原子力局

日本原子力研究所とフランス
原子力庁との間の協定について


昭和40年5月10日調印・発効


 昭和39年4月日本原子力産業会議とフランス原子力技術協会との間で開かれた第2回日仏原子力技術会議のさい、協力可能な分野の1つとして取り上げられ、日本原子力研究所とフランス原子力庁(CEA)との間で研究協力協定の交渉が続けられてきたが、このほど最終的な合意に達し、昭和40年5月10日調印、発効の運びとなった。

 研究協定の要旨は次のとおりである。

(目的)原研とCEAとの間で放射線化学の分野のうち添付技術文書により定められるテーマについて①情報の交換②共同研究計画の実施③職員の相互派遣を行ない放射線化学の分野における協力を推進する。(第1条)

(連絡委員会)第1条の目的を円滑に達成するため原研とCEAの間に連絡委員会を設け両者の調整にあたらせる。(第2条)

(情報の交換)科学的情報、工業的、商業的情報は対等に交換する。情報の価値は両者の合意により決定する。(第3条、第4条)

(共同計画)共同計画の分担は両者等しくなるように協定する。成果の利用特許等については、属地主義をとることとし、日本国においては原研、フランス国においてはCEAに帰属し、第3国においては共同所有とする。(第5条、第6条)

(職員の派遣)災害補償については派遣先が負担することとし、相手方を免責する。ただし、故意または重大過失の場合で、非原子力事故の場合はこの限りでない。派遣員の旅費、滞在費、給与は派遣元の負担とする。(第9条)

(有効期間)有効期間は3年間とし、6ヵ月以前の通告により廃棄されない限り自動的に更新される。(第10条)

(紛争処理)連絡委員会で解決できないときは第3者仲裁とする。(第12条)

(添付技術文書)

1.放射線グラフト重合

2.放射線固相重合

3.化学研究のための原子炉の利用

4.RIおよび電子線を用いた中間規模照射の技術

技術文書のテーマは追加することができる。

日本原子力研究所とフランス原子力庁との間の協力協定

 東京都港区芝田村町1丁目1番地に所在し、理事長丹羽周夫を代表者とする日本原子力研究所(以下「原研」という。)と、パリ市第15区フェデラシオン通29-33番地に所在し、事務総長ロベール・イルシュを代表者とするフランス原子力庁(以下「原子力庁」という。)との間において、次のとおり協定する。

第1条 範囲

1-1 この協定は、これに添付された技術付属文書に定められた放射線化学の分野において、原研と原子力庁との協力を推進することを対象とする。将来、他の課題がこれに追加されることがある。この目的のために、

1-2 当事者は、これらの分野において、第3条及び第4条に規定する条件に従い、自己の研究活動の結果得られた知識を交換するものとする。

1-3 当事者は、毎年、合意のうえ、研究の共同計画を決定するものとする。この計画における各当事者の分担は、第5条の規定に従って決定するものとする。毎年の計画は、その実施の1月以前に決定するものとする。

1-4 各当事者は、第9条に規定する条件に従い、その職員を他の当事者のもとに派遣することができる。

第2条 連絡委員会

2-1 第1条に規定する事項を実施するため、連絡委員会を置く。この委員会は、各当事者が任命する同数の委員若干人をもって組織する。

2-2 この委員会の任務は、次のとおりとする。

-  生ずべき問題を解決するための提案を当事者に行なうこと等により、協力の円滑な発展を図るよう配慮すること。

-  協力の円滑な発展を期するため必要があるときは、この協定の変更を両当事者に提案すること。

- 第3条及び第4条に規定する条件に従い、知識の交換を促進すること。

- 毎年の共同計画を決定し、及び必要があるときはその年中にこれが変更されるよう配慮すること。

- 当事者間における職員の派遣を促進すること。

- 両当事者が行なう研究活動が常に調整されるため必要な措置を講ずること。

- 各当事者に関連する企業及び機関相互の関係を円滑にすること。

2-3 この委員会は、少なくとも毎年1回、日本国又はフランスにおいて、一方の当事者の要請により、交互に会議を開催するものとする。

2-4 この委員会は、会議を開催したときは、議事録を作成するものとする。

第3条 自己の研究活動から得られた知識の交換

3-1 交換する知識は、次のとおりとする。

- 科学的知識

- 特許を受け、又は特許を受けていない工業的知識及び商業的知識(製造方法、ノウハウ、施工図、設備計画等)

3-2 発表され、及び発表されていない科学的情報の交換は、連絡委員会を通じて行なうものとする。

3-3 工業的知識及び商業的知識は、第4条の規定又はそのつど定める実施契約に規定する条件に従って交換することができる。

第4条 33に規定する知識の利用方法

4-1 各当事者は、相互の同等の利益と引換えに、特許を受け、又は特許を受けていない自己の知識を他の当事者に提供することを提案することができる。

4-2 原研及び原子力庁は、合意のうえ、各当事者の提案に係る知識の科学的、技術的及び商業的な価値及び重要性を決定するものとする。

4-3 これらの知識の利用条件は、上記の事項を基礎として各場合について締結する個別の協定に定めるところによる。

第5条 共同計画における当事者の分担

当事者は、共同計画を決定するときは、この計画における各当事者の分担をできる限り等しくすることに同意する。当事者は、これらの分担の重要性を算定するため、各当事者の出資の科学的、技術的及び資金的な価値を考慮するものとする。

第6条 共同計画に定める研究活動から得られた知識の交換及び利用

6-1 各当事者は、共同計画の範囲内におけるその分担として行なわれた研究活動が、その研究施設において当事者自らにより行なわれ、又は契約に基づいて第三者により行なわれたかを問わず、当該研究活動のすべての成果を他の当事者に通知することに同意する。

6-2 各当事者は、その研究活動の実施中、報告書を他の当事者に送付するものとし、その周期は、連絡委員会が定めるものとする。

6-3 この計画から得られ、一方の当事者から他の当事者へ通知された成果は、通知した当事者の同意を得ないで発表してはならない。

6-4 共同計画の成果として生じたすべての発明に係る権利は、原研の領域においては原研に、原子力庁の領域においては原子力庁に帰属し、第三国においては当事者の共有とするものとする。

6-5 各当事者は、その領域において、その名義及び費用をもって、6-4に掲げる発明に係る特許権を取得することができる。各当事者は、他の当事者が「同盟条約」に規定する1年の優先期間を利用して当該発明に係るその領域における特許出願を行なうため必要な優先権を他の当事者に無償で譲渡することに同意する。この場合においては、出願の日から3月以内に特許出願の内容を他の当事者に通知するものとする。当初の出願は、発明がなされた領域の当事者が行なうものとする。

6-6 各当事者は、共同計画から得られた成果に係るその領域における使用、製造及び販売の独占権を有するものとし、他の当事者は、この独占権を尊重することに同意する。

6-7 各当事者は、共同計画から得られた成果に係るその領域における使用、製造及び販売の権利を自由に与えることができる。
 この場合においては、他の当事者に通知するものとする。

6-8 第三国においては、6-4に掲げる発明に係る特許出願は、当初の出願の日から1年以内に両当事者の名義をもって行なうものとする。出願は、発明が行なわれた領域の当事者が選定する代理人が行なうものとする。この代理人は、両当事者により合意のうえ選定され、必要な権限を与えられるものとする。

6-9 6-8に規定する特許の出願、審査、許可等に係る一切の費用並びに毎年の特許料及び税金は、発明が行なわれた領域の当事者が立て替えるものとする。この経費は、毎年、代理人が作成する経理報告に基づき、両当事者が等分して負担するものとする。

6-10 各当事者は、第三国においては、共同計画の成果を自由に、かつ、無償で利用することができる。

6-11 当事者は、合意のうえ、日本国またはフランスの企業及び機関に対し、共同計画の成果に係る第三国における使用、製造及び販売の権利を与えることができる。

6-12 当事者は、合意のうえ、日本国又はフランス以外の国の企業及び機関に対し、共同計画の成果に係る第三国における使用、製造及び販売の権利を与えることができる。

6-13 一方の当事者が第三国に対して出願する権利を放棄した場合は、他の当事者は、その名義及び費用をもって第三国に対して出願する権利を有し、当該特許権を専有するものとする。一方の当事者は、両当事者の名義をもって第三国に対して出願して取得した特許権を放棄する場合は、特許料支払期限の2月前までに他の当事者にこの旨を通知し、他の当事者の請求により、その特許権の持分を無償でこれに譲渡するものとする。

6-14 一方の当事者は、他の当事者の同意を得て許諾した一切の実施権の内容を他の当事者に通知するものとする。これに伴う利益は、両当事者が等分するものとする。

6-15 6-7、6-11及び6-12に掲げる業務を、原研は、湯浅坂本特許法律事務所に、原子力庁はブレバトム会社に代行させるものとする。

第7条 共同計画への企業又は機関の参加

 一方の当事者は、日本国またはフランスの機関または企業に対して共同計画に規定する研究を委託する場合は、この業務の成果が第6条に規定する取扱いに反する工業所有権上の取扱いを受けるような契約を第三者と締結しないことに同意する。

第8条 通知された知識の援助により完成した発明

 一方の当事者が通知した知識を利用することにより、他の当事者が、この協定の有効期間中、自己の研究活動として発明を完成し、又は着想したときは、当該一方の当事者は、その領域における当該発明に係る特許権を取得する権利を有する。これらの発明については、第6条の工業所有権の取扱いに関する規定を準用する。

第9条 派遣職員

9-1 職員の派遣については、連絡委員会において、あらかじめ、合意のうえ、検討し、決定するものとする。

9-2 各当事者は、他の当事者のもとに派遣した職員の旅費、滞在費及び給与を負担するものとする。

9-3 各当事者は、その所有に係り、他の当事者から派遣された職員が使用する施設に関する費用を負担するものとする。

9-4 各当事者は、この協定の実施に際してその所有する施設に発生した事故の結果、他の当事者の財産及び職員並びに第三者が受けた損害について責任を負うものとする。ただし、非原子力事故が派遣職員の故意または重大な過失により発生したときは、この限りでない。

 各当事者は、以上の事実によって第三者が提起すべきいかなる請求からも、他の当事者を免責することに同意する。

 各当事者は、その法令に従い、その責任において、その職員を労働災害保険に付するものとする。

9-5 他の当事者のもとに派遣された職員がその派遣期間内に完成し、又は着想した発明については、第6条の工業所有権の取扱いに関する規定を適用するものとする。

第10条 有効期間

 この協定の有効期間は、その署名の日から3年とする。この協定は、いずれか一方の当事者が6月以前に更新拒絶の通告をしない限り、自動的に更新されるものとする。

第11条 領域及び第三国

11-1 領域とは、日本国及びフランスの領土をいう。

11-2 第三国とは、その他のすべての国をいう。

第12条 仲裁

 両当事者間に紛争が生じた場合において、連絡委員会によって解決することができないときは、この委員会又は当事者は、合意のうえ、第三者を仲裁人として選定し、その仲裁人の決定を確定的なものとしてこれに従うものとする。

 この協定は、日本語及びフランス語により、各2通作成し、両文とも等しく正文とする。

原研を代表して原子力庁を代表して

技術付属文書 I

共通研究の課題 第1

放射線グラフト重合

 両当事者は、放射線グラフト重合の分野において、この協定に規定する条件に従い、次に掲げる事項を研究するものとする。

1-1 グラフトポリマーの分別及びその構造の研究

技術付属文書 II

共通研究の課題 第2

放射線固相重合

 両当事者は、放射線固相重合の分野において、この協定に規定する条件に従い、次に掲げる事項を研究するものとする。

2-1 放射線固相重合機構の研究

技術付属文書 III

技術的課題 第1

化学研究のための原子炉の利用

 両当事者は、化学研究のための原子炉の利用の分野において、この協定に規定する条件に従い、次に掲げる事項を習得するものとする。

3-1 化学反応研究のための原子炉の利用

3-2 照射施設の運転経験(通常の線量測定を含む。)

技術付属文書 IV

技術的課題 第2

ラジオアイソトープ及び電子線を用いた中間規模照射の技術

 両当事者は、ラジオアイソトープ及び電子線を用いた中間規模照射の技術の分野において、この協定に規定する条件に従い、次に掲げる事項を習得するものとする。

4-1 放射線グラフト共重合

4-2 施設の利用照射施設の運転経験(通常の線量測定を含む。)