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特殊核物質所有方式について


昭和43年7月10日
原子力委員会

 当委員会は、昭和36年9月11日、特殊核物質(濃縮ウラン、プルトニウムおよびウラン233。以下同じ。)以外の核燃料物質について民間にその所有を認める旨の決定を行なったが、その後の民間における原子力発電計画の急速な進展等を考慮して、昭和41年9月12日、日米協力協定更改についての決定に際し、特殊核物質の民間所有を認める方針を決定した。

 この方針に基づき、今般の新日米協力協定の批准を機に、昭和43年7月15日以降特殊核物質についても民間にその所有を認めるものとする。

 なお、国が民間に賃貸している特殊核物質については、所要の経過措置を講ずるものとする。

 (説明)
1 当委員会は、昭和38年4月4日、原則として民間に核燃料物質の所有を認めない旨の決定を行なったが、その後内外における諸条件が整うに従い、昭和36年9月11日、特殊核物質(濃縮ウラン、プルトニウムおよびウラン233。以下同じ。)を除く核燃料物質については、民間にその所有を認める旨の決定を行なった。

2 その後、わが国における原子力平和利用の進展はめざましく、民間電気事業各社による濃縮ウラン使用の商業用動力炉の設置計画が相次いで発表されるとともに、このための燃料体の加工事業も国内で行なわれようとしている。

3 これらに伴って、原子力平和利用に関する知識、経験は一層深められ、また、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」を中心とする国内管理体系も一層整備された。

4 他方、米国においては、民間原子力産業の自主的進展をはかるため、米国原子力委員会は、既に特殊核物質の民間所有を認めている。

5 このように、特殊核物質の民有化を制約している諸条件が解消しているのみならず、原子力平和利用が民間企業を中心として進められようとしている状勢にかんがみ、特殊核物質についても、できるだけ早い時期に民間にその所有を認め、民間企業による経済活動を活用して行くことが今後のわが国の原子力平和利用を推進する上においてより効果的であると考えた。

6 このような事由により当委員会は、昭和41年9月12日日米協力協定更改についての決定に際し、特殊核物質の民間所有を認める方針を決定し、わが国民間人が濃縮ウランの購入契約、賃濃縮契約等について、米国原子力委員会または米国民間人と直接取引が行なえるよう所要の措置を講ずる旨の決定を行なった。

7 昭和43年7月9日に批准された新日米協力協定は、その第6条B項において、特殊核物質の移転およびこれに関連する役務の遂行について、いずれか一方の当事国政府又はその管轄の下にある認められた者と他方の当事国政府の管轄の下にある認められた者との間で取極ができる旨を規定している。

8 上記の経緯にかんがみ、昭和43年7月15日以降特殊核物質についても民間にその所有を認めることとするものである。

9 特殊核物質の民有化に伴い、その購入契約、賃濃縮契約等については、民間人が契約当事者となり相手側と直接取引を行なうこととする。

 ただし、米国原子力委員会から入手する少量の研究開発用特殊核物質の取扱いについては、別途定めるものとする。

10 民間に対して国が賃貸している特殊核物質については、下記のとおり取り扱うものとする。
(1)昭和43年7月14日までに国が購入し、民間に賃賃しているものについては、従来どおり賃貸を継続するものとする。

 ただし、民間からの要望があれば売却するものとする。

(2)昭和43年7月14日までに国が米国原子力委員会から賃借し、民間に賃貸しているものについては、従来どおり賃貸を継続するものとする。

 ただし、転用などに際し、米国原子力委員会が買取を要求する場合は、民間がこれを買取るものとする。

(3)昭和43年7月15日以降わが国に到着するものであっても、国庫債務負担行為などにより国が購入し、民間に賃賃することになっているものについては、国の所有とする。

(4)国が民間に賃貸している特殊核物質中に生成したプルトニウムなどは、現行賃貸借契約どおり国の所有とする。

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