核燃料懇談会報告
昭和43年3月27日
まえがき
わが国の原子力開発利用は、原子力発電の実用期を迎えて一つの飛躍期に来ている。
この時期にあたり、原子力委員会は、わが国に適した核燃料サイクルの確立に関する主要な核燃料問題について、「原子力開発利用長期計画」に示した方針の具体化をはかり、もって今後の原子力開発利用の一段の発展に資するため、当懇談会を開催して来た。
当懇談会は、下記に示すような構成員によって約10ヵ月にわたり審議を重ね、ここにその審議結果をとりまとめた。
核燃料懇談会構成員
座長 |
有沢 広己 |
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原子力委員 |
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青木 均一 |
1) |
前原子力委員 |
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西村 熊雄 |
2) |
〃 |
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与謝野 秀 |
3) |
原子力委員 |
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武藤俊之助 |
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〃 |
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武田 栄一 |
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〃 |
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山田太三郎 |
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〃 |
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大山 義年 |
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東京工業大学名誉教授 |
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大島 恵一 |
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東京大学教授 |
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田中慎次郎 |
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経済評論家 |
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向坂 正男 |
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(財)日本エネルギー経済研究所長 |
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丹羽 周夫 |
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日本原子力研究所理事長 |
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今井 美材 |
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動力炉・核燃料開発事業団副理事長 |
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石原 周夫 |
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日本開発銀行総裁 |
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松根 宗一 |
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日本原子力産業会議副会長 |
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荘村 義雄 |
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電気事業連合会副会長 |
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加藤 博見 |
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関西電力(株)副社長 |
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河内 武雄 |
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中部電力(株)副社長 |
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田中直治郎 |
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東京電力(株)常務取締役 |
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一本松珠 |
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日本原子力発電(株)社長 |
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樋口 重雄 |
4) |
前日本鉱業協会副会長 |
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清成 迪 |
5) |
前(株)日立製作所副社長 |
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吉山 博吉 |
6) |
(株)日立製作所常務取締役 |
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原田 常雄 |
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東京芝浦電気(株)専務取締役 |
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妹尾 三郎 |
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三菱原子力工業(株)社長 |
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有馬 純信 |
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住友電気工業(株)副社長 |
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和気幸太郎 |
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古河電気工業(株)専務取締役 |
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大慈弥嘉久 |
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通商産業省大臣官房官房長 |
(順不同)
(注)1) 第8回まで
2) 第8回まで
3) 第10回より
4) 第6回まで
5) 第5回まで
6) 第6回より
Ⅰ 総論
1 わが国の原子力開発利用は、原子力発電の実用期を迎えて一つの飛躍期に来ているが、さらにエネルギー資源としての原子力の開発利用の促進をはかることが、わが国の将来の経済成長にきわめて重要である。
しかし、わが国には原子力発電にとって必要不可欠な核燃料資源が少なく、その供給の大部分は海外に頼らざるを得ない。
したがって、核燃料をわが国における核燃料サイクルを通じて有効に利用することが、わが国にとって特に必要である。
このような観点から、「原子力開発利用長期計画」においては核燃料の利用について次のようなことが記述されている。
『原子力発電の進展にともない、わが国における核燃料の需要量は急速に増大し、その供給の大部分は海外に依存せざるを得ない。
したがって、核燃料の低廉かつ安定な供給の確保とその有効利用をはかることが特に重要である。
このため、濃縮ウランの入手、海外ウランの確保措置を講ずるとともに、核燃料の加工、使用済燃料の再処理、プルトニウムの利用等を国内で行なうことにより、わが国に適した核燃料サイクルの確立につとめる必要がある』。
このわが国に適した核燃料サイクルの確立を具体化するにさいし、当面問題となる主要な事項としては次のようなものがある。
それらについて、具体的に方向と対策を明らかにし、今後は特に関係各界が一体となって、これらを推進することが必要である。
(1)ウラン資源の確保
(2)濃縮ウランの確保
(3)使用済燃料の再処理
(4)プルトニウムの有効利用
(5)核燃料の民有化に伴う措置
(6)保障措置の効率化
(7)核燃料サイクルについての試算
2 核燃料資源に乏しいわが国においては、将来の核燃料サイクル形態として、高速増殖炉の採用によって消費した量以上に核分裂性物質を生成しながら発電を行なうことによりウランのほとんどすべてを利用する核燃料サイクル体系の確立をめざすべきである。
しかしながら、高速増殖炉が実用化され、採用されるまでには長期化を必要とするので、在来型炉に比較して核燃料の消費量が少なく、その有効利用をはかりうる新型転換炉の早期開発、採用につとめるとともに、在来型炉での核燃料の有効利用をはかることによって、当面は前述の核燃料サイクル体系をめざすことを考慮しながら、わが国として核燃料の最少の所要量と最低の発電コストを可及的に満足する最適な核燃料サイクルの確立につとめるべきである。
(1)ウラン資源の確保については、さらに国内ウラン資源の把握につとめるとともに、諸外国に立ち遅れないよう積極的かつ早急に海外ウラン資源確保のための方策を講ずる必要がある。
海外ウラン資源の確保をはかるにあたっては、適切な国の施策のもとに民間企業がその主体となり、関連業界は相互に密接な連けいのもとに秩序ある体制を整備して積極的に資源の確保に努めなければならない。
その確保にあたっては低廉かつ安定供給をはかるため短期購入契約、長期購入契約および探鉱開発の各方式を適宜組み合せた措置を講ずる必要がある。
当面の需要に対しては、長期購入契約によってその大半を満たし、短期購入契約によってこれを補完していくことが適当であるが、長期的な確保の観点からは、これらと並んで探鉱開発の積極的推進に努めることが必要である。
探鉱開発については、長期間を必要とし、民間企業のみに依存するのでは所期の目的を達しえないおそれがあるので、国としても早急に対策を講じ、民間企業を誘導助成し、その促進を図る必要がある。
そのため、当面の対策として国は、資料情報の収集、基礎的調査および探鉱開発に対する技術的、資金的援助を行ない、民間企業の助成をはかるべきである。
さらに国は、この他税制の整備、資源保有国との間の協力関係の確立等、資源確保上必要な対策を講ずるとともに、探鉱開発が民間ベースに乗り難い場合であっても、国自らも基礎的調査を含めこれを積極的に行なうことが望ましい。
(2)当分の間主力となる軽水炉に必要な濃縮ウランは、当面米国の委託濃縮制度を利用してその供給を確保することとするが、高速増殖炉、新型転換炉の採用にともなって、その必要量は次第に減少することが期待される。
しかし、これに必要な濃縮ウランは相当な量になると予想され、その供給の安定化をはかるためには米国以外の諸国からの供給の可能性の検討を行なうとともに、わが国でもウラン濃縮事業を行なうことにたいして十分な準備をしておかねばならない。
濃縮ウランの国内生産については、量的にもその事業が行なわれることが十分期待され、またこれは核燃料サイクルの確立および核燃料入手の安定にとっても必要であるので、ウラン濃縮の各方式についての研究開発は昭和50年度までにカスケードによるウラン濃縮試験を終えることを目標に行なうべきである。
このすすめ方としては、遠心分離法についての研究開発は動力炉・核燃料開発事業団が、気体拡散法についての研究開発は日本原子力研究所の協力のもとに理化学研究所が中心になって計画的に推進することとし、その他の方法については、基礎的な研究が大学において行なわれることを期待する。
これらの研究開発を並行して行なうに要する経費としては90億円程度が見込まれるが、資金を効率的に使用し、研究開発を効果的に推進するため、各方式についての研究成果を臨時評価し、可能なかぎり早期に一方式についての研究開発に集中すべきである。
(3)在来型炉燃料の有効利用のためには、これをわが国で再処理し、国内で再処理することが望まれることはいうまでもないが、わが国がめざすべき核燃料サイクル確立のためには、高速増殖炉燃料の再処理技術を開発しておくことが必要である。
在来型炉燃料の再処理については、動力炉・核燃料開発事業団が湿式法による第1工場の建設をすすめるとともに、第2工場も湿式法によって民間企業が建設することが予想されるので、これに関連する技術を改善するため、廃棄物処理、有用元素の回収などについての研究を日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団が協力してすすめる必要がある。
高速増殖炉燃料の再処理については、その技術を確立しておくことが将来特に重要であるので、高速増殖炉の開発と並行して推進する必要がある。
そのため、フッ化物揮発法に重点をおいて研究を行なうこととし、これを進めるにあたっては、早期にプラントの設計能力を得るために日本原子力研究所、動力炉、核燃料開発事業団が協力し、中心となるべきである。
また、高温化学法等については基礎研究を行なうべきである。
(4)在来型炉で生成したプルトニウムは軽水炉でのリサイクルによって発電コストの低下および核燃料の有効利用がはかりうることが期待され、かつそのための技術は高速増殖炉等での利用技術につながるものであるので、これを早期に開発しておくべきである。
この研究開発は、昭和50年に実用炉での試験を行なうことを目標に国が計画を作成し、動力炉、核燃料開発事業団および日本原子力研究所が中心になって行なうこととし、大学および民間企業の協力を得て行なうべきである。
なお、研究開発を効率的にすすめるため、諸外国におけるこの種の研究への協力を一層積極的に行なうことも考慮すべきである。
(5)さらに原子力産業の円滑な発展のため、核燃料などに対する保障措置の効率化をはかるとともに、核燃料の民有化にともなう措置についても考慮すべきである。
(6)また、今後は、生成プルトニウムの需給をバランスさせた核燃料サイクルについての試算のみでなく、さらに経済性も加味したアイクルについての試算を行ないつつ、エネルギーの安定かつ低廉な供給の確保をはかる見地から(i)から(v)までに述べた諸事項を推進すべきである。
なお、前述の研究開発を推進するに要する経費としては、昭和43年度より昭和50年度までに下記に示すとおり約153億円が見込まれる。
(詳細は別表参照)
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(億円) |
1 ウラン濃縮に関する研究開発 |
86 |
(1)遠心分離法 |
(48) |
(2)気体拡散法 |
(38) |
2 プルトニウムの軽水炉利用に関する研究開発 |
42 |
3 使用済燃料の再処理に関する研究開発 |
25 |
(1)高速増殖炉燃料 |
(24) |
(2)熱中性子炉熱料 |
(1) |
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合 計 |
153 |
Ⅱ 各論
1 ウラン資源の確保
世界各国における原子力発電は急速に増大しつつあり、これに伴なってウラン需要は、将来高速殖炉等が実用化した後においてもなお増大をつづけるものと予想される。
当面予想される需要については、すでに確認されている鉱床の開発等により対処し得ると考えられるが、将来の増大する需要に備えるためには、わが国としても早急に国内外において新規鉱量の発見等に努めなければならないと考える。
ウランは、将来わが国のエネルギー源として重要な地位を占めるものであり、低廉かつ安定なウラン資源を確保することがエネルギー政策上要請されている。
しかるにわが国は、ウラン資源に乏しく、その供給を海外に依存せざるをえない状況にある。
海外のウラン資源は、探鉱開発の活発化等により今後さらに鉱量の増大が期待され、また世界的なウラン市場が成立する見通しも明るくなりつつあるが、これらはあくまでも現時点においては期待の域を出ないので、資源確保の面で諸外国に立ち遅れないよう積極的かつ早急に自主的な海外ウラン資源確保のための方策を購ずる必要がある。
海外ウラン資源の確保については、その需要のほとんどが民間電気事業者により占められている事情にかんがみ、適切な国の施策のもとに民間企業がその主体となることが適当である。
そのさい、関連業界は相互に密接な連けいのもとに秩序ある体制を整備して積極的に資源の確保に努めなければならない。
とくに最終需要者である電気事業者は相互に協調しつつ、民間企業の中心となり、これを推進すべきである。
海外ウラン資源の確保にあたっては、短期購入契約、長期購入契約及び探鉱開発による各方式をそれぞれの長所を発揮させるよう弾力的に併用すべきであるが、わが国のおかれた状況から見て、当面の需要に対しては前述の体制のもとに長期購入契約によってその大半を満たし、短期購入契約により、これを補完していくことが現実的であり、すでにその線に沿って確保が進められている。
しかしながら、長期的な観点から、ウラン資源供給の低廉性と安定性を実現するためには、これらと並んで探鉱開発の積極的推進に努めることが必要である。
特に探鉱開発が長期間を要すること、およびその実施に当っての困難性にかんがみ、民間企業のみに依存するのでは所期の目的を達しえないおそれもあるので、国としても早急に対策を講じ、民間企業を誘導助成し、その促進をはかる必要がある。
そのため、国の施策については、今後とも、情勢の推移に応じ、さらに検討を加えることが必要と考えられるが、当面の対策として国は次の施策を講ずることによって民間企業の助成をはかるべきである。
(1)詳細かつ広範な資料情報収雄網の整備をはかりつつ、積極的に資料情報の収集につとめる。
(2)民間企業を資金的技術に援助することにより、基礎的かつ計画的な調査が行なわれるよう誘導する。
(3)民間企業に対し、探鉱資金の長期低利融資を行なうとともに、企業から要請のある場合には、技術面でも援助する。
なお新鉱床探鉱については、成功払い融資も考慮する。
(4)開発資金の融資を行ない、また、民間企業の担保能力が不足する場合には、開発に伴う債務を保証する。
さらにこのほか、国は税制の整備、資源保有国との間の協力関係の確立等資源確保上必要な対策を講ずる必要がある。
また、資源賦存状況の不分明その他の事由により、リスクが通常以上に大きく、基礎的な調査、探鉱ならびに開発が民間ベースに乗り難い場合であっても国として必要と認めた場合には、国自らも基礎的な調査を含め、これら積極的に行なうことが望まれる。
2 濃縮ウランの確保
わが国の原子力発電において、当分の間主力となる軽水炉に必要な濃縮ウランは、当面米国の委託濃縮制度を利用して、その供給を確保する必要がある。
また、その他の国からの確保についてもその可能性を検討すべきである。
しかし、今後の世界の原子力発電に必要な濃縮ウランの需要増大に対し、外国の現有濃縮工場は昭和50年代前半には需要をまかないきれないと予想される。
一方、わが国においては、昭和60年には、年間2,000トン程度の需要があると推定され、量的には、わが国においてウラン濃縮事業が行なわれることも期待され、また、これは核燃料サイクルの確立および核燃料入手の安定化にとっても必要であるので、ウラン濃縮事業を行なうことに対して、十分な準備をしておかねばならないと考える。
このため、ウラン濃縮の各方式についての研究をさらに強力に推進することとし、昭和50年頃までに各方式の技術的経済的な評価を行ない、わが国で採用すべきウラン濃縮方式を定めることを目標とし、政府関係機関、大学および民間企業を一体となし、国の資金により研究開発を推進すべきである。
なお、この研究開発の成果を実用化するにはさらに大規模な試験を必要とするが、これを行なうか否かはその時点での国際情勢、予想される濃縮コストの経済性などの検討をまって定める必要がある。
(1)遠心分離法は、分離機の高速運転の見通しがえられており、さらに研究開発をすすめることによって、この方法によるウランの濃縮が十分期待されるものである。
このため、動力炉・核燃料開発事業団が行なっている研究開発を継続し、理論的および工学的検討を行なうとともに、これらの成果を適時評価しつつ、昭和50年度までにカスケードによる濃縮試験を行なう。
また、これに関連する基礎的な研究、機器の試作研究等は大学または民間企業の協力をえて行なうべきである。
(2)気体拡散法は海外ですでに採用されている方式であり、わが国においても強力にその研究開発をすすめれば十分にウラン濃縮の実用化が期待されるものである。
このため、理化学研究所が行なっている研究開発を日本原子力研究所の協力のもとに継続し、理論的および工学的検討を行なうとともに、その成果を適時評価しつつ、昭和50年度までにカスケードによる濃縮試験を行なう。
またこれに関連する基礎的な研究、隔膜および機器の試作研究等については、大学または民間企業の協力をえて行なうべきであると考える。
なお大型10段カスケードによる試験研究の段階以降については、新らたにその研究開発体制を検討すべきである。
(3)その他の分離法についての研究は、基礎的な研究段階であると考えられるので、基礎的な研究が大学において行なわれることを期待し、研究の進展によっては、日本原子力研究所、動力炉、核燃料開発事業団においてその成果に基づき、研究開発を行なうことも考慮すべきである。
(4)理論的な研究および材料の耐食性、不純物分析等の基礎的な研究は、日本原子力研究所が大学の協力をえて行なうこととし、ウラン濃縮の各方式に関連のある六フッ化ウランの精製技術、質量分析計等の研究開発は民間企業の協力に期待すべきである。
(5)なお、これら各方式の研究開発を並行して行なうことは、各方式の優劣について結論がでていない現段階においては必要なことであるが、これらの試験研究に一応の区切りがつくと思われる昭和46~47年頃において、学識経験者により構成される機構をもうけ、各方式の研究成果の評価を行ない、可能なかぎり一方式に研究開発を集中し、もって資金を効率的に使用し、研究開発を効果的に推進すべきである。
3 使用済燃料の再処理
現在主要国で稼働中の熱中性子炉燃料の再処理工場はすべで湿式法によるものであり、近い将来においても熱中性子炉燃料の再処理については湿式法以外の方法による可能性は小さいと考えられる。
したがって、わが国最初の湿式法による再処理工場の建設に動力炉・核燃料開発事業団がつとめるとともに、第2基目についても湿式法による工場を民間企業が建設することが予想されるので、その関連技術の改善のため廃棄物処理、有用放射性同位元素の回収、などについての研究開発を行なう必要がある。
従来、日本原子力研究と動力炉・核燃料開発事業団は共同研究として湿式再処理に関する工学的研究および再処理工程における廃ガス中のクリプトン回収等の研究をすすめてきた。
今後は、この共同研究をさらに強力に推進するとともに、廃棄物の固化処理技術および廃棄物中の有用放射性同位元素回収の研究開発ならびに速溶媒抽出法についての調査研究についても、日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団が共同してこれを行ない、必要に応じて大学、民間企業の協力をえて計画的に推進すべきである。
高速増殖炉の燃料の再処理は、熱中性子炉燃料の再処理よりも、燃料サイクルの経済性に対しはるかに大きな影響を及ぼすと考えられる。
したがって高速増殖炉燃料については、経済的にその使用済燃料を再処理し、これを核燃料として再使用ができるような技術を確立しておくことが重要であるので、高速増殖炉の開発と並行して推進することが必要である。
高速増殖炉燃料の再処理方式として現在諸外国で研究開発が進められている方式は、湿式法、フッ化物揮発法および高温化学法等である。
これらのうち、将来最も有望視されているのはフッ化物揮発法であるので、これに重点をおいて研究開発を行ない、高温化学法等については、基礎研究を進めるべきである。
高速増殖炉燃料の再処理の研究開発は、早期にプラントの設計能力を得ることとし、動力炉・核燃料開発事業団、日本原子力研究所が共同してこれを行ない、必要に応じて大学、民間企業の協力を求め、国産技術の特徴を発揮するようつとめるとともに、外国との技術交流を積極的に行なうべきである。
なお再処理事業には、大量の廃棄物の取扱い、貯蔵およびこれにともなう責任体制の問題、環境整備の必要性、使用済燃料の輸送の問題点があり、国はこれらについて適切な措置を講ずる必要がある。
4 プルトニウム有効利用
わが国で生成するプルトニウムは、高速増殖炉燃料として利用することが最も望ましいが、高速増殖炉が実用化されるまでには相当な期間が必要であるので、核燃料の有効利用の観点から、この間熱中性子炉用燃料として利用することが考えられる。
したがって、高速増殖炉用プルトニウム燃料の研究開発をすすめるとともに、プルトニウムの熱中性子炉での利用に関する研究開発をすすめておく必要がある。
プルトニウムの利用形態としては大別すれば
(1)余剰生成プルトニウムは貯蔵して、高速増殖炉が実用化した時に利用する。
(2)生成プルトニウムは軽水炉および新型転換炉に積極的に利用する。
の2つがあると考えられる。
これらのいずれの形態になるかは、高速増殖炉の採用時期、今後の使用済燃料の排出量、使用済燃料中のプルトニウム、ウラン-235の含有率などはもとより軽水炉における燃料の使い方等今後の動力炉の開発の進展度合によって定められると考えられるがエネルギー源としてのプルトニウムの有効利用をはかるため、この多角的利用技術を開発してゆく必要がある。
また、それは余剰プルトニウムの解決ともなり、高速増殖炉や新型転換炉への利用につながる技術であるので、早期にこの研究開発を行なっておくべきである。
プルトニウムの軽水炉での利用に関する研究開発については、生成プルトニウムが昭和50年頃から余剰になると予想されるのでその頃に実用化することを目標に行なう必要がある。
これを進めるにあたっては、関連する分野が広くこれらを総合して推進することにより大きな効果が期待されるので、政府関係各機関、大学および民間企業が一体となり総合的にその推進をはかるべきである。
この研究開発は、昭和50年に実用炉での試験を行なうことを目標に国が計画を作成し、動力炉、核燃料開発事業団および日本原子力研究所が中心になり大学および民間企業の協力をえて行なうべきである。
なお、この研究開発を効率的にすすめるため従来から行なわれている外国とのこの種の研究協力をさらに積極的に推進し、情報交換等を行なうことも考慮すべきである。
5 核燃料の民有化に伴う措置
民間における原子力産業の自主的な発展をさらに期待して昭和43年7月1日以降、特殊核物質は原則として民間の所有になる予定であるとされている。
それに伴う特殊核物質の取り扱いについては、私立大学などにおける研究開発を阻害しないよう措置することを考慮すべきである。
6 保障措置の効率化
原子力産業の発展に伴い、わが国における核燃料の使用量は急速に増大し、また、その利用技術も研究開発段階から、実用化に移され、商業範密にされるべきものが多くなり、核燃料等に対する保障措置の効率化、合理化はとみにその重要性が増してくると考えられる。
このため、わが国においても積極的に保障措置の効率化あるいはそのための査察技術の開発につとめることが必要である。
7 核燃料サイクルに関する試算
わが国に適した核燃料サイクルを確立するためには、上述の研究開発を推進するとともに、サイクル全般についての最適条件を見出すための検討を行ないつつ、これを今後の施策に生かすことが必要である。
わが国においても、生成プルトニウムの需給をバランスさせることにより、原子炉の導入形態、ウラン需要量等を求める計算コードの開発が行なわれてきたが、海外においては、さらに経済性を加味した計算コードの開発が進められている。
一方、在来型炉の性能が向上しつつあること、高速増殖炉などの新型炉が開発されつつあることなどから、今後のわが国における最適核燃料サイクルも時々変化して行くものと考えられる。
したがって、今後は、わが国においてもさらに高速増殖炉の実用初期におけるウラン-235によるスタートの考慮および経済性を加味した計算コードの開発を行ない、試算、検討を行なう必要がある。
〔別 表〕核燃料サイクルの確立のための研究開発スケジュール
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