原子力委員会専門部会の審議状況

核燃料経済専門部会

 第14回(11月24日(火)14.00〜17.00)

〔配布資料〕
1.Costs of Nuclear Power.
2.燃料費試算結果−1.
3.B方式燃料サイクルコスト
4.核燃料サイクルの基礎

〔議事概要〕
1.専門委員の変更について
 公益事業局技術長の交替に伴って、佐伯専門委員の後任として高村善博氏が11月13日付で発令された旨を事務局から報告した。

2.USAECで発電コストを検討した資料(資料1)について、原研武井氏から説明を受けた。

3.燃料費の試算結果について
 資料2および資料3により、Working Groupから燃料費の試算結果を報告した。Working Gr1oupでの試算結果を検討した結果、次の諸点が確認された。

(1)PuのCreditを12ドル/gとし、濃縮ウランの価格をAECの価格表のままとするかぎりでは、使相済燃料をアメリカで再処理して日本に送り返してリサイクルすることは経済的に引き合わない。
(2)Pu をリサイクルに使用することによってburn-upがのびるような事情でもないとリサイクルは不利である。
(3)将来は再処理を簡単にしてUとPuといっしょに取り出すようにして再処理費を下げることが考えられるだろう。

4. コストの検討方針について
 燃料費の検討を進めるに先だって、再処理費、輸送費等を洗うことや、核計算に戻って等価性を問題とする必要のあることが認められた。これらの問題点を検討して部会の方針を議論するための資料を次回に用意することとした。

5.資料4の説明を聞いた

原子力災害補償専門部会

 第16回、第17回(10月27日(火)、11月17日(火)10.00〜16.00)

〔議事概要〕
 第15回までの審議を基にして作成した原子力損害賠償保障法案(仮称)について審議した。主として問題となったのは(1)無過夫責任を認めるとした場合において、いかなる範囲および表現不可抗力の免責を認めるべきか、(2)一定の免責を認めた場合において、事業者が免責される事故による損害について、国家補償を行なうべきか、(3)責任集中を行なう場合、求償権についていかなる規定を行なうべきか、(4)責任保険について締約強制、てん補範囲、保険金額の復元の問題、(5)国家補償については有償とするが、その性格、形式をいかにするか、(6)損害賠償処理委員会の性格、任務をいかにするか等であった。

 審議の結果、だいたいの意見の一致をみたので、我妻、鈴木、星野、竹内各委員からなる小委員会において、これを基として、本専門部会の答申案を作成し、次回(12月1日)の専門部会に付議することとした。

再処理専門部会

 第4回(11月10日(火)14.00〜17.00

〔配布資料〕
1.計画の確定している原子炉による Puの生産見込量(局)
2.Pu-Handling(原研)
3.フランスにおける再処理(原燃)
4.核燃料再処理工場(原燃)
5.核燃料の再処理( I )(原燃)
6.ウランの将来の需給に関する資料(原燃)
7.海外出張見学項目(原燃)
8.AEC Symposium 日程(原燃)

〔議事概要〕
1.今井委員から再処理に関するAEC symposiumに参加したときの見聞報告が資料7および8によって行なわれた。
 その概要は次のとおりである。

○ このシンポジウムで特に次のような点が注目された。(a)現在、米国内で運転している炉からの使用済燃料が、AECのどの施設で処理されているかが公開されたこと、(b)分析、保安管理、輸送等について多くのことが討議されたこと、(c) Head end processでは、mechanical deassemblyが特に問題視されていること

○AECは再処理施設をこれ以上増設する意志はないようで、将来、民間に事業をまかせる方針のようである。

○Oak RidgeのThorex PlantはPlant Reactor Reprocessing Plantに改装され、目下再処理済燃料の割当を考慮中である。

○Pu燃料の研究に少量のPu(数lOg)のスケールでも十分成果を収めているようである。

○Unit Operationの研究には1in径Columnでやったり、5in径のものを使用したりしている。またきわめて小さい、いわゆるmini-mixer-Se Hlerも、盛んに活用されており、そのdataをscale upに使用している。

○Eurochemicの計画はやっと、だいたいの計画がまとまったところである。

 capacityは、350kg/d、年200日操業としているので70t/y程度の処理能力となる。対象とする燃料は天然ウランおよび5%以下の濃縮ウランで,Al、Mg、S.S.,Zicaloy被覆のものを処理できる。現在の計画によると、5年ぐらいで処理しきれなくなるので、そのころ別に大プラントを建設し、このパイロットプラントは高濃縮ウラン処理に使用される予定である。

○AECの再処理プラントの発注の形式は、Preliminary Proposalではchemical flowsheetのみでcompetitionをやらせ、設計料を支払う。次に各designerを呼んで口頭で質問し、その結果結論を出して料金を支払う。これに基づいてdetaildesignをするが、そのときまたcompetitionをしてもよい。

○プラントのshieldingに多額の金がかかるので設計に注意が必要である。unit cellは大きくても、必ず必要となる、手直しのとき固らないようにしなければならない。

○プラント計画にあたっては、Reactor Designer,Chemical Engineer, Refabrication Engineerの協力が不可欠である。

2.局幹事から資料2によりプルトニウムの生産見込量の説明があった。

3.若松氏(原燃)から、資料3、4および5によりフランスの再処理技術および世界各国の再処理方式の詳細は情報の発表があった。

4.浅田民(原燃)から資料6によりウランの将来の需給関係についての説明が行なわれた。

5.本部会の今後の検討方針につき討議があり次のとおり決まった。
 来年3月に"当面の再処理開発方針について"本部会の報告を提出することを目標として、具体案の検討を進める。再処理の問題は今後の発展によらなければ明らかにならない。事項については「考え方」をまとめることにする。

 なお、検討すべき草案骨子および問題点は、原燃等で作成して次回の部会に提出して討議する。

放射能調査専門部会

 第15回(11月9日(月)14.00〜16.30

〔議事概要〕
(1)第1回放射能調査研究成果発表会について

10日28日放医研で開催された第1回放射能調査研究成果発表会の内容について、各委員から意見が出され、一般的に放射能調査を開始したときに比べ水準が上がってきているが、試料採取・分析結果の表現などの点で問題があることが指摘された。このようなことは、放射能調査の目的その他の基本的な問題につき不分明な点があるのではないかということから、この問題討議のため、専門委員が加わった適当な会合を開くことになった。

(2)国連科学委員会次期会議提出資斜について1960年1月中旬に開かれる国連科学委員会に提出する資料は、時間的にあらかじめ送付できる資料はなく、出席する代表が携えていき、提出することになった

 また、別に報告された国連科学委員会に関するカナダ案の内容とも関連して、調査、測定、分析法の基準の問題についても用意する必要があることが認められた。

(3)そ の 他
 外務省から国連総会にカナダほか10ヵ国が提案しようとしている国連科学委員会に関する決議案と、同じくチェッコの用意している案につき説明があった。

 西ドイツからSr-90の分析のための土壌試科の送付につき連絡のあったことが報告され、このような分析試料を受け入れる機関などについては、原子力局において適宜考慮することとなった。

原子炉安全審査専門部会

 第18回(10月27日(火)13.30〜18.30)

〔配付資料〕
1.原電原子炉設置許可申請書(変更)
2.第7小委員会報告書(案)
3.ファーマ氏との懇談会議事概要
4.第8小委員会中間審査意見(第4次案)
5.五島育英会設置原子炉の安全性について(答申)
6.日立原子炉設置許可仮申請書一部訂正書(一組)
7.東芝原子炉設置許可仮申請書
8.日立および東芝申請の原子炉の安全審査上の主要な問題

〔議事概要〕
1.原子炉安全審査専門部会専門委員の交替について
 矢木部会長から佐伯専門委員退任に伴う後任として、通商産業省公益事業局技術長高村善博氏の紹介が行なわれた。

2.第7小委員会報告について
 第7小委員会主査福田専門委員から日本原子力発電株式会社のコールダーホール改良型原子炉の安全審査について、要旨次のごとき報告が行なわれた。

 前回の第17回安全審査専門部会以後において審議した主要問題点は黒鉛製造、緊急冷却装置、放出キュリー数、航空機関係等である。原電は必要に応じて申請書の変更、追加を行なってきたが現在の段階では,全員一致で本申請にかかる原子炉の安全性は確保されるという見解である。

 今日資料として配布してある報告書(案)は、まだ完全なものではないので、最終報告書は次回に出したい。

 このあと、配布資料2報告書(案)に基づいて審査の結論および審査の内容のうちの主要点について補足説明が行なわれた。続いて質疑応答が行なわれたが、そのおもな内客は次のとおりである。

(カツコ内は発言関係者)

 i)電気事業経営許可申請書に関する部分については、部会報告の段階には削除する等、事務的な処理をすることになる。(矢木)

 ii)審査の結論の最後に「原子力発電所の運転は、わが国においては経験のないことであるから安全の確保を主として運転を行なうことを希望する。」とあるが、このまま読むと経験ができれば安全の確保は問題ないとも解釈できる。表現のしかたを少し検討する必要はないか。(兼重)

 iii)総論中の、原子炉の特性の項における「正の温度係数による反応度の変化、キセノン振動による中性子束の不安定についても制御可能と認められるが、これらの現象については経験が少ないので、今後詳細な検討が望ましい。」という意味は、現在の段階では、本現象に関る経験は少ないが、今後英国において実際的経験が得られるはずであり、その経験を生かして、詳細設計を行なえば問題はないということである。(矢木、山田)

 iv)燃料の要素については炉内試験などを行なって、その安全性を確かめた上でその細部設計を行なうことになっているが、総論と各論とでこの部分の表現が異なっているから、統一したほうがよい。

 v)米軍爆撃演習場の問題は、調達庁の資料では、原子炉予定敷地付近への誤投下はない。実際に誤投下されているのは、3ポンドと25ポンドが多い。(福田)

 vi)事故解析においては、どこまで多重的に考えるかが問題だ。事故が起きると直ちに炉は停止されるが、冷却材の流量を零としても事故後2時間は燃料溶融は起こらない。しかし、冷却材の流量が零となることは考えられないことだ。(武田、山田)

 vii)起きそうもない事故を考えることは無意味であるということもいえるが、要する方策の検討が重要であると思う。事故解析をやってみることが目的でなく方策を明らかにすることが目的であろう。(矢木)

 viii)コンテーナーの問題については、各論では申請書の方針は妥当であるとしているが、総論にはなにもふれていない。この点については、なお検討することにする。(矢木,福田)

 ix)事故時における被ばく限界を、報告書では幼児の甲状腺に対し、ヨウ素で25レムとしているが、これは少し苛酷すぎるぐらいと思っている。(青木)

 x)報告書(案)について意見があれば、なるべく早く第7小委員会まで事務局を通じて知らせてほしい。(大木、福田)

 xi)坂田専門委員から、コールダーホール改良型原子炉の安全性について、専門部会の答申が行なわれる前に、学術会議と部会との間で意見交換の機会を作ってほしい旨の発言があったが、安全審査専門部会としては、その性質上、公式に学会との懇談会を開くことは妥当でないと結論された。

 第7小委員会としては、以上問題となった諸点をも斟酌して報告書をまとめることになり、次回の部会(11月9日)に提出されることになった。

原子炉安全審査専門部会

 策19回(11月9日(月)13.30〜17.00)

〔配布資料〕
1.第7小委員会報告
2.日本原子力発電株式会社の原子炉の安全性の審査について(写)
3.日本原子力発電株式会社の原子炉の設置の安全性について(案)
4.原子炉設置許可申請書正誤表
5.原子炉設置許可申請書本文変更および追加事項
6.原子炉設置許可申請書正誤表

〔議事概要〕
1.第7小委員会報告について

第7小委員会主査福田専門委員から、日本原子力発電株式会社の設置許可申請にかかるコールダーホール改良型原子炉(熱出力595MW)の安全性について、最終報告書が提出され、要旨次のような説明が行なわれた。

過去6ヵ月以上にわたる通商産業省との合同審査の結果、今日最終審査を完了したので、コールダー合同審査会として、通産省と原子力委員会両事務局に報告書を提出した。合同審査であったために、この報告書の中には原子力委員会と関係のうすいものも含まれているかもしれない。

 現在問題となっている米軍爆撃演習場については現状においては支障ないと判断した。この問題については、 8月初めから非公式資料について検討してきたが、先週原子力局から公式資料の提出があったので全委員に配布して検討した。これによると、従来の資料より演習弾の誤投下も、演習機の落下も安全側にあることが明らかになったので、従来の方針を変えることなく、報告書に書いてあるような結論となった。

 誤投下物は模擬爆撃であって、那珂湊よりに集中し、原子力研究所のほうにはほとんどない。また過去の実績によれば、ここ2、 3年は誤投下数が激減しており、また最近(7月ごろ)標的が海上に移されてからはきわめて少ない。しかし将来、米軍の演習状況が悪化するようなことが起これば、空に対する防護施設を強化する等の必要があろう。

 次いで報告書の記載内容に関し前回の審査部会において配布された報告書案との相違が説明された。

本報告書は本審査部会にて正式に承認され、次いで審査部会から原子力委員会に対する答申の検討に入り、要旨次のような検討が行なわれた。

1)原子力委員会からの安全審査依頼は、諸手続の関係上文書では6月3日となっているが、実際は3月17日の部会で口答で行なわれている。(事務局)

2)答申原案が第7小委員会報告書と異なる点は主として、次の3点である。(事務局)
 i)審査経過の記載要領の変更
 ii)電気事業許可申請書に関連する部分を除くため表現を改める。
 iii)発電所の性能の項を省く。

3)坂田専門委員から本日書面を以て申入れがなされた。その内客は次のごとくである(原文のまま)。(矢木)

坂田氏の書簡

昭和34年11月7日 

 原子炉安全審査専門部会
     矢木 栄部会長殿

専門委員 坂 田 昌 一 

 先日の部会におきまして、わたくしは、 11月9日の部会には先約の会合があるため出席しがたい旨申し上げておきましたが、その後出席不能のことがはっきりしましたので書面にて私見を申し上げます。

1.わたくしは、日本学術会議原子力問題委員会委員長として専門委員に加えられたと衆知しておりますので、日本学術会議を中核とした学界の意見を本部会にたいし十分に反映させる義務を痛感し,これまでその立場から努力してまいりました。御衆知のごとく、日本学術会議はかねてから第26回総会の決議に基づき原子炉の安全性の審査に際しては広く学界の意見を聞くよう要望しており、また最近においては資料の公開と審査の基本態度の確立を要求しております。したがってわたくしは、本部会が第7小委員会の報告書につき最終結論を出される前に、少なくとも次の三つの手続を取られるよう重ねて要望致します。

 I)日本原子力発電株式会社の原子炉設置許可申請書ならびに第7小委員会審査報告書を公表すること。
 II)原子炉の安全性評価についての基本態度特に事故時における一般人に対する緊急線量の限界につき原子力委員会としての見解を確立し、それを公表すること。
 III)広く学界の意見を聞くため本部会と日本学術会議原子力関係委員会との懇談会等を開催すること。

2.さる27日に配布された第7小委員会報告書(案)については、わたくしにはなお納得しかねる点がかなりあります。特に当日も申し上げましたごとく、

 I)設置許可が行なわれたあとで、信頼性を確認せねばならぬ点があまり多いこと。
 II)本部会第16回議事録の兼重原子力委員の発言から明らかなごとく、第7小委員会のとった審査基準(特に一般人に対する緊急許容線量)は暫定的なものだとの了解であった点
 III)米軍爆撃演習上の問題等は部会として広い立場からもう一度慎重に検討すべきだと考えます。この観点からいたしましても、本部会が最終結論を出す以前に1にのべましたような三つの手続を取られることが必要だと考えます。

3.もし現状のままで、本部会が最終結論を出された場合にはわたくしとしては、その内容にたいし一切の責任が持てません。


4)資料公開の問題については、事務当局としては、申請書のうち商業秘密その他申請者のほうで公開をはばかる部分を除いて閲覧に供する用意をしている。現在申請者に商業秘密の選択を今月15日ごろまでに完了してもらうように要求している。商業秘密は主として申請書添付書類のうち、熱出力と動持性、安全対策(一般と地震対策)等に関係した部分にあると考えられる。申請者の申し出た商業秘密を原子力委員会が判決する。(事務局)

5)第7小委員会の報告書の作成にあたっては商業秘密を確認していないので、報告書内容の発表は役所の責任で行なわれたい。なお商業秘密が定まったら関係委員に知らせてほしい。(福田)

6)学会との懇談会の開催は資料の公開がなければ意味がないし、審査部会が開くのはおかしい。しかし結論が出たあとで、懇談会が行なわれれば、個人の資格で出席していただいてよいと思う。また原子力学会でシンポジウムを開くから、その際に実質的な討論を行なうべきであろう。(矢木)

7)坂田専門委員は学術会議代表として専門部会に加わっているのかどうか。一学識経験者としてではないのか。(竹山)

8)学識経験者の一人として専門委員となっていただいている。(事務局)

9)書面の意見は坂田委員個人の意見なのかまたは学術会議としての意見なのか。(尾村)

10)前回の部会で坂田委員はこの報告書の内容について反対の意志表示をしていない。ただ原子力委員会においてさらに検討しなければならない事項が多いとの意見だったように思う。(山田)

11)専門委員のうち、1人がこの報告書を認めないことになると問題である。(山田)

12)この書面のいくつかの点については今日出席していただければ納得してもらえたと思う。わたくしはこの書面を答申の内容について決定的に否定的なものとは思っていない。いずれも手続上の問題であると思うので坂田委員と連絡して了解を得るよう努力したい。(矢木)

 以上の検討の結果、審査部会から原子力委員会に対する答申を原案どおり決定した。

2.第11小委員会の設置について

 事務局から、株式会社日立製作所および東京芝浦電気株式会社がそれぞれ設置許可申請する予定の研究炉について、説明があり、これらの原子炉の予備審査をすることとなり第11小委員会を設けることとなった。

 なお、第11小委員会委員として次の各専門委員が指名了承された。

 青木、加賀山、杉本、竹山、中村各委員、主査としては竹山専門委員があたることになった。