このCommissionに所属する部局は図に示すような構成であって職員は約100名とのことである。
(ii)Philippine National Science Developmeet Board
これはPhilippineの科学技術政策立案の最高機関であって、わが国で言えば科学技術会議に対応するように思われる。
勿論機能の詳しい点は相違する所が多い。
即ちその主な業務は国の機関と民間企業における科学技術開発活動との連けいをはかること、科学技術政策の立案とプロジェクトの設定をすること、科学技術者の養成訓練計画の作成をすること等である。
さらにかかる業務を推進するために次のような実施機構を管轄している。
National Institute of Science and Technology(NIST)
Philippine Atomic Energy Commission(PAEC)
Philippine Coconut Research Institute
Philippine Inventors Commission
Textile Research Institute
Boardの構成はChairman,Vice-Chairman,NISTおよびPAECのCommissioners,National Research CouncilのChairman,National Planning Office of National Economic CouncilのDirector,Philippine Universityの代表者、産業、農業、教育、科学技術関係諸団体の代表者達である。
計11名とのことである。
(iii)Philippine Atomic Research Center
これを訪れたのは11月29日午後3時であった。
Philippineは冬とはいえ相当にむし暑い。
ここの構内にある研究炉の建物が遠くからでも眺められるし、この研究所に行く道の両側に散在する小さな家々は日本の田舎で見かけるようなものと似ている。
そう言えば冬のむし暑さを除けばこの辺の風景は日本のどこかの田舎に似ているようだ。
Atomic Research Centerの副所長から概略説明を聞いた後、施設を見せてもらった。
若い研究者の中には日本の原研で勉強した人もあり、また原研の天野氏が研究指導のためここにしばらく滞在したこともあって、日本の実情を割合によく知っているように見受けられた。
次にその概賂を紹介する。
なお詳しいことは持ち帰った資料を参照されたい。
まず、この研究所の組織は次のようなDepartmentからなっている。
Bio-Medieal Research Dept.,Physics Dept.,Agricultural Sciences Dept.,Chemistry Dept.,Nuclear Engineering Dept.,Reactor Operations Dept.,Health Physics Dept., Experimental Services Dept.,
職員総数は約190人である。
研究の重点は、前述したようにRadioisotopeとその放射線の利用の研究開発におかれているが、Philippineは農業国であることが反映して農業分野への利用の研究が多い、とくに印象に残ったものを次に列記する。
(a)とうもろこし、米、まんご、野菜などの照射による品質改良と米、小麦の殺虫の研究
(b)ココナッツの病害と土壌の性質との関係をトレーサーにより解明する研究
(c)照射による低品質木材の改質の研究
(d)照射による脂肪酸重合を用いてココナッツ油の悪臭を減少させる研究
(e)南部諸島のカタツムリに起因する病気に対してトレーサーを利用した研究
(f)制御棒落下方式による反応度の測定、メスバウアー効果とか中性子回折の実験は準備中である
なおここの研究炉PRR-1(出力=1MW,max.thermal neutron flux~1.4×1013)は今のところRadioisotopeの生産が主であるが訓練その他にも用いられており、この外照射線源のCo60が600キュリー設けられている。
3 台湾
フィリッピンから台北に来たのは11月30日の午後だったが台北上空は深い雨雲がおおっていた。
そのためか、ここまでくると日本の秋の始め頃の気温で日本の冬に次第に近づいていることを感じさせる。
マニラでは、海岸に沿うたメイン・ストリートに立ち並ぶ近代的高層建築の裏側には日本の田舎に見かける汚ない小家があり、また郊外の金持ちの住む豪壮な住宅区域の近くには汚ない家々や草ぼうぼうの空地が散在するといったように、短時日の旅行者に対してマニラとその周辺は活気はあるが何かしら調和と統一に欠けているといった印象を与える。
これに対して台北とその近郊は静かに落ちついた雰囲気を感じさせ甚だ対象的印象である。
漢字を共通とする日本人にとって町の看板は中国語の発音は、知らなくても大体の意味は推測できるし、日本に留学したことのある年配の方々の話す日本語はくせがなくて美しい。
しかし年配の方々でも欧米に留学された人々の中には日本語を話されぬ方もいるようで、こうした方々を交えた会合では日本語と中国語と英語とが入りまじることになる。
台湾における原子力研究開発の骨組みについて始めの内は仲々つかみにくかったが種々の人々と話している内にその輪郭が分ってきた。
一口に言えば内閣に原子能委員会がありこれがPlanning Boardであって実施機関としてRadioisotope productionは清華大学が中心となってやっておりPowdre Reactorの研究は台湾電力公司が受もっていると言った所である。
12月1日に教育部長(日本の文部大臣に相当する)であり、台湾原子能委員会委員長でもあるDr.Y.C.Meiを礼訪した後、原子能委員会本部でSecretary-GeneralのMr.S.M.LeeおよびCommissionのMr.K.H.Lihと懇談した。
前者はHarvard Univ.で物理を学びその後Engineerに変った方、後者はヨーロッパに留学したことのあるChemistであるとのことだった。
Philippineにおける場合と同じ内容の訪問主旨を述べ日本の原子力開発状況を英語で紹介したのに対して、Philippineの場合と同様に台湾と日本とは非常に密接な関係にあるのでと前提して甚だ好意に満ちた発言があった。
LeeおよびLih両氏の話と別の機会に聞いた台湾電力公司社長Chen氏、副社長Chu氏の話とを総合すると概略は下記の通りである。
(a)台湾における発電設備容量は現在150万kWであるが2~3年後には電力需要が多いので200万kWを越すであろう。
エネルギー事情は石炭採掘条件悪化に伴い高価になっており、他方石油は殆んど産出せずfeasibility studyの結果によれば1974年運転開始の原子力発電が経済的であると考えられている。
その頃には400万kWの発電設備容量が予想されるので40万kW程度が経済的である。
しかしこの計画はまだ検討中で決定的なものではない。
(b)Radioisotopeの生産は、清華大学のSwimming Pool型研究炉THOR(出力=1MWmax.thermal neutron flux~1013)を用いて主としてShort life核種について行なっている。
また人員の養成訓練にも利用されている。
台湾大学農学部におけるRadioisotope Laboratoryでは農業へのradioIsotope利用の研究を行なっている。
始めわれわれの予定では台湾電力公司の訪問だけを考えていたが、台北に着いてから以上の状況が判明したので、わずか3日の滞在ではあったが始めの予定を変えて清華大学と台湾大学とを視察することにして、Lee氏とLih氏に申出でた所、Lih氏が先方に電話して手配していただいた次第である。
(i)台湾原子能委員会(Taiwan Atomic Energy Council)
ここで台湾原子能委員会に触れておきたい。
1955年の設立であってその構成は関係各部長(日本の大臣に相当)、学識経験者、産業界代表計11名からなっており内閣に直属している。
Chairmanは教育部長のDr.Y.C.Mei,Sacretary-GeheralはMr.S.M.Leeである。
本部は台北市内にあり下図の如きSectionsをもち職員は約20名である。
しかし委員会には専門部会のような Working Groupもなく、また予算面で積極的に動くというようなこともなく、その活動は多少弱体のように見うけられる。
例えば原子炉の運転に伴う法規類の作成の作業は実質的に台湾電力公司が委託実施しているとのことである。
(ii)台湾電力公司(Taiwan Electric Company)
孫文主義にもとづいて、国営であり、その電力は都会のみならず田舎の住民にまで公平に配電することが基本方針になっている。
資本の93%が国費で他はInstitutionsおよび個人のものである。
社長のChen氏は日本大学の電気工学科出身、副社長のChu氏は京都大学、同じくChien氏は東京工業大学の出身で日本語はベラベラであるが面接した他の幹部の方々には日本語は通ぜず英語でのやりとりである。
1946年~1950年は戦後の修復時期で1950年以後は拡張時期であったという。
電力需要の伸び率は15.5%/年でこれに応ずる供給を確保するための拡張は容易でないとのことである。
エネルギー源としては現在のところ水力70万kW、火力80万kW、計150万kWである。
水力については今後も尖頭負荷用として開発しうる地点はかなり残っている。
他方石炭は確認埋ぞう量が約2.4億トン、年産額約500万トンで坑道が深くなるにつれて年々コスト高になっており、新規の発電所は石油燃焼のものとなるが台湾には石油資源はないから輸入にまたなければならない。
こうした状勢から外貨の節約が期待される原子力発電への関心が深まった次第である。
なお天然ガスが出るがあまり多くなくこれは化学工業用原料としての利用が考えられている。
これまでの原子力発電のfeasibility studyによれば台湾の場合出力500MWで、建設費を$180~200/kWと見て発電コスト4.5ミル/kWhとなるから、化石燃料発電と競合しうるとしている。
他方電力が公益事業なので信頼性の高い在来型炉の導入ということになろうが具体的建設計画はまだ決定されていない。
ただ敷地だけは人口分布、地震、冷却水の便を考えて台北西部の海岸にあるLinkouが第1候補地として予定されている。
他方、台湾電力公司は原子炉運転に必要な法規について原子能委員会の委託を受けて検討中であるが、もっとも早急に必要になるControl of Radioisotopes,Regulations on the Safety Transportation of Radioactive Materials,Control of Radioactive Materials,Safety Standard for Radiation Protection,Licensing of Nulear Reactorsであり、その草稿が作成されているとのことである。
(iii)国立清華大学原子核科学研究所(National Tsing Hua University,Institute of
Nuclear Seience)
この大学は台北より約70milesの西南にある新竹に在る、戦後に発足した自然科学部門だけの大学である。
構内は一寸アメリカの大学を思わせるような美しい大学である。
ここは毎年1名外国からVisiting Professorを招く制度があり、日本の大学からも数人の人々がここを訪れている。
われわれが訪れたのは12月2日(土)の午後だったために大学は休みであったが原子能委員Lih氏の手配によって日本の研究者に知己の多い葉教授に案内していただいた。
同教授の話によると、ここの大学院のMCを卒えるとアメリカに行く者が多くそれが仲々帰国しないそうである。
しかし学科の増設に伴い学問的地位の確立した台湾出身の学者を呼び寄せるようにしているとのことで、近く発足する国体物理部門の充員状況を話しておられた。
この大学は始め大学院だけで発足し一両年前からUndergraduate studentsを入学させたとの、ことである。
大学の構成を資料でみると日本の大学とは相違して、むしろアメリカのHarvard Universityの構成に似ている。
さて上記のInstituteはacademic activity部門とnational laboratory activty部門に大別されていて、前者にはNuclear Physics Section,Nuclear Chemistry Section,Nuclear Engineering Sectionが所属し、後者にはNucleay Reactor Section,Radioisotop Section,Health Physics Jection,Scientific Instrument Development Sectionが所属している。
大型装置としては前述した研究炉THOR,Van de Graaf type Acceleraterがありグローブ・ボックスの一部は建設中であった。
この外に土こでは人員養成のためにHealth Physilc ClassおよびRadioisotope Training Courseが設けられている。
前述の研究炉ではRadioisotopeを生産して医学および農学分野に供給しているが、ここでアイソトープ利用の研究も行なっている。
例えば川の水量の測定、甘藷中のCuの放射化分析の定量などである。
将来設備の充実と相俟ってこの研究所は台湾の原子力研究の中心的活動の場所として発展することであろう。
台湾大学のRadioisotope Laboratory
ここを訪れたのは12月1日の午後4時頃で、時間も十分ないまま葉助教授に大急ぎで実験室を案内してもらった。
周りが古い建物であるのに、このLaboratoryの建物だけは新しい。
開けば1961年に設立されたもので農学部のRadioisotope Laboratoryと理学部の化学教室のために用いられている。
勿論研究の指向はRadioisotopeの農学と化学への応用である。
新しい装置も可成り整備されている。
研究論文を見るとJapan Conference on Radioisotopesで発表されたものがありしまた若い助手の人が日本の原研で研修を受けたと言っていた。
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