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IAEA2月理事会報告



 標記の理事会は1967年2月21日からIAEA本部において、25全理事国参加のもとに開催された。

 議題は19提出されたが、数議題を除いては総てIAEAの今後の事業及び予算に関するもので、本理事会の大部分の討議はそれらに集中した。

 その大筋の精神は、1965年の国連総会の決議に基づいて組織された「国連および専門機関の財政検査のためのAd hoc委員会の勧告を実行に移すことであり、また、客年IAEA第10回総会の決議に基づき、同年で10年を迎えたIAEAの事業の再検討が議題7として審議された。

 以下、議題を追って報告する。

議題1. 技術援助(技術援助委員会報告)
 1967年の被援助国、援助分野、援助金額の割当(我国は援助を受けない。)を決定した。
議題2. 1967年度運営予算の割当て
 IAEAの1967年度運営予算は、総額148ドル、そのうち、IAEA研究所へ17万4000ドル、技術援助および研修に130万6000ドルの割当てが決定。
議題3. 国連経済社会理事会への報告。承認

議題4. 原子炉計画
 スペイン、メキシコ、パキスタン、イラン、ノールウェーの5ヵ国の夫々計画協定および燃料供給協定の承認が求められた。

 このうちスペインの原子炉計画はゼロエネルギー高速炉であり、米国は高速炉に燃料供給を行うのは初めてである旨述べ、他の四つの原子炉計画へも燃料供給を行う旨誓約し、全計画は承認された。
議題5. 炉物理研究協力協定
 IAEA・ノールウェー・ポーランド・ユーゴスラビア各政府との間の、所謂NPY協定は1964年に始まったが、本理事会へは、1967年から向う3年間の研究協力の延長について申請がなされた。審議の結果承認された。

 本協力においてIAEAが果す役割は、3国間の科学者および技術者の交流に要する費用の負担である。
議題6. 国際理論物理センター
 同センターは1967年アカデミック年で第一回計画が終了するが、その存続は、客年第10回IAEA総会の決議により決定しており、本理事会における論点は、IAEAが負担する予算規模についてであった。

 会議の2日、3日、4日目の3日間に亘り審議を重ね、米国から提出された決議案も2度修正され、結局以下のように決定した。

 「理事会は、事務局長に対し、年間予算50万ドル、そのうちイタリア政府が1967年度と同額(27万8000ドル)、15万ドルをIAEAが負担、その他はユネスコを含むほかのスポンサーの寄与)とし、1968−69から1973−74アカデミック年をカバーする新協定案をイタリア政府と交渉し、同新協定案を6月理事会に提出するよう要請する。」
議題7. 本機関事業再検討
 客年第10回IAEA総会の決議に基づき、10年を迎えたIAEAの事業を再検討しようという、主に後進国からの要請により行なわれるものである。

 本理事会では、議長からノートが提出され、「4月とその後何度かAd hoc全体委員会を召集して、各国から寄せられたコメントに関し、検討を行い、6月理事会に勧告を行う。」という審議手続きが決定した。
議題8. 放射線事故時における緊急援助協定
 本議題審議は最終段階に達した。冒頭アラブ連合は、本協定審議のこれまでの経緯を説明し、そして、同協定を多国間方式で締結すべきことを強調した。

 インドも、アラブ連合の発言を全面的に支持したが、大勢は、「同協定の多数国間方式を支持する国が数多くあるが、全体委員会の報告を検討し、その報告書及び付録書が、緊急援助協定を結ぼうとする加盟国にとって役立つものと考え、当分の間、放射線事故時における緊急援助について多国間方式を進展させず、事務局長に対し、もし協定を結ぼうという事態になった場合には、モデル2国同協定を提示し、加盟国が要請しているように、この分野における情報、援助、研修を行ない続けるよう要請する。」というオーストラリア提出の決議案を支持し、可決し、本件は、この理事会を以て審議終了となった。
議題9. 国連ファミリー機関の財政
 国連Ad boc委員会勧告のうちIAEAに直接関係あるものは次のとおりである。
(1)2年制の事業計画、2年制の予算編成、2年毎の総会開催。2年制の事業計画は、既に行われているが、後者2項は、IAEAに関する限り憲章の改正を必要とする。
(2)長期事業計画6年サイクルの採択
(3)財政検査室および外務検査員の併置
(4)項目間流用および予備費計上に関する勧告
 本議題について、英国がメモランダムを提出し、総会を、憲章上の問題(たとえば、理事国選出や予算の承認)を大会議で審議し、一般演説などその他の議題を小会議で取扱い、大会議、小会議を毎年1年交代で行なう、つまり、憲章改正を行なわずに実際上毎年行なうことを提案した。

 大会議小会議の性格に関しては各国各様の受取り方をしたが、大多数に賛意を表明し、特に後進国は従来通り毎年行なうことを提案しさえした。

 原則的には英国案が支持されたが、米国、ソ連、議長国ポーランドが行政予算委員会へ委任することを提案したので、同委員会に提出され検討され、6月理事会に勧告を行なうことが期待されるに至った。
議題外 本機関の永久本部
 オーストリア代表から、オーストリア政府の負担で、ウィーン・ドナウパークにIAEA永久本部を建設し、年間1オーストリアシリングで99年間提供したいという申し出があった。事務局長は謝意を述べた。
議題10. 上級職員代表手当

議題11. 一般職員給料の暫定調整
 暫定調整の基礎として、物価上昇率および国民総所得上昇率の平均が3%を超えた場合に調整をはかるため、理事会の承認を求める。という趣旨のものである。

 本理事会では原則的には同意が得られたが、ソ連が、同調整案を国連行政予算諮問委員会へ送付して検討する提案を行なったので、次期理事会審議に廻された。
議題12. とりやめ

議題13. 経常予算項目間流用
 本議題は6月理事会で審議される。
議題14. 事務局長定期報告書
 事務局長から、同報告書(1966年8月から12月までカバー)における重要事項3項目について説明があった。すなわち、(1)電子計算機設置、(2)国際原子力情報組織−仮訳−について、(3)ラテンアメリカ非核武装条約の調印である。

 (2)については、2、3年の予備期間をおいて徐々に始めること、(3)については、同条約に15ヵ国が調印したが、同条約発効条件の1つに、各契約国が、その原子力事業にIAEA保障措置協定の締結がある。

 その条約調印国からIAEAとの協定蹄結の要請があれば、それに応じ、6月理事会で審議する旨、声明が行なわれた。
議題15. 次期理事会予定
 6月13日からIAEA本部において開催。
議題16. 保障措置協定簡便化(南ア提案)
 現行の保障措置協定方式は、将来、数が多くなり複雑になると予想されるので、協定内容を変えず、手続きを簡便化しよう。

 その場合、IAEAと1国間のモデル2国間協定方式にすべきであるという趣旨のものである。我国は簡便化の構想は賛成であるが、2国間ではなく多国間協定方式をとるべきである旨発言した。

 英国は、本件は重要な問題であり検討すべきである旨述べたが、米国、オーストラリアは時期尚早である旨述べ進展はみなかった。
議題17. 1968年度予算案(英国提案)
 1968年度予算の膨張率にあらかじめ枠を設けようというのが主な提案内容である。英国のほかソ連、西独、フランス、ベルギーが賛意を示した。我国は反対した。カナダは原則的に賛成である旨述べた。

 議長は予算の合理的最適利用を用うべきであると結んだ。
議題18. 1969−70年度事業計画および1969年度予算について(カナダ提案)
 1969−70年度事業計画立案および1969年度予算粛成を本年5月に行ない、1068年切めに非公式に理事会メンバーで検討を行なうこと、つまり、事業計画立案および予算編成を理事会の意向を充分反映させるため現在よりもう1年早く行なうことにつき、試験的に1回だけ行なってみようというものであり、同提案は採択された。
議題19. IAEA所属研究所の計画および財政(ベルギー提案)
 研究室の合理性が強調され、行政予算委員会に各国からのコメントが反映される。
議題外 核燃料の加工施設への保障措置の適用(米国提案)
 実際には議題16南ア提案の「保障措置の簡便化」に引続いて審議された。

 その結果、6月理事会において検討手続きを決め、6月以降に検討開始することになり、6月理事会に提出されることに決った。
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