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昭和44年度
原子力平和利用研究委託費交付概要


1 原子炉耐圧部の脆性破壊伝播防止に関する試験研究

(社)日本溶接協会


(研究目的)
 米国原子力委員会が発表した原子力発電所認可のための一般設計基準では、原子炉冷却系圧力バウンダリーは急速な伝播型破損の確率を最小にするように設計されねばならないことがうたわれており、従来問題にしていたNDT温度に加えて、シャルピー遷移曲線の上部だなにまでおよぶ材料の切欠靱性が追加要求されている。また「ASME基準で造られた原子炉圧力容器の暫定補足規制基準」においても従来より厳しく脆性破壊に対する安全性が要求されている。
 本試験研究は原子炉圧力容器用鋼材として使用されるASTM-A533B Class1(200mm厚)とその溶接継手金属、およびこれらが照射脆化によってシャルピーカーブの上部だなエネルギーが低下し、さらに脆性遷移温度が上昇して行く状態を第1近似すると考えられる関連鋼材4種(27mm厚)を供試材として、各種の脆性破壊伝播防止特性の判定試験を行ない試験結果相互間に存在する相関性や破壊力学的評価を行なって、わが国の基準を作成するための基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)
(1) 供試材の準備
 200mm厚ASTM,A533B,Class1規格材の母材に応力除去焼鈍を施す。また母材にⅠ型に近い開先を機械加工し、裏当金を使用して適正条件でサブマージドアーク溶接を行なって溶接継手を完成後母材と同条件の応力除去焼鈍を施す。さらに27mm厚の中炭素粗粒鋼圧延材、炭素鋼圧延材(C:約0.15%)、A533B鋼圧延材、80HT圧延材の計4鋼種の母材を供試料とする。

(1) 低温引張試験
 母材ならびに溶接金属の低温における引張特性を明らかにするために12本づつの試験片について低温度で引張試験を行なう。

(2) 標準シャルピー試験
 基本的な実用試験値であるシャルピー遷移曲線を求めるため、標準Ⅴノッチおよびプレスノッチシャルピー試験を20本づつ行なう。

(3)NRL落重試験
 NDT温度を求め他の試験結果との相関を求めるため低温における4点以上の温度で落重試験を実施する。

(4) DWTT試験
 米国海軍技術研究所で開発され最近重要視されているDWTT試験による遷移曲線を求め、他の試験結果との相関を求める。

(5) WOL試験
 米国WH社で開発されたWOL試験による脆性破壊特性を求め、他の試験結果との相関性を明らかにする。

(6) 大型シャルピー試験
 大型プレスノッチシャルピー試験による脆性破壊特性とDWTTなどの他の結果との相関性を明らかにするため、低温において衝撃験試を行ない遷移曲線を求める。

(7) 切欠曲げ試験
 プレスノッチにさらに窒化処理を施したノッチから発生伝播する脆性破壊挙動を評価し、その脆性遷移温度とDWTTなどの他の試験結果との相関を求める。

(8) 二重引張試験
 脆性亀裂伝播阻止特性を求めるものとして、わが国で広く行なわれている温度勾配型二重引張試験を実施し、これによって得られた阻止温度とDWTT試験その他によって求められる温度との相関についての検討を行なう。


2 原子炉施設の建物、機器および配管系の
地震時における振動特性に関する試験研究

(社)日本電気協会


(研究目的)
 原子力発電所の原子炉建屋及びその中に据付けられている機器配管系は立地地盤の特性も加わり複雑な振動系を構成するので、その安全設計のために動的耐震設計法を確立することが必要である。このため43年度には「地盤-建物-機器-配管」を一連の系とした模型構造物をつくり自然地震(松代群発地震)による振動特性の解析を行なった。しかし、観測条件をいろいろ取入れたため観測機会の多い微弱地震を対象に記録をするように計器の感度をセットしたため、期間中に発生した強い地震はスケールオーバして記録ができなかった。
 本試験研究では観測条件を統一し、強い地震を主体に観測を行ない、前年度の試験研究結果と合せ動的耐震設計法の確立に資することを目的とする。

(研究内容)
 前年度建設した施設を利用して下記の試験研究を実施する。

 1 自然地震の観測および実験

(1) 試験地盤および基礎試験体
 硬軟両地盤の特性が強い地震の際に建物へ及ぼす影響を調べる。

(2) 建物試験体
 強い地震での振動系モデルの相対加速度応答および絶対加速度の計算、実測応答記録との対照および検討、地震動による振動モードの対照および検討を行なう。

(3) 機器系試験体
 強い地震の際の応答計算値と実測応答記録との比較検討を行なう。

(4) 配管系試験体
 支持条件、減衰要素をいろいろ変更させて、2入力系としての計算値と実測値との比較検討を行なう。

(5) 多入力系の試験体
 多入力系の理論的解析方法による値と観測値との比較検討を行なう。

 2 強制振動試験
 強震時観測がある程度成果を得た後、強制振動試験を実施し、前年度の結果と比較し、地盤の経年効果等を検討する。

 3 解析および評価
 微弱地震および強い地震の際の理論的解析と実験観測資料との比較検討を行ない、両者間の妥当性を確かめるための基礎資料をとりまとめる。



3 原子炉フィルタの現場試験法に関する試験研究

(社)日本空気清浄協会

(研究目的)
 原子力発電所に設置される原子炉フィルタは、原子炉等の事故時に核分裂生成物が格納施設外に排出されるのを防止するための安全防護設備のひとつであり、環境の安全確保のために極めて重要なものである。
 原子力発電所の建設は最近急激に増加しており、さらに今後発電所の大型化、人口稠密地への建設が予想されるにも拘らず原子炉フィルタ設置後の検査基準は何ら進展していない。
 本試験研究は原子炉フィルタの設置後の性能を設置現場において実用検査する方法について研究するものである。

(研究内容)
 試験研究の対象として高性能エアフィルタ(微粒子・粉じん用)および活性炭フィルタ(ガス用)を対象とし、次の試験を行なう。

(1) 高性能エアフィルタについては、DOP発生装置により低蒸気圧を有する液体を試験粉じんとして発生させ、供試フィルタ4個を並列に取付けたダクト内に流入させる。試験粉じんの濃度は光散乱光度計を用いて測定する。また炉材にピンホール、取付けフランジにリーク個所をつくり、この効果について検討する。

(2) 活性炭フィルタについては、試験ガスとしてハロゲン系ガスを用い、供試フィルタ4個を並列に取付けた状態でフィルタの上下流におけるガス濃度をガスクロマトグラフおよびハロゲンリークディテクタにより測定する。試験(1)と同様に炉材ピンホールおよびフランジリークのモデルをつくり、その効果を検討する。
 また放射性ヨウ素および放射性ヨウ化メチルを試料ガスとして同じ試験を行ない、ハロゲン素ガスについて得られたデータと比較し、その相関を求める。



4 中性子線の遮蔽に関する試験研究

大成建設(株)

(研究目的)
 粒子加速器および中性子線源の各種測定への応用は、近年増大してきており、これら装置の数も増加しつつあるので、装置遮蔽の技術的基準の確立は緊急の課題となっている。
 比較的低いエネルギーの中性子線に関しては、原子炉の遮蔽研究等で資料は豊富であるが、高エネルギー中性子線に関しては、実験データも少なく得られた結果も広範囲にばらついている。
 本試験研究は、中性子線発生装置・中性子線源装置の遮蔽設計基準の基礎資料の提示を目的とする。

(研究内容)

(1) 中性子線の遮蔽に関する試験研究

(a) 中性子線遮蔽材の遮蔽性能に関する試験研究
 ヴァン・デ・グラーフ装置および中性子線源、(Ra-Be、Am-Be)を用い、遮蔽材の遮蔽性能を実験する。

(b) 中性子線遮蔽材の散乱に関する試験研究
 ヴァン・デ・グラーフ装置を用い、中性子線のエネルギー、入射角をかえ、遮蔽材の散乱に関する実験を行なう。

(c) 材料の放射化に関する試験研究
 装置および施設に利用されている主要材料に関し、放射化の実験を行なう。実験は小型サンプルを作製し、放射化の程度を測定する。

(2) 実態調査
 当該装置に関する許可申請書に基づく装置、遮蔽計画、利用計画、全体配置計画および建築設備計画を調査整理する。アンケートにより利用の現状を調査し、国内国外の当該装置についても調査を行なう。
 また、中性子発生施設について、中性子線量分布の実測を行なう。



5 使用済核燃料輸送容器の落下衝撃に関する試験研究

(社)日本機械学会

(研究目的)
 使用済核燃料輸送容器(以下キャスクと云う)に関する事故評価および安全性確立が国内的にも国際的にも重要な課題になってきた。このため43年度においては1/2縮尺のキャスクの落下試験を行ないうる落下装置を建設し、縮尺1/8、1/16模型により落下試験を行なった。
 本試験研究においては1/2縮尺までの落下試験を行ない、縮尺間の破損の相似性、試験条件のパターンを検討し、キャスク構造の安全性を評価する際の基礎資料を得ることを目的とする。

(研究内容)

(1) キャスクの設計および製作
 キャスクの形状は円筒横置型、構造は胴部、端部とも鋼板に鉛を鋳込んだものとし、つぎの大きさ、個数を設計、製作する。

1/2縮尺(約10t)  1個

1/4縮尺(約1.25t) 2個

1/8縮尺(約150kg) 3個


(2) 落下衝撃試験
 各縮尺のキャスクについて、高度9mの落下を主体として試験を行なう。
 キャスクにはあらかじめ加速度計測に必要な変換器を装置し、落下時の衝撃状況を把握し、さらに落下後の変形を計測する

(3) 結果の検討
 上記試験結果を総合的に検討し、構造的な安全性の評価に必要な基礎的データ、とくに落下衝撃効果と模型縮尺との関連性を求める。



6 原子炉パルス運転による燃料特性の測定に関する試験研究

(株)日立製作所

(研究目的)
 原子炉の事故解析においては、燃料破損に対する許容限界を正しく設定することが必要であり、米国原子力委員会の原子力発電所一般設計基準のなかで基準6(原子炉の炉心設計)としてこれが示されている。燃料破損に対する許究限界を設定するためには、破損燃料の振興について十分な知見をえておくことが必要である。
 本試験研究は軽水冷却型原子炉の安全評価をするうえで重要な過渡出力時の燃料破損基礎特性を実験および解析によって究明し、燃料破損限界を設定する際の資料をうることを目的とする。

(研究内容)
 原子炉出力を繰返してパルス状に発生させ、供試燃料棒の急速過熱時に破損の要因となる諸因子を解明する。

(1) 繰返しパルス運転のための準備
 HTR炉心中央部分に、中空状炉心を構成し、投入反応度1.2%Δk/k、反応度連続投入回数2回以上、設定投入時間間隔約1分でパルス運転を実行するときの炉心特性の変化状況を理論計算によって推定し、必要な安全対策を講じて繰返しパルス運転を行ないうるように制御系の改造を行なう。

(2) 特性測定
 炉心の中空部に供試燃料棒をモニター燃料として挿入する。炉心静特性を測定したのち、繰返しパルス運転を行ない、炉出力、炉周期、燃料温度、被覆管歪、水中放射能などを測定する。
(3) 解析計算
 繰返しパルス運転時の動特性を解析するとともに供試燃料棒の温度的な特性を解析する。



7 放射性ヨウ素の保健物理的安全性に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)
 原子炉等の事故時に放射線障害の面から重要な問題となるのは放射性ヨウ素である。しかし、ヨウ素については、その化学形態や特に自然環境下での挙動に不明の点が多い。これに対し実験室規模では多くの成果があがっているが自然環境下にこれを応用することは問題がある。このため、本試験研究はできるだけ自然条件下を模似した形での検討を目的とする。

(研究内容)

(1) チェンバ内で空気汚染濃度と地表面および指標物質へ沈着する放射性ヨウ素の放射能を測定しその相関を求める。また自然環境中での移行過程における放射性ヨウ素の化学形態、拡散吸収の機構を迅速に把握するために簡易測定法を検討する。

(2) 高湿にしたチェンバ内の汚染空気を昭和43年度に開発したサンプラおよび連続モニタによる捕集および測定を行なうことにより捕集効率のサンプリング時間に対する依存性を調べる。また高湿度の空気にされされた捕集エレメントについて捕集性能の変化を調べる。
(3) チェンバ内におかれた各種環境試料等の放射性ヨウ素の迅速分析法として同位体交換抽出法等を検討する。



8 舶用炉用圧力抑制格納方式に関する試験研究

(社)日本造船研究協会

(研究目的)
 小型、軽量を要求される舶用炉の格納方式として、一次冷却材流出事故時の格納容器内の圧力上昇を抑えまた放射性ガスの外部への拡散を防止する湿式圧力抑制方式が最も期待されている。この方式には、ドライウェルを設けるもの、水あるいは氷づけ等の形式があるが、何れも舶用としての研究開発はほとんど実施されていない、従って、これらの各型式を舶用として開発し、その性能、有効性を検討するためには、先づその基礎的な諸問題を解明する必要がある。
 本試験研究は、これらの基礎的問題の一部を実験により解明し、今後の研究開発および各方式の評価のための資料を得ることを目的とする。

(研究内容)

(1) 空気を混在する水蒸気の水中における凝縮に関する実験研究ドライウェルを備える圧力抑制格納方式に関し、事故時にドライウェル内で空気と混合した水蒸気がベントチューブを経て圧力抑制室内の水中で凝縮する場合の保有水の利用効率、船体傾斜を考慮したベントチューブの位置、長さ、保有水量の決定等のための資料を求める。

(2) 密閉容器中への加圧水の流出に関する実験研究
 事故時に一次系の高温高圧水がドライウェル内の空気中(ドライウェル方式の場合)あるいは直接格納容器内の水中(水づけ方式の場合)へ流出する場合の諸現象を実験により適確に把握し、各種パラメーターの効果を解明する。



9 軽水炉におけるプルトニウム混合炉心の燃焼度特性に関する研究

日本原子力事業(株)

(研究目的)
 軽水炉へのPuの直接代替方式の技術開発は重要な問題であるが、新しい核データーおよび計算法による軽水炉Pu混合炉心の核設計の系統的な研究はない。そこで最近の実規模軽水炉炉心にPuをリサイクルさせる時に起る問題のうち、出力分布および燃焼度に重点をおいて解析を行ない、Puを炉心に装荷した場合に生ずる核設計上の問題点を解明し、Puの有効利用についての技術の向上に資することを目的とする。

(研究内容)

(1) 計算準備
 Pu格子系に特有な炉物理的問題を考慮できるように、Puの核データーおよび計算コードの整備を行なう。

(2) Pu燃料集合体のPu富化度分布の決定
そのほとんど全部がPu燃料からなる集合体およびその1/4程度がPu燃料からなる集合体の出力分布、初期反応度などを考慮して、集合体内各燃料棒のPu富化度を決定するための計算を行なう。

(3) PuO2-UO2混合炉心の二次燃焼度計算
 ほとんど全部がPu燃料からなる集合体およびその1/4程度がPu燃料からなる集合体を用いて、炉心全体ではPu燃料が1/4程度装荷されたもの、燃焼に伴なう出力分布の変化や反応度変化を計算し、その燃焼特性から、Puをリサイクルさせた時の軽水炉へのPu利用の有効性を検討する。



10 軽水炉集合体内プルトニウム装荷方式の解析評価に関する研究

(株)日立製作所

(研究目的)
 軽水炉の建設基数の増加に伴ってPu蓄積量は、当初の予想を上回る傾向を示しており、これの有効利用を燃料サイクルの面から検討することが急がれているが、軽水炉に対するPuリサイクルの可能性と問題点の系統的な評価はこれまでほとんどなされていない。
 このため軽水炉にPuを装荷した場合の炉心設計上の問題点を明確にし、Puリサイクルの方策を評価して、燃料集合体の構造やPuの分布の方法などのPu装荷方式を確立することを目的とする。

(研究内容)

(1) 計算方式の確立
 Pu装荷炉心に対する炉心設計計算の精度を把握し、計算方式を確立するために、つぎの項目について研究を実施する。

(a) 核断面積の評価……Pu同位元素を主体として熱エネルギー領域の吸収、分裂断面積および共鳴パラメーターについて再評価する。

(b) 計算法の改良……熱中性子領域にPu共鳴が含まれることによるスペクトル計算の精密化および240Puの巨大な共鳴レベルに対する理論的取扱いの改良を実施する。

(c) 計算精度の把握……(a)(b)で作成された計算方式の精度を確認するためにPu装荷炉心に対して行なわれた炉物理実験を解析する。

(2) Pu装荷方式の評価
 Pu装荷炉心に対する炉心特性への影響を検討し、Puの燃料集合体内装荷方式を評価する目的で、パラメトリックサーベイを実施する。パラメーターとしては次のものを考える。(ⅰ)Pu同位元素組成比、(ⅱ)燃料棒直径、(ⅲ)燃料対減速材体積比、(ⅳ)Puの集合体内分布方式。さらに動特性パラメーター、制御棒反応度についても検討し、反応度係数と合せて安全性への影響を評価する。

(3) 最適炉心評価
 上記検討の結果定められたPu装荷方式について燃料サイクル評価のための基礎データーとなる最適炉心の評価を行なう。



11 ウラン濃縮用隔膜に関する試験研究

理化学研究所

(研究目的)
 わが国で開発すべきウラン濃縮方式を決定するために必要な技術的可能性および経済評価に関する資料を昭和47年度までに得ることが要請されている。気体拡散法において、とくに検討を必要とするものは、分離隔膜とガス圧縮機の製造方法である。本研究は分難隔膜の製造に関する基礎資料を得ることを目的としている。

(研究内容)

(1) 3段型定圧式分離装置の試作
 3段型定圧式分離装置を試作し、種々の圧力における隔膜の分離係数の測定に必要なカスケードの動作試験を行なう。

(2) 隔膜の六フッ化ウランに対する耐蝕試験
 試作した種々のパイプ状隔膜を通して六フッ化ウランを拡散させる試験を長時間にわたって行ない、隔膜の六フッ化ウランに対する耐蝕性を調べる。

(3) 1気圧以上におけるアルゴン同位体分離試験
 0.3気圧以上におけるウラン同位体分離効率を推定するための予備実験として、1気圧以上においてアルゴンを拡散させる試験を行なう。



12 放射性廃棄物海洋投棄における廃棄物固化体からの
放射性核種の溶出と環境での移動に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)
 放射性廃棄物の海洋投棄を行なう際、環境汚染を防止するため固化体の安定度の増加を図り、また固化体からの放射性物質の溶出率低減を図らねばならない。このため、本試験研究はアスファルト固化体とセメント固化体の安定度と溶出率に関する検討を行ない、また60Coを使用して食用海産生物への濃縮係数や代謝に関するデータを得ることを目的とする。

(研究内容)

(1) 高水圧下における放射性物質の溶出に関し、アスファルト固化体とセメント固化体との相対効果を各小型試料を作成し100~400Kg/cm2の人工海水圧力下に浸漬して混合率、混合方法、補助剤の影響を比較検討する。

(2) 固化体試料の安定性に関し、固化体の種類、固化方法などが高水圧下にある固化体に損傷を与える状況、原因を検討する。

(3) 魚が汚染された餌をとりこむことによる放射性核種の転移を、飼育実験により餌の種類および投餌回数を変えて調査する。また、海水中の放射性核種のとりこみとも比較する。



13 特定微量指標核種の系統分離分析法に関す試験研究

(財)日本分析化学研究所

(研究目的)
 原子力の平和利用は各方面において盛んとなってきたが、これに伴って放射性物質による環境汚染の評価の基礎となる分析測定技術の早期確立が必要となってきた。しかし海域の放射性物質による汚染の評価は極めて低濃度であるため多量の試料を処理しなければならないことと、場合によっては限られた量で数多くの核種を測定しなければならない等、困難は問題がある。このため、本試験研究はより簡易迅速な系統分離分析法を開発することを目的とする。

(研究内容)

(1) 試料は200lずつ15試料、海底土は5Kg以上10試料、海産生物は10Kgずつ種別で10種類程度とする。

(2) 指標核種の系統分離濃縮法は核種ごとに検討し、次に同一資料から各々の核種を系統的に分離濃縮する方法を検討する。また、天然の放射性核種の汚染による影響の有無を調べる。

(3) 放射能測定時における測定試料の厚み、形状等による計数効率および有効測定時間等の問題について検討する。

(4) 放射能測定時における計数値補正として指標核種の安定同位体の存在量を知る必要があるので、吸光光度法および原子吸光光度法により対象試料中の、P Cr Fe等について定量分析をおこなう。



14 原子力施設用呼吸用保護具に関する試験研究

(社)日本保安用品協会

(研究目的)
 原子力施設用呼吸用保護具は原子力開発の進展に伴いその必要性が増加している。現在使用されている保護具も使用状況によってその選択、使用方法等をあやまれば所定の性能を確保し難い。このため本試験研究はマスクのフィットネスについて基礎となるデータを得るために国産および外国製品保護具の実験的検討を加えることを目的として行なう。

(研究内容)
(1) プラスチック製頭ガイ骨を内臓して人体と相似の硬さをもつ人口ゴム製ダミーに、呼吸のピッチと量が可変で人間の呼吸と同じパターンでダミーに呼吸を行なわせる呼吸装置をつなぎ、85mkrをテストガスに使用して、国内外のマスクに関し、100人以上の成人につき、全洩れ率を尺度として、適合試験をおこなう。

(2) 面体の洩れ試験について、(1)の装置を用いガス法(フレオン12,85mkr)、エアロゾル法(ウラニン法、DOP法、DY放射化分析法)の比較検討を行なう。

(3) 呼吸用保護具着装時の生理的不快さについて、人間工学的見地より検討する。



15 放射線障害回復促進物質に関する試験研究

(社)日本放射性同位元素協会

(研究目的)
 放射線障害の回復現象の存在は、分子、細胞および個体の各レベルで確認されている。放射線被曝後の治療法は、骨髄障害のときの骨髄移殖法を除いては、細胞、個体の回復機能を促進させる以外手段がない。このため、本試験研究は、回復機能促進の諸因子を分析整理し、回復効果を与えると推定されるいくつかの回復促進因子の組合せをつくり、その効果をマウスを用いて検定し、障害の薬物的治療法を見出すことを目的とする。

(研究内容)

(1) 細菌ならびに細胞を用いて、回復促進物質の性質、抽出法を検討し、細胞での回復促進に最も有効な物質の検討を行なう。

(2) 魚類ならびにマウスを用いて個体レベルでの回復を促進すると考えられる因子の分析を行なう。また細胞レベルで有効と判定された回復促進物質を投与し、個体の死よりの回復を指標として、これら物質の効果を検討する。

(3) 個体での生存に対する回復効果を総合的に判定するためにマウスを用いて致死線量を照射後、回復促進物質を投与し、長期間での生存率を指標として治療法としての効果を判定する。



16 馬鈴薯、米、小麦、およびウィンナ・ソーセージに対する
放射線照射効果に関する試験研究

(株)日本放射性同位元素協会

(研究目的)
 原子力委員会の開発基本計画にもとずく食品照射計画によりこれまで馬鈴薯、玉葱および米について照射効果を検討したが、発芽抑制の目的で照射した馬鈴薯で組織黒変化の事例が見出され、その防止が急務となった。また食品照射計画の今年度段階として予定される小麦の殺虫およびウィンナ・ソーセージの殺菌については、わが国の実際に即した照射効果の具体的データが必要である。このため、本試験研究はこれら諸点と未だ資料のない米の有機酸の変化をとり上げ、食品照射の実用化に貢献することを目的とする。

(研究内容)

(1) 馬鈴薯を収穫後3ケ月間室温貯蔵し、この間一定期間ごとに10kradの照射を行ない、照射後は4℃、10℃および室温に貯蔵して黒変発生の条件を調べ、かつ黒変発生に関連する呼吸および細胞変化を究明する。

(2) 20および40kradの照射を行なった米の低級脂肪酸類を分析し、品質変化を明かにする。

(3) 輸入および国内産原麦に25および50kradの照射を行ない、照射直後ならびに2ケ月後に分析測定を行なって、脂質、アミノ酸、アミラーゼおよび微生物群の変化を明らかにする。

(4) スモークした、およびスモークしないソーセージに250および500kradの照射を行ない、5℃および室温で2~4週間貯蔵して、脂質、アミノ酸、蛋白質、香気成分の分析を行なうとともに微生物群の変化を測定し、さらに腐敗細菌類の放射線感受性を検討する。



17 核燃料物質のオンラインにおける自動計量記録に関する試験研究

古河電気工業(株)

(研究目的)
 核燃料加工施設の査察に対して、加工工程途上の核燃料物質の計量結果の信頼し得る証拠が記録されることが必要である。このためには、オンラインにおける核燃料物質の完全自動計量による記録化が望ましいと考えられる。
 本試験研究では、核燃料物質をオンラインにおいて自動計量し、かつその結果を自動記録する装置を開発することによって、核燃料加工施設に対する合理的な査察技術の開発に資することを目的とする。

(研究内容)
 UO2ペレット加工の最終工程であり、かつUO2を直接計量し得る最後の機会であるスタック組立工程をとりあげ、この工程における計量を完全に自動化しこのラインを通過するペレットの秤量結果の積算値がタイプアウトされる装置を開発する。
 本装置はペレットの連続移送機構、測定ヘッド及び演算制御部、記録部をもって構成し、最終的には各測定ヘッドを取付け、各部が個々に完全に動作するよう調整する。電気的制御の未端機構についても同様に調整する。また本装置の設計に先立って予備実験により、最適の方式を決定し、これに従って信号コード変換装置部を設計製作する。組立てた装置については、長時間試験を行なって、実際に円滑に動作し、全装置が異常なく動作することの確認試験を行なう。



18 フロー方式に基づいた燃料加工施設の計量管理システムに関する試験研究

三菱原子力工業(株)

(研究目的)
 核燃料加工工場における二酸化ウラン核燃料物質の計量管理方式はロット方式とフロー方式に大別して考えられる。本試験研究は計量管理システムに関する研究として、昭和43年度に行なったロット方式の研究にひきつづきフロー方式による計量管理システムを確立し、ロット方式と比較検討することを目的とする。

(研究内容)
 核燃料加工施設としてUO2燃料施設内の加工工程を分析し、加工施設を数個のマテリアル・バランス・エリアに分割し、各バランスエリアでのロス率、スクラップ率を仮定し、各エリアの入口と出口にチェックポイントを設ける。このポイントを通過する核燃料物質を計量することにより、各エリア内に滞留している核燃料物質の滞留量を推定する管理システムコードを開発する。
 さらに各種ロス率、スクラップ率及び各チェックポイントでの秤量値に仮想の数値を設定して上記管理システムコードで計算し、その得られた結果とロット方式に基づいた管理システムで得られた結果とを比較検討し、両方式についての適用性を検討する。



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