第5回原子力年報の発表

 原子力委員会は7月26日の定例会議で、昭和35年度原子力年報を発表した。

 今回の年報は、昭和32年原子力委員会が最初の年報を発表して以来、第5回目のものであり、取り扱う期間は昭和35年4月から36年3月までの1年間である。

 内容は序説、機構および法制、原子力予算、国際協力、原子炉、原子力発電、原子力船、核融合、核燃料、放射線の利用、原子力関連機器および材料、放射能調査、放射性廃棄物処理、規制と放射線防護、科学技術者の15章からなっている。

 序説においては、わが国の原子力開発の発展の途上における昭和35年度の意義についてふれ、二つの点を指摘している。第一には、これまで約300億円の国費を投じてきたわが国の原子力の研究開発が、日本原子力研究所、原子燃料公社、放射線医学総合研究所などの機関を中心として急速にすすめられ、わが国の原子力研究の一般水準のひきあげに大きな効果をもたらしたことである。

 第二にはこの35年度が長期計画を改訂したという点で大きな意味を有することである。すなわち、原子力開発利用長期計画についてはたんに原子力委員会だけでなく、関係官庁、学界、産業界がそれぞれ原子力の将来の発展を見とおして長期計画をたて、これを原子力委員会が総合的にまとめ、今後20年間の展望を行なった経緯が述べられている。

 第2章以下の各章は、それぞれの項目について具体的な事実に即して述べたものである。すなわち、序説につづいて機構、法制、予算、国際協力の各項目につき、35年度における関係体制の整備発展を述べ、さらに原子力発電、原子力船、放射線の利用等の利用面についての進展について述べるとともに、原子炉、核燃料、核融合、関連機器および材料について主として研究開発状況を明らかにしている。一方、廃棄物処理、原子炉およびアイソトープの規制、放射能調査など主として放射線障害の防止の面についてものべ、最後に科学技術者養成の問題を取扱っている。