参与会

第11回

〔日 時〕昭和34年11月19日(木)14.00から

〔場 所〕東京都千代田区永田町2の1総理官邸

〔出席者〕稲生、大屋、岡野、久留鳥、瀬藤、高橋、田中、中泉、松根、三島、安川、脇村各参与
中曽根原子力委員長、石川、有沢各委員
横山政務次官、佐々木局長、法貴次長、島村次長、藤波規制課長、亘理安全課長

〔配布資料〕
1.日本原子力発電株式会社の原子炉の設置の安全性について
2.原子力委員会各専門部会の審議状況

1.発電用原子炉の設置問題について

 藤波原子炉規制課長から資料1によって原電の原子炉に関する審査の経緯、計画の内容を説明した。説明要旨は次のとおりである。

 原子力委員会安全審査専門部会では11月9日に安全審査の結論を出した。出席専門委員の全員一致で資料1の答申を作成し原子力委員会に提出した。欠席専門委員のうち坂田氏から文書による意見の申し出がありこのままで答申を出すことには不賛成である旨が書かれていた。

 坂田氏の主旨は

1.申請書、答申書の作成に使ったデータをできるだけ公開すること。
2.学術会議との討論会を開いてから結論を出すこと。
3.緊急時許容線量が未解決であること。
4.爆撃演習場の問題が未解決であること。

である。

 以上の坂田氏の意見を考慮したが

1.申請書や安全審査に使ったデータのうちCommercial secretでない部分を公開することとする。
2.専門部会の性格から、学術会議と討論する手続きをふむ必要はない。
3.緊急時許容線量は各国にも決定的なものはない。安全基準部会で決定されるまでは各国のうち最も厳密な基準を採用して判断する。
4.爆撃演習場の問題は11月9日にも討議された。当日の専門部会に坂田氏が出席しておられれば了解が得られたと思われる。

 という結論に一致した。そうすると坂田氏の意見は手続き的なものが主要になるので、これは、部会での仕事ではなく部会を重ねて開く必要はないとして当日部会の結論を出した次第である。

 爆弾の誤投下の実績は32年度をピークとして減少している。落下場所も設置予定地の南方である。演習弾が直撃しても外部に大量の放射能を放散することはない。飛行機が墜落した場合としては多くの可能性が考えられるので解析は困難だが、落ちる確率はきわめて少なく、最悪事故として解析した範囲に入ると考えられる。

 最悪事故時に放出される放射能はヨウ素にして25キュリーと考えられる。ファーマーは250キュリーと言っている。安全審査専門部会では、これは前提条件の差とみている。ファーマーの計算ではピソホールがあっても取り替えずに経済性を重視するものとしており、原電の炉では安全対策として緊急時炭酸ガス注入装置を持っている。また出力も違う。

 参与および原子力委員から次の発言があった。

 石川委員:原子力委員会では答申書について専門委員の解釈を検討している。安全問題のほかに経済性の問題、爆撃演習場の問題もあり、これらを考慮して結論を出す。

 田中参与: 「要望事項を十分確認する」とはどういうことか。

 石川委員:要望事項を十分のみこんで設置にあたってそのとおり行なわれていることを絶えずcheckしていくことである。

 安川参与:資料の公開についてGECに交渉していたところ返事がきた。非常にゆるやかな態度を示している。

 田中参与:設計方針はおおむね妥当という印象を受けるが、あとの細かい点が守られるかどうか、要望事項が満たされることを確認するのが大切である。

 大屋参与:実行可能な範囲の要望事項という判定でO・K.が出されたことになっている。この程度の点を満たせばこれから先は実際にやってみなければわからない。このへんで安全性を確認したのはよいことだと思う。

 田中参与:原則論としては爆撃演習場の隣に置くことはおかしい。次善の策をとらねばならないと思う。

 脇村参与:もし米軍が事故を起こしたら、米軍は免責されるのか。

 中曽根委員長:米軍が民間会社である原電に迷惑を及ぼせば、 75%の金額を米軍が負担するはずである。

AECの関係で免責される可能性もないとは言えないが、米軍とAECとは別の人格だから、一応75%を米軍が払うことになろうが、まだ問題がある。

 大屋参与:飛行機が発電炉に墜落することを考えていないといわれているが。

 中曽根委員長:飛行機による事故は千差万別だから解析が困難である。この問題も含め、原電の発電炉の設置問題は重要な点を含んでおり慎重に検討したい。問題として考えているのは次の点である。

(1)爆撃演習場の問題
 答申書では現状ならばよい、条件を変更しないようにせよといっている。この点は防衛庁を通じ米軍と交渉している。模擬弾の誤投下の解析は原子力局と原電でやり、専門部会の審議の参考にした。飛行機については多くのccseが考えられる。平均値としてはよいことになっている。

(2)坂田委員の問題
 極力慰留する。手続上の問題が多いようなので納得してもらえるものと思っている。

(3)事故時における一般大衆への許容線量の問題
 英米よりもっとsevereな線を考え、それでも安全だという結論になっている。

(4)設置許可の時期
 災害補償のめどをはっきりさせてほしいという地元の要望がある。災害補償専門部会から大綱が月末に出るのでそれをみてから災害補償の考えをきめたい。公聴会を12月3日に行なう予定があり、学術会議では12月10日に討論会を開くといわれている。

 これらのなりゆきのいかんで設置許可の時期がはっきりしてくると思う。

 大屋参与:坂田氏が安全審査専門部会の段階で学術会議と相談してほしいといわれたそうだが、その意見には反対である。委員会で決定する前に学術会議と相談してくれという動きはないか。

 有沢委員:設置の是非の判断は責任を持っている官庁によらねば仕方がないだろう。学術会議としてのまとまった意見はでにくいと思うが、個人の意見は聞けると思う。

2.原子炉燃料の入手状況と交渉経緯について

 JRR-2、 J RR-3等の燃料入手予定と交渉経緯について、井上核燃料課長から説明した。

(1) JRR-2
 核燃料はM&Cで加工しているが、加工に起因する災害からM&Cを免責するために「核燃料物質の加工請負に関する特別措置に関する法律」を作ることとなった。 M&Cではこの法律がまにあわなければ製品を日本へ送り出さないでM&Cが保管する約束で燃料の加工を続けている。 19日、上記法律案が衆議院をパスしあとは参議院が残っているが、製作が終れば日本に持ってこられる見込みとなった。

 炉の完成は35年1月の予定。その後設置に伴う検査、通水試験を行ない2月半ばに燃料が入れられる。燃料加工のほうも2月3日に終り飛行機で送るので炉の完成時期に間に合う予定である。

(2)JRR-3
 IAEAから天然ウラン3トンを買ったが、11月16日にウィーンで所有権を日本に移転した。今日、カナダで現物を引き取る。この3トンに他の4トンを加えて1次装荷とする。これらの燃料の加工はカナダのAMFでやる。

 2次装荷の燃料は国産技術で加工する方針である。原研、日立、住友で協力してやってきたが、国産の技術でまにあうと思われる。

(3)細目協定による燃料入手
 原研のクリティカルアセンブリーと関連したもので、半均質炉、水均質炉、高速増殖炉の燃料を入手しようと考えている。これらは動力協定で結ばれる最初の細目協定となる。

(4)研究用233U、235U、Puの配分
 233U10g、235U100g、研究用Pu10g、中性子源用Pu250g という枠でAECから特殊核物質を入手することができる。AECと細目協定、賃貸契約を結んで入手する。次に配分することとなるが、配分要領は原子力委員会できめている。

 高橋参与:IAEAを通じて購入したカナダの天然ウランは初め試料が不適当で問題が起きたが、その後reactor gradeのものとわかった。

 大屋参与:JRR-3の2次装荷となる国産ウランの原料は南アから輸入すると言われているが、人形峠のは使われないのか。

 高橋参与:人形峠のはまだ使えないと思う。

 大屋参与:UKAEAと日本政府との間でも免責条項の入った動力協定を結んでいる。米国の場合、加工は民間だが燃料は、AECと日本政府との取引きである。なぜ米国の場合にだけ免責条項と絡んで新しい法律が必要なのか。

 島村次長:加工した者を免責するという法律は米国だけではなく外国の民間人に加工を請け負わせた場合に適用されることになっている。実態からは英国ではAEAが加工を全部やっている。したがって英国に適用することは現状では考えられないが、カナダには適用される可能性がある。

 大屋参与:米国の場合もAECの責任でAECが民間の会社を指定して加工させて日本に持ってくれば今度の法律には関係ないか。

 島村次長:そうだ。AECとしては日本で使う燃料の加工業者をAECが指定するのはやりにくいといっている。

 大屋参与:日本の民間の業者が加工するときには,国内の業者を免責する必要が起きないか。

 島村次長:現在では日本では燃料加工が事業として存在していないので必要はない。将来は災害補償の問題といっしょに加工についても考えることになる。専門部会で論じられている法案の骨子では、原子炉の設置に責任を集中して加工業者は免責することになっているので、そのとおりに決まれば法律はいらなくなる。

3.参与および原研の人事異動について

 島村次長から報告した。

(1)駒形参与が11月17日に任期満了となったので、11月18日付で原研菊池理事長を参与に発令した。

(2)原研岡野氏は10月30日付で監事免。

 茅、菅、岡野3氏が10月30日付で顧問に。

 顧問は安川氏とも4名になった。

 菅田氏が11月12日付で監事となった。

 監事の前田氏は理事になる手続き中である。

4.専門部会の審議状況について

 資料2により法貴次長が説明した。