原子力委員会

第3回ジュネーブ会議に原子力委員会論文を提出


 原子力委員会は、第48回定例会議において今年8月31日〜9月9日にジュネーブで開催される第3回原子力平和利用国際会議のセッションB(将来のエネルギー需要と原子力の役割を討議)に提出する“日本における原子動力利用の必要性とその計画”と題する論文の要旨を次のように決定した。
 なおセッションBには、わが国の他、米国、ソ連、英国、フランス、カナダ、インド、アルゼンチンが論文提出することになっている。

日本における原子動力利用の必要性とその計画(要旨)

1.原子力委員会は、政府の定めた「国民所得倍増計画」(1960年)の線に沿って、1961年2月、今後20年間の「原子力開発利用長期計画」を策定し、わが国原子力開発利用の意義と目標およびその方針を明らかにした。

2.この「国民所得倍増計画」は、エネルギーの需給に関し、次のように述べている。すなわち、高度な経済発展にともない、わが国の電力需要は、年々大幅に増大する傾向にあり、1970年度および1980年度における電力需要は、それぞれ1959年度の約2.8倍および約5倍となると見込まれ、これをまかなうため大規模な発電設備の開発を必要としている。しかも、わが国においては、適地の減少等から水力の開発にはあまり期待できないので、火力に重点がおかれるが、この発電量に見合った所要燃料として重油の需要が増加し、主としてこのための原油の輸入増加にともない全エネルギー供給に占める輸入エネルギーの比率は、1970年度には約59%、1980年度には約73%に増大するものと見込まれている。

3.したがって、当委員会の「原子力開発利用長期計画」においても通商産業省総合エネルギー部会の報告においても外貨収支の見地からのみでなく、エネルギー供給の安定という面から、より安価なエネルギー源の開発およびその多様化をはかることが必要であり、この見地からエネルギーとしての供給が安定している原子力発電は、技術の進歩による著しいコスト低減と相まって将来におけるエネルギー供給源の有力な担い手となり、1970年代の初めには本格的な実用段階に入るべきものとしている。

4.「原子力開発利用長期計画」は、1970年までの10年間を将来の発展に備えた研究開発を行なう「開発段階」、1980年までの次の10年間を技術的、経済的見地からみて可能な限り開発を行なう「発展段階と区分し、前期に100万kWe、後期に600〜850万kWeの発電所が主として民間企業により建設、運転されることを目標としている。わが国における将来の電力需要は、「国民所得倍増計画」において想定された規模を上回ることが推定されているので、先に当委員会が作成した原子力発電の開発の意義は、ますます増大したものと思われる。

5.上記の目標達成のため、現在わが国においては、実用原子力発電所の建設、技術者の養成、各種の試験研究、その他体制の整備等を着実に実施しつつある。原子力発電所については、発電試験炉れ基がすでに運転中であり、またわが国初の実用規模発電所は民間企業により現在建設中で1965年に完成の予定である。このほか、1970年頃には、4原子力発電所が完成すると見込まれる。したがって、前期における原子力発電の開発規模は、当委員会の長期計画の目標を上回るものと予想される。当面のこれら発電炉は、海外から導入するが、わが国独自の発電炉技術の開発も着実にすすめている。なお、前期の開発計画を遂行するための使用済燃料に対する措置、燃料コスト低減のための措置、その他の諸問題については、政府としてその解決に努めている。

6.当委員会は原子力商船が遠からず実用化されることを予想して、その開発を原子力発電とともに「原子力開発利用長期計画」の重要事項としてとりあげ、そのための試験研究を実施し、開発計画の検討を行なってきたが、1963年には原子力第1船を建造する計画を確定し、特殊法人を設立してその建造をすすめている。