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佐世保港における放射能調査について


原子力委員会

 Ⅰ 昭和43年5月14日発表文

 今回、米国原子力潜水艦ソードフィッシュ号の佐世保港寄港の際の放射能調査において異常値が検出された。

 現在までの専門家会議の中間報告によって考えると、この異常値は、原子力潜水艦からの放射能が原因である疑いがあるようである。

 今回の異常値は人体に実害を及ぼすものではないが、従来見られなかった異常が今回認められた事実に注目せざるをえない。

 本件に関し、当委員会は下記のとおり政府に対して見解を申し述べる。

1 この異常値の原因究明については、さらに調査検討をすすめるべきである。

 その際、わが方の入手しうる資料には制約がある点にかんがみ、米国側に資料提供を求める等適切な方法を速かにとる必要がある。

2 原子力軍艦寄港時における政府の放射能調査体制の整備強化をはかる必要がある。

3 なお、現在、異常値について調査中であることにかんがみ、また、前項の体制の整備強化をはかる必要があるので、その間、原子力軍艦の寄港が行なわれないよう善処すべきものと考える。

 Ⅱ 昭和43年5月29日発表文

 当委員会は、佐世保港において平常と異る測定値が検出されたことについて、その原因究明を行なっていた日本側の専門家検討会の報告書を基にし、米側専門家の米政府への調査報告書をも参照しつつ、検討を行なってきた。

 本件に関し、下記のとおり当委員会の見解を政府に対し申し述べる。

1 当委員会は、5月14日の見解にも述べたように今回の平常と異る測定側が人体に実害を及ぼすものではないが、従来見られなかった異常が今回認められた事実に注目して、その原因の究明が重要と考え、専門家検討会が自ら行なう科学的検討に加え米側の資料提供をも受けて本件の解明を行なうことを期待した。

 しかるところ、専門家検討会の質問に対し、米側からはソードフィッシュ号からの放射性物質の放出は全くない旨の確信は与えられたが、そのことを実証するデータは提供されなかったので、同検討会においても、本件の原因を科学的に解明することができず、疑を残したまま報告書が提出されるに至ったことは甚だ遺憾である。

2 このような事情にかんがみ、当委員会としては本件の原因の調査はこれをもって打切らざるをえないものと考える。

3 しかし、このままでは国民の不安は解消されないので、これを除去するためには、今後、次の点が確保されるよう政府において善処すべきである。
(1)原子力軍艦のわが国寄港中は、原子炉の一次冷却水が艦外へ放出されないこと。

(2)一次冷却水以外のあらゆる系統(たとえば、ドレイン系統など)からも放射性物質が排出されることのないよう、従来より一層その管理が厳重になされること。

(3)原子力軍艦の寄港中は、米国側においても環境モニタリングを行ない、必要に応じ測定結果がわが方に提示されるようにすること。

(4)わが国の放射能調査体制の整備強化を図り、今回の如き事例に対しても原因の解明に役立つようにすること。

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