放射線障害防止の技術的基準の
改正に関する放射線審議会の答申

 さる8月12日に開催された第8回放射線審議会において、次にかかげるような科学技術庁長官および通商産業大臣に対する答申がなされた。

 なお、放射線審議会における審議経過は次のとおりである。

 1. 昭和35年7月22日  第7回放射線審議会総会
 2. 昭和35年7月25日  放射線施設部会
 3.
〃 7月26日
   〃  防護部会
 4.
〃 7月27日
   〃  影響部会
 5.
〃 8月5日
 上記3部会長懇談会
 6.
〃 8月12日
 第8回放射線審議会総会

 科学技術庁長官 荒木万寿夫殿
 通商産業大臣  石井光次郎殿

放射線審議会会長代理 木村健二郎

放射線障害防止の技術的基準の改正に関する答申について

 昭和35年7月16日35原第1745号をもって、当審議会に諮問のあった「放射線障害防止の技術的基準の改正に関する諮問について」については、昭和35年3月12日に開催された第8回放射線審議会総会において、下記のとおりその結論を得たので答申する。


 貴案のとおりで適当であると考えるが、なお次の点について考慮すること。

1.管理区域からの物品の持出しについて
 核燃料物質によって汚染された物でその表面の核燃料物質の濃度が最大許容表面濃度の10分の1をこえているものは、管理区域からみだりに持ち出さないよう措置すること。

2.固体状の放射性廃棄物について
 固体状の放射性廃棄物については、規制の対象となるものの限度が明確でないが、一定限度以下の汚染物は放射性廃棄物としての規制を除外するよう将来検討を加えること。

3.放射性廃棄物の排出基準について
(1)放射性廃棄物を排気または排水する場合において、3月間の平均濃度を許容濃度として規制する場合は、その最大濃度についても、1日または1週間の平均濃度の最大水準を、保安規定等に明記することにより、規制するよう考慮すること。

(2)放射性廃棄物を排水する場合において、一般人に影響を及ぼすおそれがないときには、運用にあたって、海・河川等における希釈効果を認めるよう考慮すること。

(3)2人以上の事業所から放射性廃棄物を排気または排水する場合においては、各事業所から重複した影響を一般人に及ぼす点を考慮して、かかる事業所間の排気または排水の濃度の調整をはかるよう考慮すること。

4.内部被ばく量の算定について
 内部被ばく量の算定については、別表で定める許容濃度がICRPで勧告した全身被ばくを対象とする場合の濃度よりも厳格なものとなっている点にかんがみ、集積線量へ算入する場合のさらに合理的な方法について将来検討を加えること。なお、この点については、青木、田島、一本松3委員から、今回の改正にあたって関係条文を修正するよう意見があったことを申し添える。

5.測定の方法および記録について
(1)場所に関する放射線量率等の測定については、放出する放射線量に変動がない場合には、6月間に1度の測定で足りるよう措置すること。

(2)個人被ばくに関する測定の記録については、特に内部被ばくの場合の測定の記録は、被ばくを受けた時の状況および被ばく量の算定の方法を合わせて記録するよう措置すること。


科学技術庁長官 荒木万寿夫殿

放射線審議会会長代理 木村健二郎

放射線障害防止の技術的基準の改正に関する答申について

昭和35年7月16日35原第1744号をもって、当番議会に諮問のあった「放射線障害防止の技術的基準の改正に関する諮問について」については、昭和35年8月12日に開催された第8回放射線審議会総会において、下記のとおりその結論を得たので答申する。


貴案のとおりで適当であると考えるが、なお次の点について考慮すること。

1.放射性同位元素の定義について、
 原子炉の運転等に伴い生ずる放射性物質については、これらが障害防止法に規定する放射性宙位元素として規制されるか否か明確でないが、二重規制として過重な負担を負わせることのないよう考慮すること。

2.管理区域からの物品の持出しについて
 放射性同位元素によって汚染された物でその表面の放射性同位元素の濃度が最大許容表面濃度の10分の1をこえているものは、管理区域からみだりに持ち出さないよう措置すること。

3.固体状の放射性廃棄物について
 固体状の放射性廃棄物については、規制の対象となるものの限度が明確でないが、一定限度以下の汚染物は放射性廃棄物としての規制を除外するよう将来検討を加えること。

4.放射性廃棄物の排出基準について
(1)放射性廃棄物を排気または排水する場合において、3月間の平均濃度を許容濃度として規制する場合は、その最大濃度についても、1日または1週間の平均濃度の最大水準を、保安規定等に明記することにより、規制するよう考慮すること。

(2)障害防止法関係法令において、放射性廃棄物を排気または排水する場合の許容濃度について、平均の期間を明記していない箇所があるが、かかる場合においても1日または8時間の平均濃度を規制の対象とするよう考慮すること。

(3)放射性廃棄物を排水する場合において、一般人に影響を及ぼすおそれがないときには、運用にあたって、海・河川等における希釈効果を認めるよう考慮すること。

(4)2以上の事業所から放射性廃棄物を排気または排水する場合においては、各事業所から重複した影響を一般人に及ぼす点を考慮して、かかる事業所間の排気または排水の濃度の調整をはかるよう考慮すること。

5.内部被ばく量の算定について
内部被ばく量の算定については、別表で定める許容濃度がICRP で勧告した全身被ばくを対象とする場合の濃度よりも厳格なものとなっている点にかんがみ、集積線量へ算入する場合のさらに合理的な方法について将来検討を加えること。なお、この点については、青木、田島、一本松3委員から、今回の改正にあたって関係条文を修正するよう意見があったことを申し添える。

6.測定の方法および記録について
(1)場所に関する放射線量率等の測定については、放射線照射装置を固定して使用する場合等放出する放射線量に変動がない場合には、6月間に1度の測定で足りるよう措置すること。

(2)個人被ばくに関する測定の記録については、特に内部被ばくの場合の測定の記録は、被ばくを受けた時の状況および被ばく量の算定の方法を合わせて記録するよう措置すること。

7.健康診断について
(1)放射線障害を受けたおそれのある自覚症状を訴えた時には、健康診断を行なわなければならない旨の規定があるが、この規定を削除するよう措置すること。

(2)健康診断のうち血液検査に関する事項については、6月をこえない期間ごとに行なうことで足りるよう措置すること。