原子力委員会

原子力災害補償についての基本方針の決定

 原子力災害補償の問題は、かねてからその重要性が指摘され、原子力委員会でも検討が進められていたが、このほどその基本方針が決定し、また専門部会の設置、調査員の派遣も決定された。また動力炉調査専門部会も設置がきまり、これで合計11の専門部会がおかれることとなり、委員会の強化が行われた。いっぽう英国から原子力公社の理事コッククロフト卿が来日し、また米国原子力委長のグレアム氏も来訪するなど、わが国原子力をめぐる国際間のうごきも活発となっている。

 原子力委員会においてはかねてから原子力災害補償について検討をかさねていたが、10月29日開催の第41回定例会議において「原子力災害補償についての基本方針」を一部字句修正の上採択した。またこれに関連して原子力災害補償専門部会の設置も別項のように設置が決定された。

原子力災害補償についての基本方針

昭和33年10月29日
原子力委員会

 原子炉等による万一の重大な核的災害に基く第三者の損害賠償の問題については、原子炉設置者等が所要の賠償能力を具備することが可能となり、同時に被害者たる第三者に対して正当な補償を適確に行えるような体制を確立し、原子力に携る事業者及び第三者の不安を除去することをもって、その基本方針とする。このため、下記のような方針をとることとする。


(1)原子炉設置者等が原子炉の運転等を行うに当っては、それによる災害に基く損害を賠償する相当の能力を具備することを必要とするよう、所要の措置を講ずる。

(2)(1)の能力を実質的に具備できるようにするため、現行保険業法に基く原子力責任保険の実現を促進し、原子炉設置者等が当該原子力責任保険に加入することを可能ならしめる。

(3)さらに、損害賠償に関する種々の問題を解決するため、諸外国の動向を参酌の上、民営の原子力責任保険を主体とする原子力災害賠償補償制度の確立を図る。

(4)以上の措置のみで不十分な問題がある場合には、国家補償の問題を含めてその解決策につき更に検討する。