内閣総理大臣の定めた、動力炉開発業務に関する基本方針および第1次基本計画、昭和44年度原子力開発利用基本計画ならびに昭和44年度核原料物質探鉱計画にしたがい、昭和44事業年度事業計画を次のとおりとする。

　Ⅰ　動力炉の開発

1　高速増殖炉の開発

（1）　実験炉の設計および建設
　前年度に引き続き、実験炉の詳細設計をすすめる。また、これに基づき48年度前半に臨界に達することを目標として、実験炉の建設に着手する。

（2）　原型炉の設計研究
　原型炉の第1次設計研究をすすめるとともに、これに必要な核設計、動特性解析等に関する設計コードの開発を行なう。

（3）　研究開発

（ⅰ）　炉物理
　日本原子力研究所の高速臨界実験装置を使用して、プルトニウム燃料による実験炉炉心の部分モック・アップ試験を行なう。また、45年度に、全モック・アップ試験を行なうため、燃料の入手等の準備をすすめる。

（ⅱ）　主要機器、部品
　炉体構造部の主要構成機器等の試作開発を行なうとともに、これら機器等を試験するためのナトリウム機器構造試験装置（ナトリウム中大型機器試験装置）の建設をすすめる。
　また、炉体の部分的な構造等についての研究開発および蒸気発生器についての基礎的研究を行なう。

（ⅲ）　ナトリウム工学
　ナトリウム流動伝熱試験装置およびナトリウム機器材料試験装置の製作を完了し、ナトリウム回路の総合試験、ナトリウム中での材料の熱荷重試験等を行なう。
　また、燃料要素の流動伝熱試験を効率的に行なうため、ナトリウム流動伝熱試験装置の増設に着手する。このほか、ナトリウムの分析技術の開発を引き続きすすめるとともに、ナトリウム中の核分裂生成物の挙動についての研究に着手する。

（ⅳ）　燃料、材料
　混合酸化物燃料ピンの製造技術の開発、燃料集合体、燃料被覆材等の試作開発、各種試験およびこれらの検査技術の開発等を行なう。
　また、試作燃料等の一部についての照射試験、α-γケーブの建設を引き続きすすめる。

（ⅴ）　しゃへい、計測制御
　高速中性子しゃへい体に関する研究、各種計装機器の試作開発、試験等を引き続き行なうとともに、炉心プラントの動特性解析を行なう。

（ⅵ）　安全性
　炉格納容器のモデル試験、再臨界事故時のプルトニウム等の挙動を調査するための試験等を行なうほか、ナトリウム過渡沸騰試験施設等の建設をすすめる。

　2　新型転換炉の開発

（1）　原型炉の設計研究等
　前年度に着手した第2次設計研究を終了するとともに、設計コードの開発、海外からの技術情報の購入等を行なう。
　また、本年度実施される原型炉の建設に関する評価、検討に備えて、これに必要な資料の整備等を行なう。

（2）　研究開発

（ⅰ）　炉物理
　民間の軽水臨界実験装置により、濃縮ウランおよびプルトニウム燃料を用いて、二領域臨界実験を行なうほか、重水臨界実験装置により、臨界実験を開始する。

（ⅱ）　伝熱、流動
　日本原子力研究所の小型ループにより、模擬燃料を用いて、伝熱、流動試験等を行なう。
　また、大型熱ループの建設を完了し、これにより、燃料の伝熱試験に着手する。

（ⅲ）　主要機器、部品
　圧力管と異種金属の接合部、シールプラグ等の主要部品の試作開発および各種試験を行なうほか、制御棒駆動装置の試作開発等を行なう。
　また、コンポーネント・テスト・ループの建設を完了し、これにより、燃料集合体および圧力管集合体の耐久試験を開始する。

（ⅳ）　燃料、材料
　燃料集合体の試作開発をすすめるとともに、試作燃料集合体および圧力管について、各種試験検査を行なうほか、試作燃料、圧力管材料について照射試験等を行なう。

（ⅴ）　安全性
　原型炉の安全解析を引き続きすすめるとともに、一次冷却系内部破断実験、一次系の振動実験を行なう。
　また、一次冷却系外部破断実験、カランドリヤ管冷却試験等を行なうため、その装置の製作に着手する。

3　共通施設の整備

　プルトニウム燃料施設の増設を引き続きすすめるとともに、燃料、材料の試験、検査に必要な諸施設の整備を行なう。
　また、大洗地区の研究施設の建設工程に合せて、研究管理棟、変電設備等の整備をすすめるほか、日本原子力研究所と共同で、那珂川からの取水工事等をすすめる。

4　研究開発の計画管理等

　動力炉の研究開発プロジェクトを適確に遂行するため、研究管理体制の整備をすすめるとともに、科学的な計画管理を行なう。
　また、動力炉開発の効率的促進をはかるため、業務委託等により、日本原子力研究所、民間、学界等の諸機関の協力を得るとともに、海外との技術情報の交換、研究技術者の交流等を積極的に行なう。

　Ⅱ　核燃料の開発

1　核原料物質の開発


（1）　国内探鉱
　東濃地区において、鉱量の増大をはかるため、主として試すい探鉱を行なう。また、同地区周辺、山陰および北九州、福島県東部等において、鉱床の追跡ならびに新鉱床の発見のため、地表調査、試すい探鉱等を行なう。

（2）　海外調査
　カナダ等の海外の有望地域において、ウラン鉱床の調査等を行なう。

（3）　採鉱、製錬
　人形峠鉱山において、45年度より鉱石処理量1日当り約50トンの規模で採鉱から粗製錬に至る一連の操業ができるよう必要な整備を行なう。

2　核燃料の技術開発および金属ウランの生産

（1）　熱中性子炉用プルトニウム燃料の開発
　プルトニウムの在来の熱中性子炉への利用技術を開発するため、混合酸化物燃料の照射試験、炉物理実験等を日本原子力研究所との協力のもとにすすめる。

（2）　ウラン濃縮の研究開発
　前年度完成した第3号遠心分離機を使用して、ウラン濃縮試験を開始するとともに、別の機構の遠心分離機の製作に着手する。

（3）　再処理に関する研究開発
　再処理の化学工程、廃棄物の処理、高燃焼度燃料の再処理等について、研究開発をすすめる。

（4）　燃料の検査
　燃料集合体の検査技術の開発をすすめ、燃料検査法の基準化につとめるとともに、試作燃料等の検査を行なう。

（5）　金属ウランの生産
　回収したイエローケーキ等を処理して、約4トンの金属ウランを生産する。

　Ⅲ　使用済燃料の再処理

1　再処理工場の建設

　工場建設に必要な諸条件が整い次第、工場の建設に着手し得るよう諸準備をすすめる。

2　海洋調査

　低レベル放射性廃液の海中における挙動等の調査研究を引き続き外部機関との協力のもとに実施する。

　Ⅳ　安全管理

　災害の防止のため、保安施設の強化および保安教育の徹底をはかり、安全管理を強力に実施する。
　これらの諸事業を遂行するため、支出予算約166億円、債務負担行為限度額約226億円を予算に計上する。また、年度末役職員定数を1,031名とする。