資料

動力炉開発の進め方について

-中間段階における-

1.基本となる考え方

 わが国経済の正常な発展を維持するには、低廉で、かつ安定したエネルギー供給の確保をはかる必要がある。
 原子力発電は、その供給の安定性、経済性向上の見とおしおよび外貨負担上の有利性からみて、今後のわが国経済の成長を支え得る有力なエネルギー源であり、その開発利用の意義については異論のないところである。
 原子力発電の実用化は、経済原則にのっとり進められるべきものである。また、その開発利用を進めるにあたっては、わが国におかれた環境に即し、そのエネルギー源としての有利性を最高度にいかすよう努めることが望ましい。そのため、核燃料の安定供給と効率的利用をはかるための国内における核燃料サイクルの確立および動力炉の自主的開発に努めるべきであり、政府としても、その早期実現を期するため、必要な施策を講じ、今後積極的にその推進をはかる必要があると考える。この場合、原子力に関連する科学技術水準の向上と産業基盤の強化が不可欠であることを考慮すべきである。

2.動力炉開発の進め方

(1)核燃料サイクルの確立
 核燃料の入手については当分の間海外に供給を依存することの不安はほとんどないと考えられるので、国際協定の改訂等により確保をはかるものとする。
 国内における核燃料サイクルを確立するためには、早期にウラン燃料の加工および使用済燃料の再処理を国内において行ない、さらに、これらに引き続く適当な時期に減損ウランおよびプルトニウムの利用を行なうことが必要である。
 ウラン燃料の加工事業については、民間において自主的にその確立がはかられることを期待する。なお、在来型導入炉の燃料加工事業については、当面政府は、加工技術の開発に重点をおいて助成し、国産燃料の実用化の促進をはかるものとする。
 使用済燃料の再処理については、将来は民間において実施されることを期待するが、当面は原子燃料公社(以下公社という)において行なうものとする。
 プルトニウムについては、高速増殖炉による本格的利用が可能となるまでは、在来型導入炉等への利用をはかるものとする。このための研究開発は、日本原子力研究所(以下原研という)および公社が中心となって行なうが、このうち、在来型導入炉への利用技術に関する研究については、昭和50年を実用化の目途とし推進する。
 上記のほか、将来新方式の再処理技術の実用化も予想されるので、これに必要な再処理技術に関する研究開発を行なう。また、将来においては、濃縮ウランの国内供給が行ないうることが望ましいので、国産化についての方針を検討し、必要な研究開発を行なう。これらの研究開発は、原研、会社等において実施するものとする。
 なお、特殊核物質の所有方式については、民有化する方針で早急にその具体的措置を検討するものとする。

(2)動力炉の開発
 動力炉を自主的に開発するためには、各型式の炉について、次の考え方で研究開発を進める必要があると考える。
 在来型導入炉については、早期にその国産化をはかることが望ましい。
新型転換炉については①その経済性が在来型導入炉に比し、有利となる可能性があること、②核燃料の効率的利用をはかりうること、および③核燃料利用の多様化をはかりうることの特質をもつものが、わが国の原子力発電計画にとりいれられること、が望ましいので、適当な1炉型を選定し、研究開発をすることが必要である。
 高速増殖炉については、将来、これが核燃料問題を基本的に解決するものであるので、その研究開発を進めることが必要である。

(I)在来型導入炉

 在来型導入炉は、海外ですでに実証されたものであり、わが国における開発は、メーカーが技術導入によって行なうものであるので、その国産化および改良は、主として、産業界の開発に期待するが、政府としては、主として燃料および安全性に関する研究開発について、必要な措置を講ずべきであると考える。さらに、初期段階における在来型導入炉の国産化を促進するために必要な措置を検討すべきであると考える。
 燃料に関する研究開発については、メーカーおよびユーザーが協力して行なう実用化の見込みの強い研究について助成する。この場合、原研の施設(JMTR、JPDR)の有効な活用をはかるほか、必要に応じて海外での照射試験についても助成する。
 安全性に関する研究開発については、再処理施設および使用済燃料の輸送に係る問題を含め、わが国の特殊事情に基づき、かつ、技術導入によっては解決できないものについて研究計画を策定し、国立試験研究機関、原研および公社において行なうほか、委託費等の交付によって民間において行なう。同計画の実施にあたっては、これを効率的に推進するため、日米研究協力等国際協力を行なう。
 また、被覆材、ウランブレンディング等の研究に対し、必要な助成を行なう。
 なお、初期段階の輸入による原子力発電所の建設に対しても、政府は融資、あっせん等所要の措置を講ずべきであると考える。

(II)新型転換炉
 前日の特質をもつ各種の新型転換炉の中から将来、熱中性子増殖炉への発展の可能性が大きく、かつ、先進諸国においても、なお、研究開発の途上にある1炉型をとりあげて、その研究開発を行なうものとする。
 研究開発にあたっては、長期の研究開発期間と多額の研究費の投入を要し、かつ、多方面の協力を必要とすることにかんがみ、国が中心となって推進するものとする。
 その具体的な進め方については、たとえば次のごとき案が考えられるが、ワーキング・グループにおいて、その具体的な進め方を結論づけるための検討を行なうこととする。

(A案)
 早期の実用化を期するため、昭和50年代の初期に実用炉を建設することを目途として炉型の選定を行ない、先進諸国のプロジェクトへの参加、原型炉の建設等により研究開発を推進する。

(B案)
 昭和50年代のなかば頃にその実用炉を建設することを目途とし、炉型の選定を行ない、実験炉および原型炉の建設等により研究開発を推進する。

(III)高速増殖炉
 高速増殖炉の実用化の時期および炉コンセプトは今後次第に明確化されるものと考えるが現時点において、それを確定することはできないので、今後10ヵ年程度は臨界実験装置、実験炉等により高速増殖炉の基本的事項に重点をおいて研究開発を進めるものとする。
 研究開発にあたっては、新型転換炉に比べてもさらに長期の研究開発期間を要すること等にかんがみ、国が中心となって推進するものとする。この場合、国際協力をはかりつつ推進するものとする。
 その具体的な進め方については、ワーキング・グループの検討にまつこととするが、たとえば次のごとき案が考えられる。

(案)
 50年代のなかば頃に原型炉を建設することを目途とし、臨界実験装置による炉物理等基礎研究を実施するとともに、40年代の後半に実験炉を建設し、同炉の活用等により、高速増殖炉の動特性、燃料技術等に関する研究開発を実施する。

(IV)開発体制
 新型転換炉および高速増殖炉の開発体制については、今後の検討にまつこととする。