日本国政府並びに、自らのため及び連合王国原子力公社(以下「公社」という。)のため、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府は、原子力の平和的利用、特に発電のための原子力の利用の促進及び開発に協力することを希望し、次のとおり協定した。 第1条 (1)この協定の規定に従うことを条件として、両当事国政府は、次の方法により、両国における原子力の平和的利用の促進及び開発のために相互に協力するものとする。
(2)両当事国政府は、原子力の平和的利用の促進及び開発のための協力の方法で、(1)に掲げるもの以外のものについて合意することができる。
第2条 (1)第三者の権利、国際協定に基いて当事国政府が負う義務並びに日本国及び連合王国における有効な関係法令及び許可要件に従うことを条件として、日本国政府及び公社は、原子力の平和的利用に関する公開の研究情報で、その情報を受領する当事者の国における現存の又は企画中の原子力計画に関連し、かつ、自己の処分にゆだねられているものを相互に提供する。 (2)研究情報又は産業情熱でそれを供与する当事者が商業的価値を有すると認めるもののこの協定の範囲内における供与は、それぞれの場合に合意される時期にかつ商業的条件に従ってのみ行うものとする。 (3)この条の規定に従って情報を受領する当事者は、次のことを行う権利を有するものとする。ただし、この条の規定に基いて締結される個個の契約に別段の定があるときは、この限りでない。
第3条 (1)公社は、日本国政府若しくは同政府が許可した者に対し商業的条件に従って次の燃料を売却し、又は日本国政府若しくは同政府の許可した者が連合王国から商業的条件に従って次の燃料を購入することにつき援助を与えるものとする。
(2)(1)の規定に基く燃料の供給は、次の制限及び条件に従うものとする。
第4条 変換された情報並びに供給された資材及び設備が原子力の平和的利用の促進及び開発のためにのみ使用されることが両当事国政府の意図であるので、また、国際原子力機関が創設する機権を可能な限りすみやかに利用することが両当事国政府の一致した政策であるので、両当事国政府は、この協定に関しいかなる点において及びいかなる範囲まで、保障措置を国際原子力機関憲章第12条の規定に従って同機関に実施させることを希望するかを決定するために協議するものとする。いずれか一方の当事国政府の要請があったときは、この協議を行うものとする。 第5条 該当する保障措置が第4条に定めるところに従い国際原子力機関によって実施される時までの間、 (a)連合王国政府は、この協定の規定に従って供給された資材若しくは設備又は核分裂性生産物が平和的目的にのみ使用されていることを確認するため、次のことを行う権利を有するものとする。
(b)日本国政府は、連合王国政府が(a)に定める権利の行使を可能にされることを確保することを約束する。 (c)日本国政府は、核分裂性生産物について正確な計量が常時維持されることを確保するために必要な操作記録が保持されること及び公杜の要求があるときはその記録が公牡に提出されることを約束する。 第6条 回収され又は副産物として生産された特殊核分裂性物質は、日本国政府及び同政府が許可したその管轄の下にある者の処分にゆだねられる。ただし、 (a)前記の特殊核分裂性物質は、日本国政府が明示する研究のため、又はその明示する現存の、建設中の若しくは企画中の原子炉において、平和的目的にのみ使用されるものとする。 (b)前記の特殊核分裂性物質の使用は、第5条の規定に従うものとする。 (c)該当する保障措置が第4条に定めるところに従い国際原子力機関によって実施される時までの間、
第7条 日本国政府は、次のことを確保することを約束する。 (a)この協定の規定に従って入手された資材若しくは設備又は核分裂性生産物は、軍事的目的にではなく、原子力の平和的利用の促進及び開発のためにのみ使用されること。 (b)この協定の規定に従って入手された資材若しくは設備又はその資材若しくは設備の使用から一若しくは二以上の処理により生じた原料物質が、許可されていない者に対し、又は日本国政府の管轄外に移転されないこと。ただし、連合王国政府の文書による事前の同意を得た場合は、この限りでない。 (c)この協定の規定に従って入手された燃料は、平和的目的のため現に使用されていないときは、保安上及び保管上の十分な注意を払って、公社が指定する貯蔵所に保管されること。 (d)回収され又は副産物として生産された特殊核分裂性物質は、第6条の規定に従って取り扱われること。
第8条 (1)この協定の規定に従って締結される契約は、個個の場合に合意される保証を含むことができる。これらの契約の規定に従うことを条件として、この協定のいかなる規定も、いずれか一方の政府又は公社に対し、次のことに関する責任を課するものと解してはならない。 (a)この協定の規定に従って伝達された情報の正確性又は完全性 (b)前記の情報又はこの協定の規定に従って供給された資材若しくは設備を受領する者(場合によりいずれか一方の政府又は公社を含む。)の国におけるそれらの使用の結果 (c)前記の情報、資材又は設備の特定の使用又は応用に対する適合性 (2)(a)日本国政府は、第3条の規定に従って供給された燃料に関し、その燃料の生産又は加工に起因し、かつ、同政府又は同政府が許可した者に対する引渡の後に生ずる損害に関する第三者に対する責任について、連合王国政府及び公牡に対しその責任を免れさせ、かつ、損害を与えないようにするものとする。ただし、この免責は、日本国政府が許可した者に供給された燃料の場合には、連合王国政府又は公社が前記の責任に関して支払う金額のうち、この協定の規定に従って公社が締結した燃料売却のための契約に含まれる免責規定に従って連合王国政府又は公社に対して支払が行われない金額の限度についてのみ、適用されるものとする。 (b)両当事国政府は、放射能に起因する損害に関する第三者に対する責任についていずれか一方の当事国において制定される新たな法令に照らして、 (a)の規定を改正すべきか否か及びいかなる点において同規定を改正すべきかを決定するために相互に協議することができる。
第9条 両当事国政府の代表者は、この協定の規定の適用から生ずる事項(「資材」又は「設備」の第10条に掲げる定義の解釈に関する問題を含む。)について相互に協議するため随時会合するものとする。 第10条 この協定の規定の適用上、 「設備」とは、原子力計画における使用に特に適合する機械、工場若しくは器具の主要なもの又はそれらの主要な構成部分をいう。 「核分裂性生産物」とは、この協定の規定に従って供給された資材又は設備の使用から一又は二以上の処理により生ずる原料物質又は特殊核物質をいう。 「燃料」とは、自続的核分裂連鎖反応を開始し及び維持する目的で原子炉において使用するために製造された物質又は物質の組合せをいう。 「資材」とは、燃料、原料物質、特殊核物質、重水、原子炉用黒鉛及び性質上又は純度上原子炉における使用に特に適合するその他の物質をいう。 「者」とは、法人であると否とを問わず、人の団体を含む。ただし、この協定の規定に別段の定がある場合を除くほか、日本国政府、連合王国政府又は公社を含まない。 「動力用原子炉」とは、電力又は他の動力の生産のために設計され又はその生産に適応させられた原子炉をいう。 「研究用原子炉」とは、材料試験を含む科学上の又は技術上の実験に使用するために設計された原子炉で電力又は他の動力の生産には適応しないものをいう。 「原料物質」とは、次のものをいう。ウランの同位元素の天然の混合率からなるウラン同位元素ウラン235の劣化ウラントリウム金属、合金、化合物又は高含有物の形状において前掲のいずれかの物質を含有する物質 「回収され又は副産物として生産された特殊核分裂性物質」とは、この協定の規定に従って供給された資材又は設備の使用から一又は二以上の処理により生ずる特殊核物質をいう。 「特殊核物質」とは、プルトニウム、ウラン233、同位元素ウラン235又は233の濃縮ウラン、前記のものの一又は二以上を含有している物質及び国際原子力機関理事会が随時特殊核分裂性物質として決定するその他の物質をいう。「特殊核物質」には、原料物質を含まない。 「公開の」とは、いずれか一方の当事国政府が国の安全のため部外秘、秘又は極秘として指定していないことをいう。 「使用済燃料」とは、原子炉において照射を受けた燃料又は照射を受けないで放棄処分に付された燃料をいう。 第11条 (1)この協定は、日本国がその国内法上の手続に従ってこの協定を承認した旨の書面による通告を連合王国政府が日本国政府から受領した日に、効力を生ずる。この協定は、10年間効力を有する。ただし、その後も、第3条(2)、第4条、第5条、第6条、第7条及び第8条の規定は、この協定の規定に従って締結された契約の有効期間中引き続き効力を有する。 (2)該当する保障措置が第4条に定めるところに従い国際原子力機関によって実施される時までの間、連合王国政府は、第3条(2)若しくは第6条の規定に対する違反があり、又は日本国政府が第5条若しくは第7条に定める約束を履行しなかった場合には、日本国政府に対し是正措置を執るよう要求する権利を有するものとする。その是正措置が適当な期間内に執られなかったときは、連合王国政府は、書面による通告によりこの協定を廃棄する権利を有するものとする。 (3)両当事国政府が定義の解釈に関して第9条に定める協議を開催することについて合意に達することができなかった場合又は両当事国政府がその協議若しくは第4条に定める協議の結果合意に達することができなかった場合には、いずれか一方の当事国政府は、他方の当事国政府にあてた書面による通告により、その通告の日の後3箇月でこの協定を廃棄することができる。 (4)(2)又は(3)の規定に基きこの協定が廃棄されたときは、連合王国政府は、この協定の規定に従って締結された契約の廃棄及びこの協定の規定に従って日本国に供給された燃料又は他の特殊核物質の返還を要求することができる。ただし、その燃料又は他の特殊核物質を返還する者(日本国政府を含む。)に対し、そのように返還される燃料又は他の特殊核物質の時価による価額に相当する金額を支払うことを条件とする。 以上の証拠として、下名は、それぞれの政府からこのために正当な委任を受け、この協定に署名した。1958年6月16日にロンドンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書2通を作成した。 日本国政府のために グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府のために |