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IAEA2月理事会報告



 IAEA2月理事会は去る2月22日午後3時からIAEA本部で開催されたが、以下その概要について報告する。

§1. 議題の採択
 当初予定されていた仮議題(GOV/1101)のうち、英国の施設への保障措置の適用、保障措置のための査察員、原子炉計画、政府間機関とIAEAとの関係、および科学諮問委員の任命の各議題は今理事会では討議しないこととし、仮議題を修正の上採択した。
§2. 副議長の選任
 副議長チェッコスロバキア代表F.Hercik氏の死去にともない、新副議長の選任が行なわれ、新副議長としてチェッコスロバキアの新代表Neumann氏が選ばれた。
§3. 1966年度のIAEA技術援助計画について
 技術援助委員会が作成した援助計画(GOV/1103)について意見が求められた。低開発国にとって、技術援助は非常に有用であるので、今後とも大いに技術援助を促進して欲しいとの二、三の意見が述べられたのみで、各国代表とも技術援助委員会の報告書ほ妥当なものであるとして、理事会としてこれを了知した。
§4. 1966年度事業計画に対する資金配分
 1966年度事業計画に対する資金配分の事務局案(GOV/1112)に対して意見が求められた。アルゼンチン代表から事務局案の不明確な点について質問がなされたのみで、異議なく採択された。その結果、1966年度の事業資金として合計1,979,000ドルが認められたこととなった。
§5. 保障措置
(a)二国間協定への保障措置の適用
 米-ブラジルの二国間協定の保障措置のIAEAへの移管について意見を求められたが、各国特に意見はなく、提案通り承認された。

(b)保障措置の再処理施設への拡張
 まず、事務局から1966年の後半に米国のバッファローの近くにある再処理施設で、現在IAEAが保障措置を行なっているヤンキー原子炉の使用済燃料を再処理する予定になっており、その施設に対して保障措置が要請される旨説明があった。

 これに対しオランダ代表から再処理施設への保障措置の拡張に対して理事会メンバーを中心としたワーキング・グループを作り早速検討を始めてはどうかとの提案がなされた。

 本提案に対して米国がまずこれを支持し、各国とも、オランダの提案に賛成したが、ただインドのみがもう少し経験ができるまでは、ワーキング・グループの設置を見合せてはどうかとの発言を行なったが、結局オランダ案が承認された。

(c)保障措置の将来経費について
 インドからは、今後保障措置の費用は急速に増して行くが、この中で低開発国の原子力発電所の保障措置のために占められる割合は非常に少なく、二国間協定によるものは、関係国の費用によるべきであるとの意見があり、又チェッコ等からは資材等を供給した国の費用で保障措置は行なうべきであるとの意見が、またフランスからは保障措置の費用は発電コストに占める割合は非常に少ないので、二国間にもとづくものは関係者で賄うべきであるとの意見等、保障措置に対するIAEAによる費用の支出に反対する意見も述べられたが、全体としては保障措置はコミュニティー全体の利益のためにやるものであるからIAEAが支出するのは当然であるとの意見が多く述べられた。

 また、費用の見積りについては、英国等から現段階ではまだ経験不足等の点もあり必ずしも可とし難いとの意見があり、結局、本件は、
(1)本件についての議論は一応延期する。
(2)事務局に費用について更に検討することを要請する。
(3)適当な時期に問題点を検討するた射こ理事会に委員会を設置することもありうる。
ということで意見が一致した。
§6. 放射線事故時の緊急援助について
 放射線事故時の緊急援助に関する専門委員会の報告書(緊急援助に関する協定案)(GOV/1111)について検討がなされた。

 まず英国から本協定実は、IAEAの役割、責任条項争議の解決、協定の形式について多くの問題が残されているので、数時間、理事会での検討を延期させて欲しい旨提案がなされた。

 フランスもこの提案を支持したが、ソ連からロビーで本件についての非公式な議論を始める前に、各国代表の本件に対する意見を聴取しては如何との提案がなされ、この提案が認められ各国代表が本件についての意見を述べることとなった。

 主として開発国の代表からは本協定案は二国間協定のモデルとすべきであるとの意見が述べられ、低開発国の代表からは多国間の協定にすべきであるとの意見が述べられたが、英国の提案には異議がなかった。

 ロビーでの非公式な検討の結果、翌24日この問題が議題として再びとり上げられた。

 まず米国から本問題を更に検討するために委員会の設置の提案がなされ、更に英国から事務局長に対して、専門委員会の意見のサマリーを全加盟国に通知することを要請するとともに、全体委員会を構成し、可能ならば今秋の総会以前に理事会の検討を得られるよう多国間協定の草案および二国間協定のモデルとしての草案を作成し、その中でのIAEAの役割が如何にあるべきかについて明らかにすることを要請する旨の提案がなされた。各国とも本提案に対して異議はなく、本提案が採択された。
§7 憲章第Ⅵ条A・2の改正について
 コンゴから提起された本問題については、全般的にみて、主としてヨーロッパ諸国、共産圏は反対、新興アフリカ諸国は支持する意見を述べ、米国はむしろ第3者的にこれを眺めている態度であった。

 まずガーナから理事会としてコンゴの提案はもっともであるので一応これを了知し、IAEAの憲章を変更するような時期がきたならば、本提案も考慮に入れることにしては如何との提案がなされた。

 各国代表はそれぞれの立場から一応この意見を支持したが、いずれにしても今ば憲章を改正するのに適当な時期ではなくもっと検討を続けるべきであるとの意見が多かった。その結果ガーナ代表が彼の提案を中心として各国代表と非公式に話し合いを行ない意見をとりまとめることとなった。

 翌日、本問題が再び議題としてとり上げられ、理事会はコンゴの提案を了知し、適当な時期まで本件についての検討を取り止めることとし、総会が憲章の規定を再検討することを決定するときに本問題も考慮に入れるべきであるとの意見があることも付記しておくこととなった。また議長から上記趣旨を総会へ提出する年報に記載するよう事務局長に要請があった。
§8 国連ECOSOCへのIAEA報告書について
 事務局で作成した原案(GOV/1110)について意見が求められた。フランス代表は、国連総会への報告およびECOSOCへの報告は別々にする必要はないとの意見を出した。これに対し事務局は報告時期が違うため別々に作成していたが、さらに検討する旨答えた。その他二、三の代表の意見をとり入れて、3月末までの報告を作成することとして事務局案が承認された。
§9 放射線による診察、治療用機器計画について
 ソ連からIAEAを通じて、ビルマおよびイラクへ放射線による診察、治療機器の寄贈をする計画について意見が求められ、各国とも特に意見がなく、原案どおり承認された。
§10 訓練および研究センターへのIAEAによる財政援助について
 各国で訓練研究センターについて種々計画されており、これに伴ないこれらのセンターへのIAEAの財政援助の要請も増加しているので、これらの援助に対してIAEAとして何らかの基準を設けるために事務局で作成した案(GOV/1114)について意見が求められた。

 ソ連等からはあまり厳格な規定は作らないで個々の各ケースについて問題を解決してはどうかとの意見も述べられたが、米、英等大部分の国の代表からは、すべてのケースについて勿論慎重に検討しなければならないが、何らかの指針がある方が望ましい旨の意見が述べられた。

 その結果、今後、事務局長は、かかる問題が提起されたときは、本理事会の意見を反映したうえで事務局で作成した基準の範囲内で処置するものとすることとなった。
§11 IAEA加盟国の申請について
 ウガンダからの加盟が申請されたが各国ともこれを支持し、理事会としては、ウガンダの加盟を歓迎し、第10総会に加盟を推挙することとなった。
§12 2年予算について
 各国代表とも、2年予算の趣旨については異議はなかったが、憲章によって、予算の承認は一年毎に行なわねばならない現状では、実際上如何なる利点があるか具体的にわからないとの意見が多かった。結局、事務局長は、その案(GOV/1113)にしたがって実施する場合に、必要な手段をとるよう要請された。
§13 IAEA職員の報酬について
(a)専門職および上級職員の給与ベースの調整
 国連および国連専門機関の職員の給与が改定されたので、これに準じてIAEA職員の給与も改定するとの案に対して検討がなされた。IAEAも、他の国連機関とその給与水準を合せるのは当然であるとの意見に対して、IAEAは他の国連機関と必ずしもすべての事態を同一視することは妥当ではなく、且つIAEAの予算上からみても望ましくはないので、この案に反対、またはもう少し検討を続け今回は結論を出さず6月理事会にもう一度検討してはどうかとの意見が、ソ連、インド、フランス、アラブ連合等から述べられた。

 結局、意見がまとまらず採決をとることとなり、その結果事務局案に賛成16、反対6、棄権1となり、事務局案が採択された。

(b)一般サービス、保守等の職員の給与ベースの調整

(c)教育費

(d)上級職員の役職手当
 ソ連から上記(a)と同じようにすべきであるとの意見が述べられたのみで、とくに意見がなく事務局案が異議なく承認された。
§14 事務局長の定期報告について
 特にコメントもなく資料(GOV/INF/148,151)が承認された。
§15 次回会議の開催予定
 次回理事会は6月14日午後3時から開催することとし、次の議題を予定することとなった。

(1)第10総会の仮議題
(2)1965年度のIAEAの会計報告
(3)1966年度のIAEA予算
(4)1967年度の予算による1967~68年のIAEAの計画
(5)総会への理事会報告書
(6)IAEAの国連に対する年次報告について
(7)IAEAと他の政府間機関との関係
(8)1966~67年度の理事国の指名
(9)IAEAへの加盟申請
(10)保障措置
(11)IAEAの放射性物質の輸送規則の改訂
(12)技術援助
(13)原子炉計画
(14)放射線診察用機器に関する計画
(15)核物質の供給
(16)科学諮問委員の任命
(17)職員の健康保険
(18)事務局長の定期報告
(19)次回会議の予定
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