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昭和42年度原子力関係予算政府原案の決定



 昭和42年度原子力関係予算原案(各省庁原子力関係行政費を含む)は、現金額156億円、国庫債務負担行為額56億円である。これを41年度と比較すると、現金額で27.2億円(20.9%)とかなりの増額になっている。

 昭和42年度においては、4月13日に改訂された「原子力開発利用長期計画」に基づいて、同計画に示された諸施策を効果的に推進する。

 とくに高速増殖炉および新型転換炉の開発に関し、年度半ばに原子燃料公社を改組し、新たに動力炉・核燃料開発事業団を設立するとともに、動力炉開発の基本方針および基本計画を策定して計画的にこれを推進する。

 また、改訂された「原子力第一船開発基本計画」に基づき、42年度に原子力第一船の建造に着手するとともに、陸上付帯施設の建設に着手する。

 さらに、食品の放射線照射に関する研究および、放射性廃棄物の海洋処分に関する調査研究を総合的に推進するほか、使用済燃料再処理施設の設計、材料試験炉の建設の推進など、前年度にひきつづき、原子力開発利用の進展にそくした諸施策を推進する。

 42年度原子力関係予算原案の内訳は別表に示すとおりであるが、その主なものについて述べると次のとおりである。

(1)日本原子力研究所
  (イ)動力炉の研究関発
 動力炉の開発については、内閣総理大臣の定める基本方針および基本計画の線に沿って、動力炉・核燃料開発事業団との密接な連携のもとに、高速実験炉および重水減速沸騰軽水冷却型原型炉の設計研究、高速炉の炉物理実験、ナトリウム技術の開発等を行なう。
(現金額6.3億円、債務負担行為額6.2億円)
  (ロ)JPDRの改造
 46年度計画達成を目途として、従来の自然循環冷却方式を強制循環冷却方式に改め、出力密度を倍増させるため、炉内および炉外の改造ならびに建屋工事に着手する。
(現金額2.5億円、債務負担行為額10.2億円)
  (ハ)原子炉施設の運転整備等
 研究用原子炉を活用し、ひきつづき材料試験、しゃ蔽実験、アイソトープ製造、要員訓練等を行ない、これに必要な整備を行なう。
(現金額4.7億円、債務負担行為額1.9億円)
  (ニ)高崎研究所の整備等
 放射線化学の中間規模試験、および関連研究等を実施する。
(現金額1.7億円)
  (ホ)日本放射線高分子研究協会大阪研究所の事業継承
 (財)日本放射線高分子研究協会から大阪研究所の移管を受け、放射線化学の基礎研究を行なう。
(現金額0.5億円)
  (ヘ)材料試験炉の建設
 材料試験炉本体および建屋の建設を完了させる。また照射後試験施設の整備を行なうとともにさらにその増設に着手する。
(現金額24.3億円、債務負担行為額6.4億円)
  (ト)大洗研究所の整備
 材料試験炉の建設に関連して取水工事、廃棄処理施設の建設を行なうとともに、放射能監視設備、道路工事等の整備を進める。
(現金額3.0億円)
《日本原子力研究所支出予算額93.8億円、うち政府出資額90.4億円、債務負担行為額24.9億円、定員増126名、41年度末役職員定数2,009名》
(2)原子燃料公社
  (イ)使用済燃料再処理施設の設計等
 46年度操業開始を目途として、主要施設の詳細設計および計画の推進に必要な業務を行なう。

 また低レベル放射性廃液の海洋放出に関する調査を外部機関との協力により実施する。
(現金額5.8億円)
  (ロ)プルトニウム燃料の開発
 プルトニウム燃料開発施設を活用して、プルトニウムを熱中性子炉および高速増殖炉に装荷するため、その加工技術の関発および照射試験用試料の加工を行なう。
(現金額0.7億円)
  (ハ)核原料物質の探鉱
 最重点を東濃地区における鉱量の増大におき、中国地方以西においては、鉱床の追跡および鉱量の把握を、東北地方においては、新鉱床の発見および鉱床の追跡を行なう。また海外のウラン鉱業事情について、現地調査をすすめる。
(現金額1.6億円)
  (ニ)その他の研究関発
 以上のほか、核燃料検査技術、遠心分離法によるウラン濃縮の研究等をひきつづき実施する。
(現金額0.5億円)
《原子燃料公社支出予算額16億円、うち政府出資額15.3億円、定員増35名、41年度末役職員定数692名》
(3)日本原子力船開発事業団
 42年度3月に改訂された、「原子力第一船開発基本計画」に基づき、46年度完成を目途に、原子力第一船の建造に着手する。

 このため、42年度前半に建造契約を締結する。

 またこれに関連して、陸上付帯施設の建設、乗組員の養成訓練等を開始する。
《日本原子力船開発事業団総支出予算額10.3億円、うち政府出資額7.5億円、国庫債務負担行為額10.1億円、定員増5名、41年度末役職員定数68名、ただし、国庫債務負担行為額は、新船価および陸上付帯施設の建設に必要な金額の3/4から、既に計上されている、国庫債務負担行為額36億円を差引いた額である。》

(4)動力炉・核燃料開発事業団
 日本原子力研究所、民間等関係諸機関の協力を得て、大型ナトリウムループおよびα−νケーブの建設、プルトニウム燃料の照射試験、重水減速沸騰軽水冷却型原子炉の設計研究等を行なうほか、研究開発を効率的に推進するため、その業務の一部を関係機関に委託を行なう。
《動力炉・核燃料開発事業団総支出予算額14.5億円、うち政府出資額13.8億円、債務負担行為額11.6億円》

(5)放射線医学総合研究所
 放射線障害の防止に関する基礎研究を行ない、とくに、プルトニウムによる内部被曝に関する調査研究および放射線障害の回復に関する調査研究を実施する。また病院部門の拡充および放射性廃棄物の海洋処分に関する研究のための施設を建設する。
《放射線医学総合研究所総予算額6.9億円、(7.5%増)》

(6)国立試験研究機開
 放射線の利用、原子炉材料、安全性等に関する研究をひきつづき行なう。
(現金額5.9億円)

(7)試験研究の助成および委託
 在来型炉についての安全性、燃料の設計または製作についての研究に重点をおいて、民間の研究を助成するとともに、原子力施設の安全基準および安全評価に関する研究、食品照射に関連する技術等に関し民間に研究を委託する。
(現金額3.2億円)

(8)核燃料物質の購入等
 日本原子力研究所、大学等における原子炉燃料、研究等に使用される核燃料のうち濃縮ウラン等購入、借入れなどのため必要な措置を講ずる。
(現金額5.0億円、債務負担行為額9.2億円)

(9)放射能測定調査研究
 ひきつづき、環境、食品、人体等に関する放射能の調査および研究ならびに原子力艦の入港に伴なう放射能調査を実施する。
(現金額1.2億円)

(10)原子力局
 原子力施設の安全確保、原子力啓蒙宣伝、日米研究協力、各種調査企画などを従来にひきつづき充実するほか、IAEA主催の国際会議の招致、原子力利用状況の動懇調査等を行なう。
(現金額0.7億円)

(11)水戸原子力事務所
 放射線監視に必要な施設の整備等を行ない、当該地区における原子力施設の安全対策の強化をはかる。
(現金額0.08億円)

(12)理化学研究所
 サイクロトロンの完成にともない、サイクロトロンを用いた研究の開始、前年度にひきつづくバンデグラフの建設を行なうほか、核融合反応、放射線利用等に関する研究をひきつづき実施する。
(現金額2.2億円、債務負担行為額0.2億円)

(13)原子力発電所立地調査
 原子力発電所立地調査のため、新らたな地点について、地質および気象の現地調査をひきつづき実施する。
(現金額0.05億円)

(14)東海地区原子力施設地帯整備
 さきに決定した方針に基づき、茨城県東海村周辺地区について、その計画的に調和のとれた発展をはかるとともに、万々一の事故に備えての十分な態勢を確保するため、道路の整備等に必要な措置を講ずる。
(現金額1.9億円、ただし、これは建設省予算に計上される。)

(15)各省庁行政費
 関係各省庁が行なう原子力発電所または原子力船に対する規制、原子力関係対外折衝等に必要な行政費は、それぞれの省庁の予算に計上する。
(現金額1.4億円)

昭和42年度原子力関係予算総表


1. 日本原子力研究所に必要な経費

2. 原子燃料公社に必要な経費

3. 日本原子力船開発事業団に必要な経費

4. 動力炉・核燃料開発事業団に必要な経費

5. 放射線医学総合研究所に必要な経費

6. 国立試験研究機関に必要な経費

7. 試験研究の助成および委託に必要な経費

8. 核燃料物質の購入等に必要な経費

9. 科学技術者の資質向上に必要な経費

10. 放射能測定調査研究に必要な経費

11. 理化学研究所に必要な経費

12. 原子力発電所立地調査に必要な経費

13. 放射性廃棄物処理事業の助成に必要な経費

14. 水戸原子力事務所に必要な経費

15. 原子力委員会に必要な経費

16. 放射線審議会に必要な経費

17. 原子力局の一般行政に必要な経費

18. 東海地区原子力施設地帯整備に必要な経費

19. 関係各省庁行政に必要な経費

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