第4回原子炉主任技術者筆記試験問題

原子炉理論

1-1.裸の原子炉についての臨界方程式は、通常次のように書かれる。


 ここにκeは実効増倍率、εはfast fission factor,は共鳴をのがれる確率、ηは核燃料物質に吸収された中性子1個当りに発生する平均分裂中性子数、B2はバックリング、は拡散距離、τはフェルミ年令である。

 天然ウランを核燃料とし、平均的には同一の炉心組成をもつ均質炉と不均質炉とを比較し、次の諸因子の間の大、小、あるいはほぼ等しいという関係を示すために、の中に記入すべき>、<あるいは=のいずれかの記号を番号とともに記せ。

  ε(均質)
 ε(不均質)
  (均質)
 (不均質)
  (均質)
 (不均質)
  η(均質)
 η(不均質)

 また一般的にいって良好な条件の下での4因子の積は
    εpfη(均質)εpfη(不均質)
 となるから、臨界となるためのバックリノグをくらべると
    B2(均質)B2(不均質)

 となり、もし原子炉が立方体の形をしているとすれば、臨界になるための一辺の長さ
    (均質)(不均質)
 となる。また同一の大きさの体系について考えれば
    κe(均質)κe(不均質)となる。

 次に原子炉体系のおよびτを、純度のよい減速材のみの拡散距離0およびフェルミ年令τ0とくらべると

        0
        τ0τ

の関係がある。

1-2.次の事項を簡単に説明せよ。
 (1)初期燃料転換率(initial conversion ratio)
 (2)反射体節約(reflector saving)
 (3)1/υ-法則
 (4)損失因子(disadvantage factor)

1-3.
 (1)U235と黒鉛とを含む球形の均質炉の臨界の体積について、原子密度の比e/235の関数として計算したところ次のグラフを得た。このグラフを用いて、U235の臨界質量の概算値を求め、図中に臨界質量とe/235との関係を表わすグラフを記入せよ。ただし、黒鉛およびU235の密度はそれぞれ1.6g/cm3および19g/cm3とする。


 (2)上に求めた臨界質量のグラフのうち、e/235の小さな所(2×104以下)、中位の所(2~5×104)ならびに大きな所(5×104以上)の変化の物理的意味について簡単に説明せよ。

1-4.無限に厚い反射体で取りかこまれた球形原子炉を-群拡散理論によって考えると、炉心の中では

  (0<


反射体の中では(R<r<∞)


の方程式が成り立ち、①式および②式の解は中心および無限遠の境界条件を考慮して


と求められる。

 (1)③、④式を用い、における境界条件を入れて、無限に厚い反射体で取りかこまれた球形炉の臨界方程式を導け。

 (2)③式を用い、炉心内の平均中性子束φcと炉心の中心における中性子束φ0との比φc0を求めよ。

1-5.熱中性子束一定の運転をしている原子炉中のクセノン135(Xe135)の量は、Xe135の崩壊定数はλx、同じく吸収断面積δx、核分裂片がI135である確率を、Xe135である確率をとする。

原子炉の設計

2-1.厚さ10cmの熱遮蔽体の面に垂直に、エネルギ流束1013MeV/cm2secのγ線が当っている。いま冷却気体がこの熱遮蔽体の内外両面を60℃に保っているとする。そのとき熱遮蔽体内部の最高温度と、その位置とを計算せよ。ただし、次の数値を用いること。
 (1)熱遮蔽体のγ線に対するエネルギ吸収係数=16m-1
 (2)熱遮蔽体の熱伝導率=50kcal/hrm℃
 (3)1eV=1.60×10-19Joule
 (4)熱の仕事当量=4.18Joule/cal


2-2.次の文章を完全にするために、の中に記入すべき文字を番号とともに記せ。


 NRX、JRR-3等の原子炉において、燃料体は通常アルミニウムで被覆された棒状金属ウランである。この型の燃料体の半径方向の熱伝導に対して


 ただし、Q()、κfはそれぞれ燃料体の(kcal/hrm3)、(kcal/hrm℃)、と呼ばれるものである。①の解は


の解は


燃料中心温度を T0とすると


 燃料体と被覆材接触面の接触熱抵抗を無視すると、燃料表面温度T1と冷却材温度T2との間には


ただし、⑤において


従って、燃料単位長さ当りの熱出力qは⑥で与えられる。


2-3.軽水型動力炉と材料工学試験専用炉について炉心設計の主な相違点を述べよ。

2-4.正方形の断面をもつ直方体容器に、物質バックリング0.010cm-2、体積-200リットルの燃料減速材混合溶液を満たし、臨界以上の状態に止めたい。その条件を満たす容器の寸法について、概略値を求めよ。

2-5.次の用語を説明し、設計上の問題点について簡単に述べよ。
 (1)burnable poison
 (2)seed and blanket core
 (3)burnout heat flux
 (4)Reynolds number
 (5)hydraulic instability(BWR)

原子炉の運転制御

3-1次の事項について説明せよ。
 (1)核分裂計数管(fision chamber)
 (2)中性子源連錠回路(neutron source interlock)
 (3)カドミウム比(cadmium ratio)
 (4)質量係数(mass coefficient)
 (5)シグマ増幅器(sigma amplifier)

3-2.原子炉自身の反応度が運転中に変化する原因を、原理的に分類して列記し、簡単に説明せよ。

3-3.
 (1)制御棒引抜きによる制御棒校正(rod calibration)の原理、方法および実施上の注意について述べよ。

 (2)制御棒の位置が約50%で、低出力臨界の状態を保っている原子炉において、その制御棒を15cm引き抜いたところ、周期(period)T=30secで出力が上昇した。この場合制御棒1cm当りの反応度はいくらか。ただし、炉の動特性は、一群の遅発中性子に支配されると仮定して、次の式および定数を用いよ。

 反 応 度       δ/+β/(1+λ

 中性子平均寿命   =10-3sec

 遅発中性子の割合  β=0.0064

 遅発中性子の崩壊定数 λ=0.077sec-1

3-4.原子炉の周期(period)測定の原理を説明し、具体的な回路構成について知るところを述べよ。

3-5.加圧水型動力用原子炉の運転における各種制御方式を略述し、それぞれの特徴を説明せよ。原力炉燃料・原子炉材料

4-1.動力用原子炉燃料としての天然金属ウラン、濃縮ウラン合金および濃縮酸化ウラン各系の得失につき比較説明せよ。

4-2.核燃料としてのトリウムについて知るところを述べよ。

4-3.核燃料以外の原子炉構造材料にも照射試験が必要であるか、その理由を述べよ。

4-4.原子炉冷却材としての軽水と液体金属(ナトリウムまたはNaK)の得失を説明せよ。解答は箇条書とすること。

4-5.黒鉛減速型動力用原子炉の冷却材として、炭酸ガスを使用する場合の問題点を3つあげ、簡単に説明せよ。

 放射線測定および放射線障害の防止

5-1.210Po、90Srおよび60Coを取り扱う場合に放射線障害防止上の対策について、それぞれ相違点を明らかにして述べよ。

5-2.臨界実験装置の運転に際して放射線管理上の特徴を述べよ。とくに放射線物質取扱作業に対するものとの本質的な相違を明らかにすること。

5-3.放射線障害防止の見地から、とくに体内放射線による被曝が危険視されるのは何故か、また放射性物質が体内に入るのにはどんな過程が考えられるか。

5-4.原子炉の排気中に含まれる41Aが放射線障害の点から問題になることがある。これについて次の問に答えよ。
 (1)41Aの生因
 (2)障害防止上の測定方法
 (3)許容濃度算出の根拠

5-5.放射能の絶対測定法の2つをあげ、簡単に説明せよ。

原子炉に関する法令

 核原料物質、核燃料物質および原子炉の規制に関する法律(以下「規制法」という。)およびその関係法令に関して、次の問に答えよ。

6-1.次の文章は、原子炉の設置、運転等に関する規制法上の手続を述べたものである。のうちに入るべき語句を下段の枠内から選んで、その番号を記せ。

 (1)以外の者で原子炉を設置しようとするものは、の許可を受けなければならない。はこの許可をする場合において、あらかじめの意見をきき、これを尊重しなければならない。

 (2)原子炉設置者は、原子炉施設の前に、原子炉施設に関するについて内閣総理大臣の認可を受けなければならない。

 (3)原子炉設置者は、原子炉施設のについて内閣総理大臣の検査を受けなければならない。この検査は原子炉施設のが認可を受けたに従って行なわれているときは合格とする。

 (4)原子炉設置者は、原子炉施設のについて内閣総理大臣の検査を受け、これに合格した後でなければ、原子炉施設をしてはならない。この検査は、原子炉施設が検査に合格しており、かつそのが総理府令で定めるに適合するものであるときは、合格とする。

 (5)原子炉設置者は、総理府令の定めるところにより、を定め、原子炉の前に、内閣総理大臣の認可を受けなければならない。

6-2.次の各号に掲げる事項は、原子炉設置の許可申請書に記載すべき事項である。このうち原子炉設置者が内閣総理大臣の許可を受けなければ変更することができない事項に○をつけよ。

 1 氏名または名称および住所ならびに法人にあっては、その代表者の氏名

 2 使用の目的

 3 原子炉の型式、熱出力および基数

 4 原子炉を設置する工場または事業所(原子炉を船舶に設置する場合にあっては、その船舶を建造する造船事業者の工場または事業所)の所在地

 5 原子炉およびその付属施設の位置、構造および設備

 6 原子炉施設の工事計画

 7 原子炉に燃料として使用する核燃料物質の種類およびその年間予定使用量

 8 使用済燃料の処分の方法

6-3.次の文章のうち正しいものには○を、誤っているものには×をつけよ。

 1 原子炉設置者が、原子炉のフィッションチェンバーに濃縮ウランを使用する場合は、核燃料物質使用の許可はいらない。

 2 原子炉設置者が、国際規制物資である重水を原子炉の減速材として使用する場合は、国際規制物資使用の許可を受けなければならない。

 3 規制法では、放射性廃棄物を廃棄するに当って土中に埋没することは禁止されていない。

 4 原子炉設置者は、保安規定を原子炉ごとに定めなければならない。

 5 300g以下の天然ウランは誰でも自由に譲り渡し、または譲り受けることができる。

 6 ウランまたはトリウムを一切含有しない物質でも核燃料物質となるものがある。

 7 臨界実験装置については、運転計画を届け出る必要はない。

 8 原子力委員会は、原子炉設置の許可についての内閣総理大臣の諮問に答申する際には、必ず原子炉安全専門審査会の意見をきかなければならない。

 9 設計および工事の方法の認可には条件をつけることができない。

 10 原子炉設置者は、原子炉を解体しようとするときは、内閣総理大臣の許可を受けなければならない。

6-4.次の文章の〈 〉中、正しいものに○をつけよ。

 1 緊急作業に係る許容被曝線量はレムとする。

 2 を使用するものは、その使用施設の工事について内閣総理大臣の検査を受けなければならない。

 3 内閣総理大臣は、原子炉設置者が熱出力百キロワット以下の原子炉について、正当な理由がないのに、設置の許容後以内に原子炉の運転を開始しない場合は、設置の許可を取り消すことができる。

 4 原子炉設置者は、核燃料物質を受け入れたときは内閣総理大臣に核燃料物質受入報告書を提出しなければならない。ただし、受入れの数量が天然ウランにあっては未満である場合はこの限りでない。

 5 原子炉設置者が核燃料物質を運搬する場合において、運搬する核燃料物質を封入した容器の表面の放射線量率は、ミリレム毎時をこえないようにしなければがらない。

6-5.原子炉に関し、地震、火災その他の災害な起ったことにより、原子炉による災害が発生するおそれがあり、または発生した場合において、原子炉設置者が講じなければならない総理府令で定められた応急の措置を列挙せよ。