「原子力の日」設定


 わが国が原子力平和利用の開発に着手してから明年で10年を迎えることになる。この間、各方面の努力によりその成果が次第にあがり、原子力も国民生活に身近なものになってきた。日本原子力発電株式会社をはじめとする各電力会社の原子力発電所の建設計画および建設工事は着々とすすみ、日本原子力船開発事業団の原子力第一船の建造計画も軌道に乗り、また、放射線等の利用面においてもラジオアイソトープおよび放射線発生装置の使用者は増加の一途にある。このように原子力は国民生活を豊かにする上に著しい貢献をなしつつあり、今後原子力の国民生活の上に果たす役割はますます大きくなることが期待されている。原子力が着実に国民の支持によって発展するためには、原子力に対して国民が深い理解と正しい認識をもつことがぜひ必要である。ついては原子力についての広報普及活動を充実させることが重要であるが、このために従来「科学技術週間」の中に1日を「原子力デー」として、各研究所の施設の公開をはじめとする各種の活動を行なってきた。しかし「科学技術週間」の期間内にあって「原子力デー」が毎年一定していないこと、この日が4月中にあるために関係機関、民間団体等においては他の業務と重なりがちであるために活動が行ないにくいこと等が原因となって「原子力デー」は必ずしも予期した成果を収めることができなかった。このため今般新たに「原子力の日」を設定することとなり、毎年10月26日を「原子力の日」とすることが昭和39年7月30日の事務次官会議を経て同月31日の閣議で了解された。

 「原子力の日」を10月26日としたのは、この日が、昭和31年国際連合の関係機関である国際原子力機関への加盟のために、わが国が同機関憲章に署名した日であり、また、昭和38年日本原子力研究所が動力試験用原子炉(JPDR)によりわが国が初めて原子力による発電に成功した日であるからである。

 したがって「原子力の日」においては、ひろく国民一般が原子力についての理解と認識を深めることを目的とした各種の行事が行なわれる。行事の実施には科学技術庁をはじめ日本原子力産業会議、科学技術振興財団、日本放送協会、日本原子力研究所、その他国公立機関民間諸団体等多くの関係団体が参画する。

 今年度の第1回「原子力の日」の行事としては次のようなものが予定されている。

 講演会の開催。東京、大阪、名古屋、水戸等主要都市および原子力関係都市において一般市民を対象とした原子力についての講演会を開催する。この講演会は原子力の基礎的知識の普及を目指すものである。

 テレビ座談会の開催。広く全国各地を対象とした普及行事がこの座談会である。内容については目下検討が重ねられており充実したものになることが期待されている。

 原子力セミナーの開催。広島市および茨城県東海村で中学校および高等学校の教職員を対象に原子力についての講習会を行なう。これは教職員の原子力についての知識の向上を目指すとともに間接的には次代を背負う青少年の原子力に対する認識を深めることを目標にするものである。

 原子力関係施設の公開。茨城県東海村の日本原子力研究所等の施設を公開し、実物に接した上での原子力についての知識の向上をねらいとしたものである。

 総合研究発表会の開催。日本原子力研究所等の年次発表会を総合的に行なう。これは専門的学術的な研究成果の発表会であり、研究者相互の専門的知識の交流を図るとともに、一般人の原子力研究方法に対する認識を深めることをも目標としたものである。

 今年の第1回「原子力の日」に現在企画されている行事のうちの主なものは以上のとおりであるが、来年は原子力の研究開発が実際に開始されてから10周年にあたるので、その記念行事をも含めてさらに盛大な「原子力の日」関係行事が行なわれるであろうと期待されている。