昭和38年度核原料物質探鉱計画



 昭和38年度における核原料物質の探鉱については、前年度に引き続き、主として堆積岩地域を対象として行なうこととする。
 探鉱の実施にあたっては、通商産業省工業技術院地質調査所がカーボン地質鉱床概査等によりウラン鉱賦存の状況について基礎的な調査を行なうとともに、その成果に基づいて、原子燃料公社が有望地区に対して鉱床精査、試すい探鉱、坑道探鉱等を実施し、効果的に国内ウラン資源の実態を明らかにすることとする。

1 地質調査所の行なう探査
 地質調査所においては、昭和37年度までにウラン鉱賦存の可能性のある地域のうち約155,000km2について放射能強度分布概査を実施した。本年度は予算35,628千円をもって引き続き堆積岩地域に対して組織的探査を行ない、ウラン鉱床の発見につとめるとともに、その地質鉱床学的研究および堆積型鉱床に対する探査技術の向上に関する研究を行なうこととする。

(1)放射能強度分布概査
 次の地域面積計12,000km2についてカーボン調査を行なうほか、地質鉱床概査を実施して、放射能強度の分布状況を調査する。

(イ)カーボン調査
 陸羽地域、甲府地域、長野・松本地域、宮崎地域(可地質鉱床概査岩手県、宮城県、新潟県、富山県、大分県、鹿児島県等

(2)放射能異常地調査および鉱床調査昭和37年度までの放射能強度分布概査の結果、放射能強度がとくに異常な次の地区に対し鉱床調査等を実施して新鉱床の発見につとめる。
 富山県千野谷地区、岐阜県土岐一瑞浪地区、山口県宇部北部地区、鹿児島県湯ノ谷地区さらに、次の地区については、ウラン鉱床の賦存が推定されるので、鉱床の就床状況の概要を明らかにし、今後の探鉱に関する基礎資料を得るために試すい探鉱等を含む鉱床調査を実施することとする。
 新潟県中束(なかまるけ)南西部、岐阜県土岐
また、鉱床調査のための基礎的研究として、地球化学的研究、層位学的および堆積学的研究ならびに基盤岩の地質学的研究を実施することとする。

(2)探査技術の向上に関する研究
 堆積型鉱床は基盤の地質構造と密接な関連を有することが判明しているので、土岐市北部地区に対して地震探鉱法および電気探鉱法による探査を実施して基盤の地質構造を探知する。なお電気探鉱法については、人形峠鉱山の中津河−赤和瀬地区において前年度に引き続きその適応性の研究を実施することとする。

2 原子燃料公社の行なう探鉱
 昭和37年度に引き続き、堆積型鉱床に重点をおき、岡山県人形峠鉱山および鳥取県東郷鉱山の探鉱を主として、試すい探鉱等により既知鉱床の拡大と新規鉱床の発見につとめる。また、これら以外の地区でウラン鉱床の発展が期待される山形県小国、京都府宮津等における探鉱を積極的に行なう。
 これらの探鉱に要する経費の総額は約250百万円とする。

(1)人形峠鉱山およびその周辺
 昭和37年度に引き続き、中津河地区に約300m長者地区に約200mの坑道探鉱を実施し、鉱床の斌存状況を解明するとともに、長者地区および十二川地区において試すい探鉱および地表調査を実施し、鉱床の拡大につとめる。また、これらの試すい探鉱および地表調査により十二川地区鉱床と東郷鉱山の神ノ倉地区鉱床との関連を追求する。その他倉見、黒岩、高清水、赤和瀬等の各地区に対しても地表調査および試すい探鉱を実施し、鉱床の拡大につとめる。
 これらのうち倉見および黒岩地区については、電気探鉱を実施して地質構造の解明につとめる。

(2)東郷鉱山およびその周辺
 昭和37年度に引き続き神ノ倉地区に重点をおき、約1,700mの坑道探鉱を実施し、第2および第3鉱体の解明につとめる。また試すい探鉱により鉱床の拡大につとめるとともに、鉛山地区および神ノ倉地区各鉱床間の関連を追求する。
 飯盛山地区においては、地震探鉱および電気探鉱による地下構造の解明ならびに試すい探鉱による潜頭鉱床の発見につとめる。
 その他白石、桑原、羽衣石、鹿野等の各鉱床についても地表調査および試すい探鉱を引き続いて行なう。

(2)小国およびその周辺
 昭和37年度をもって金丸地区の探鉱をほぼ終了したので、本年度は小国地区鉱床につき、試すい探鉱および地表調査を実施する。
 中東地区鉱床はかなりの連続性が認められているので、本年度は北部および北西部に対して、地表調査、簡易電気探鉱、試すい探鉱等により積極的に調査を行なう。

(4)その他の地区
 昭和37年度は岩手県花巻、新潟県赤谷、新潟県五頭山、福島県車峠、京都府宮津、島根県石見大田および鹿児島県垂水等の各地区に地表調査、化学探鉱、Uスコープ調査、試すい探鉱等を実施し、かなりの成果をみたので、本年度もこれら地区において地表調査を実施するほか、化学探鉱を宮津、石見大田の各地区、Uスコープ調査を赤谷、宮津、垂水の各地区、試すい探鉱を宮津、石見大田、垂水の各地区において実施する。
 また赤谷地区においては、赤谷炭鉱の旧坑取明けを行なう。
 その他、地質調査所の行なう探査の結果有望と認められる地区および原子燃料公社所有鉱区等に対しては、適宜地表調査等を実施することとする。