第5回原子炉主任技術者筆記試験問題


1.原子炉理論

第1−1.裸の円筒形原子炉の定数が次のような場合、最小の臨界体積を与える半径と高さの近似値を求めよ。

ただし J0(2.405)=0
ε=1.03 f=0.93
η=1.31 τ=150cm2
P=0.87 L2=500cm2

第1−2.臨界未満の体系について行なった指数実験から、その体系の臨界の大きさを求めることができる。その理論的基礎の概略を説明せよ。

第1−3.吸収のない無限媒質の温度が320℃のとき、最も多くの中性子が持つ速度(most probable velocity)とエネルギーを求めよ。

ただし、中性子のマクスウェル分布は n(E)/n・dE=Ae-E/KTE1/2dEで表わされる。

また、中性子質量 m=1.675×10−24g、ボルツマン定数k=1.38×10−16erg/deg=8.61×10−5eV/degとする。

第1−4.次の     内を数式で埋めよ。

 低濃縮ウランを核燃料とする熱中性子炉の転換比の計算を試みる。いま実効増倍率がε・P・f・η・Pの積で表わせるように各量を定義する。ここにPは体系から中性子のもれ出ない確率であり、その他の量は普通の定義に従ったものである。

 まず、計算を簡単化するために、体系は十分大きくP=1であり、ウラン以外には中性子の吸収はないものとしてf=1とおき、さらにε=1と仮定してみる。この場合、ウラン原子核1個を消耗して発生するの個の中性子のうち、熱エネルギー以上でU238に吸収されてPu239の生成に導く中性子の数は

A=          

であり、熱エネルギーでウランに吸収される中性子数は

B=          

となる。後者のうちにはU235に吸収されるものとU238に吸収されるものとが含まれるので、それぞれの巨視的吸収断面積をΣa235およびΣa238と書けば、結局Pu239の生成に導く中性子の数は

C=          

となり、(生成されるPu239)/(消耗されるウラン)の比は

D=         .

と与えられる。従って、(生成されるPu239)/(消耗されるU235)の比で転換比を定義すれば、転換比は

E=          .

と表わせる。

f≠1の場合には上の計算において、熱エネルギーでウランに吸収される中性子数にはfを乗じなければならない。P≠1の場合もほぼ同様に考えられる。いまPを減速中の確率と熱エネルギーになってからの確率との積で表わし、それらをそれぞれPfおよびPtと書けば、(生成されるPu239)/(消耗されるウラン)の比はそれらの記号を用いて、F=          .

と書き表わすことができ、また転換比は

G=          .

と書くことができる。

第1−5.次の     内に入る適当な、語句を番号とともに記せ。

 実効増倍率が即発臨界の値より大きければ (1) だけで連鎖反応を持続させることができる。その場合には (2) の値は、中性子が全部即発性であった場合と近似的に等しくなり、 (3) の効果は即発中性子の効果に比べると無視することができる。 (4) の単位として即発臨界に等しい値を用いることがある。この単位はドルと呼ばれその100分の1の単位を (5) で表わす。

2.原子炉の設計

第2−1.次の事項を簡単に説明せよ。

(a)プラントル数(Prandtl's number)

(b)転換炉(convertor)

(c)膜沸騰(film boiling)

(d)冷却材そう失事故(loss−of−coolant accident)

(e)コンテナースプレイ(container spray)

第2−2.次の各項について、a、b、c のうち、最も近いものを選べ。解答はその問題の番号とa、b、c何れかの記号のみを書くこと。

(1)軽水型動力炉の出力密度

  a 5W/cm3  b 50W/cm3  c 500W/cm3

(2)コールダー・ホール改良型動力炉の出力密度

  a 1 W/cm3  b 10W/cm3  c 100W/cm3

(3)重水の減速率(moderating ratio)

  a 10  b 100  c 1,000

(4)金属ウランの比重(g/cm3

  a 10  b 20  c 30

(5)UO2の融点

  a 500℃  b 1,500℃  c 2,500℃

(6)I135の半減期

  a 30分  b 5時間 c  50時間

第2−3.軽水型動力炉と重水型動力炉の利害得失を列拳し、簡単に説明せよ。

第2−4.小型均質原子炉の球形圧力容器において、

容器内側(r=r1)の表面温度がt1

容器外側(γ=γ2)の表面温度がt2


のとき、炉外へ失われる熱量qを与える式を求めよ。

 ただし、容器の熱伝導率はkとし、容器自体における熱発生は無視するものとする。

第2−5.燃料要素表面から106kcal/m2hrの発熱があり、冷却水は圧力8kg/cm2(飽和温度169.6℃)、温度150℃である。沸騰熱伝達が次式で表わされるとき、燃料要素表面の温度はいくらになるか。

 α=31.6Ps6/5ΔTs2

ただしα=熱伝達率kcal/m2hrdeg

 Ps=飽和圧力kg/cm2

 ΔTs伝熱面表面温度と飽和温度との差s 伝熱面表面温度と飽和温度との差deg

3.原子炉の運転制御

第3−1.次の事項を簡単に説明せよ。

(a)pbotoneutron
(b)cold clean critical
(c)xenon override
(d)log diode
(e)燃料棒のsbuffiing

第3−2.(1)原子炉の伝達関数は次式で表わされることを証明せよ。

 

ただしn0:炉の運転出力

δk:正弦波状に変化する反応度の微小変化

δn:反応度の変化に対する出力変動

 l:平均の中性子寿命

β:遅発中性子の割合

λ:先行核の崩壊常数

 s:ラプラスオペレータ

(2)上式でs=jωとして、周波数特性を図示せよ。

第3−3.燃料棒がそれぞれ冷却チャンネルを持つ原子炉において、各チャンネルの冷却体の流量および出口温度ならびに各燃料棒のミート部分の温度が測定されているものとする。あるチャンネルについて定出力運転中の出口温度の記録を調べたところ、正常値から徐々に低下の傾向が認められた。このような場合、考えられる主な原因を列挙し、測定中のデータから何れの原因であるかを推定する手順を述べよ。

第3−4.原子炉の組立を完了し、臨界になった後、高出力定常運転の段階に至るまでに各種の試験が行なわれる。100kW以上の研究用原子炉の場合に通常行なわれる試験・測定を列挙し、簡単に説明せよ。

4.原子炉燃料及び原子炉材料

第4−1.熱中性子炉の燃料被覆材を選ぶ場合に、考えねばならない主要な項目中五つをあげ、その理由を説明せよ。

第4−2.セラミック燃料要素の製造加工法三種をあげ、その概略を記せ。

第4−3.発電用原子炉のうち、天然ウラン・黒鉛減速型動力炉または軽水型動力炉の何れか選び、それに使用する燃料体について安全上要求される項目の主なものをあげ、そのために検討しなければならない燃料体の核燃料物質およびその他の材料の性質を説明せよ。

第4−4.黒鉛が原子炉内で照射を受けたとき、次の各項はどうなるか。解答はその問題の番号とa、b、c何れかの記号のみを書くこと。


第4−5.使用済燃料の再処理の立場から、ウランの核分裂生成物中問題となる主な核種三種をあげ、それぞれについて、どのような点が問題となるかを簡単に記せ。

5.放射線測定及び放射線障害の防止

第5−1.次の語句について説明せよ。

(a)しきい値検出器(threshol detector)
(b)ふきとり法(smear method)
(c)γ線放射率(specific gamma−ray emission)
(d)再生率(build−upfactor)

第5−2.下記に示す身休の組織および臓器に対して、問題となる放射線の種類およびエネルギーあるいは核種の種類をあげ、それによったどういう障害の恐れがあるかを例をあげて説明せよ。

  (a)皮膚(b)水晶体(c)生殖腺(d)甲状腺(e)造血臓器

第5−3.国際放射線防護委員会(ICRP)勧告にある空気中および水中の放射性同位元素の最大許容濃度は、どのようなことを根拠にして算出されているか、その概略を記せ。

第5−4.研究用原子炉から中性子がもれている場合、放射線管理の実務上、どのような中性子測定器を用い、線量率(rem/hr)分布をどのようにして判定するか。

 また、事故の場合、中性子による高被曝に対しては厳重に被曝線量(rem)を測定する必要があるが、これに対してはどのような中性子測定器を用い、どのようにして被曝線量を測定するか。

第5−5.国際原子力機関(IAEA)が1961年に発表した“Safe Operation of Critical Assemblies and Research Reactors”に、臨界実験装置については、最悪の起こりそうな反応度が加わった場合に、200MWsec の power burst が起きると仮定して、運転員の受ける被曝線量が25remを絶対に越さないように遮蔽しなければならないという趣旨のことが記されている。
 運転員は年間を通じて交代しないものとして、次の問に答えよ。

(a)いま上記のように遮蔽が設計されている最大熱出力100Wの臨界実験装置では、運転員の近づくことの出来る場所の線量率は、何mrem/hr以下であることを要するか。

(b)この臨界実験装置をいろいろの熱出力で運転するとき、運転員の年間積算線量を職業人に対する最大許容線量5rem/yの1/5におさめるためには、年間積算熱出力を何kWhにおさえるべきか。

(c)運転員の年間積算線量を(b)のとおりとして、装置の年間運転を10kWhまで行ないたい場合には、運転員の近づくことの出来る場所の線量率を100W運転のとき何mrem/hr以下になるよう遮蔽すべきか。

(d)(c)の場合、200MWsec の事故時に受ける最大被曝線量は何 rem か。

6.原子炉に関する法令

第6−1.原子炉を設置しようとする者が、原子炉の運転を開始するまでに、とらなければならない手続を七つ列挙せよ。

第6−2.次の文章中の    のうちに入る適当な語句を番号とともに記せ。

 内閣総理大臣は、原子炉の設置の許可の申請があった場合においては、その申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、許可してはならない。

1 原子炉が (1) の目的以外に利用されるおそれがないこと。

2 その許可をすることによって原子力の開発及び (2)  (3) な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。

3 その者に原子炉を設置するために必要な (4) 及び経理的基礎があり、かつ、原子炉の運転を適確に遂行するに足りる (5) があること。

4 原子炉施設の (6)  (7) 及び (8) が核燃料物質、核燃料物質によって (9) された物又は原子炉による (10)  (11) 支障がないものであること。

第6−3.原子炉の保安規定を作成する場合、次の各項目について保安上必要と思われる要点を列挙せよ。

(1)管理区域、保全区域及び周辺監視区域について
(2)運転開始前の点検について
(3)核燃料物質の管理について