原子力委員会

 日独両国政府の間で原子力平和利用の分野における協力の強化をはかることを表明した書簡が交換された。バルケ原子力大臣の来日とあいまって日独間の原子力協力の促進が期待される。またさきに行われた原子力関係科学者、技術者に関するアンケートの調査結果がまとめられた。一方国際原子力機関のフェローシップ候補者25名が推薦され、昭和34年度原子力留学生にも151名の応募があった。

原子力平和利用に関する日独政府の書簡交換

 在ドイツ連邦共和国(西ドイツ)武内大使は、3月10日ボンにおいてドイツ連邦共和国ブレンターノ外務大臣との間に、日独両国が原子力平和利用の分野における両国の関係を強化する希望を表明した次のような書簡を交換した。同書簡中にも述べられているように、わが国政府および民間の原子力関係者が訪独し、また放射能障害の治療の研究のためドイツ人医師がわが国に来訪したことなど、日独両国間の原子力平和利用の分野における交流等の状況にかんがみ、この分野における情報等の交換の強化促進をはかる意志を両国政府が表明したものである。(書簡仮訳)

A、ドイツ連邦共和国外務大臣発在独日本国大使あて書簡

  大使閣下

 日本国政府の原子力平和利用関係代表者が連邦共和国に来訪されたことおよび放射能障害の治療の研究のためドイツ人医師が日本を訪問したことは、原子力平和利用の分野において類似の状態にある日独両国が相互に接触を保つことに関心を有していることにつき本大臣を確信せしめました。それゆえ本大臣は、平和目的のための原子力の開発および利用ならびに保健および放射線予防の分野に及ぶべきこれらの関係を、連邦共和国がこの分野において有する国際的義務と同調せしめつつ、あらゆる点において推進する用意があります。

 本大臣は、これらの関係が、両国における原子力開発の所管官庁間に限られることなく、原子力関係学者および企業間にも及ぶべきことを期待します。

 本大臣は、右申し進めますに際し、ここに重ねて閣下に向って敬意を表します。

  1959年3月10日

 V. ブレンターノ  

B、在独日本国大使発ドイツ連邦共和国外務大臣あて書簡

  大臣閣下

1959年3月10日付の本使あて書簡において、閣下は、原子力の平和目的のための開発および利用ならびに保健および放射線予防の分野において接触を強化する用意がある旨を表明されました。本使は、すでに有利な出発点の与えられているこれらの関係の強化が、日独両国にとって大なる利益をもたらすであろうとの閣下の御意見をともにするものであります。

 日本国政府においても、これらの関係を、日本国政府がこの分野において有する国際的義務と同調せしめつつあらゆる点において推進する用意があります。

 本使は、右申し進めますに際し、ここに重ねて閣下に向って敬意を表します。

1959年3月10日

   武内竜次