原子力の非軍事的利用に関する協力のための
日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を
改正する議定書について(解説)


返還プルトニウムの平和的利用を確保


 日米両国のいわゆる一般協定はすでに本年6月16日に両国の間で調印を行ったのであるが、その際、わが国に売却される濃縮ウランの使用から生ずるプルトニウムを米国に返還した場合にこれを米国が平和的目的に使用することを明らかにすることが交渉上の一つの問題であった。米国としては、すでに1956年11月18日の大統領声明によって、米国が外国に供給した燃料の使用から生じたプルトニウムは米国に返還された場合にその使用を平和的目的に限ることを明らかにしていた。したがって、上記の一般協定においては、その大統領の声明がなおひきつづいて米国の政策となっていることを覚書によって確認したのである。
 しかしその後さらに米国側と折衝した結果、米国も返還プルトニウムの平和的利用を協定の本文の中に明記することに同意するにいたったので、わが国としてはただちに協定の改正を行うこととした。これが標記の協定改正の議定書となってあらわれたものである。 この改正議定書中には、そのほかに米国からの研究用の資材ないし燃料の提供量についての増量の規定が設けられている。その一つは、さきの一般協定の第5条により提供される研究用プルトニウムの量がこれまで10グラムであったものに加えて新たに250グラムが増加されることになった。これは8月1日に米国原子力委員会が発表した新政策にもとづくものであり、その250グラムは箔および線源として利用されるものである。米国原子力委員会の発表によると、プルトニウムの線源としての使用はこれをベリリウムとともに臨界未満集合体の線源に使用することを考慮していて、1基あたり80グラムとして3基分の量が250グラムのうちにふくまれるものと考えられている。
 その2は、さきの協定において材料試験炉用として予定されていた90パーセントまでの高濃縮ウランの量をこれまでの6キログラムから8キログラムにまでひきあげるとともに、この高濃縮ウランの使用も材料試験炉だけでなく、研究用原子炉についても認めることとしている。
 このような研究資材および高濃縮ウランの提供量の増大は、わが国の原子力研究開発の進展に寄与するところの大きいことはいうまでもない。したがって、新たな情勢に即応して、これらの規定を改正議定書のうちにもりこむこととした。
 以上の内容をふくんだ改正議定書は、10月9日にワシントンで調印され、さきに調印された一般協定とともに第30臨時国会に提出されたのである。