放射線審議会の動き


放射能測定部会

 本部会は、昭和33年5月に施行された放射線障害防止の技術的基準に関する法律にもとづき、放射線審議会に設置され、自然に賦存する放射性物質から発生する放射線、核爆発に伴う放射性生成物から発生する放射線などの測定方法に関することを審議することとなった。
 これに先立ち、昭和32年に科学技術庁に設けられた放射能調査各省連絡会の下部組織である放射能調査測定基準小委員会において同年末に放射能測定法を制定した。同小委員会は放射能測定部会の設置後は部会の専門委員会となり、昭和35年5月にストロンチウム−90分析法を制定した。その後同部会はセシウム−137の分析法を確立するため、同専門委員会において作業を開始させた。この間すでに制定された測定法および分析法は関係各方面において用いられ、多くの経験が重ねられ、新たな改良手法などもいくつか発表提案されたために、同部会においても放射能測定法およびストロンチウム−90分析法の改訂を行なうこととした。これらについての専門委員会における作業の結果、昭和38年9月にセシウム−137分析法、放射能測定法改訂版およびストロンチウム−90分析法改訂版が放射能測定部会において承認され、制定されるにいたった。なお、現在はよう素−131の分析法を検討中であり、近く成案をえる予定である。また、放射能測定部会専門委員会は2月末日までに43回開催された。

災害対策特別部会

 昭和38年7月15日開催された第14回放射線審議会総会において、内閣総理大臣から諮問のあった「放射性物質の大量放出事故に対する応急対策の放射線レベルについて」について、災害対策特別部会を設置し、検討することとなった。
 第1回災害対策特別部会は、昭和39年3月に開催され、引き続き本年2月までに特別部会が8回、放射線の身体的影響を検討するための小委員会が4回および放射線の遺伝的影響を検討するための遺伝打合せ会が1回開かれた。
 本件の審議は、まず、放射線による災害の範囲を明らかにすることとし、規模として50〜100戸程度におよぶかまたはおよぶおそれのある場合というイメージで今後の検討を進めることとした。一方、応急対策の放射線レベルについては、放射線による生物学的影響から見て検討すべきであるという方針から、放射線による生物学的影響に関するデータの整備、評価を行なうため小委員会を設けて検討を進めた。
 また、放射線の遺伝的影響とくに次代に生ずる重大な遺伝的欠陥についての検討を遺伝打合せ会で行なうこととした。
 本特別部会は、上記の小委員会および打合せ会の検討結果と日常生活における種々の災害および産業災害と比較して、放射性物質の大量放出による災害の場合における応急対策の放射線レベルについて、具体的検討を進めようとしている。

原子力船特殊規則特別部会

 昭和39年10月28日開催された第15回放射線審議会総会において、運輸大臣から諮問のあった「原子力船における放射線障害の防止に関する技術的基準の制定について」について、原子力船特殊規則特別部会を設置して検討することとなった。 
 原子力船特殊規則特別部会の第1回会合は、昭和39年11月に開催され、本年2月までに7回の会合が持たれ、結論がえられたので、3月17日に開催される第16回放射線審議会総会に報告される予定である。
 本件の検討における主要な問題点は、放射線障害防止のための設備についてであって、運輸省案では、船員を一律に放射線作業従業者とし、施設面では年0.5レムおよび5レムの線で区画することとしていたのに対し、本部会では、船員のなかにも放射線作業に直接従事しない者もいるはずであってこれらの者の被曝線量は年1.5レムに管理するのが適当とされ、施設基準として年1.5レムを基準とした管理区域の考え方にそうことが必要であるという結論になった。
 なお、原子力船特殊規則は、船舶安全法に基づく原子力船の安全のための施設基準を定めようとするもので、船員の被曝管理の基準は船員法のなかで規定される予定である。
 また、もう一つの問題点として放射性廃棄物の処理の問題に関連して、現在種々の法規で規定されている廃棄の基準にも不合理な点があるので、これらの検討も行なう必要があるという意見が出されたが、これは本特別部会の審議範囲をこえるものであるので、放射線審議会においてその取扱いを検討するよう審議会に報告することとなった。

ICRP勧告特別部会

 昭和39年10月28日開催された第15回放射線審議会総会において設置することとなったICRP勧告特別部会は、本年2月2日に第1回会合が、ついで2月23日に第2回会合が開催された。
 本特別部会は、1962年のICRP勧告における主要な事項である下記の点を中心として検討を行なっている。

1.生殖可能年齢の婦人の被曝とくに職業上の被曝について

2.決定臓器としての眼の水晶体とくに高LETに対する感受生について

3.体外被曝からの線量と体内被曝からの線量との加算に関すること

4.90Srの最大許容濃度(MPC)

5.空気中における222Rnの最大許容濃度

6.生物学的効果比(RBE)と線量当量(QF)

7.有意面積と有意体積

8.ウランの化学毒性

9.被曝のカテゴリー

10. その他