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昭和41年度 原子力平和利用研究委託費交付概要


1 原子炉の一冷却系配管の構造設計基準に関する試験研究

(社)日本溶接協会

 (研究目的)
 本試験研究は原子炉圧力容器を含む一次冷却系配管の弱点となる部分およびその近傍に考えうるいくつかの破壊様式のうち低サイクル及び熱疲労破損について検討を加えるものである。すなわち従来の原子炉構造基準は最下応力に対して安全率を設定する考え方が根幹をなしていたが、本研究では最近採り上げられている低サイクル疲労および熱疲労に関して一次冷却系配管用材料および溶接継手の疲労破損を検討し、これの防止に役立つ資料を得る。

1 溶接欠陥が低サイクル疲労強度に及ぼす影響に関する研究
 溶接に含まれる溶接欠陥が、低サイクル疲労強度に及ぼす影響を明らかにする。

2 小型試験片による歪制御低サイクル疲労試験
(1)室温における母材および溶接継手金属の歪制御低サイクル疲労強度に及ぼす切欠効果
(2)切欠靭性が歪制御低サイクル疲労強度に及ぼす影響
(3)歪比が歪制御低サイクル疲労強度に及ぼす影響
(4)低サイクル疲労に伴う材質変化の金属組織的解析
(5)高温における歪制御低サイクル疲労強度
3 低サイクル疲労亀裂の伝播開始条件ならびに伝播速度に関する研究
 A302B材での低サイクル亀裂の伝播速度および低サイクル疲労亀裂が切欠から伝播を開始するに充分な力学的条件を把握する。

4 非歪常熱応力の繰返しによるパイプの熱疲労破壊試験
 高温低温槽に交互にパイプをつけることにより非歪常熱履歴を与えてクラックの発生状況を調べる。

5 小型中空丸棒による熱疲労試験
(1)母材の熱歪及び機械的歪重塁による熱疲労試験
(2)溶接継手金属の熱疲労試験
(3)熱サイクル疲労における材質変化の金属組織的解析

2 燃料集合体のバーンアウト機構に関する試験研究

(社)日本機械学会

 (研究目的)
 水冷却型動力炉の熱設計において経済性および安全性の高い設計を行なうために必要な研究のうち、バーンアウト現象の機構については充分な解明がなされていない。データの散乱の大きいバーンアウト現象について、40年度に行なわれた単一加熱棒実験に引続いて、集合加熱体に関し、研究を実施し熱設計のための資料を得る。

 (研究内容)
1 予備解析
 40年度の本研究の実験結果と、いままで行なわれたクラスター型燃料に関するバーンアウトについての実験結果を合わせ検討し、単一加熱体と集合加熱体とのバーンアウト機構の差異の状況を把握するとともに、燃料体の各種の要因がバーンアウトに及ぼす影響の大要を把握する。

2 低圧バーンアウト実験
 直径が2.5mmの模擬燃料体が4本の集合加熱棒について、40年度と同一テスト部で実験し、各種のループ特性によるバーンアウト熱流束の値のバラツキがみられるか、もし異なればどの程度であるかをみ、更に変動の要因を解明する。

3 高圧バーンアウト実験
 直径が2.5mmの模擬燃料体が4本の集合加熱棒について、40年度と同一テスト部で実験するとともに、更に40年度の模擬燃料体と同一直径の10mmで4本の集合加熱棒を用いて実験し、1本の模擬燃料体の実験結果が、そのまま多数の燃料体を有する原子炉に適用できるかどうかを検討する。

3 軽水冷却型原子炉の安全性に対するジルカロイの
水素化物の影響に関する試験研究

(財)日本原子力安全協会

 (研究目的)
 軽水炉用燃料被覆材としてのジルカロイについては含有方向性水素化物の問題が重要視されている。
 本試験研究は軽水炉用燃料中の水素化物の挙動とその安全性に及ぼす影響との関連を究明し原子炉の安全性に対する基礎資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
(1)安全性からみた水素化物を含むジルカロイの挙動
 軽水炉の燃料寿命中に腐食によって生じた水素がジルカロイ中に入ることによってジルカロイ中の水素濃度は平均数十ppmになるが、これが被覆管の製造条件、合金組成(ジルカロイ2か4か)、燃料の使用条件下の機械的、熱的、その他の応力と温度変化によってどのように分布するか、特にどのような方向性水素化物を生ずるかをくらべ水素化物が被覆管の安全性にどのような影響をもつかをしらべる。

(2)軽水炉使用条件下でのジルカロイへの水素吸収に対する諸因子の影響
 軽水炉燃料使用条件下でジルカロイ中に水素が入ってゆく状況が管の製造条件、合金組成(ジルカロイ2か4か)、使用条件下の温度、応力条件などによりどのように影響されるかをしらべる。

4 原子炉格納容器および圧力容器の耐震設計のための
振動解析法に関する試験研究

(社)日本機械学会

 (研究目的)
 原子炉の圧力容器および格納容器は、それ自体、また内蔵する炉心構造体および接続される配管系との関連において、その振動特性を知ることが、原子炉の耐震設計上重要である。

 構造物としての格納容器の地震動、炉心構造体の安定性、配管系の境界条件といったかたちで容器の振動解析結果は耐震設計に寄与する。

 本研究は、任意形状の回転対称形容器の振動解析プログラムを開発し、それと平行して模型実験により計算精度を検討する。

 (研究内容)
1 殻体振動解析プログラムの開発
 格納容器、圧力容器など回転対称な殻体の振動解析用計算プログラムを開発する。回転対称体を円錐台もしくは円筒に分割し、円環沿いの振動型を仮定することにより、対称軸を含む平面内の一次曲線の振動解析に帰着する。

2 模型による振動解析
 鋼製および合成樹脂の容器模型を作製し、スカートの有無など形状の変化による振動型の変化を主として振動振幅の面から検討する。また、スカート付け根付近など応力を測定してモーメントなどの面からも検討する。

3 模型の強制振動応答測定
 2項で応力測定を行なった模型を振動台上に載せ水平動で加振し、各部の応力を測定し、2項の結果と比較する。また静的加力試験を行ない比較する。

4 回転対称殻体の相似則の理論的検討
 1項の振動解析は薄肉のものを対象とし行われるので、肉厚比の異なるものへの適用範囲の検討を相似則の検討といった形で理論的に行なう。

 また計算結果を殻体外の系の振動解析の入力データとして使用する方法についての理論もあわせて検討する。

5 原子炉のパルス運転による反応度事故解析に関るす試験研究

(株)日立製作所

 (研究目的)
 動力炉の安全性に関しては、理論計算は充分なされているが、実験データは乏しい。特にわが国では即発臨界以上の反応度を投入される炉は皆無である。このためHTRのパルス運転を行ない。軽水動力炉の安全性に関する実験データを得る。すなわち、パルス運転による炉の核的、熱的動特性の測定および検討、これらの諸特性を含む理論計算との比較により反応度事故解析の資料を得る。

 (研究内容)
 現在のHTRの炉心構造に新燃料および、パルス用制御棒を装備し、即発臨界以上の反応を投入し、炉の出力を瞬間的に高出力に上昇させる。負の即発温度係数の大きいUO2ペレット燃料体を用いて炉出力を下降させ得るので、数十耗秒のパルス巾を得る。その間、炉出力変動炉周期、燃料体、被覆、冷却水温度等等の測定を行なう。

1 パルス実験
 パルス運転用炉心で、臨界試験、中性子束分布、制御棒反応度、燃料棒反応度、ボイド反応度、温度係数、出力係数等の特性試験を行なった後、パルス運転を実施する。パルスの投入反応度は最初即発臨界以下より始め、データの集積を行ない。安全性の確認を行ないながら増加させる。

2 測定
 炉心に配置された中性子検出器の出力を増幅し、その出力によって、パルス出力の型、炉周期、最大炉出力、炉出力の積分値を求め、Excursion時の動特性計算結果と照合する。

 また、燃料中心、被覆表面、冷却水中等に熱電対を配置して、各点の温度を測定し、過渡的な燃料の挙動を求める。

3 計算
 反応度事故解析計算コードおよび核熱結合計算コードでHTRパルス運転に関する計算を行ない、実験結果と比較検討する。

6 放射性ヨウ素除去用フィルターに関する試験研究

(株)日立製作所

 (研究目的)
 水冷却型原子炉の最大仮想事故の際に原子炉格納容器中に放出される放射性ヨウ素を除去するため、活性炭フィルタおよび粗、密フィルタを組合せたユニットを試作し、これの性能確定試験を行ない、放射性ヨウ素フィルタユニットの製作のための資料を得る。

 (研究内容)
 実用規模(縦横60mm、厚さ20~30mm)の活性炭フィルタを試作し、これのヨウ素除去率を測定する。さらに活性炭フィルタの前面に微粒子除去用の粗フィルタおよび密フィルタを設置したユニットを作り、各フィルタ部分および全フィルタユニットにおけるヨウ素の除去率を求める。

 ヨウ素の測定精度を大きくするため、放射性ヨウ素を用い、フィルタの除去率は、フィルタの前後におけるガス中のヨウ素の一部をコールドトラップで捕集し、これのγ線を測定することにより求める。

 ガス温度、ヨウ素濃度、ガス線速度、水蒸気量などをパラメータとして、ヨウ素除去率を測定するとともに、フィルタ各部分における圧力損失を測定する。またヨウ素化合物についてもこれの活性炭による吸着除去率についても検討する。

7 格納容器スプレイによる高温過程における
ヨウ素化合物の水洗効果に関する試験研究

三菱原子力工業(株)

 (研究目的)
 軽水型動力炉の一次冷却材喪失事故時に格納容器内に放散されると考えられる放射性核分裂生成物のうち、人体に最も有害なヨウ素およびヨウ素化合物の格納容器内スプレイによる水洗効果を求め、格納容器スプレイの機能評価に関する基礎資料を得る。

(研究内容)
1 スプレイによる水洗効果による研究
 水洗用スプレイノズル、ヨウ素導入系およびサンプリング系を有する試験容器中に、高温高圧蒸気を送入し、試験温度に到達せしめた後、非放射性ヨウ素あるいはヨウ素化合物を導入し、冷水のスプレイを行なう。スプレイ過程における容器内気相中のヨウ素あるいはヨウ素化合物の濃度変化および、水洗されたヨウ素およびヨウ素化合物の量をサンプリング分析によってもとめ、下記の事項を検討する。
①高温からの自然放冷過程におけるヨウ素化合物の系壁への吸着効果
②高温からのスプレイ冷却過程におけるヨウ素化合物の水洗効果
③ヨウ素およびヨウ素化合物の水洗効果におよぼすスプレイ水への添加の効果
2 ヨウ素およびヨウ素化合物の気水分配に関する研究容器内に一定量の水とヨウ素あるいはヨウ素化合物を導入後、所定温度に保ち、平衡に到達せしめた後、容器内空気と水相をサンプリング分析し、ヨウ素およびヨウ素化合物の空気相間の分配係数を測定し、下記の事項を検討する。
①ヨウ素およびヨウ素化合物の空気相-水相間の分配におよぼす温度、濃度および添加剤の影響
②スプレイによる水洗効果と分配係数との関係

8 風向変動幅による大気安定度決定法に関する試験研究

(財)日本気象協会

(研究目的)
 原子力施設の事故の場合、直接にかつ簡易に測定できる風向変動幅によって、下層大気の安定度が直ちにわかるように英国方式を改良し、また、下層大気の鉛直構造を把握して拡散推定の数値研究を行ない、緊急時における環境の安全確保のための資料を得る。

(研究内容)
1 風向変動幅の標準偏差(σA)による英国気象局方式の改良
 風向変動幅測定器によって容易に得られる変動幅の標準偏差を実験的に集積して、英国法との対応において改良する。

2 風向変動幅の標準偏差(σA)の鉛直構造に関する研究
 風向変動幅の標準偏差(σA)は、高さの関数である。そこで搭上約40、20、10、5mの各高度における(σA)を測定して、気圧傾度などとの関連において鉛直構造の研究を行なう。

9 原子炉の緊急事態による環境放射能の
じん速測定法に関する試験研究

(財)放射線影響協会

 (研究目的)
 原子炉の緊急事態の際に放出された大気中の放射能を測定することは、付近住民の安全の上から、緊急かつ正確を要するものである。このため、環境放射能のじん速測定法を確立し、放射能汚染をじん速に把握し、その対策にいかんなきを期する為の資料を得る。

 (研究内容)
1 放射性ヨウ素フィルタ捕集効率に関する研究
 数種のフィルタを用いて、放射性ヨウ素を含んでいる混合ガスを、濾過し、放射性ヨウ素濃度と濾紙に捕集されたヨウ素濃度から、捕集効率を求める。

2 放射性ヨウ素フィルタの形状と測定機器の検出効率に関する試験研究
 円筒型、板材型等の形式のエアサンプラによって捕捉された放射性ヨウ素をGM計数管およびシンチレーションカウンタで測定し検出効率を求める。

3 放射性ヨウ素の葉面付着に関する試験研究
 大気中の放射性ヨウ素による汚染程度と植物体表面への付着状況との相関関係を求める。

10 原子力発電計画における炉型と燃料サイクルに関する研究

住友原子力(株)

 (研究目的)
 原子力発電計画に基づいて、これを構成する炉の型式の組合せにより、発電炉を運転するのに必要なウラン資源量、生産されるプルトニウム量についての計算および燃料サイクル期間を考慮した組合せの計算に関する基本式を確立し、これをコード化して計算機を用いて容易にこの結果を求め得るようにする。

 (研究内容)
1 計算の作成
(1)高速炉と熱中性子炉が併用される時期に燃料サイクル期間を考慮し、プルトニウムを自給する条件下での両者の発電容量を求める計算式を作成する。
(2)熱中性子炉運転に必要なウラン需要量の計算式を作成する。
(3)熱中性子炉、高速増殖炉より生産されるプルトニウム量の計算式を作成する。
2 上記の計算コードの作成を行なう。

3 計算
 上記コードを用いて発電計画、炉特性、炉型構成負荷率、燃料リサイクル期間、高速増殖炉導入時期等をインプットして、高速増殖炉、熱中性子炉の出力、必要ウラン資源量、累計量、プルトニウム量、累計量、自立点等を求める。

4 燃料サイクルの面からみて、動力炉各炉型に要請される特性を評価するための資料を得る。

11 重水減速炭酸ガス冷却型発電用原子炉の解析評価に関する研究

川崎重工業(株)

 (研究目的)
 重水減速炭酸ガス冷却型発電用原子炉の実用化されるであろう時期を想定し、その頃までに達成可能な技術的改良を考慮した発電用原子炉の技術的問題点を明らかにする。

(研究内容)
1 予備解析
 重水減速炭酸ガス冷却型発電用原子炉の改良の方向および重点をどこに置くべきかを検討する。

2 プラント概略設計
(1)プラントの検討
 圧力管内部構造、炉心構造、炭酸ガス条件、2次蒸気条件について検討を行なう。
(2)設計条件の設定
 炉心部配置、構造、燃料交換法、炉心制御方式、プラント機器配置等について決める。
3 核設計
 燃料格子形状、制御方式について解析を行なう。

4 熱、構造設計
 定常熱流力計算、炉心構造計算を行なう。

5 冷却系設計
 熱交換器構造、配置等を検討する。

6 格納、配置設計
 プラント機器の配置、格納方式を選定する。

12 液体金属ナトリウム用機械式ポンプに関する試験研究

(株)日立製作所

(研究目的)
 高速増殖炉の冷却機の本命と考えられているナトリウム用の循環ポンプとしての機械式ポンプを開発するに必要な資料を得る。

(研究内容)
1 温度分布の測定
 Naは高温になるので、上部の駆動部へ伝達される熱量を求めるために回転試験装置に熱電対を取付け、各部の温度を測定する。

2 運転方法の検討
 電動機入力、電磁継手の励磁電流、ポンプの回転数トルクおよび温度分布を調べ、起動および停止時の適切な運転法ならびに異常の発見法を検討する。

3 ポンプ特性試験
 Naの場合の流量-揚程ポンプ特性を回転数をパラメータにして求め、水の場合のポンプ特性と比較して相関性を検討する。

4 軸受部およびシール部の耐用試験
 約1000時間、約400℃のNa中で試験運転をした後、Naの潤滑がよく行なわれているかどうか、軸受金属がどのように変化しているか、硬さおよびアラサの測定ならびに顕微鏡による観察によって検討する。シール部についても同様に検討する。

5 保守点検の操作法の検討
 Naは、溶融状態にあれば空気中で発火の危険がある。発火させずにNaから装置を抜き出すにはどうするか、また洗浄するにはどうするか方法を決定する。

13 液体金属ナトリウム用フリーズシール弁に関する試験研究

(株)岸川特殊弁製作所

 (研究目的)
 ナトリウム用機器、部品の日本での開発の歴史はまだ浅く、弁については尚更である。実用段階までは幾多曲折があると思われるが、大型化、高温化になることは必至であるので、大型化に適当し、熱応力、熱衝撃に強いフリーズシール弁非溶接接手等の試作試験を行ない、高速増殖炉の開発に資する。

(研究内容)
1 フリーズシール弁に関する試験研究
 口径3Bのフリーズシール弁を設計試作して、下記の試験を行なう。
(1)耐圧試験
(2)気密試験
(3)真空試験
(4)弁係数の測定
(5)圧力損失の測定
(6)熱衝撃試験
(7)温度分布測定
(8)ハンドル回転トルク測定
(9)漏洩試験
等を実施する。

2 非溶接接手に関する試験研究
 従来の突合せおよび差込み溶接式に替わる簡単で機能上からも、安全性経済性からも有利な高温用接手の試作を行ない、耐圧試験、気密試験、真空試験、熱衝撃試験およびそれによる歪みなどを求める。

14 間接サイクル軽水冷却型船舶用原子炉の解析評価に関する研究

(社)日本造船研究協会

 (研究目的)
 間接サイクル軽水冷却型船舶用原子炉(出力184MWt、平均燃焼度27000MWD/t、平均濃縮度5.36%程度)、プラント動特性解析、貫流型蒸気発生器の動特性解析を行ない、今後の開発、実用化のための問題点評価の資料を得る。

 (研究内容)
(i)動特性解析に必要なデータ計算

(ii)負荷変動に対するプラント動特性の検討
 プラント過渡特性解析に必要なモデルを設定し、タービン負荷変動に対する炉出力の追従性、蒸気ドーム体積を変えた場合のプラント総合特性等を検討する。

(iii)貫流型蒸気発生器の動特性解析
 炉出力、蒸気負荷、給水流量等の変動に対する蒸気発生器の安定性、応答特性を検討する。

(iv)貫流型蒸気発生器の構造の検討
 対象炉に適応する2型式の貫流型蒸気発生器(ズルツァー型、ベンソン型)について、構造上のパラメータが伝熱面積、圧力損失等に及ぼす影響を調査し、静的な伝熱特性、水力特性を解析する。

(v)船体動揺の影響についての検討
 炉出力に対する船体動揺の影響につき検討する。

15 放射性スラッジのアスファルトによる固形化に関する試験研究

(株)荏原製作所

 (研究目的)
 放射性液体廃棄物の処理に伴い排出される濃縮されたスラッジやスラリの処分に安全性と経済性の両面から、従来法を改良していくことが望まれている。

 スラッジやスラリは通常濾過や蒸発によってさらに脱水された後、セメントやその他の固化剤によってコンクリート容器、ドラム缶などの中で固形化され、貯蔵されている。この場合容積が増加することなく、安定な固体に固形化しうる研究が海外においてそれぞれの国情に即して行なわれている。

 有効な固形剤としてアスファルトがあげられているが、これは比較的安価で、混合する場合に加熱することにより、スラッジ等の脱水が行なわれ、経済的に大いに寄与することが期待できること、さらにアスファルトははっ水性であり、分散した放射性物質の分散滲出度が低いため直接貯蔵が可能であるなどの利点がある。

 したがって、わが国で入手可能な安価なアスファルト材料に関して処理技術を確立することを目的とする。

 (研究内容)
 試験研究については主として以下の点について実施する。

(i)国産アスファルトの性質を検討し固化処理に使用可能なものをあらかじめ選択する。

(ii)凝集沈殿処理によって生じる放射性スラッジのうち炭酸カルシウム系、フェロシアン化系、水酸化鉄系などのものを作製する。

(iii)加熱攪拌槽を試作してアスファルトとスラッジの混合固化試験を行なう。

(iv)固化生成物中の放射性物質の水中への滲出試験を行なう。

16 沿岸における放射性物質の動向および分布に関する試験研究

(学)近畿大学

 (研究目的)
 海水中の放射能については、数年来、物理的、化学的および生物的観点から調査研究が行なわれてきたが、これらは主として静的状況下に行なわれたものであり、更に浪、潮汐、潮流、風力、温度等の海象上の諸物理的要因が広範囲に変動する沿岸で、放射性物質の挙動を把握する必要がある。以上の見地から、年間を通じて沿岸における海水中の放射性物質の動向および分布を動的観点から明らかにすることを目的とする。

 (研究内容)
(1)トリウムあるいはトリウム崩壊物の動向、分布に関する研究、海象の変動下における海水中放射能の動向および分布をより明確に把握するために、海水中に通常微量含まれ、しかも放射性降下物などと混同するおそれのないトリウムが、大阪湾北部神戸市深江海岸高橋川の上流から河川を通じて微量流入する現象に着目し、河口、港湾水域における放射能を調査研究する。すなわちトリウムの測定は河口付近の河川、および沿岸水域において海象条件に画して採取した試料につき、化学的測定法により測定する。

(2)トリウムの測定法に関する研究
 トリウムを選択的に測定する方法を開発利用する。すなわち、試料中のトリウムを薄い金箔に電着し、この電着試料をガラス面に密着し、速中性子照射を行なう、そしてガラス面を化学的に処理してガラス面中に生じた核分裂片による飛跡数からトリウム量を推定する。

17 凝集沈殿法による放射性ルテニウム除染に関する試験研究

大阪府

 (研究目的)
 放射性廃水の凝集沈殿処理において、放射性ルテニウムの除去は、水溶液中での化学的挙動がきわめて複雑であることから、非常に困難なものの一つとされている。

 ある種のイオン交換セルローズをベントナイトによる高分子凝集の助剤として利用した際、イオン交換セルローズとベントナイトが結合して一種の“有機粘土複合体”が形成され、これがルテニウムの除染に大きい効果があること、そしてこれにより中性条件で高い除去率が得られることを見出した。

 本試験研究は、廃水中に共存イオンが多く含まれている場合の除染特性を調べ、イオン交換セルローズ助剤の実用性を検討し、さらにルテニウムの除染に有効な“有機粘土複合体”を主体とする新しい充填ろ過剤の開発試験を目的とする。

 (研究内容)
(1)ルテニウムの除去率に及ぼす共存イオンの影響
 ルテニウムが多く含まれている中、低レベル放射性廃水中には硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの共存する場合が多い。これら共存イオンの除去率に及ぼす影響を調べ、イオン交換セルローズ助剤の実用性を検討する。

(2)イオン交換セルローズ・ベントナイト複合体の除染特性
 有機粘土複合体を主体とした有効な充填ろ過剤を開発するための第一段階として、有機粘土複合体の膨潤を防ぐ方法を研究する。すなわち、一定の組成をもつ有機粘土複合体に有機凝集剤を加えて完全に凝結させ、ガム状にして脱水する。次にこれを氷室中で凍結後、再び融解、乾燥する。

 このような処理方法での最適条件を求める。こうして得られた有機粘土複合体の精製物によるニトラトロルテニウム錯体の除染特性をバッチ法により調べる。硝酸イオンおよび亜硝酸イオンが共存する場合についても同様の試験を行なう。

18 核原料物質鉱山のラドン娘元素除去装置に関する試験研究

(学)早稲田大学

 (研究目的)
 ラドンの娘元素の摂取により核原料物質鉱山の作業者が放射線障害を起すことが問題となっている。

 従来鉱内作業者は普通の防塵マスクを使用してきたがラドン娘元素に対する濾過効率は相当低く効果は殆んどなかった。鉱山内の作業空間は極めてせまいので除去装置は小型で、しかも適当な動力によって必要量の空気を自動的に供給するものでなければならない。本試験研究によって、実用的な方法で娘元素を有効に除去できる装置を開発する。

 (研究内容)
1 ラドン娘元素除去装置の設計試作
 グラスウールを使ったプレ・フィルタに、電圧を与えたカバー・ウールもしくはカバー・メッシュフィルタ等を組合わせたものとまた同じプレ・フィルタにDHE濾材を組合せた方式の除去装置を試作する。

 前者については、電圧の供給法、組合せ法等、後者については配置等に関して除去効果を測定する。
 動力源としては、電気または圧縮空気を使う。電気の場合の軸流型ファンの組合せ方法ならびに圧縮空気の場合のジェットの消音法、ジェットによる吸入空気量とジェット流の経済的な配分の割合およびジェット流の濾過方法等についてその効果を比較検討する。

 開発する液過装置は、50l/minの個人用のものと2-8m3/minの大型のもの2種とする。前者は主として高性能濾材を使用し、後者は電気集塵法を主体として除去する。

 集塵前後に凝結核投入を行なう。

2 性能試験
 試験は、除去後の娘元素の危険性の評価を中心に装置の耐久性、作業に及ぼす影響、運転経費等について行なう。

19 重汚染区域内作業用加圧服型防護服に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

 (研究目的)
 ホットケーブの内部等放射性汚染が起こりうる場所において作業を行なうためには加圧服型防護服が使用されなければならない。加圧服型防護服は既に国産品があり、日本工業規格も制定されているが、その安全性についての実験的研究は殆んど行なわれていない。

 本研究は、現時点において安全性の点で一応信頼し得る加圧服型防護服を開発し、その安全使用限界、至適使用条件を考察し、設計から製造方法および国家規格の修正に必要な資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
 重汚染区域で使用する防護服および呼吸用保護具に数種の型があり、本年度は、このうち最も開発を急ぐ次の2つの型(PVC one-piece-pressurized Suit,two-piece PVC Suit)の加圧服型防護服の開発を行なう。

1 排気パーツの開発試験
 適切な圧差で内→外の方向に確実に作動して排気し外→内の方向の気流に対してはできるだけ完全に気流をしゃ断し、この際に服内に入る汚染空気をできるだけ少量にとどめ、かつ、これを高能率に濾過するような数種の排気弁を試作し、最も目的に適したものを選択し、その安全な使用限界を検討する。

2 エントリーパーツの開発試験
 着脱、とくに脱ぐときに下着を汚染するおそれが少なく、かつ、着用時に外部よりの汚染空気の侵入を確実に防止し得るようなエントリーパーツを試作し、至適のものを選択すると共に下着を汚染するおそれの最も少ない脱ぎ方について検討する。

3 材料のシーリングテスト
 材料のシーリングの良否をガス浸漬試験によって行ない最良のシール法を選択する。

4 完成品の放射性ガス浸漬試験
 上記1、2、3の試験結果の選択された仕様により試作した防護服の放射性ガス浸漬試験を行ない、その性能、限界使用条件、最適使用条件を検討する。

20 放射線障害防護薬剤に関する試験研究

(財)原子力安全研究協会

 (研究目的)
 放射線照射に由来する障害の有効な防護薬剤ならびに放射性ヨウ素解毒薬剤に関する開発を目的とし、各種の化合物について合成ならびに効力試験を行ない実用化の可能性を究明する。

 (研究内容)
(1)放射線防護薬剤の合成研究
①エチレン、ジイソチオ尿素、プロム水素酸塩
②2-(α-アミノジチオエチル)ベンツイミダゾール塩酸塩
③フェニル、チオカルバミン酸エチル
④N-P-エチルチオフェニル-N-ジメチル-チオ尿素
⑤2-(フェニル、カルボエトキシ、メチル)-チアゾリン-4-カルボン酸
 などについて合成研究を行なう

(2)防護薬剤の効力に関する研究
(A)外部照射防護薬剤の効力試験
①防護薬剤の毒性試験
②防護薬剤の効力試験
(B)体内汚染排除剤の効力試験
①抗甲状腺剤に関する試験

21 透過型ベータ線厚さ計の安全性に関する試験研究

(社)日本電気計測器工業会

 (研究目的)
 本試験研究はRI応用計測のうち、普及度の最も高い透過型ベータ線厚さ計について、放射線障害防止の観点に立ち、その安全性の解明に関連した耐熱性、特に火災時における安全性についての資料を得ることを目的とする。

 (研究内容)
1 耐熱性、特に火災時における試験条件に関する研究
 工業計器としての装置、場所、条件を加味し、火災時における耐熱性を検討し、これに即応した試験条件などを調査研究するとともに、上記試験の実施のための条件を検討する。

2 線源容器の耐熱的安全性に関する試験研究
 透過型ベータ線厚さ計の密封線源容器について、その耐熱的安全度の解析に必要な基礎的条件を調査する。
(i)温度試験
 型式の異なる5種の線源容器を炉内に入れ、温度を上昇し、線源容器の状態を研究する。

(ii)RI飛散度の研究
 線源を装備した線源を炉内に入れ、温度を上昇し、RIの飛散度を測定する。
3 厚さ計の安全性の解析
 上記の試験研究に基づき、耐熱性、とくに設置場所、使用条件に対応する線源及び線源容器の状態の変化を解析し、ベータ線厚さ計の安全性評価のための基礎的条件を検討する。

22 食品照射における放射線効果の評価法に関する試験研究

(社)日本放射性同位元素協会

 (研究目的)
 食品照射の研究は、その性格上工学、農学、医学など広汎な分野の共同研究が必要である。このような将来の本格的研究の段階において、データの比較検討、研究成果の総合的判定を行ないながら研究を総合的かつ組織的に推進していくためには、本格的研究に先立ち、線量および線量率の測定法、主要な照射条件、微生物および食品の成分変化の検査法等の標準化が確立されねばならない。

 本研究は、このような諸点に関して異なる研究機関による種々の線源ならびに照射対象物の研究を通じて照射線量、吸収線量等の照射条件の統一的判定法の確立を目的とする。

 (研究内容)
(1)線量および線量率の測定法
 対象物の種類、その状態、包装方法などについてγ線源と電子線発生装置を用いた場合の測定法の検討を行なう。特に食品照射に必要なメガラドレベルの大線量の迅速かつ容易で正確な測定法を検討する。

(2)照射条件
 照射にともなう温度上昇および照射時に存在する酸素の効果について測定する。温度上昇は、比熱の異なる数種の食品ならびにその成分について熱電対式温度測定記録装置を用いて測定し、線量と温度上昇もしくは発熱量との関係を求める。また照射時および照射後の酸素の効果を成分変化と殺菌作用とについて測定し、検討する。

(3)放射線の殺菌効果の判定および殺菌線量の決定
 各種食品微生物の検査法、とくに照射した場合の生菌数測定方法を微生物の種類、照射条件、培地の種類、培養方法について検討し、その標準化をはかる。また完全殺菌線量の判定法も検討する。
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