原子力委員会

昭和38年度原子力関係予算政府原案の決定について


 昭和38年度原子力関係予算は、年度中に支出可能な現金額95.2億円、債務負担行為額37.0億円である。
 これを37年度と比較すると現金額14.8億円(18%)債務負担行為額21.8億円(14.4%)の増額となっている。38年度原子力関係予算の内訳は別表のとおりであるが、その主なものについて述べると次のとおりである。

(1)日本原子力研究所

(イ)わが国における原子力開発の自主性を高め、技術水準を向上させ、その総合的開発能力を一段と育成するため、国内の研究開発機関の参加を求め、将来性の期待できる動力炉について基礎設計から建設まで一貫して行なうプロジェクトに着手する。このため38年度は主として概念設計および実験炉一次設計を行なう。(予算、現金額0.40億円、本件関係定員増4名)

(ロ)東海村地区にはすでに原子力諸施設が多数集中しているので新たに国産動力炉、材料試験炉およびラジオ・アイソトープ諸施設の用地として132万平方メートル(40万坪)を入手することとし、このうち38年度は33万平方メートル(10万坪)を購入する。(予算、現金額0.85億円)

(ハ)放射線化学中央研究所の建設については、37年度に引き続きコバルト60中間規模試験室、定常2MeV加速器中間試験室等の建設を完了せしめるとともにラジオ・アイソトープ工学実験室、モックアップ試験室等の建設室等の建設を行なう。(予算、現金額10.5億円、債務負担行為額4.7億円、本件関係定員増24名)

(ニ)原子炉の運転および建設関係については、JRR−1が従来に引き続き定常運転を行なうほか、JRR−2も定常運転に入る。JRR−3は出力上昇試験を行ない、JPDRは年度初期には全出力運転に入る予定である。
 また原子力船における遮蔽の研究を行なうためのJRR−4は39年度中に完成の予定で建設工事を進める。
 材料試験炉については、従来行なってきた調査研究を基として昭和39年度に建設に着手することを目標に仕様書の作成を行なう。
 さらに、従来行なってきた高速中性子炉に関する研究をより本格化するため、高速炉臨界実験装置の建設に着手する。(予算、現金額11.7億円、債務負担行為額1.6億円、本件関係定員増18名)

(ホ)JRR−3の本格的運転に対処して、昭和39年度中に完成の予定でラジオ・アイソトープ製造工場の建設を行なう。(予算、現金額2.3億円、本件関係定員増3名)

(ヘ)その他研究施設関係として、各種原子炉燃料検査のためのホット・ラボの拡充に着手するほか、プルトニウム特別研究室の内装、再処理試験用ホット・ケーブの建設、廃棄物処理場増設等を行なう。(予算、現金額7.4億円、債務負担行為額10.1億円)
 各種の試験研究関係については、従来行なってきた研究開発を一層推進することとし、特にプルトニウムの研究を本格的に開始する。

(ト)このほかわが国の各原子力研究機関における研究成果を海外に紹介する業務を一層強化する等重要事業の推進をはかる。(予算、現金額9.5億円、本件関係定員増61名)
((原研総予算、現金額59.9億円(24%増)、債務負担行為額16.4億円、うち政府出資現金額56.4億円定員増120名、38年度末合計1,604名))

(2)原子燃料公社

(イ)国産ウラン鉱石を対象とする採鉱、製錬の技術は、今日までの試験によって一応の成果を得たので、パイロットプラント規模による工業化試験を実施し、将来の本格的生産に備えるため、この試験工場を人形峠鉱山に建設する。

(予算、現金額0.43億円、債務負担行為額1.2億円)

(ロ)プルトニウム燃料の研究開発を行なうためにプルトニウム燃料の研究施設等の建設を行なう。(予算、現金額1.9億円、債務負担行為額8.0億円、本件関係定員増11名)

(ハ)1日あたり1トン程度の規模の使用済燃料再処理工場の建設を目途とし、これに関する資料購入および詳細設計を行なう。(予算、現金額1.5億円、債務負担行為額5.9億円、本件関係定員増7名)

(ニ)核原料物質の探鉱については、昭和36年度に引き続き人形峠および東郷鉱山に重点をおいて探鉱を実施するほか、山形、新潟県境小国地域、新潟県三川赤谷地域等の検査を組織的に行なう。このほか人形峠鉱山において水力採鉱試験を実施する。(予算、現金額2.8億円)
((公社総予算、現金額16.2億円(18%増)、債務負担行為額15.1億円、うち政府出資現金額15.5億円、定員増21名、38年度末合計581名))

(3)放射線医学総合研究所
 放射能調査部門の強化等、従来行なってきた事業をさらに推進するほか、新規事業として緊急時対策に関するプロジェクト研究、養成訓練棟の建設を行なうとともに外来研究員の受入体制の整備をはかる。
((放医研総予算、現金額5.3億円(16%増)、定員増30名、38年度末合計391名))

(4)国立機関試験研究
 各省庁所属の国立機関においては、従来に引き続き放射線利用、原子炉工学、核融合反応、放射線標準、放射線障害防止、原子力船の安全対策等について研究を行なう。特に原子炉工学の基礎的分野および放射線利用の面において研究の充実をはかる。(予算、現金額5.8億円、債務負担行為額0.78億円)

(5)補助金委託費
 核融合に関する研究、原子炉の安全性および事故解析に関する研究等に対して委託費を、また、軽水型動力原子炉およびガス型動力原子炉の開発に関する研究、放射性同位元素の利用の研究等に対して補助金を交付する。(予算、現金額、委託費1.5億円、補助金1.6億円、計3.1億円)

(6)放射能測定調査研究
 核爆発実験に伴う放射性降下物の防護については、従来放射能調査分析および対策研究等の強化をはかってきたが、38年度においても引き続きこれら調査研究等の一層の充実強化を期するものとする。(予算、現金額0.92億円)

(7)核原料物質等の購入等
 日本原子力研究所をはじめ大学その他の原子炉または臨界実験装置等に使用される濃縮ウラン等の購入または借り入れ等のため必要な措置を講ずる。(予算、現金額1.9億円、債務負担行為額0.55億円)

(8)国際協力その他
 外国の原子力関係科学技術者の招へいおよび外国との科学技術者の相互交流を行ない、国内科学水準の向上を図るとともに、37年度に引き続き科学技術者の海外派遣を積極的に行なうものとする。特に、国際協力を一層効果的に推進するため、欧州に原子力関係に主眼を置いた科学アタッシェを1名増員する。(予算、現金額0.44億円)

(9)放射性廃棄物処理事業の助成
 放射性廃棄物回収貯蔵業務をさらに円滑に推進するために必要な貯蔵施設の建設および器具の整備を行なうものとし、このため廃棄物処理事業補助金を交付する。(予算、現金額0.09億円)

(10)理化学研究所
 理化学研究所が行なう原子力平和利用研究に対しては、従来委託費または補助金を交付することによりその促進をはかってきたが、38年度からは、これらの研究に対する予算措置は、理化学研究所の他分野における研究と同様に政府出資によることとする。38年度においては、サイクロトロンの建設、核融合反応の研究、RI利用研究等を行なう。(予算、現金額2.3億円、債務負担行為額4.2億円)

(11)原子力船開発協会(仮称)
 原子力船に関する研究開発は数年間にわたって慎重にすすめられた結果、わが国の原子力第一船の建造に必要な予備的な研究段階をおおむね終了したので、38年度から原子力第一船の建造に着手しその過程において総合的な研究開発を行なうこととする。
 このため原子力第一船の設計、建造および実験運航を主たる内容とする9ヵ年計画を作成し、その実施を特殊法人日本原子力船開発協会(仮称)を設定して行なわせることとする。(予算、現金額1.5億円、うち政府出資額1.0億円)

(12)原子力発電所立地調査
 原子力発電所の立地調査を従来の図上調査に加え地質および気象の面より現地について行なうこととする。(予算、現金額0.06億円)

(13)水戸原子力事務所
 東海村地区における放射線監視の充実強化および原子炉施設等の安全対策の強化をはかるため茨城県内に水戸原子力事務所を設置し当該地区の原子力行政事務の実施に万全を期することとする。(予算、現金額0.09億円、定員6名(うち配置換2名))

(14)原子力局の一般行政
 従来行なってきた各種行政事務のほか、原子力施設安全対策、国際協力、各種調査企画等をさらに強力かつ円滑に行なうため必要な措置を講ずる。(予算、現金額1.2億円)

(15)各省庁原子力関係行政
 国際原子力機関との折衝、原子力船の規制、原子力発電所の規制等に対し、それぞれ関係各省庁は必要な行政を行なうが、これらに要する行政費は関係各省庁の予算に直接計上する。(予算、現金額1.0億円)

昭和38年度原子力関係予算総表


1.日本原子力研究所に必要な経費




2.原子燃料公社に必要な経費



3.放射線医学総合研究所に必要な経費


4.国立試験研究機関に必要な経費

  (1)原子燃料の研究


  (2)原子炉材料に関する研究


  (3)原子力船に関する研究


  (4)核融合に関する研究


  (5)放射線測定等に関する研究


  (6)安全対策および放射線障害防止に関する研究



  (7)放射線利用に関する研究





  (8)放射線化学に関する研究


5.試験研究の助成および委託に必要な経費


6.放射能測定調査研究に必要な経費



7.核原料物質等の購入等に必要な経費


8.原子力技術者の海外派遣に必要な経費


9.放射性廃棄物処理事業の助成に必要な経費


10.核原料物質の探鉱奨励に必要な経費


11.理化学研究所に必要な経費


12.日本原子力船開発協会(仮称)に必要な経費


13.原子力発電所立地調査に必要な経費


14.水戸原子力事務所に必要な経費


15.原子力委員会に必要な経費


16.放射線審議会に必要な経費


17.原子力局の一般行政に必要な経費



18.関係各省庁における行政費

  (1)国際協力に必要な経費


   (2)放射線障害防止に必要な経費


  (3)原子力利用の調査等に必要な経費


   (4)鉱山保安対策に必要な経費


   (5)核原料物質開発に必要な経費


   (6)原子力船の開発に必要な経費


   (7)図書購入費