昭和39年度原子力平和利用研究委託費交付概要


1. 「原子炉用圧力容器のノズル取付部および支持スカート取付部の構造強度に関する試験研究」

(社)日本機械学会

(研究目的)

 昨年度に引続いて荷重およびノズル形状の種類を変えて研究を行ない、原子炉用圧力容器の構造設計基準の作成に資する。

(研究内容)

1. 構造強度に関する理論的解析

 理論解析および光弾性模型実験の結果より、容器の強度解析を行ないノズルおよび支持スカート取付部の強度を推定し得る計算法を開発する。

2. 実験的応力解析

(1)光弾性模型実験により、外荷重および内圧によるノズル取付部および支持スカート取付部の応力分布および応力集中状況を求める。

(2)圧力容器の鋼製模型に内圧、外荷重を加え、ノズル取付部の応力、応力分布および応力集中状況を求めその結果を解析す。

3. 圧力容器支持スカート取付部の局部応力解析

 数種の支持スカートに内圧および外荷重を加え、スカート取付部に生する局部応力を測定し理論計算と比較する。

4. 高応力疲労に関する研究

 小型鋼製模型に繰返し内圧を加えて、ノズルの高応力疲労試験の資料と比較し、取付部の塑性変形量高応力疲れ強さを推定する。

2. 「冷却材喪失事故時における軽水冷却型動力炉用燃料被覆管の安全性に関する試験研究」

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)

 冷却材喪失事故時の燃料被覆管の安全性につき研究を行ない、軽水型動力炉の事故評価のための基礎資料を得る。

(研究内容)

1. 冷却材喪失事故後の雰囲気での高温酸化が被覆管の耐圧強さに及ぼす影響ジルカロイ板材およびステンレス鋼板材をオートクレーブ中において通電加熱し、飽和蒸気中での酸化を行なわせ、その後常温および高温での引張試験を行なう。

2. 被覆管に一定量のガスを封入後昇温させる方式での耐圧試験ジルカロイ管およびステンレス鋼管について、燃焼度、核分裂生成ガスの放出量を仮定して計算した量のガスを管中に封入し、昇温破壊試験を行なう。

3. 一定期間使用後の状態の被覆管についての耐圧試験ジルカロイ管およびステンレス鋼管をオートクレーブ中において適当の条件に腐蝕した後、耐圧強度を調べる。また,ジルカロイ管については腐食後の水素分析試験を行ない、吸収水素量と耐圧強度との関係を求める。

3. 「原子炉施設構築物の地零時における振動特性に関する試験研究」

(社)日本建築学会

(研究目的)

 原子炉施設の主要構築物の地震時における振動特性を推定するために必要な資料を実験的に収集し、地震に対する地盤および構築物の相互関係を解析して、原子炉施設の主要構築物の動的耐震設計法を確立するための基礎資料を得る。

(研究内容)

1. 試験体関係振動特性の試験

 鉄筋コンクリート造試験体を砂利層上に設置し試験体、地表および地中の自然地震動の同時測定を行なう。これに先立ち地盤については弾性波試験を行ない、地盤の性質を明らかにするとともに試験体については起振機を用いた強制振動試験を行なう。

2. 動力試験炉振動特性の試験

 実用の原子炉構築物をもちいて、構築物の振動地表および地中の自然地震動の同時測定を行なう。

3. 構築物振動特性の解析

 1および2で得られた資料にもとづき、弾性波試験による地盤の弾性と自然地震による地盤の振動、強制振動と自然地震による試験体の振動、地盤の弾性と試験体の振動モード、固有周期、減衰性との関係等を解析する。

4. 「原子炉圧力容器等の圧力逃し装置の機能試験に関する試験研究」

(社)火力発電協会

(研究目的)

 原子炉圧力容器等の圧力逃し装置の相互関係およびその機能を解明するとともに、安全弁の機能試験に関し実際状態における機能と小規模の各種工場試験における機能との関連性を明らかにし、安全装置として実施可能な試験方法を確立する。

(研究内容)

1. 予備的解析

 原子炉の動特性からみた各種圧力逃し装置が持つべき機能の調査を行ない、また、工場試験と実用試験との関係について予備解析を行なう。

2. 工場試験

 試験に必要な安全弁の製作を行ない、水圧および空気圧により吹き出し圧力などを決定する低温機能試験および低容量汽缶による高温機能試験を行なう。

3. 実用汽缶試験

 実用汽缶において作動試験を行ない工場試験において決定された諸機能との相関関係を求める。

4. 総合解析

 原子炉冷却系の動特性に対応する圧力逃し装置の機能を解明するとともに安全弁の工場試験および実用試験によって得られた資料に基づき諸機能を解折し、機械試験基準の作成に必要な基礎資料を得る。

5. 「軽水冷却型動力炉冷却材喪失事故時における炉心ならびに格納容器内の冷却に関する基礎的試験研究

(株)日立製作所

(研究目的)

 軽水冷却型動力炉の冷却材喪失事故時における原子炉および格納容器内の諸現象、スプレーによる炉心ならびに格納容器内の冷却効果等を検討し、冷却材喪失事故に関する事故評価のための基礎的資料を得る。

(研究内容)

1. 炉心のスプレー冷却に関する研究

 炉心スプレー効果に及ぼす燃料棒長さの影響を推定するとともに冷却材流出時から炉心スプレー開始までの時間の炉心冷却効果に及ぼす影響およびスプレー断続効果を検討する。

2. 格納容器内における凝縮熱伝達およびスプレー冷却効果の研究格納容器内に水蒸気が流入した場合の過渡状態および定常状態において凝縮熱伝達による構築材の吸熱効果および内圧力変化を測定して減圧効果を求める。

3. 冷却材流出に関する研究

 モデル圧力容器内の流動抵抗による流出量の変化と破断部から流出する冷却材の流動様相を解明すると共に上部配管が破断した場合の流出特性を明らかにする。

4. 小規模模型による模擬事故実験および解析

 圧力容器内圧力、冷却材亜冷却温度、オリフィス径等をパラメータとして、小規模模型試験装置による模凝事故実験を行ない、その結果を解析する。

6. 「軽水冷却型動力炉の圧力抑制装置の機能に関する基礎的試験研究」

日本原子力事業(株)

(研究目的)

 軽水冷型動力炉の冷却材喪失事故時における原子炉および圧力抑制装置内の諸現象を検討し、冷却材喪失事故に関する事故評価のための基礎的資料を得る。

(研究内容)

1. 凝縮現象に関する基礎的試験

 圧力抑制室内の水中凝縮現象および不安定現象に関して、抑制室圧力、水温、蒸気流量、噴出管の口径と浸水長などが凝縮速度および凝縮容量に及ぼす効果について試験を行なう。

2. 圧力抑制装置の性能試験

 小規模圧力抑制実験装置により放出流量、圧力容器内の気液の割合、噴水管の口径と浸水長などが圧力抑制装置内圧力および温度に及ぼす効果を求める。

3. 解析

 圧力抑制装置内最高圧力および過渡圧力について解析する。

7. 「格納容器スプレーによる沃素水洗効果および減圧効果に関する基礎的試験研究」

三菱原子力工業(株)

(研究目的)

 軽水冷却型動力炉の1次系冷却材喪失事故時に格納容器内に放出される沃素のスプレーによる水洗効果ならびに格納容器内の減圧効果に関し試験および解析を行なって事故評価のための基礎的資料を得る。

(研究内容)

1. 沃素水洗効果に関する研究

 圧力容器内に高温高圧蒸気を送入し、容器内の温度圧力が平衡に達した後、非放射性沃素を導入し、つぎの事項について明らかにする。

(1)スプレーがない場合の沃素の系壁への吸着効果におよぼす温度、圧力の影響

(2)スプレーにより、沃素水洗効果におよぼす初期温度、圧力の影響、および減圧過程におけるスプレー条件と沃素水洗効果との関係

2. 安全注入系および格納容器スプレーによる減圧効果に関する解析研究安全注入系および格納容器スプレーの組合せの場合における格納容器内の減圧効果についてアナログ計算機をもちいて解析する。

8. 「大気低層の逆転層および風向変動幅の拡散に及ぼす効果に関する試験研究」

(財)気象協会

(研究目的)

 原子力施設の事故の場合、大気中に放出される放射性核分裂生成物の拡散に対し迅速に、かつ適切な事故対策を立て、環境の安全確保を図るため逆転層の存否とその高さおよび風向変動幅を直ちに測定し、拡散の度合を迅速に推定する方法を開発する。

(研究内容)

1. 大気低層の逆転層温度勾配と拡散との関係について理論的に解析するとともに逆転層簡易測定器を試作し、これをもちいて実験的に資料を収集し、理論および実験資料とを比較解析して逆転層による拡散の度合を推定する方式の基礎資料を得る。

2. 風向変動幅と水平拡散について風向変動幅測定器を試作し、これをもちいて実験的に資料を収集し、理論および実験資料とを比較解析して、変動幅による拡散の度合を推定する方式の基礎資料を得る。

3. なお、1および2によって得られた拡散度合を前年度で得られた拡散方程式との関係において検討を加える。

9. 「核過熱型動力炉の炉心の解析に関する研究」

(株)日立製作所

(研究目的)

 軽水型原子炉の改良型である各種核過熱炉について技術的問題点を明らかにするため、概念設計の方法を開発し、その性能および経済性の比較を行なって最適炉心を求める。

(研究内容)

1. 出力300MWe程度の軽水冷却混合スペクトル型ならびに軽水減速冷却単一スペクトル分離型核過熱炉について諸外国の資料を参照して定性的に技術的検討を加え、概略設計を行ない、炉心最適化のための主要パラメータの選定を行なう。

2. 1により求めた主要パラメータについて、工学上の制限条件を考慮して、核計算および熱計算を行ない核的特性、熱的特性および燃焼特性を求め、核過熱炉の炉心の概念設計を行なう。

3. 2により求めた各種特性を基に、実用性に関する問題点および性能向上に対する問題点を明らかにしたうえで、現段階での技術的最適炉心を求め、炉型式相互の比較を行なう。

10.「金属被覆高温炭酸ガス冷却型動力炉の炉心解析に関する研究」

住友原子力工業(株)

(研究目的)

 耐高温性の金属被覆材を用いた高温ガス炉の将来性を評価するため炉心を構成する多くのパラメータの炉特性および経済性に及ぼす影響を解析し、その組合せを最適化する。さらにこれに基づいて炉心の概念設計を行なって設計上の工学的な問題点を明らかにする。

(研究内容)

1. 300MWe程度の高温炭酸ガス炉について、単一セル熱系炉心特性に関し、諸外国の参考設計資料をもちいて技術的検討を加え概略設計を行ない、これに基づき無次元パラメータの基準値を定める。

2. 1により求めた基準値および既製コード、さらにコスト要因の検討結果により、最大修正傾斜法をもちい、設計上の制限を考慮しながら最適な無次元のパラメータを定める。

3. Zone loading による出力平担化の検討ならびに2により求めたパラメータを寸法、その他の設計値に還元し、工学的検討を加えて、概念設計を行なう。

11. 「マゲノックス被覆炭酸ガス冷却型動力炉の総合解析および性能限界の評価に関する研究」

富士電機製造(株)

(研究目的)

 コールダホール改良型動力炉の技術的諸特性を基にこれに技術改善を加えたマグノックス型動力炉の総合解析を行なう。また、この結果からマグノックス型動力炉改良の方向および性能限界等に関する技術的問題点を総合的に摘出し、あわせて各種炉形式中におけるマグノックス被覆炭酸ガス冷却型動力炉の位置づけのための基礎資料を得る。

(研究内容)

1. 改良マグノックス型動力炉の性能に関する予備解析として

(1)出力300MWe鋼板圧力容器および中空燃料

(2)出力300MWeコンクリート圧力容器および中空または中実燃料

(3)出力500MWeコンクリート圧力容器および中空または中実燃料について既存マグノックス炉にガス圧力上昇、燃料温度の上昇、燃焼度の増加、建屋内配置の合理化、圧力容器内炉心占有率の増加などの技術改善の検討を行なう。

2. 上記(1)、(2)および(3)について最適計算コードを作成して最適な主要パラメータを決定する。

3. 2により求めた主要パラメータに基づき代表出力の発電プラントについて核設計、熱設計、構造設計燃料要素、冷却系、制御および計測、建屋および安全性に関し、概念設計を行なう。この際製造法、工程、検査等についても検討を加える。

4. 改良マグノックス型動力炉の技術および国産化の問題点の摘出を行ない、あわせて建設費および発電原価の検討を行なう。

12. 「トーラス型装置による高温プラズマの閉じ込めに関する試験研究」

東京芝浦電気(株)

(研究目的)

 トーラス型プラズマ発生装置のオーム加熱回路を調整して放電時間を長くとり、プラズマの閉じ込めに関する基礎知識を取得し、将来の核融合炉についての設計資料を得ようとするものである。

(研究内容)

 本トーラス型装置は密度の薄い高温プラズマを外部磁場により閉じ込める装置であるが、このトーラス型装置の1次側にリアクトルを直列にクローバースイッチを並列に挿入することにより、オーム加熱回路の減衰定数を長くとり、従来よりも長時間プラズマのジュール加熱を行なえるようにする。次に測定関係としては、放電管封入ガス圧および閉じ込め磁場の強さをパラメータとして、放電管印加電圧、放電電流、および電子温度を測定して、これらがプラズマの発生に及ぼす効果、および閉じ込めに対する影響を明らかにする。

13. 「イオン・サイクロトロン加熱による高温プラズマの保持に関する試験研究」

(株)日立製作所

(研究目的)

 ミラー形直流磁場方式による装置にプラズマを注入し、高周波加熱によって生成しうる高温プラズマのエネルギー、密度の限界を確め、核融合反応実用化のための資料を得ようとするものである。

(研究内容)

 ビーム入射方式では、密度が低いことが本質的な欠点であるが、このためミラー形直流磁場内のプラズマに、イオン・サイクロトロン運動の周波数に近い高周波電界をかけて、そのプラズマ密度およびエネルギーを測定することにより、加熱の効果を調べ、また、残留ガスのイオン化の効果を実験的に調べる。具体的には、次のとおりである。

1. イオン源をプラズマ源として使用して、ミラー磁場内にプラズマを注入し、イオン源のアーク電流加速電圧およびガス流入量をパラメータとしてイオン電流を測定する。

2. ミラー磁場内のプラズマ柱に、イオン・サイクロトロン周波数に近い高周波磁界を加えてイオンを加熱し、これによって生じた高温プラズマの密度のミラー磁場内外における時間的変化を測定する。

3. 真空容器内の残留ガス密度を変えて、イオンによる残留ガスのイオン化の効果を測定し、これによって生じたプラズマのミラー磁場内での保持時間を求める。

14. 「核融合を目的とした高温プラズマの閉じ込めに関する試験研究」

三菱原子力工業(株)

(研究目的)

 環状プラズマをジュール加熱後、電磁圧縮する装置を使用して、閉じ込め時間を短かくする原因となっている圧縮プラズマの放電管外周方向へのドリフト現象を究明し、プラズマ閉じ込め性能改善のための資料を得る。

(研究内容)

 36年度原子力平和利用研究委託費によって、製作された環状放電装置において、従来どおりのコイル配置の場合、一部変更してコイルを多極(multi−pole)配置した場合等について、電磁圧縮されたプラズマのキンクおよびドリフト状況を主として*イメージ・コソバータ式高速駒取りカメラにより測定する。こうして、閉じ込め磁界の形状と圧縮プラズマのドリフト速度、安定性との関係を解析する。

(*イメージ・コンバータ式カメラ:露出0.2μs〜100ms、繰り返し周期2μs〜100ms、駒数4×2)

15. 「高温プラズマの保持に関する試験研究」

(学)日本大学

(研究目的)

 比較的遅い磁気圧縮による高温プラズマ発生装置で得られる比較的密度の高い高温プラズマの不安定性の原因を明らかにして、高温プラズマを長時間安定に保持することを目的とする。

(研究内容)

 テータ・ピンク形の装置におけるプラズマの安定性については、最近、磁場の精度とコイル・ディメンション(コイル長さ/コイル半径)が大きく影響することが半経験的に明らかになってきた。したがって、日大においても磁場の精度を上げ、端子の影響のないミラー形ロング・コイルの製作を行なっている。

 本試験研究においては、上記ロング・コイルの使用によってドリフトが如何に改善されるか、また端損失(end loss)プラズマ中の内部磁界が、電子温度、イオン温度、輻射損失等の関係において、如何に変化するかを総合的に測定する。これを項目的にあげれば次のとおりである。

1. プラズマ・ドリフトの研究

2. ドリフト以外の不安定性の研究

(1)軸方向の圧縮状況の観測

(2)端損失の状況の観測

(3)内部磁場の測定

 上記1、および2について総合的解析を行なう。

16. 「不溶性塩類を含む放射性廃棄物の処理材に関する試験研究」

石川県

(研究目的)

 珪藻泥岩中の粘土質を活性化し、放射性物質を吸着させ、また珪藻質の炉過作用の共力作用によって不溶性塩類を多量に含む廃棄物処理をおこなうことに着目した処理材の最適処理条件を明らかにするための基礎的資料を得る。

(研究内容)

 各種珪藻土を精製、酸処理を行ない次の試験を行ない最適処理条件を明らかにする。

1. 吸着性能に関する試験研究

32P、131I、95Zn、106Ru、137Cs、144CeおよびFPの放射性核種を用い、キャリヤーの有無、イオン濃度液性の変化、共存イオン等の吸着能に及ぼす影響を明らかにする。

2. 炉過作用に関する試験研究

 炉過能および炉過速度と吸着性能の関係を明らかにする。

17. 「放射性廃水凝集沈澱処理に関する試験研究」

大阪府

(研究目的)

 低レベル廃液の処理には凝集沈澱法が一般に使用されるが、特に塩類濃度が高い多量の中または低レベル放射性廃液の処理には凝集沈澱法が最も有利である。

 しかし一般に凝集沈澱法は除去率が比較的低い欠点があるので、この効率を高めるために有効な凝集助剤を開発することを目的とする。

(研究内容)

 昭和35、36年度の補助金によって、低レベル放射性廃水の凝集沈澱処理における除染機構および放射性スラッジの脱水濃縮処理に関する研究を行なってきた。その過程において黒土から抽出精製した腐植酸を燐酸カルシウム凝集に助剤として利用した場合およびある種のイオン交換セルローズをベントナイト高分子凝集に助剤として併用した場合の除染効率を調べた。

 その結果腐植酸をさらに精製することにより除去率が上昇したこと、また、木綿セルローズから合成した吸着性に富んだイオン交換セルローズを助剤として使用すれば特にルテニウムを効果的に除去できるという知見を得たので、

1. 腐植酸の抽出方法による収量および助剤としての有効性を研究する。

2. 他方、木綿セルローズからセルローズ誘導体を合成し、粒度を細かくして吸着性を高めること、ペントナイトとの結合により沈澱分離が容易となることなどに特に着目しつつ凝集沈澱助剤として有効なイオン交換セルローズの作成法の研究を行なう。

3. 以上2項目に対して凝集沈澱機構のメカニズムについて研究する。

上記研究により助剤の有効限界ならびに除去率向上の最適条件を明確にする。

18. 「泡沫分離法による放射性廃液処理に関する試験研究」

(株)荏原製作所

(研究目的)

特に塩類を多量に含む大量放射性廃液の処理法としては、凝集沈澱法が用いられているが、処理済廃液中には90Srのごとき許容濃度の点で問題のあるものが処理しきれずに残ることがあり、この点で処理剤廃液が排出させることが困難である場合がかなりあるのでさらにこの処理済廃液中で問題となる90Srを効果的に除去できる泡沫分離法による処理方法について基礎資料を得る。

(研究内容)

 泡沫発生助剤として放射性核種の選たく吸着性を有する界面活性剤(アニオン系化合物)を用いる泡沫による放射性核種の除去効率を高めるため次の研究を行なう。

1. 泡沫分離は空気送入流量、送入口の大きさ、温度pH等によってその有効性が左右されるので、これらのパラメーターの関連を実験的に究明し最適条件を明らかにする。

2. 泡沫に吸着された放射性物質を泡として集めた後破泡する必要があるが、遠心分離方式で破泡することが妥当と考えられ、この場合の回転速度、あみ目の大きさ、および回転胴の半径と破泡能力との関係を明らかにし最適破泡条件を明らかにする。

19. 「放射性廃棄物の海洋投棄処分による放射能溶離に関する試験研究」

(学)近畿大学

(研究目的)

 放射性廃棄物の海洋廃棄処分については国際的な問題として研究されているが、わが国において特に重要な問題である。しかるにいまだ実験的研究が非常におくれている現状である。海洋廃棄物処分の対象となる高レベル廃棄物が予期せざる災害で廃棄物容器が破損され、この内容物が海中に流出した場合放射性核種の溶離状態を究明することにより、これらの事故が及ぼす影響を明らかにするための基礎資料を得る。

(研究内容)

 高レベル放射性廃棄物であるイオン交換樹脂を封入した廃棄物容器が事故で破損し、内容物が海中に流出した場合の溶離状態を核種別(60Co、55Fe、51Cr、FP……に解析を行なう。

20. 「中規模の低レベル放射性物質取扱い施設の廃液処理に関する試験研究」

大成建設(株)

(研究目的)

 中規模の低レベル放射性物質取扱い施設用の効率的かつ経済的な吸着式廃液処理装置の開発を目的とする。

(研究内容)

 吸着式廃液処理方法にはバッチ法とカラム法があるが、本研究はエアフィルターと同様に取りはずしの簡便なカラム法を採用することを目標としており、次の点について試験研究を行なう。

1. 廃液のpHと吸着率との関係

2. カラム直径と吸着率との関係

3. 吸着剤の前処理と吸着率との関係

4. 吸着剤の種類と吸着率との関係

5. 核種の種類と吸着剤の吸着率との関係

6. 吸着剤の粒径と吸着率との関係

7. 施設設計への採り上げ方

21. 「放射性廃棄物の海洋投棄用容器に関する試験研究」

(社)土木学会

(研究目的)

 RIの利用の発展にともないこれに伴って発生する廃棄物も年々増加の一歩をたどっており、この最終処分方法として海洋投棄の安全性に関する問題もその解決の時期を迫られている現状にある。

 そこで海洋投棄用容器についてその安全性を確立するため、高圧、ならびに圧力変動に耐え、かつ安価であるという諸条件を満足する容器の研究をおこない、将来の安全な海洋投棄用容器の基礎的資料を得る。

(研究内容)

 昭和38年度委託費による海洋投棄用容器に用する基礎研究の結果、次の3種の形式の鉄筋コンクリート容器の小型模型を設計製作し、300kg/cm2までの水圧試験を行なう。

1. 粘性層を有する鉄筋コンクリート容器の水圧試験研究加圧速度、温度、内容物の性質等にしたがい、最適粘性度と粘性物質を検討し、また粘性層とコンクリート部の最適結合形体を研究し、この研究結果にもとづき小型模型を試作し、水圧試験により安全性を確認する。

2. 弁式鉄筋コンクリート容器に関する試験研究

 ベロース弁および特殊伝圧平衡弁を試作し、コンクリート容器への弁の装着方法を検討するとともにこの方式による容器の安全性の確認をするため水圧試験をおこなう。

3. 密閉式鉄筋コンクリート容器の水圧試験研究

 光弾性試験、応力解析、水密性試験の結果をもとにして小型容器を製作し、水圧試験をおこない、容器の安全性を確認する。

22. 「放射線遮蔽窓ガラスの放電現象に関する試験研究」

東京都(研究目的)

 放射線遮蔽窓ガラスの放射線照射に伴う帯電−放電現象に起因する破損防止の根本的、恒久的対策を樹立するため電荷の蓄積量の測定装置を試作し危険電荷量を確定する。

(研究内容)

 現在までに放射線によって破損したガラスはすべてセリウム入りのガラスであるので、このガラスを60Co−γ線で照射して、その電荷の蓄積、放電状況の測定を行なうための測定器を試作し、これらの測定を行なう。

1. 測定器の試作:被照射ガラスの表面に接近して、静電誘導による真空管の電位変化により、電荷量を求める。表面との間隔を一定にして静電容量を定めて電荷量をボルト表示する。

2. 電荷の蓄積は同一の大きさのガラスにつき、γ線照射量を103〜108rまで照射し、その蓄積量と照射量との関係を求め、破損の極限を確定する。

23. 「放射性核種の体外排泄装置の開発に関する試験研究」

(学)五島育英会

(研究目的)原子力施設の事故時に体内に摂取された放射性核種の休外排泄を急速に行ないかつ腎臓の負担を少なくすることは障害防止上きわめて重要なことである。このため体外排泄装置を試作し、その除去方法につき研究を行なう。

(研究内容)

 従来体外排泄は、自然排泄によっていたが、腎臓におよぼす放射線障害を極度に減少させるために急速排泄を行なう必要があり、このため電気透析法による人工腎臓を用いて、放射性核種をCritical Organ から除却するキレート化合物の血中易動度および人工腎臓の透析膜ならびに電場の強度と生体に及ぼす影響を究明し、放射性核種を急速に体外に排泄させる人工腎臓を試作し、その除去効果向上をはかるための基礎的研究を行なう。

24. 「放射線障害防護薬剤に関する試験研究」

(財)原子力安全研究協会

(研究目的)

 原子力施設等の事故時において放射線による外部被曝および内部被曝による障害を阻止または減少する薬剤を見い出し、その有効性を確認し、安定、無害でかつ有効な放射線障害防止薬剤を開発することを目的とする。

(研究内容)

1. 外部被曝障害防止用薬剤の合成ならびに効力試験障害防止用薬剤としてAET、MEA、T4CA、ADTなどの数種の化合物の合成法を研究し、これらの薬剤の有効であることが実験的に明らかになったが、これらの化合物はSH基またはチウロニウム塩のような化学的に不安定な基を持っているので、これをチオ硫酸基あるいはジスルフィド基におきかえることに着目し2−AT(アミノチアゾリン)、2−AP(2−アミノペンチアゾリン)、GED(グアニジノエチルジスルフィド)、GPD(グアニジノプロピルジスルフイド)、APS(アミノプロピルチオ硫酸)の合成法を研究し、薬剤の有効性を試験する。

2. 内部照射による障害防止薬剤の合成ならびに効力試験従来放射性物質の解毒排泄剤としてEDTA等が知られているが、90Srに対しては有効な薬剤として人体に使用されたものはなく、動物実験的にDTPA、クエン酸カルシウムナトリウム、エチルエーテルジアミンテトラ酢酸ナトリウムカルシウムが有効ではあるが、薬剤としての安全性の検討が不十分であるので、これらの薬剤についてその毒性、臓器機能への影響、副作用等の検討をおこなう。
 以上の研究を行ない学識経験者をもって構成する委員会で研究価評を行ない研究を推進させるものである。