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韓国の科学技術行政および
原子力関係事情について



 先般、村田原子力局長、円羽原研理事長およびほか2名は招きに応じて10月24日~26日韓国を訪問した。

 以下はその報告の概要である。

Ⅰ 在韓日程

10月24日(火)(国連記念日で祭日)
11.30  金甫飛行場着
12.00  史蹟見学
17.00  予備会談
10月25日(水)
9.00  科学技術処長官表敬
9.30  放射線医学研究所視察
13.30  原子力庁長 訪問
14.00  原子力研究所および放射線農学研究所視察
16.00  相互協力に関する討議
10月26日(木)
12.30  金甫飛行場発

Ⅱ 科学技術処訪問

1 金基衡長官に会見
 大平洋地域の諸国の科学技術における相互協力をはかるために大臣レベルの科学会議を提唱したい。

 また、このため日本の科学担当大臣と予備会談をしたい旨の発言があった。

2 李次官による韓国科学技術関係機構についての説明
 科学技術処は本年4月・行政組織法を改正し、経済・企画院の局から昇格し、現在総理府に属している。

 韓国の行政府は、院、部、処、庁の区別があり、院の長は副総理が担当する。

 部は日本でいう省である。

 当初は科学技術院とする構想があったが、国内事情により実現されなかったが、大統領が科学技術に熱心であり、その積極的な推進により処に格上げされた。

 韓国における予算期は1月~12月であり、来年の科学技術関係予算は約30億ウォンと見込んでいる。

 韓国の原子力委員会は決定機関であり委員長は金長官が兼ね、副委員長は原子力庁長が兼ねている。

 科学技術処企画管理室は科学技術関係予算の調整、法令解釈等強い権限をもっている。

 規制法的なものについては原子力庁事務局の管理課が所掌している。

 機構表および事務分掌は次のとおりであるが、最下段の枠外に書いてある課名等は来年度改正する予定のものである。

Ⅲ 科学技術処の概要

経緯
 1962 経済企画院に技術開発局の設置
 1963 科学技術部設置に対する諮問委員会の設立
 1966 韓国科学技術学会連合は大統領に全科学技術に対する行政組織の設立を勧告
 1967 科学技術処が新たに設立され、初代大臣にDr kee Hyong kimが就任

組織

1 義務
 科学技術処は科学技術開発に関する基本的政策および広範な計画の策定、ならびに国際機関および諸外国との技術的国際協力、科学技術開発の研究と計画との調整を行なう。

2 下部組織
1)科学技術処の下に科学技術振興委員会、原子力委員会、人力開発委員会がある。

2)科学技術処の下に、企画管理室、総務課、振興局、国際協力局、研究調整室を有する。

3)科学技術処の管轄下に原子力庁、中央観象台、国立地質調査処がある。
3 企劃管理室(Office of Plonning and Management)
1)室長は高級行政官の中から選ばれる。

2)以下の事項を担当する。
a 各種政策、計画の策定および調整
b 予算編成および実行
c プロジェクト推進と結果の評価
d 法律
e 広報
f その他
3)人的構成
○計画管理担当高級行政官
○行政管理と推進解析担当高級行政官
○法律担当法律官
○広報担当官
4 総務課
1)総務課長は高級行政官から選ばれる。

2)以下の事項を担当する。
a 安全保障
b 予算管理
c その他総務事項
3)総務課には以下の係を有する。
総務係、供給係、会計係
5 振興局
1)本局には振興課、調査課、資源課を有する。

2)局長は高級行政局から選ばれる。

3)振興課は以下の事項を担当する。
a 科学的、技術的な推進に関する基本的な政策の起草、および年度計画の策定と調整
b 科学、技術予算の予備調査、調整
c 科学的、技術的開発に関する基金の管理調整
d 科学技術に関する評価
e 各種、研究施設の共同利用
f 科学技術振興委員会の庶務
g その他
4)振興課は計画係、開発係、管理係を有する。
機 構 表

5)調査課は以下の事項を担当する。
a 国内および国外の資源に関する科学的、技術的研究、および国内外の科学技術情報の収集、解析ならび統計の作成、管理を行なう
b 科学技術活動の促進
c 科学技術に関する資料の提供等
d 科学技術センターの運営
e 情報の出版管理
6)調査課は、研究係、情報係、管理係を有する。

7)資源課は以下の事項を担当する。
a 科学技術者養成計画、資源の開発計画に関すること
b 地下資源、水産資源等の総合開発計画、資源利用促進、エネルギー資源開発調査研究統計調査、人材養成
c 原子力委員会、人材開発委員会の庶務
8)資源課は人材係、地下資源係、水資源係を有する。

6 国際協力局

1)本局には、協力課、国際課を有する。

2)局長は、高級行政官から選ばれる。

3)協力課は以下の事項を担当する。
a 技術協力の計画および外国技術の紹介および利用
b 米国、ヨーロッパ諸国、コロンボ計画加盟諸国、その他の東南アジア諸国との技術協力
c 米国爪韓国技術協力委員会に関すること
4)双務協定部は協力課、アメリカ課、技術援助課を有する。

5)国際課は以下の事項を担当する。
a 国際連合開発計画(UNDP)に関すること
b 世界食糧計画プロジェクトに関すること
c その他
6)国際協力部には、開発計画係、特別基金係、養成評価係を有する。

7 研究調整室

1)1名の室長、20名以内の研究調整官、2~3名の行政官からなる。

2)研究調整官は行政監督官、行政官、産業界、原子力界、農業および漁業研究者の中から選ばれる。

3)研究調整官は以下の事項を担当する。
a 研究業務の選定および管理、研究開発活動の促進
b 政府、産業界および学界の間の科学技術活動の協力、促進
c 国内技術開発促進
d 輸出促進の為の技術開発
8 国立地質調査所

1)本調査所には庶務課、地質部、探鉱部を有する。

2)本事務局は地下資源の探査、地質図作成鉱物学的研究、地球物理学的、地球化学的探査を行なうことになっている。

9 中央観象台

1)本台は気象に関する事項を担当し、総務課、予報課、観測課、通信課、気候調査課、天文課、測侯所、観測所、送信所からなる。

10 原子力庁

1)本庁は原子力の平和利用のための、研究開発、生産、管理を行ない、研究者、技術者の養成を行なう。また、原子力委員会の運営に関する事項を行なう。

2)本庁は事務局とともに以下の研究所を有する。
a 原子力研究所
b 放射線医学研究所
c 放射線農学研究所
3)事務局は以下の事項を担当する。
a 原子力利用の国内外の動向の調査分析および研究成果の公表
b 原子力発電計画の作成および原子力利用に関する国際協力
c 核原料物質に関すること
4)原子力研究所は原子力利用の基礎研究理論の実験研究を行なう。

5)放射線医学研究所は医学研究、RI使用による放射線治療に関する研究を行なう。

6)放射線農学研究所は放射線およびRI利用による農業研究を行なう。

11 科学技術振興委員会

 本委員会の委員長は科学技術処長官で、委員長の指名する12名以下のメンバーで構成される。

1)以下の事項を担当する。
a 科学技術開発長期計画の策定
b 科学技術開発に関する予算
c その他科学技術発展に関し重要とみなされる事項
2)以下の小委員会を有する。
a 農業・林業小委員会
b 漁業    〃
c 鉱業地質学小委員会
d 冶金    〃
e 機械小委員会
f 化学工学 〃
g 繊維・合成繊維 〃
h ガス・電気 〃
i 建設    〃
j 輸送    〃
k 通信    〃
l 医学・保健 〃
m 基礎科学  〃
n 社会科学  〃
12 人力開発委員会

1)委員長は経済企画院院長で副委員長は科学技術処長官であり、その他関係処庁等の長からなる11名の委員で構成される。本委員会は以下の事項を担当する。
a 人材開発計画
b 人材養成とその活用
c その他の人材開発に開する重要な政策
13 原子力委員会

1)原子力委員会委員長は科学技術処長官が兼ね、副委員長は原子力庁長である。委員は5名~7名であり、委員長の推せんにより、大統領が任命する。以下の事項を担当する。
a 原子力利用の基本的政策および予算
b 研究開発の総合調整および原子力利用の予算の配分
c 核燃料、原子炉等の運転および管理、放射線障害の防止
d 原子力関係の科学者、技術者の養成訓練
e 原子力開発生産組織の管理
f 原子力庁の下にある研究所の研究計画および予算執行に関する事項
g その他、原子力の研究或いは管理に必要な事項

Ⅳ 原子力庁の概要

1 43年の政府予算規模は約2,300億ウォンと見込まるが、このうち500~600億ウォンは経済開発のための特別会計であり、残り1,800~1,700億ウォンのうち国防費が相当部分占めている。

 科学技術処予算は約30億ウォンと見込まれているが、この大部分は米国から700万ドルの援助を得て設立される特殊法人科学研究所への出資である。

 これは米国からの援助が研究所内の設備等に関するものなので建家等は韓国側で建設するからである。

2 ウラン鉱探鉱については、まだ本格的な調査をしていない。

 従って賦存状況はわからないが、当国で産出する黒鉛の中にウランがあるといっている。

 また、モナザイト賦存の可能性はあるようだが組織だった調査はしてない。

3 民間においては、原子力に関する関心はまだ低いので、アイソトープの工業利用等についてPRすると同時に、受け入れられる分野について調査している。

 PR用のパンフレット「放射性同位元素の工業への利用」を原子力研究所で編纂し配布している。

4 人材養成については、ソウル大学、漢陽大学に2つの大学が原子力工学科をそれぞれ核工学科、炉工学科がおかれており、養成を行なっている。

 特に炉研究に関したものは原子力研究所に来て勉強することになっている。

5 炉物理、炉工学専攻の研究者約20名が米・英等海外の研究所で研究に従事している。

 この人達が自国で研究できるよう施設の整備をはかりたい。

 このため来年は臨界実験装置を作りたいと思っている。

6 韓国原子力研究所に現在100KWのトリガⅠ型原子炉1基稼動しており、近く250KWに出力上昇させることを予定しているが、さらに1968年より3ヵ年計画で5MW級の原子炉1基の建設を行なうことを計画している。

7 放射線医学研究所は、保健社会処との話し合いの結果、アイソトープを含む放射線利用による診断治療のほか、がんの治療を受持つことになっている。

 現在、60Co、3,000Ci照射装置が1基あり、さらに来年は1基増設する予定である。

8 放射線農学研究所は、原子力研究所から分離独立し1966年に設立されたが、ここでは、品種改良と食品照射について主に研究を進めている。

9 韓国における原子力発電計画は当面、500MW2基を計画しているが、炉型等については今後、検討することになっている。

 なお、原子力発電計画の概要は次のとおりである。

韓国における原子力発電計画の概要

概 要
1. 設備容量  1,000MWe(500MWe×2基)
2. 建設期間 1号炉
2号炉
 1969年春~1974年秋
 1971年春~1976年春
3. 炉型    軽水炉、重水炉、ガス炉(AGRを含む)のうち

Ⅴ 放射線医学研究所の概要

 放射線医学研究所はアイソトープ、放射線等の医学利用研究とともに診断、治療を行なっているが、特にがんの治療を引受けている。

 これは、現在、保健社会処の当面の重点施策が、結核、寄生虫、らい病、性病、撲減であり、1971年までは、がんに手が廻らないので放射線治療を行なう観点から、がん対策に関する研究開発は原子力庁が受持つことになった。

 放医研の主要機器
 60Co 3,000Ci  治療用1基 PICKER製
 137Cs 2,000Ci
 X線  軟質X線用
 X線  大型 GE製

 放医研の現状と将来構想の概要は次のとおりである。

〔組   織〕
(イ)現在の組織

(ロ)5ヵ年計画による組織

〔年間運営費〕
 器材費 1,600万ウォン
 人件費 1,400万ウォン
 維持費 500万ウォン
 燃料費その他 200万ウォン
3,700万ウォン

Ⅵ 原子力研究所の概要

〔歴史〕
1956. 2. 3  韓米原子力協力協定締結
58. 3.11  原子力法成立
59. 1.21  原子力局の設立
59. 3. 1  原子力研究所の設立
7. 1  TRIGA MARKⅡ炉起工式
62. 3.19  同臨界

〔目的〕
 原子力平和利用の研究を推進することにより、科学技術水準の向上を図り、あわせて国の発展に貢献することを主な目的とする。

 この主旨に沿って、当面の研究は、次の分野について行なわれている。
1)国内資源および技術を用いて原子炉材料の開発をすること。
2)基礎研究および実用を目的とした原子炉の最大限の利用を図ること。
3)動力炉開発に関連した諸問題。
4)ラジオアイソトープおよび放射線の産業利用。
5)研究支援業務。
〔組   織〕

〔予   算〕
 政府の全額出費
 1966年予算 55百万ウォン(0.159百万ドル)
 設立以来累計額 679百万ウォン(2.23百万ドル)
 (国家予算の0.05%以下)

〔人   員〕
 研究者 78名
 技術者 46名
 その他 34名
 合計 158名

Ⅶ 放射線農学研究所

 原子力研究所の一部門であったが、1966年新たに放射線農学研究所として発足した。

 現在は食品工学、作物保護学生理栄養学、遺伝育種学の4研究室を有し、主として品種改良、食品照射の研究をしており、食品照射対象品目は苺、栗等を採り上げている。

 将来はガンマーフィールドを設置する計画である。
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