材料試験炉の設置


(昭和38年8月14日決定)

 原子力委員会は、昭和35年10月材料試験炉専門部会を設置し、材料試験炉設置に関する基本方針について諮問を行なったが、同専門部会から昭和36年10月、昭和37年4月にそれぞれ中間報告害および報告書が提出された。
 本委員会は、同部会の報告の趣旨を勘案し、昭和37年度および38年度原子力開発利用基本計画において、日本原子力研究所が材料試験炉の概念設計およびこれに基づく仕様書を作成することを決定し、同研究所は上記決定に基づく作業をほぼ完了するに至った。
 本委員会は、原子力開発利用長期計画の後期10年における動力炉国産化技術の確立と国産動力炉等の開発に資するためできるだけ早い時期に材料試験炉を設置することが適当であると考え、本試験炉の設置について次のとおり決定する。

(1)本試験炉は日本原子力研究所において建設する。

(2)本試験炉は昭和43年度完成を目途として、昭和39年度より建設に着手する。

(3)本試験炉の規模は、熱出力5万kWとし、炉心内中性子束は1014n/cm2/sec以上とする。

(4)照射試験用ループは6本とするが、差し当り3本を設置することとし、残りの3本の設置の時期については、その後の照射需要を勘案して決定する。

(5)照射後試験用ホットラボラトリーについては、既存のものをできるだけ活用することを考慮する。

(6)本試験炉の設置場所は茨城県大洗地区を予定する。

材料試験炉設置に関する経緯

1.36年2月に決定をみた長期計画において材料試験炉の設置について次のとおり述べられている。
 すなわち「核燃料の開発に際しては原子炉による照射試験が不可欠のものであるので日本原子力研究所の試験研究炉を有効に利用し得るよう措置するとともに前期10年の半ば以降において材料試験炉を設置し、核燃料開発の促進をはかる。」また「研究を効果的に進めるためには専用の材料試験炉を設置することが必要である。従って、炉型、規模、運営方法について早急に調査を行ない開発段階のできるだけ初期に日本原子力研究所に設置するものとする。」

2.35年10月原子力委員会は材料試験炉専門部会(部会長三島徳七)を設置し材料試験炉の設置に関する基本方針について審議を行なった。
 同部会は36年10月、37年4月にそれぞれ中間報告書および報告書を提出したがその要旨は次のとおりである。

(イ)設置の必要性
 原子力開発利用長期計画を効果的に推進し、燃料材料の国産化技術の確立と新型動力炉の開発に資するためわが国に材料試験炉を設置すことが必要である。本試験炉は、日本原子力研究所に設置し、これを関係機関が共同利用して原子力開発研究の促進をはかる。

(ロ)試験炉の規模
 熱出力は50MW燃料領域における速中性子束および熱中性子束はそれぞれ1015、2×1014n/cm2/sec、インパイルループは9本程度が必要である。

(ハ)建設の時期
 長期計画においても40〜41年に運転を開始する目標のもとに建設に着手することになっており、この線に沿ってできるだけすみやかに準備を進めることが望ましい。

(ニ)建設費および運転費
 ループ建設費、ホット・ラボを含めて建設費は75〜90億円が試算される。運転費は燃料費、人件費、間接費を含めて年間13〜16億円を必要とするものと推定される。

(ホ)照射試験費
 日本原子力研究所の原価方式に従って算定された額を徴集することを原則とするが、このようにして定められた照射試験費は、かなり高額のものとなるので研究開発の段階においては情況に応じて何らかの軽減措置を講ずることが必要である。

3.37年4月、日本原子力産業会議は「材料試験炉設置問題にからむメモランダム」として材料試験炉の設置について産業界の意向をまとめ関係方面に推進方を要請した。

4.日本原子力研究所は、専門部会の審議検討と併行して材料試験炉設置に関する作業を進めていたが37年度前半には専門部会の報告にもとづき材料試験炉についての全般的な設置計画を立てスケジュール、予算、問題点等について検討し、「JETR設置計画書」を作成した。

5.37年度後半は上記の設置計画書のスケジュールに従って仕事が進められた。すなわち9月には概念設計を完成し、11月〜12月の2ヵ月間海外調査を実施し、その後海外調査の結果に基づき概念設計を修正し、仕様書原案作成の準備を行なった。

6.38年度日本原子力研究所事業計画には、材料試験炉の建設準備として次のとおり明示されている。すなわち、「39年度発注を目途として概念設計を改訂し、本年秋頃外国コンサルタントに検討を依頼する。その結果に基き最終的な仕様書を作成し、発注の準備を行なう。」これらの仕事をするため本年4月材料試験炉建設準備室が発足し、本格的に作業を開始した。
 現在仕様書原案がほぼ完成し、9月には仕様書原案を米国NUS社の検討にかけ12月に報告書を受け取る予定である。

7.原子力委員会は、38年4月頃より日本原子力研究所の行なった概念設計作業の結果を慎重に検討し、現在に至ったものである。

材料試験炉の建設費およびスケジュール

 材料試験炉の建設に要する経費は表のとおり約75億円であるが、ループ3本の追加に約8億円、ホットラボの拡張その他に約6億円が将来必要となるものと見積られるので、本試験炉の最終的な完成までには総額約90億円が必要である。
 39年度は炉本体の発注および建家の建設に着工する計画であり、このため債務負担行為額約45億円、および現金約2億9千万円を予算に計上する。
 本試験炉の建設スケジュールを図に示す。

材料試験炉建設費

材料試験炉建設スケジュール