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放射性廃棄物の海洋処分に関する調査研究について



 原子燃料公社は昭和46年度よりの操業開始を目標として再処理工場の建設を計画しているが、同工場より排出される廃液の海洋処分については、放射性廃棄物の海洋における拡散、移行などについて、事前に充分な調査研究が必要とされる。

 原子力委員会は同事項の重要性にかんがみ、昭和41年7月7日次のような委員会決定を行なった。

放射性廃棄物の海洋処分に関する調査研究について

 わが国における原子力開発の進展に伴い原子力施設より生ずる放射性廃棄物の増加に対処して、当委員会は、昭和36年2月、廃棄物処理専門部会を設け、放射性廃棄物の処理処分についての基本方針を諮問した。

 同専門部会は、昭和39年6月、報告書を提出し、当委員会では同報告において必要としている放射性廃棄物の処理処分に関する研究開発の推進を図りつつ、今後の原子力開発の進展に応じて所要の方策をたてることを決定した。

 最近に至り、わが国の原子力発電は漸く本格化し、核燃料の再処理によって生ずる放射性廃棄物、廃棄物処理工程より生ずる固体廃棄物等の適正な処分を考慮すべき段階を迎えた。

 すなわち、再処理事業については、原子燃料公社が昭和46年の操業開始を目途とし諸計画を進めているので、再処理工程において生ずる放射性廃棄物のうち低レベルのものは、環境への放出を検討する必要がある。

 この点に関し、当委員会が昭和40年4月、海外に派遣した再処理安全調査団の報告によれば、諸外国の再処理工場における低レベル廃液は、事前に十分調査研究を行なったうち、環境の事情に応じ、海、河川、地下へ放出している。

 ひるがえって、わが国の場合にあっては、その環境の特殊性から考え、再処理廃液を海に放出する場合の安全確保について調査研究を進める必要がある。

 また、大型原子力発電所等の廃棄物処理工程より生ずる固体廃棄物を海洋に投棄する場合の安全性上の諸問題についても、調査研究の実施を考慮する必要がある。
 一方、放射線審議会は、昭和41年3月、放射性廃棄物を海に処分する場合の基本的考え方について政府に対し具申を行なった。

 この具申によれば、放射性廃棄物に含まれる放射性物質の核種および性質、海水および水産物中の放射性物質の濃度、放出される放射性物質の数量ならびに放射性廃棄物の放出地点について総合的に考慮を払い、最大許容線量をこえないように国民を保護することを基本的考え方として、廃液放出の前にあらかじめ調査研究を十分に行なうことが必要であるとしている。

 海洋に関する放射能の調査研究は、昭和32年以来、大学、国立研究機関等各方面において行なわれてきたが、以上の経緯にかんがみ、当委員会は、この際、下記の方針により低レベル再処理廃液の海への放出に関する調査研究を開始する必要があると考える。

1 低レベル再処理廃液の海への放出に関する調査研究は、昭和41年より開始するものとし、大学、国立研究機関、地元県、日本原子力研究所、原子燃料公社等が協力して総合的に行なうものとする。

2 再処理工場の安全評価は、原子燃料公社の申請をまって再処理安全審査専門部会の審査に基づき建設開始前に行なうが、さらに、低レベル廃液の海への放出については、操業開始前に本調査研究の結果をとり入れて詳細な審査を行ない、その安全確保を図るものとする。
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