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動力炉・核燃料開発事業団の
動力炉開発業務に関する基本方針


(昭和43年3月原子力委員会決定)

43.3.26
科学技術庁

 動力炉・核燃料開発事業団法第25条第1項の規定に基づき、動力炉開発業務に関する基本方針を下記のとおり定める。

 核燃料の安定供給と有効利用をはかり、かつ、原子力発電の有利性を最高度に発揮せしめるため、適切な動力炉を自主的に開発することは、エネルギー政策における重要課題であるとともに産業基盤の強化と科学技術水準の向上に大きく寄与するものである。

 このような観点から、高速増殖炉および新型転換炉をそれぞれ昭和60年代の初期および50年代の前半に実用化するため、原型炉の建設運転までの開発を目標とし、関係各界の総力を結集してその開発を推進するものとする。

 この動力炉開発は、次に掲げる方針に沿って42年度から着手することとする。

1 高速増殖炉の開発については、プルトニウムとウランの混合酸化物系燃料を用いるナトリウム冷却型高速増殖炉を開発することを目標として研究開発を進めるものとする。

 原型炉としては、電気出力20万キロワットないし、30万キロワット程度のものを51年度頃臨界に至らせるものと想定し、その建設の具体的計画については、事前の研究開発の成果および海外における技術の動向等を評価検討のうえ定めることとする。

 また、実験炉については、原型炉の開発に必要な技術的経験を得るとともに、完成後は燃料材料等の照射施設として利用することを目的として、熱出力約10万キロワット程度のものを47年度頃臨界に至らせることを目標とする。

2 新型転換炉の開発については、天然ウランを燃料に用いる重水減速沸騰軽水冷却型炉を開発することを目標として研究開発を進めるものとする。

 原型炉としては、初期装荷燃料として微濃縮ウランまたはプルトニウム富化天然ウランを用いる電気出力約20万キロワット程度のものを49年度頃臨界に至らせるものと想定し、その建設の具体的計画については、事前の研究開発の成果および海外における技術の動向等を評価検討のうえ決定することとする。

3 開発の実施にあたっては、日本原子力研究所(以下「原研」という。)、大学、国公立試験研究機関、民間企業等の協力を確保するみちを講じ、動力炉・核燃料開発事業団(以下「事業団」という。)を中核とする一元的責任体制のもとに行なうものとする。

4 開発を進めるにあたっては、その段階に応じて定める基本計画に従って業務を効率的かつ計画的に実施するものとする。

 開発の実施においては、科学的管理手法を採り入れて、進捗状況の把握および成果の評価を行ないつつ、計画の管理を合理的に行なうものとする。

5 開発を進めるにあたっては、海外技術の有効な活用をはかるため、国際的に情報の交換、人材の交流等を活発に行なうものとする。

6 開発に必要な資金については、国家資金によるほか、原型炉の建設費の少なくとも50%を開発の全期間にわたり民間企業等が拠出することを期待するものとする。

7 開発を効率的に進めるため、事業団の業務のうち適切なものについては、技術的能力等より見て適切な者に、その業務を委託するものとする。

8 開発を行なうに際し事業団が必要とする専門的人材については、原研、大学、国公立試験研究機関、民間企業等からの参加等によって確保するものとする。

動力炉・核燃料開発事業団の動力炉開発業務
に関する第1次基本計画


(昭和43年4月4日原子力委員会決定)


 動力炉・核燃料開発事業団法第25条第1項の規定に基づき、去る昭和43年4月4日原子力委員会の議決を経て、同年4月8日内閣総理大臣の定めた第一次基本計画は次の通りである。

動力炉・核燃料開発事業団の動力炉開発業務に関する第1次基本計画

科学技術庁

 動力炉・核燃料開発事業団法第25条第1項の規定に基づき、さきに定めた動力炉開発業務に関する基本方針に従い、動力炉開発業務に関する第1次基本計画を下記の通り定める。

1 高速増殖炉
 実験炉は、プルトニウムとウランの混合酸化物系燃料を用いる熱出力約10万キロワット程度のナトリウム冷却型炉を47年度頃に臨界に至らせることを目標として、概念設計、詳細設計をすすめ、引き続き建設に着手する。

 原型炉としては、プルトニウムとウランの混合酸化物系燃料を用いる電気出力20万キロワットないし30万キロワット程度のナトリウム冷却型炉を51年度頃臨界に至らせるものと想定して所要の設計研究をすすめる。

 これらの設計等と並行して、次の研究開発を実施し、その成果を適宜設計および建設に反映せしめる。

① 炉物 理
 日本原子力研究所(以下「原研」という。)の高速炉臨界実験装置を用いて、プルトニウム燃料による実験炉炉心のモック・アップ試験および制御安全棒効果の確認試験を行なう。

② ナトリウム工学
 小型のナトリウム・ループ等を用いて、ナトリウムの分析および精製、ナトリウムによる材料の腐食等に関する実験を行なうとともに、ナトリウム中での小型機器および材料の試験装置を製作し、実験炉に用いる材料および小型部品の確性試験を行なう。

 また、流動試験用ナトリウム・ループを建設し、ナトリウム回路の総合試験、燃料の流動試験等を行なう。

③ 主要機器、部品
 遮蔽プラグ、炉心支持板、燃料交換装置等炉体構造部の主要機器等の試作を行なうとともに、これらを試験するための試験装置を建設し、ナトリウム中での流動試験、熱衝撃試験等を行なう。

 また、これに必要な部分的な構造についての研究を実施し、これらの成果を実験炉用主要機器の製作等に反映させる。

 45年度項から、逐次、原型炉用の大型機器、部品の開発に移行せしめるものとするが、一部機器については早期に予備的研究に着手する。

④ 核燃料
 実験炉用のプルトニウムとウランの混合酸化物燃料について所要の試作試験等を行なうとともに、水ループによる予備流動試験、ナトリウム・ループによるナトリウム中での流動試験を行なう。

 また、エンリコフエルミ炉、ドーンレイ炉等国外の高速炉および国内の熱中性子炉により燃料試料の照射試験を行なう。

 上記の研究開発およびその後の研究開発に使用するため、プルトニウム燃料の照射後試験施設および加工技術開発のための施設を建設する。

⑤ 安全性
 実験炉の安全解析、安全防護設備の試験、ナトリウム沸騰現象の解明、ナトリウム-水反応の研究等所要の研究および試験を行なう。

2 新型転換炉
 原型炉としては、初期装荷燃料として微濃縮ウランまたは、プルトニウム富化天然ウランを用いる電気出力約20万キロワット程度の重水減速沸騰軽水冷却型炉を昭和49年度頃臨界に至らせるものと想定して、第1次および第2次の設計研究を実施し、事前の研究開発の成果および海外における技術の動向等の評価検討を行ない、原型炉建設の具体的計画について結論を得た場合には引き続き建設に着手する。

 設計研究等と並行して次の研究開発を実施し、その成果を適宜設計等に反映させる。

① 炉物理
 大型臨界実験装置を建設し、これを用いて炉心核設計に関する定量的データを得る。

 この大型臨界実験装置が完成するまでに炉心核設計に関する定性的データを得るため、既設の軽水臨界実験装置を改造して、二領域の臨界実験を行なうとともに、英国等からコード類を購入して炉心設計の評価等に利用する。

② 熱ループ実験
 大型熱ループを建設し、これを用いて熱水力学上の定量的データを得る。

 この大型熱ループが完成するまでに熱水力学設計に関する定性的データを得るため、既設の小型熱ループを用いて伝熱・流動実験を行なう。

③ 主要機器、部品等
 ジルカロイ製圧力管と鋼管との接合部、シールプラグ、カランドリア、燃料交換装置、制御棒駆動装置等の部品および主要機器の試作開発を行なう。

 さらに、コンポーネント・テスト・ループを建設し、試作した部品および主要機器について、総合的機能の確認試験を行なう。

④ 核燃料
 原型炉用の燃料被覆管、燃料集合体等を試作し、これら試作したものについて、各種の試験および検査を行なう。

 また、燃料、材料の照射試験を主として原研の材料試験炉を用いて実施する。

⑤ 安全性
 一次冷却系破断、重水ダンプ機構、液体ポイズン制御方式、非常冷却系等に関する安全性実験を行なうとともに安全性解析を行なう。

3 本基本計画は、昭和42年度から45年度までの期間を対象とし、必要に応じ所要の修正を行なうものとする。
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