第1回放射線化学懇談会の開催


 日 時 昭和34年11月5日(木)14.00〜16.00

〔配布資料〕

(1)放射線化学の振興開発に関する要望書
(2)放射線化学懇談会の設置について
(3)原子力予算による放射線化学関係研究事項および施設概要
(4)放射線化学における2, 3の問題
(5)放射線照射設備に関する調査
(6)放射線化学用線源に関する調査
(7)放射線化学の工業化に関する海外調査

 議事概要

 石川原子力委員挨拶のあと、アイソトープ課長から懇談会設置に至る経過報告を行なった。次いで当分の間石川原子力委員を座長として審議を進めることを決め、懇談会委員の自己紹介の後、議事に入った。まず9月8日から12日まで開催されたIAEA主催ワルソー会議(大量放射線の産業利用--特に化学工業への利用)について代表として出席した雨宮東大助教授から概要次のごとき説明があった。

 「粒子加速器では、在来は出力1kW程度のものが使用されていたが、現在ではずっと出力が大となり10数kWまたはそれ以上のものが用いられるようになっている。コストは107rad/kgあたり1セント程度が常識である。60Co照射線源も最近は10,000cオーダーのものが普通となっており、まだわが国では1,000c程度を大線源考えているが、もうその時代は過ぎた。

 米国では大量線源の開発、基礎研究の充実によって照射コストの低下を図りつつあり、また数10kWオーダーの加速器が試作されつつある。ソ連は50,000cの60Co線源の設計計算をやっている。カナダでは60Co85,000cをもってばれいしょの発芽防止を2,700kg/hrで行なっている。ソ連も50,000cの60Coについて設計計算をやっている。」

 このあと使用済燃料の線源利用等について討議された。

 次いで日本原子力産業会議放射線化学部会が作成した放射線照射設備に関する調査、放射線化学用線源に関する調査および放射線化学の工業化に関する海外調査について調査担当者から概要次のごとき説明があった。すなわち「各種の照射装置のうちいずれが有利であるかを定量的に結論することは困難であるが、研究用として米国では現在バンデグラフ型が最も多く利用されているが、保守の問題等を考慮すると生産用設備としての将来性は別に検討する必要がある。シート類等薄物の照射、グラフト共重合用にはコッククロフト型およびレゾナントトランスフォーマー型が適しており、厚物照射にはリニアックがよいと思われる。60Co照射装置は厚物用としては便利だが照射料が高くつく。

 海外諸国における放射線化学の工業化はまだあまり進んでいない。現在工業化されているものはポリエチレンの架橋、医薬品および医療材料の殺菌ぐらいのものである。この調査を通じて今後の放射線化学工業の発展のためには、 (イ)通常の化学的方法では行ないがたいプロセスあるいは有用な製品を作り出すプロセスの発見、 (ロ)放射線収率の向上および副反応抑制のための基礎研究、(ハ)線源コスト低下のための研究、 (ニ)線源および照射方法についての工学的研究を主眼とする研究が必要である」。これに対して加速器の生産の状況等について討議を行なった。