原子力委員会参与会の議事概要



第1回

〔日時〕 昭和38年2月7日(木)14.00〜16.00

〔場所〕 海運クラブ

〔配布資料〕
(1)昭和38年度原子力関係予算(案)について
(2)昭和38年度原子力関係予算査定表
(3)日本原子力船開発事業団法案
(4)日本原子力船開発事業団法案要綱
(5)科学技術庁設置法一部改正法案
(6)水理学におけるラジオ・アイソトープの利用に関するIAEAシンポジウムの開催について
(6)−2アジア・太平洋諸国の現状
(7)プルトニウム調査団報告
(8)日米研究協力について
(9)原子力委員会専門部会等の審議状況

〔出席者〕

(原子力委員会)
 石川、有沢、西村、兼重、駒形各委員

(参 与)
 稲生、井上、大屋、岡野、菊池(代)、倉田(代)、久留島、嵯峨根、瀬藤、高橋、
 成富、伏見、松根、三宅、矢木、安川(代)、山県、吉沢、脇村、和田各参与

(関係者)
 通商産業省、運輸省、文部省

(事務局)
 江上次長、村田次長、政策課長、調査課長、国際協力課長、核燃料課長、
 原子炉規制課長、研究振興課長(代)、放射線安全課長、放射能課長、
 原子力開発機関監理官、その他担当官

〔議事概要〕

1 昭和38年度原子力関係予算(案)について
 政策課長から配布資料(1)および(2)にもとづいて昭和38年度原子力関係予算(案)について説明があった。

 嵯峨根参与:高速炉臨界実験装置にはプルトニウムを相当使用するか。

 村田次長:債務負担行為額として認められている。3年から4年をかけてつくるが最初はやはりウランを使用することになる。

2 原子力船開発事業団法案について
 政策課長から配布資料(3)および(4)にもとづいて、原子力船開発事業団法案について説明があった。

 岡野参与:監事が1人となっているが、これで十分か。

 政策課長:関係方面との折衝の過渡的な段階では監事が2名であったが、最終的には副理事長の代りに専務理事が認められた際に、監事が1名になった。

 江上次長:理事は3名である。

 岡野参与:監事がいそがしくて代理が必要となり業務監査の完備がむずかしいのではないか。

 政策課長:監事の仕事は、業務監査と会計監査を含んでいるがやっていけると思う。

 岡野参与:行政管理庁から各公団の主管大臣に対して監事の権限を強化するように申入れがあったが、これとの関係はどうか。また一般の会社でも常勤の監査役はだいたい重役になっている。

 政策課長:監事の権限の強化や待遇の改善については行政管理庁からいってきたが、法制局での調整の結果、本法案の第10条第5項が新しい項として追加になった。

 岡野参与:権限を強化した場合に差別待遇のないようにしてほしい。また、よく人選して頂きたい。

 山県参与:法案のなかで、「原子力船」というところは原子力第1船と読むのか。原研のJRR−4を用いて遮蔽実験を行なう場合には第1船以外の一般的なものもできるか。

 江上次長:「原子力船」は定義では第1船とはいっていない。

 政策課長:「原子力船」という言葉は法令用語としては普通名詞である。しかし、内容的には第1条の目的、予算との関係等もあって第1船ということになる。

 山県参与:原船協の業務の原子力船一般の仕事にJRR−4を使わなければならない意味で今の原船協を残さなければならないようになりはしないか。

 江上次長:日本原子力船開発事業団で一般的な原子力船に関する研究全部をカバーすることはないので、一般的な研究のために原船協の必要性があり、存続してもよいことにはなる。

 瀬藤参与:原船協を残しておこうということか。

 山県参与:金の問題もあり、なかなか難しいのではないか。

 嵯峨根参与:3〜4年後に(炉型が決まった時に)問題になる。

 瀬藤参与:考えていることが明白なら法案に書けないことはない。前例がないので出来ないのではないか。

 大屋参与:原船協を継続してやるのは自由であるが、出資している会員の会社にとって同じ様なものに2個所も金を出さなければならなくなるので、それが問題となろう。

 石川委員:原子力第1船を進めるには、これに集中して行くことが必要であろう。

 伏見参与:原子力第1船が出来たらどうするのか。

 石川委員:運輸省が引きとることになっている。

 政策課長:運輸省のなかで、どこが引きとるとかはまだ決っていない。

 伏見参与:お使いになる方の意見を入れておかないと後で困らないか。

 石川委員:5年後までに考えれば良い。

 岡野参与:YS−11の例もあり、時限立法では当然間に合わないことが出てくるのではないか。その場合はどうするか。

 江上次長:それはその時として、時限立法にしないと予算がつかないので今の案でまず始めてしまうことである。

3 科学技術庁設置法一部改正法案(水戸原子力事務所の設置)について
 政策課長から資料(5)にもとづいて、水戸原子力事務所の設置について説明があった。

4 アジア・太平洋原子力会議および水理学におけるRI利用に関するシンポジウムについて
 国際協力課長からアジア・太平洋原子力会議およびIAEA主催の水理学におけるRI利用シンポジウムの準備の進行状況について報告があった。

 成富参与:資料の中には日本を加えてほしい。

 西村委員:賠償の中には経済協力も入っているか。

 村田次長:図解については純賠償のみである。

5 プルトニウム調査団報告について
 事務局からプルトニウム調査団報告書について説明があった。

 大屋参与:この調査団と技術者のプルトニウム施設への派遣の問題があったが、技術者の派遣方はどうなっているか。

 嵯峨根参与:この報告書の8頁中段の「わが国でも特にそれを考える理由はないと思われる」とあるが、これは専門部会で検討すべきことであり、誤解を受けるおそれがある。

 石川委員:調査団としての意見であって、今後専門部会で検討する場合、必ずしもこれにこだわる必要はない。

 嵯峨根参与:調査団派遣の時期としてはよかったが、この報告書の前にAECからのケネディ大統領への報告書が出され燃料問題についても既に述べられて、相当明確になったこともあり、その意味では一部分については影がうすくなった感じはある。

6 日米研究協力について
 核燃料課長から資料(8)にもとづいて日米研究協力の進行状況について報告があった。

 石川委員:ハンフォードの問題や安全性の問題の進行状況についてはどうか。

 核燃料課長:日本から専門家をハンフォードに受け入れてPRTR計画に参加させたらとウェルズ氏から話があったが、その前に先ず調査団を派遣し、その報告をまって2名程度の専門家を派遣することを考えた。またプルトニウム専門部会の設置も考えている。安全性については日米フォーラム後、話が進んでいない。

 石川委員:安全性について米側のやり方も習っておかないと困る。特許の問題については、AECの資金でやったものは全部AECに特許権が属するが、日本では官庁の研究機関でも個人の権利を少し認めている。またこれ以外にも共同研究の場合の特許の問題があり、この問題について1年がかりでやらなければむずかしいので専門部会のようなものを作り検討していきたい。

 稲生参与:特許問題について日本政府の方針が決らないうちに共同研究のためにアメリカへ行くことが出来るか。

 大屋参与:いまのことに話をもどすと、1年以上たっているが、日米会議の時に私は技術協力をして行きたいと思うがどう考えるかと質問したところ、ウェルズ氏から、問題はプルトニウムに関してだが、これについては日本から貰うものはなにもないが、アメリカでは情報を与えるからこちらに人を出さないかとの話があった。私は、人を出す場合、民間からではなく、政府の資格で出したらという意味の了解をしている。1年前の話であるので、現在そのまま受け入れるつもりかどうかはわからぬが、先方は単にプルトニウムに関する技術を修得するというだけではなく、常時イソフォメーションを日本に送れるよう駐在したらどうかということであった。

 瀬藤参与:習うためには原研や公社から人が出ているが、情報を集めるために出すことが必要である。

 大屋参与:プルトニウムのインフォメーションを継続して入手することが必要である。

 嵯峨根参与:PRTRには人が行っているが、2〜3年でプルトニウムに関する結論が出る大事な時だから、この問題は早く進めてほしい。

 核燃料課長:原産との打合せで調査団が帰ってから専門家の派遣を考えるということであったが、長期派遣について至急に考える。日米研究協力についても実施は原子力局を通じてということであり、ウェルズ書簡も微妙であり、橋本書簡に対して前回と同じようにやりたいということであった。やれることからやるというアメリカ側の考え方が出ている。現実に調査団も行ってきたし、その意味では着々と進んでいることであり、先方の主旨にも合っている。

 大屋参与:ルートのことでなく、よい高があれば早いうちに進めておいた方がよい。井上参与がアメリカに行った時ウイルソン書簡について確認してもらうようにたのんだが、私個人としては、おしいような気がする。

 瀬藤参与:話は着々と進み、準備中である。

 井上参与:新会長のロッジ氏から炉心の溶融問題など原子力炉安全性についての共同研究の話があった。

 嵯峨根参与:“Nucleonics”の2月号にこのことで“core melt fission product”等の安全性問題についての計画が出ている。

 大屋参与:なるべく早く、選考を願いたい。

7 その他

 吉沢参与:原子力潜水艦の寄港についてはどうか。

 江上次長:目下、外務省から米政府にいろいろ確認している。安全性の資料、廃棄物、モニタリング、今回の寄港の目的、予定はどうか。汚染の事例がないか、また損害補償の問題はどうかについて問合せ中であり、返事が来てから態度を決定することになる。法律的な問題点は原子力潜水艦の寄港は基本法に違反しないかということで法制局と原子力局と多少解釈が違うが基本法は国内法であり、関係がないということで結論は同じである。米国の場合には安保条約があり、普通の軍艦の場合は協議対象になっていない。アメリカがいってきたのは法律論でなくて実際の技術上のことである。安全性について普通の原子力船の場合は日本の安全審査の対象になり、これについての国際条約は交渉中であるが、軍艦は不可侵の原則があり立入ることが出来ない。安全性の資料も出せということは出来ない。委員会としてもなにか安全性について確認する必要がある。ここまでが委員会の範囲である。

 成富参与:損害が起った場合の措置は国際的にはどうなっているか。

 政策課長:昨年の5月25日にブラッセルで条約案が成立したが、原子力船の所有国が1カ国も賛成しないのでまだ発効していない。

 成富参与:それによるのなら日米間で条約をつくる必要があるのではないか。

 江上次長:日米間に取決めが必要である。

 兼重委員:その点については安全性をたしかめ、万一の場合には補償を求める。この時に、日本政府が補償するか、アメリカ政府が補償するについて話しているが、また検討中である。

 成富参与:ビキニの問題でも、日本政府が被害者の代理として米国に補償を求めたが、ルールが必要なのではないか。

 江上次長:サバンナ号がギリシャへ入港する時は5億ドルを限度として、手続きは国際法のルールによることになっている。

 成富参与:それがないと入って来られては困る。今後のルールとなるべき、基準が必要である。

 矢木参与:是非ハザード・エバリュエーションの資料だけは出させてほしい。

 兼重委員:どんな項目について聞いたかということは今の段階では申し上げられない。

 石川委員:次回は3月7日(木)に行なう。