昭和39年度日本原子力船開発事業団事業計画



 内閣総理大臣および運輸大臣の定めた原子力第1船開発基本計画に基づき、日本原子力船開発事業団(以下「事業団」という)の昭和39事業年度事業計画は次のとおりとする。
 39年度においては、原子力第1船の建造契約を行なうとともに安全評価、舶用炉プラントの設計製作に伴う試験研究に重点を置いて事業を進める。なお、事業の実施にあたっては、関係機関の協力のもとに事業の効率的な推進を図るものとし、また得られた成果についてはその普及に努める。

1.原子力第1船の建造

(1)原子力第1船の建造契約

 前年度において実施した基本設計について、さらに要目の細部を検討するとともに安全性の評価も十分に行ない、原子力第1船の仕様書を作成し、昭和43年度引渡しを目標として国内業者と原子力第1船の建造契約を行なう。
 また、建造に伴う図面の承認および材料手配等に対する監督を実施するとともに、40年度から始まる工事に備え、工事監督基準の確立に努める。

(2)原子力第1船の安全評価

 前年度において作成した原子力船の安全性に関する基礎資料についてさらに内外の原子力船関係技術者と意見の交換を行なうなど広範囲の検討を加え基本設計、仕様書の作成、図面の承認、検査監督などの各段階において、安全性の評価を行ない、その結果を十分に反映させるものとする。

2.研究開発

(1)調査研究

 前年度に引き続き原子力第1船の建造・運航に関連して開発すべき事項について調査し、40年度以降の試験研究の実施に備える。

(2)試験研究

 原子炉プラントの主要機器の設計値を確認し、安全性および性能の向上を図るため、次に掲げる試験研究を実施する。なお、試験研究は、関係専門機関の協力を得て、協同または委託により行なう。

(イ)臨界実験

 既設の臨界実験装置を利用して、中性子束分布、制御棒効果、その他の核特性について設計値を確認するものとし、40年度の計測に備え、実験用の燃料、制御棒等を製作する。

(ロ)炉心構造模型試験

 原子炉圧力容器内部の水力的特性について設計値の確認を行なうものとし、40年度の計測に備え、原子炉圧力容器内部構造模型およびテストループを製作する。

(ハ)燃料集合体模型試験

 燃料集合体における水力的特性および耐振性の詳細について設計値を確認するものとし、40年度の実験に備え、燃料集合体模型等を製作する。

(ニ)原子炉制御計測器の環境試験

 中性子計測器、プロセス計測器および舶用特殊検出器について振動、動揺、衝撃、その他の船特有な条件を加え、設計値の性能を有することを確認するための試験を行なう。

3.国際協力および成果の普及

 原子力船の国際性に鑑み、原子力船の安全性に関する事項、技術的事項などについて、海外の関係機関と情報交換を行なう。
 また、前年度に引き続き、原子力第1船の開発課程を通じて得られた成果を普及するため、技術資料、年報、時報「原子力船」を取りまとめ、広く配布する。
 以上の事業を遂行するため、役員1名および職員4名を増員し、年度末定数は役員を含め68名とする。また事業遂行に必要な予算として現金総額約4.5億円、債務負担行為限度額36億円を計上する。