◎総理府令第55号

 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(昭和32年政令第324号)中核燃料物質の使用等に関する規定に基づき、核燃料物質の使用等に関する規則の一部を改正する総理府令を次のように定める。

 昭和35年9月30日

内閣総理大臣 池田 勇人

核燃料物質の使用等に関する
規則の一部を改正する総理府令

 核燃料物質の使用等に関する規則(昭和32年総理府令第84号)の一部を次のように改正する。

 第1条を第1条の2とし、同条の前に第1条として次のように加える。

定義
第1条 この府令において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

一 「被曝放射線量」とは、一定期間において人の被曝(診療を受けるための被曝を除く。)する放射線(100万電子ボルト未満のエネルギーを有する電子線及びエックス線を含み、自然放射線を除く。以下同じ。)の放射線量をいう。

二 「集積線量」とは、人がその時までに被曝(診療を受けるための被曝及び皮ふ又は手、前ぱく、足若しくは足関節のみに対する被曝を除く。)した放射線の放射線量をいう。

三 「管理区域」とは、使用施設、廃棄施設、貯蔵施設等であって、その場所における外部放射線の放射線量が科学技術庁長官(以下「長官」という。)の定める放射線量をこえ、空気中若しくは水中の放射性物質(空気又は水のうちに自然に含まれている放射性物質を除く。以下同じ。)の濃度が長官の定める濃度をこえ、又は放射性物質によって汚染された物の表面の放射性物質の密度が長官の定める密度をこえるおそれのある場所をいう。

四 「周辺監視区域」とは、管理区域の周辺の区域であって、当該区域の外側のいかなる場所においてもその場所における人の被曝放射線量が長官の定める許容被曝線量をこえるおそれのないものをいう。

第3条を次のように改める。

使用の技術上の基準
第3条 法第57条に規定する使用の技術上の基準は、次の各号に掲げるとおりとする。ただし、使用者で長官の定めるものについては、第三号、第七号から第十五号まで及び第十七号の規定は、適用しない。

一 核燃料物質の使用は、使用施設において行なうこと。

二 使用施設の目につきやすい場所に、使用上の注意事項を掲示すること。

三 核燃料物質を使用する場合は、作業衣等を着用して作業し、かつ、これらの作業衣等は、使用施設外において着用しないこと。

四 管理区域を設定し、かつ、当該区域においては、次の措置を講ずること。

イ 壁、さく等の区画物によって区画するほか、標識を設けることによって明らかに他の場所と区別し、かつ、従事者以外の者が当該区域に立ち入る場合は、従事者の指示に従わせること。

ロ 床、壁その他人の触れるおそれのある物であって放射性物質によって汚染されたものの表面の放射性物質の密度が長官の定める許容表面密度をこえないようにすること。

ハ 管理区域から人が退去し、又は物品を持ち出そうとする場合には、その者の身体及び衣服、はき物等身体に着用している物並びにその持ち出そうとする物品(その物品を容器に入れ又は包装した場合には、その容器又は包装)の表面の放射性物質の密度がロの許容表面密度の10分の1をこえないようにすること。

五 周辺監視区域を設定し、かつ、当該区域においては、次の措置を講ずること。

イ 人の居住を禁止すること。

ロ 境界にさく又は標識を設ける等の方法によって人がみだりに立ち入らないような措置を講ずること。ただし、当該区域に人が立ち入るおそれのないことが明らかな場合は、この限りでない。

六 従事者の被曝放射線量等については、次の措置を講ずること。

イ 従事者の集積線量及び被曝放射線量が、それぞれ長官の定める許容集積線量及び許容被曝線量をこえないようにすること。

ロ 従事者の呼吸する空気中又は飲用する水中の放射性物質の濃度が長官の定める許容濃度をこえないようにすること。

ハ 従事者以外の者であって業務上管理区域に立ち入るもの(一時的に立ち入る者を除く。)については、その者の被曝放射線量が長官の定める許容被曝線量をこえないようにすること。

七 管理区域及び周辺監視区域における放射線量率及び核燃料物質による汚染の状況の測定は、これらを知るために最も適した箇所において、かつ、放射線測定器を用いて1月をこえない作業期間ごとに1回行ない、測定の結果の記録は、5年間保存すること。ただし、放射線測定器を用いて測定することが著しく困難である場合には、計算によってこれらの値を算出することができる。

八 管理区域に立ち入った者について、その者の被曝放射線量の測定は、次に定めるところにより行なうこと。

イ 放射線測定器又は放射線測定用具を用いて測定すること。ただし、放射線測定器又は放射線測定用具を用いて測定することが著しく困難である場合には、計算によってこれらの値を算出することができる。

ロ 外部放射線による被曝については、放射線を最も大量に被曝するおそれのある人体部位(その部位が手、足等である場合にあっては、手、足等のほか、胸又は腹)について測定すること。

ハ 放射線による人体内部の被曝については、人が呼吸する空気中の放射性物質の濃度及び量を測定し又は計算すること等により行なうこと。

九 核燃料物質による人体及び作業衣、はきもの、保護具等人体に着用しているものの表面の汚染の状況の測定は、前号イに規定する方法を用い、手及び足、作業衣、はきもの及び保護具の表面その他核燃料物質によって汚染されるおそれのある部位について、行なうこと。

十 従事者又は従事者以外の者であって業務上管理区域に立ち入ったもの(一時的に立ち入った者を除く。)にあっては、第八号の測定は作業中継続して、前号の測定は作業を終了した時に行なうこと。

十一 第八号及び第九号の測定(第九号の測定にあっては、手、足等の人体部位の表面が許容表面密度をこえて核燃料物質により汚染され、その汚染を容易に除去することができない場合におけるその人体部位についての測定に限る。)の結果は、記録すること。この場合において、その測定が第八号ハに規定する人体内部の被曝に係るものであるときは、被曝の状況及び測定の方法をあわせて記録すること。

十二 第八号及び第九号の測定の結果に基づき、4月1日、7月1日、10月1日及び1月1日を始期とする各3月間並びに4月1日を始期とする1年間の従事者の被曝放射線量並びに従事者の集積線量を記録すること。

十三 従事者が当該業務につく時は、その者の当該業務に従事する以前の放射線被曝の経歴を記録すること。

十四 前3号に係る記録は、保存すること。ただしその記録に係る者が従事者でなくなった場合において、これを長官の指定する機関に引き渡すときは、この限りでない。

十五 従事者が当該業務を離れるときは、第十二号に係る記録の写しをその者に交付すること。

十六 核燃料物質の使用は、いかなる場合においても、核燃料物質が臨界に達するおそれのないように行なうこと。ただし、臨界実験装置のために使用する場合は、この限りでない。

十七 換気設備、放射線測定器及び非常用設備は、常にこれらの機能を発揮できる状態に維持しておくこと。

 第4条各号列記以外の部分を次のように改める。

廃棄の技術上の基準
第4条 法第58条に規定する廃棄の技術上の基準については、前条第四号から第六号まで、第八号から第十五号まで及び第十七号の規定を準用するほか、次の各号に掲げるとおりとする。

第4条各号列記の部分中第一号を削り、第一号の2を第一号とし、第九号から第二十号までを削り、第四号に次のただし書を加え、第一号の3から第八号までを同条第二号から第九号までとする。

 ただし、大型機械等容器に封入して廃棄することが著しく困難な放射性廃棄物を障害防止の効果をもった廃棄施設に廃棄する場合は、この限りでない。第4条に第十号から第十四号までとして次のように加える。

十 放射性廃棄物を排気施設によって排出する場合は、排気施設においてろか、放射線の強さの時間による減衰、多量の空気による希釈等の方法によって排気中における放射性物質の濃度をできるだけ低下させること。この場合、排気口において、又は排気監視設備を設け当該設備において、排気中の放射性物質の濃度を監視することにより、周辺監視区域の外の空気中の放射性物質の濃度が長官の定める許容濃度をこえないようにすること。

十一 放射性廃棄物を排水施設によって排水する場合は、排水施設において、ろか、イオン交換樹脂法による吸着、放射線の強さの時間による減衰、多量の水による希釈等の方法によって、排水中における放射性物質の濃度をできるだけ低下させること。この場合、排水口において、又は排水監視設備を設け当該設備において、排水中の放射性物質の濃度を監視することにより、周辺監視区域の境界における水中の放射性物質の濃度が長官の定める許容濃度をこえないようにすること。

十二 管理区域及び周辺監視区域におけ放射線量率及び核燃料物質による汚染の状況の測定は、これらを知るために最も適した箇所において、1月をこえない作業期間ごとに1回行なうこと。

十三 排気中の放射性物質の濃度の測定は排気設備の排気口又は排気監視設備のある場所において、排水中の放射性物質の濃度の測定は排水設備の排水口又は排水監視設備のある場所において、排気又は排水するつど(連続して排気又は排水する場合は、連続して)行なうこと。

十四 第二号の測定は、放射線測定器を用いて行ない、測定の結果は、5年間保存すること。ただし、放射線測定器を用いて測定することが著しく困難である場合には、計算によってこれらの値を算出することができる。

 第5条第七号中「運搬する使用済燃料」を「運搬する核燃料物質」に、「容器内の使用済燃料」を「容器の表面」に改める。

 第5条第八号を削り、同条に第八号及び第九号として次のように加える。

八 従事者の集積線量及び被曝放射線量が、それぞれ第3条第六号イの許容集積線量及び許容被曝線量をこえないようにすること。

九 従事者以外の者であって核燃料物質の運搬に従事する者の被曝放射線量が第3条第六号ハの許容被曝線量をこえないようにすること。

 第6条を次のように改める。

保管の技術上の基準
第6条 法第60条に規定する保管の技術上の基準については、第3条第四号から第十七号までの規定を準用するほか、次の各号に掲げるとおりとする。ただし、法第60条に規定する者で長官の定めるものについては、第三号並びに準用された第3条第七号から第十五号まで及び第十七号の規定は、適用しない。

一 核燃料物質の保管は、貯蔵施設において行なうこと。

二 貯蔵施設の目につきやすい場所に、保管上の注意事項を掲示すること。

三 貯蔵施設には、核燃料物質を搬出入する場合その他特に必要がある場合を除き、施錠又は立入制限の措置をとること。

第7条第1項を次のように改める。

 使用者は、工場又は事業所ごとに、別記様式第1による報告書を、従事書の1年間の被曝放射線量に係るものにあっては毎年4月1日からその翌年の3月31日までの期間について、その他のものにあっては毎年4月1日から9月30日までの期間及び10月1日からその翌年の3月31日までの期間について作成し、それぞれ当該期間の経過後1月以内に内閣総理大臣に提出しなければならない。

第7条第2項中「最大許容週線量」を「第3条第六号イの許容集積線量又は許容被曝線量」に改める。

第8条に次の1項を加える。

2 前項各号に掲げる緊急作業を行なう場合には、第3条第六号イ(第4条及び第6条において準用する場合を含む。)及び第5条第八号の規定にかかわらず、男子の従事者をその被曝する放射線量が長官の定める許容被曝線量をこえない範囲において緊急作業に従事させることができる。

第10条の2第1項中「第3条第六号の2、同条第六号の7、同条第六号の8、第4条第十三号、同条第十八号、同条第十九号、第6条第七号又は同条第十一号」を「第3条第七号及び第十一号から第十三号までの規定(第4条及び第6条において準用する場合を含む。)又は第4条第十四号」に改める。

 別記様式第1中(三)を次のように改める。

  (三)臨界実験装置に係る従事者の被曝放射線量分布

  (四)臨界実験装置に係る従事者の1年間の被曝放射線量分布

附 則
この府令は、昭和35年10月1日から施行する。

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