会における議題に憲章6条を再検討することを追加することについて要請があり、承認された。イタリアの要請は、議題10の審議においてイタリア、セイロン、フィリピン等が総会前に再びad hoc委員会を開催するよう要望していたことに関連し、午前中にad hoc委員会を開催することを含みとするものと考えられる。


議題19 職員俸給

 米国、ソ連から予算節約によって財源をねん出するよう要望があり、これに対し、インド、フィリピンから技術援助関係費からは節約せぬよう要望があり、結局、原案どおり承認された。



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