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昭和41年度原子力平和利用研究委託費
要望題目および同研究費補助金要望課題


 昭和41年度における原子力平和利用研究委託費に係る試験研究題目および同研究費補助金に係る試験研究課題ならびに交付申請書の提出期間については、昭和41年2月24日付科学技術庁告示第2号および第3号として官報で別紙のように告示された。

 昭和41年度予算政府原案による原子力平和利用研究委託費は165,000千円、同研究費補助金は150,000千円、合計315,000千円である。

 原子力局では申請の締切りをまって直ちに審査を初め、関係各省庁の意見と日本学術会議の推薦する学術経験者の意見を参酌して交付原案を作成し、庁議にはかったうえ、交付を決定する。交付決定の日は40年度の場合7月1日であったが、41年度においては、5月31日を一応の目標としている。

 以下、要望する試験研究題目および課題の内容および選定の基礎となる考え方を示す。

Ⅰ 昭和41年度助成の重点

 昭和41年度助成の重点としては、原子力平和利用長期計画に盛られた開発の実現に資する試験研究をとりあげるとともに原子力委員会におけるその後の審議の結果をも十分とり入れるものとする。

 このため研究委託費の対象としては、原子力施設の安全基準および安全評価に関する試験研究、動力用原子炉の開発および評価に関する試験研究に重点をおくとともに40年度に引き続き放射性廃棄物または放射線障害防止に関する試験研究を行ない、また新たに食品に対する放射線の照射の関連技術に関する試験研究をとりあげる。

 研究費補助金の対象としては、軽水冷却型またはガス冷却型動力用原子炉用燃料の設計または製作技術に関する試験研究に重点をおくものとする。

Ⅱ 委託費

 委託費に係る試験研究は、国が自ら行なうべき性質を有する試験研究のうち、国立機関で行なうよりは他に委託することが当該試験研究をより効果的に遂行しうるものと考えられる試験研究を対象とするものである。

 昭和41年度においては具体的には、(1)原子力施設の安全基準、(2)原子力施設の安全評価、(3)動力用原子炉の開発および評価、(4)放射性廃棄物または放射線障害防止、(5)食品に対する放射線照射の関連技術に関する試験研究をとりあげる。

 これらの試験研究題目は、40年度までの試験研究の成果および遂行状況を勘案し、これらの基礎の上に関連分野の進歩と要請に適合するよう考慮し、かつ系統的に研究が促進されるよう選定されたものである。

1. 原子力施設の安全基準に関する試験研究
 原子力施設の安全基準に関する試験研究は、原子力施設の安全性に関し審査、検査等に際しての原子力施設全体をカバーする基準内規または判断の目安を逐次得ていくための研究であり、その性質上採りあげるべき問題点も多く、相当長期にわたり広く各方面の衆知を結集して研究を進めねばならないものである。

 圧力容器の構造設計基準については40年度までにノズル、スカート部等の不整個所の応力解析、疲労試験等を終了したので、41年度は一次系配管について低サイクル疲労を中心に解析を行ない構造設計基準の基礎を確立する。動力用原子炉の熱設計基準に関しては40年度に引き続いて原子炉炉心の熱安定限界についてとりあげる。

 原子炉用材料の安全基準に関しては、40年度には燃料被覆管の欠陥の強度に及ぼす影響につき研究を行なったが、41年度は燃料集合体の被覆管の破損に関する研究等を行なう。

 原子力施設の耐震設計基準については、構築物の振動特性データの集積と解析を継続するほか圧力容器と配管複合系の振動特性についても考慮する。

2. 原子力施設の安全評価に関する試験研究
 原子力施設の安全評価に関する試験研究は重大事故または仮想事故の際の放射性物質の放出等の状況を解明し、また、万一の事故に備える安全保護施設の各種機器、構成部品等の機能および効果を明らかにし、安全評価のための資料を得ることを目的としているものである。

 このため軽水冷却型原子炉心の安全性に関する試験研究として38年度から冷却材喪失事故時の現象の解明と炉心スプレーの効果についての試験研究を行ない一応の目標資料を得ることができた。

 41年度は原子炉の反応度事故時における炉心の特性についての試験研究を行ない、反応度事故時の現象の解明に資する。原子炉格納施設の構造および機能に関する試験としては、38年度から格納容器スプレーおよび圧力抑制装置の効果について試験研究を行ない、一応の目標資料を得ることができた。

 また沃素水洗効果に関しては、38、39年度に沃素単体、40年度には沃素化合物を対象に低温の状態について試験研究を行なってきたので、41年度は沃素化合物の変温状態における水洗効果についての試験研究を行ない、沃素の水洗効果についての資料の集積をはかる。

 沃素除去フィルターに関しては、40年度に小型の活性炭素フィルターを使用して試験研究を行なったので、41年度では引き続いてより実物規模に近いフィルターを用い、実際に近い状態で試験研究を行なう。

 さらに大気中における放射性ガスの挙動に関する試験研究は、38、39年度で放射性物質の沈着速度と気象条件の関係、大気低層の逆転層および風向変動幅の拡散に及ぼす効果についての資料を得たので41年度は39年度に引き続き風向動幅が拡散に及ぼす影響を解明するための資料の集積をはかる。

3. 動力用原子炉の開発および評価に関する試験研究
 わが国の動力用原子炉開発の進め方については、原子力委員会において動力炉開発懇談会を開催し審議が進められており、次第にその方向も明らかになりつつあると考えられる。

 新型転換炉、高速増殖炉などのいわゆる新型動力用原子炉の開発は、国のプロジェクトとしてその開発を推進することが決定されたときにその総力をあげて行なわれるべきことは当然であるが、これら開発のためには、解決を要する幾多の技術的問題点が山積しており早急にとりあげておくことが適当なものも少なくない。

 他方諸外国において既に開発実用化された型式の動力用原子炉のその後の改良進展の方向を明らかにし、わが国の特殊条件に照らして、その技術的問題点を解析し、これを評価しておくことは、国の施策上また重要なことである。

 以上の観点から41年度は、(1)新型転換炉または高速増殖炉の関連技術に関する試験研究、および(2)発電用または船舶用原子炉の解析および評価に関する試験研究を委託する。

 新型転換炉または高速増殖炉の関連技術に関する試験研究としては、40年度は高速増殖炉関連技術としてのナトリウム冷却系機器の開発をとりあげたが、41年度においては、40年度に引き続き、新型転換炉または高速増殖炉に関連する技術のうちこれらの開発のため早急に着手すべき試験研究で、民間に委託することが適当なものをとりあげる。

 発電用または船舶用原子炉の解析および評価に関す試験研究としては、39年度より、いわゆる在来型動力用原子炉の改良進展の方向とその技術的問題点を把握するため、本試験研究題目をとりあげ、核過熱型発電用原子炉、マグノックス型発電用原子炉の炉心解析およびプラント解析を行ない、また改良ガス冷却型発電用原子炉の炉心解析を実施してきた。

 41年度も引き続き発電用原子炉の総合解析に関する試験研究等を行ない。その技術的問題点の摘出をはかる。

 船舶用原子炉に関しては原子力第2船以降の実用的な原子力船にとう載される船舶用原子炉の改良進展の方向とその技術的問題点を把握するための解析および評価が必要であり、41年度は40年度に引き続いて小型軽量化した軽水冷却型船舶用原子炉の総合解析に関する試験研究を実施する。

4. 放射性廃棄物または放射線障害防止に関する試験研究
 放射性廃棄物の処理に関しては、これまでは主として、基礎的データの集積に主眼がおかれてきたが、40年度に引き続いて中レベル放射性廃棄物の実用的な処理方法、処理技術の開発を重点にとりあげる一方、放射性廃棄物の処分については、まだ基礎的研究の段階にあるので、放射性廃棄物の海洋投棄をはじめ高レベル放射性廃棄物の貯蔵の安全性に関する研究を行なう。

 放射線障害防止に関しては重要な研究題目であるため、40年度に引き続き障害防止用器材、薬剤の開発および密封放射線源機器の安全性に関する試験研究をとりあげる。

5. 食品に対する放射線照射の関連技術に関する試験研究
 食品照射に関しては、食品の流通の安定化をはかるための方策として、放射線照射による保存性の向上が強く望まれており、わが国としても組織的な研究を早急にはかる必要がある。そのためには、研究促進上確立しておかねばならない食品に対する放射線照射の関連技術に関する試験研究をとりあげる。

Ⅲ 補助金

 補助金は民間等で自主的に推進する試験研究のうち、原子力関係技術育成のため国がその試験研究費の一部を交付することにより、当該試験研究が促進され、原子力開発の推進にその成果が期待される試験研究を対象として行なうものである。

 昭和41年度においては、具体的には、(1)軽水冷却型またはガス冷却型動力用原子炉用燃料の設計または製作技術、(2)軽水冷却型またはガス冷却型動力用原子炉の設計または製作技術、(3)原子炉新燃料または原子炉物理に関する試験研究、(4)アイソトープまたは放射線の利用に関する試験研究をとりあげる。

1. 軽水冷却型またはガス冷却型動力用原子炉用燃料の設計または製作技術に関する試験研究
 軽水冷却型またはガス冷却型動力用原子炉用燃料を国産化することは、動力炉開発懇談会においても審議されているように重要なことである。

 これら燃料の開発については、動力試験炉程度の燃料アセンブリーはほぼ炉外性能に関する仕様には準拠したものを試験的に製作し得る段階に一応到達したと考えられているが、例えば、実用炉に使用できる長尺寸法のものの製造経験のまだないこと、実用炉に使用できるという十分な信頼性を実証するための炉外評価試験、照射試験等の経験の不足していることが指摘されており、これら燃料の設計製作技術を早急に確立する必要がある。

 このため41年度においては、(1)燃料集合体の炉外評価に関する試験研究、(2)二酸化ウラン燃料の照射に関する試験研究をとりあげる。

 (1)に関しては、40年度まで実施してきた燃料組立技術をさらに向上することが期待できるものであって、これら燃料集合体の性能解析のための炉外評価試験研究を行なうものを重点的にとりあげる。

 (2)に関しては、燃料集合体の照射試験および振動充填燃料の照射試験を中心にとりあげる。

2. 軽水冷却型またはガス冷却型動力用原子炉の設計または製作技術に関する試験研究
 軽水冷却型またはガス冷却型動力用原子炉のうち、いわゆる在来型と呼ばれるものについてはすでに海外で開発が行なわれており、わが国としてはその技術を導入消化することにより、その国産化が行なわれるものと考えられる。

 しかしながら原子炉技術の多岐にわたる点からして、国産化さらにはその改良行なうためには、なお、わが国で研究開発を行なわねばならない分野も多い。

 41年度はこれらのうち燃料被覆管、制御材等原子炉用材料の製造または加工に関する試験研究につき、助成を行なうとともに原子炉一次系の機器の製造と改良に関する試験研究についてもわが国の技術を活用するものについてとりあげるものとする。

3. 原子炉用新燃料または原子炉物理に関する試験研究
 1および2の課題による試験研究は比較的短期の目標をもって行なわれるものであるが、やや長期的視野に立ち、わが国国内技術の萌芽を育成するために必要と考えられる試験研究がある。

 41年度はこれらのうち40年度に引き続きセラミック系燃料または分散型燃料に関する試験研究をとりあげるとともに原子炉物理に関する試験研究についても助成を行なう。これらの試験研究、とくに燃料についての成果を諸外国において行なわれる結果とも対比して、研究内容の充実をはかる。

4. アイソトープまたは放射線の利用に関する試験研究
 アイソトープまたは放射線の利用に関する試験研究は、民間等における新しい着想に基づく技術の育成をはかることとし、40年度に引き続いて、有機物質の放射線化学反応およびアイソトープまたは放射線利用に関連して、各方面から要望のある放射線の測定方法または測定器材、耐放射線材料の開発についての試験研究を継続する。

 さらに近時研究の進展にともない各方面において関心のたかまりつつある標識化合物の製造、工業利用につき、やや開発の遅れているとみられる製造工程解析への放射線利用に関する試験研究について、また新たに大気浮遊物の変動解明への放射線利用に関する試験研究をとりあげるものとする。

〔別 紙〕

科学技術庁告示第2号
 原子力平和利用研究委託費交付規則(昭和32年7月科学技術庁告示第5号)第1条第2項および第2条第2項の規定に基づき、昭和41年度原子力平和利用研究委託費に係る試験研究題目及び申請書の提出期間を次のように定める。

 昭和41年2月24日

科学技術庁長官 上原正吉

昭和41年度原子力平和利用研究委託費に係る試験研究題目及び申請書の提出期間

Ⅰ 試験研究題目は、次のとおりとする。
1. 原子力施設の安全基準に関する試験研究
(1)圧力容器の構造設計基準に関する試験研究
(2)動力用原子炉の熱設計基準に関する試験研究
(3)原子炉用材料の安全基準に関する試験研究
(4)原子力施設の耐震設計基準に関する試験研究

2. 原子力施設の安全評価に関する試験研究
(1)軽水冷却型原子炉炉心の安全性に関する試験研究
(2)原子炉格納施設の構造及び機能に関する試験研究
(3)大気中における放射性ガスの挙動に関する試験研究

3. 動力用原子炉の開発又は評価に関する試験研究
(1)新型転炉又は高速増殖炉の関連技術に関する試験研究
(2)発電用又は船舶用原子炉の解析及び評価に関する試験研究

4. 放射性廃棄物又は放射線障害防止に関する試験研究
(1)放射性廃棄物の処理又は処分に関する試験研究
(2)放射線障害の防止用器材又は薬剤に関する試験研究
(3)密封放射線源装備機器の安全性に関する試験研究

5. 食品に対する放射線照射の関連技術に関する試験研究
Ⅱ 申請書の提出期間は、昭和41年3月1日から昭和41年3月26日までとする。

科学技術庁告示第3号
 原子力平和利用研究費補助金交付規則(昭和32年4月科学技術庁告示第2号)第1条第2項および第2条第2項の規定に基づき、昭和41年度原子力平和利用研究費補助金に係る試験研究課題及び申請書の提出期間を次のように定める。
 昭和41年2月24日

科学技術庁長官 上原正吉

昭和41年度原子力平和利用研究費補助金に係る試験研究課題及び申請書提出期間

Ⅰ 試験研究課題は、次のとおりとする。

1. 軽水冷却型又はガス冷却型動力用原子炉用燃料の設計又は製作技術に関する試験研究
(1)燃料集合体の炉外評価に関する試験研究
(2)二酸化ウラン燃料の照射に関する試験研究

2. 軽水冷却型又はガス冷却型動力用原子炉の設計または製作技術に関する試験研究
(1)原子炉用材料の製造又は加工に関する試験研究
(2)原子炉一次系の機器の製造又は改良に関する試験研究

3. 原子炉用新燃料又は原子炉物理に関する試験研究
(1)セラミック系燃料又は分散型燃料に関する試験研究
(2)原子炉物理に関する試験研究

4. アイソトープ又は放射線の利用に関する試験研究
(1)標識化合物の製造に関する試験研究
(2)製造工程解析への放射線利用に関する試験研究
(3)大気浮遊物の挙動解明への放射線利用に関する試験研究
(4)有機物質の放射線化学反応に関する試験研究
(5)放射線の測定方法または測定器材に関する試験研究
(6)耐放射線材料の開発に関する試験研究
Ⅱ 申請書の提出期間は、昭和41年3月1日から昭和41年3月26日までとする。
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