原子力委員会

日本原子力研究所原子炉施設の施設変更審査


 原子力委員会は日本原子力研究所の原子炉施設(軽水臨界実験装置およびJRR−2)の変更の安全性に関し、それぞれ次のような答申を行なった。
 なお、今回変更の内容は、軽水臨界実験装置に関しては温度係数についての実験を行なうため従来認められていた軽水温度「常温」を「80℃以下」に変更するものであり、また、JRR−2に関しては10MWまで出力を上昇させるに際し、従来認められていた重水の炉心タンク出口温度「53.3℃」を「63.0℃以下」に変更するものである。

1.軽水臨界実験装置

昭和39年5月6日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

日本原子力研究所原子炉施設(軽水臨界実験装置)の変更の安全性について(答申)

 昭和39年4月21日付をもって諮問のあった標記の件について下記のとおり答申する。


 日本原子力研究所から提出があった原子炉施設(軽水臨界実験装置)の変更に関する書類(昭和39年4月6日付)に基づき、その安全性を審査した結果、安全性は次のとおり変更後も十分に確保しうるものと認める。

〔審査内容〕

 炉心タンク水の使用温度制限を「常温」から「80℃以下」に変更し、そのために必要な加熱装置をダンプタンク内に付設することに伴い、常温のもとにおいてのみ使用する場合に検討した安全評価に追加して、その安全性を審査した内容は次のとおりである。

1. 炉心タンク水温の自然冷却

 常温以上で実験を行なう場合は、水温の低下が起こるので、負の温度係数により反応度は次第に増加するが、それはきわめて緩慢であり、十分制御しうる。

2. 加熱系統の故障

 ダンプタンク内に付設される加熱系統が故障してもこれが重大な事故に発展する原因になることはない。

3. 冷水等、低温物質が炉心へ急激に加えられる事故

 最悪の場合として水位微調整用ピストンシリンダー内の冷水が全行程分急激に炉心へ注入されると仮定しても、それによる反応度上昇は、常温時における想定事故の場合に階段状に付加した反応度の最大値よりも小さい。

4. 常温時に仮定した最大想定事故への高い炉心水温の影響

 負の温度係数およびボイドによる反応度抑制効果が常温における場合よりも大きいので、一度ピークに到達した出力がより速かに減衰し、放出エネルギーは小さくなる。
 したがって、制御室内における放射線被ばく線量もより小さくなる。
 また、常温における解析結果に対し、上に述べた出力減衰の効果を考慮すると、燃料平均温度の上昇は、常温における場合よりも小さくなるので、この場合にも燃料が溶融することはない。

2.JRR−2

昭和39年6月3日

内閣総理大臣殿

原子力委員会委員長

日本原子力研究所原子炉施設の変更の安全性について(JRR−2の変更)

 昭和39年1月14日付38原第4070号および3月18日付39原第873号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。


 日本原子力研究所原子炉施設の変更の安全性については、日本原子力研究所が提出した「原子炉施設(JRR−2)の安全性に関する審査のための書類」(昭和38年11月30日、39年2月15日および3月14日付)に基づいて審査した結果、別添の原子炉安全専門審査会の安全性に関する報告書のとおり、安全上支障がないものと認める。

〔別紙〕

昭和39年4月22日

原子力委員会委員長

        佐藤栄作殿

原子炉安全専門審査会会長

日本原子力研究所原子炉施設(JRR−2)の変更の安全性について

 当審査会は、昭和39年1月16日付39原委第2号および3月18日付39原委第28号をもって、審査の結果の報告を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

I 審査結果

 日本原子力研究所は、濃縮ウラン重水減速型原子炉(JRR−2、熱出力10MW)の変更に関して、昭和38年11月30日付、「原子炉の安全性に関する審査のための書類」を提出した。
 また、昭和39年2月15日付および3月14日付で上記書類を一部訂正する書類を提出した。
 当審査会は、上記書類に基づき、変更にかかわる安全性につき審査した結果、この原子炉の安全性は、変更後も十分確保しうるものと認める。

II 変更事項

 従来適用されてきた炉心タンク出口重水温度「53.3℃」を「63.0℃以下」と改める。

III 審査内容

 炉心タンク出口重水温度を63℃、冷却水量を2.3m3/min程度としたときの炉心入口温度は58℃程度となる。このような冷却水温度について検討を要する最も重要な問題点は燃料板表面最高温度点における重水の局部沸騰の有無である。
 ここで、燃料板表面最高温度を求めるのに必要な諸不確定係数を考えると、これらは多くの実験値が得られた結果設計当初の値に比して、かなり信用し得る値になっている。そのような諸係数を用いて想定すべき最悪条件での燃料板表面最高温度を算出したところ、重水の沸騰点には達しないという結果が得られた。
 その他、燃料要素の機械的特性、冷却系各部の熱膨張など原子炉各部に与える工学的影響についても全く問題はない。