原子力局

放射線審議会第3回総会

 放射線審議会第3回総会は、昭和32年12月14日午前10時から第三公邸で開催された。審議事項は前総会と同じで、前回結論が出なかった問題を中心に審議が進められた結果、以下のような答申を行った。
 なお、第2回総会(11月27日開催、本誌Vol.2、No.12参照)以後第3回総会までの間に開催された部会は、第6回技術部会(12月4日)、第8回施設部会(12月9日)及び第6回総括部会(12月13日)である。

放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する諮問について(答申)

 昭和32年9月17日付32原第721号により当審議会に対して諮問のあった事項のうち、左記の事項について当審議会の意見を別紙のとおり答申する。

 昭和32年12月14日

放射線審議会会長

科学技術庁長官殿


一、この法律の規制対象とすべき放射性同位元素、放射性同位元素装備機器及び放射線発生装置の範囲

(第2条)

二、放射性同位元素等の使用及び放射性同位元素の販売の業の許可の基準(第6条、第7条)

三、放射線取扱主任者の試験の内容及び資格認定の基準(第35条)


一、この法律の規制対象とすべき放射性同位元素、放射性同位元素装備機器及び放射線発生装置の範囲

 この法律の規制対象とすべき放射性同位元素、放射性同位元素装備機器及び放射線発生装置の範囲は、次のとおりとすることが適当である。

(放射性同位元素)
1 法第2条第二号の放射性同位元素は、放射線を放出する同位元素の量が、科学技術庁長官が告示で定める量をこえるものとする。ただし、次に掲げるものを除く。

一 原子力基本法(昭和30年法律第186号)第3条第二号に規定する核燃料物質及び同条第三号に規定する核原料物質

二 薬事法(昭和23年法律第197号)第2条第4項に規定する医薬品及び同条第7項に規定する化粧品

三 核爆発に伴って生じた放射性の降下物

四 天然の状態で存在する放射性同位元素

(放射性同位元素装備機器)
2 法第2条第三号の放射性同位元素装備機器は、次に掲げるものとする。ただし、装備している放射性同位元素が、アルファ線を放出する放射性同位元素又はストロンチウム90であり、かつ、その量が1マイクロキュリー以下であるもの及びこれらの放射性同位元素以外の放射性同位元素であり、かつ、その量が10マイクロキュリー以下であるもの及び薬事法第2条第6項に規定する用具であって、厚生大臣又は農林大臣と協議の上科学技術庁長官が指定したものを除く。

一 放射線照射装置
二 厚 み 計
三 液 面 計
四 積 雪 計
五 地下検層計
六 静電気測定器
七 静電気除去器
八 ラドン採集器
九 放射線測定器具の較正に使用することが目的とされている機器
十 放射線照射器具
十一 前各号に掲げるものと類似したもので科学技術庁長官が指定Lたもの

(放射線発生装置)
3 法第2条第四号の放射線発生装置は、次に掲げるとおりとする。

一 サイクロトロン

二 シンクロトロン

三 シンクロサイクロトロン

四 ペ−タトロン

五 リニア・アクセラレーター

六 ファン・ド・グラーフ型加速器

七 コッククロフト・ワルトン型加速器

八 レゾナンストランスフォーマー型加速器

九 多段変圧器型加速器

十 前各号に掲げるものと類似したもので科学技術庁長官が指定したもの

ニ、放射性同位元素等の使用及び放射性同位元素の販売の業の許可の基準

 放射性同位元素等の使用及び放射性同位元素の販売の業の許可の基準は、次のとおりとすることが適当である。

(使用施設の基準)
1 法第6条第一号の規定による使用施設の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次の各号に掲げるものとする。ただし、放射性同位元素による漏水調査、昆虫の疫学的調査、原料物質の移動状況の調査等放射性同位元素を広範囲に移動させて使用し、かつ、使用の期間が一時的である場合には、第一号から第二十三号まで、放射性同位元素装備機器を使用する場合(放射線照射装置を特定の場所で固定させて使用する場合を除く。)又は携帯用の放射線発生装置を不特定な場所で一時的に使用する場合には、第一号から第二十二号までの規定については、この限りでない。

一 火災による延焼又は地くずれのおそれの少いこと。

二 浸水のおそれの少いこと。ただし、放射線発生装置の使用施設については、この限りでない。

三 人が居住する区域に近接しないこと。

四 主要構造部(建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第五号に規定する主要構造部をいう。)を耐火構造(建築基準法第2条第七号に規定する耐火構造をいう。)又は不燃材料(建築基準法第2条第九号に規定する不燃材料をいう。)その他の不燃性の建築材料を用いた構造とすること。ただし、科学技術庁長官が告示で定める種別及び量の放射性同位元素を使用する場合には、この限りでない。

五 放射線に対し、有効なしやへいを行うことができるしやへい壁又はしやへい物を設けること。

六 しやへい壁又はしやへい物に設ける出入口、換気用ダクト等には、放射線の漏えいを防止するためしやへいとびら、迷路等を設けること。

七 放射線障害の防止に関する管理を行うための管理室を設けること。ただし、第四号ただし書に規定する放射性同位元素を使用する場合には、この限りでない。

八 管理室は、使用施設に人が常時出入する出入口付近等前号の管理を行ううえに便利な場所に設けること。

九 管理室には、放射性同位元素による汚染の検査及び除去を行うため放射線測定器並びに洗じよう設備及び更衣設備を設けること。ただし、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を使用する場合(放射線発生装置を使用して放射性同位元素を製造する場合を除く。以下第十一号及び第十二号において同じ。)には、この限りでない。

十 使用施設の出入口で人が常時出入するものは、できるだけ1箇所とすること。

十一 放射性同位元素を使用し、又は放射性同位元素を製造するため放射線発生装置を使用する室(以下「作業室」という。)及び管理室の内部の壁及び床は、できるだけ透間、突起物及びくぼみを作らないようにすること。ただし、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を使用する場合には、この限りでない。

十二 作業室及び管理室の内部の壁、床、実験設備等の表面は、平滑であり、気体若しくは液体が浸透しにくく、かつ、腐食されにくい材料又は容易に取り換えることができる材料を使用すること。

 ただし、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を使用する場合には、この限りでない。

十三 作業室には、換気設備を設けること、ただし、第四号ただし書に規定する放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を使用する場合において、放射性同位元素によって空気が汚染されるおそれのないときは、この限りでない。

十四 換気設備は、排気口若しくは局所排気フード、排風機、排気浄化装置、ダクト、排出口及び給気口を有するものとすること。ただし、排出口から排出される気体中の放射性同位元素の濃度が排出口(第十七号に規定する場合には、使用施設とその外部との境界)において科学技術庁長官が告示で定める最大許容濃度(以下単に「最大許容濃度」という。)の10分の1をこえるおそれのない場合には、排気浄化装置については、この限りでない。

十五 換気設備は、作業室内の人が常時出入する場所における空気中の放射性同位元素の濃度を最大許容濃度以下とする能力を有するものとすること。

十六 排気浄化装置は、排出口から排出される気体中の放射性同位元素の濃度を最大許容濃度の10分の1以下とする能力を有するものとすること。

十七 前号の規定にかかわらず、科学技術庁長官が使用施設の立地条件、放射線監視設備等の整備状況、排出口から排出される気体中の放射性同位元素の種別及び量等により、放射線障害が発生するおそれのないと認めた場合には、排気浄化装置は、使用施設とその外部との境界における空気中の放射性同位元素の濃度を最大許容濃度の10分の1以下とする能力を有するものとすることができること。

十八 排気浄化装置は、排気口又は局所排気フードと排出口との間に設けること。

十九 換気設備(給気口を除く。以下第二十二号において同じ。)は、腐食されにくい材料を使用し、かつ、できるだけ気体の漏えいの少い構造とすること。

二十 換気設備には、事故が生じた場合に、放射性同位元素による汚染のひろがりを防止するため急速な排風機の運転の停止、ダクトのしゃ断等を行うことができる装置を設けること。

二十一 管理室及び作業室の見易い箇所に科学技術庁長官が指定した標識(以下単に「標識」という。)をつけること。

二十二 換気設備には、適当な距離を置いて標識をつけること。

二十三 放射線量率及び空気中又は液体中の放射性同位元素の濃度が科学技術庁長官が告示で定める最大許容線量率(以下単に「最大許容線量率」という。)及び最大許容濃度の10分の1となる場所又はその付近の場所(放射線量率が最大許容線量率の10分の1をこえる場所を除く。)のうち人が出入することができる場所には、外部と明りように区分するためのさく囲等を設け、かつ、見易い箇所に標識をつけること。

(貯蔵施設の基準)
2 法第6条第二号及び法第7条第二号の規定による貯蔵施設の位置、構造及び設備の技術上の基準は、第2項に規定するもののほか、左の各号に掲げるものとする。

一 放射性同位元素を貯蔵するための室、箱等(以下「貯蔵庫」という。)を設けること。

二 放射性同位元素を貯蔵する容器を備えること。

三 人が出入する貯蔵庫に備える容器は、放射線に対し、有効なしやへいを行うことができる構造とすること。

四 液体状の放射性同位元素を貯蔵する容器は、液体がこぼれにくい構造とし、かつ液体が浸透しにくい材料を用いること。

五 固体状又は液体状の放射性同位元素を貯蔵する容器のき裂、破損等の事故により貯蔵庫の内面が放射性同位元素によって汚染されるおそれのある場合には、受皿、吸収材等を設けること。

六 空気を汚染するおそれのある放射性同位元素を貯蔵する容器は、第三号に規定する構造とするほ か気密な構造とすること。

七 貯蔵庫のとびら、ふた等には、旋錠設備その他の閉鎖設備を設けること。

八 貯蔵庫及び容器の見易い箇所に標識をつけること。

九 1の第一号、第二号本文、第三号、第五号、第六号及び第二十三号の基準

2 1の第四号及び第十号の規定は、貯蔵施設の位置、構造及び設備の技術上の基準に準用する。

(廃棄施設の基準)
3 法第6条第三号及び法第7条第三号の規定による廃棄施設の位置、構造及び設備の技術上の基準は、第2項に規定するもののほか、左の各号に掲げるものとする。

一 液体状の放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物を洗じようした液を流す場合には、排水設備を設けること。

二 排水設備は、流し、排水管、排液処理槽及び排水口を有するものとすること。ただし、排水口から排出される液体中の放射性同位元素の濃度が排水口において最大許容濃度の10分の1をこえるおそれのない場合には、排液処理槽については、この限りではない。

三 排水設備は、透間、き裂等による液体の漏えいがないようにすること。

四 排水設備は、液体が浸透しにくく、かつ、腐食されにくい材料を使用すること。

五 排液処理糟は、放射線の減衰、ろ過、大量の水によるき釈等により、排水口から排出される液体中の放射性同位元素の濃度を排水口において最大許容濃度の10分の1以下とする能力を有するものとし、かつ、流しと排水口との間に設けること。

六 前号の規定にかかわらず、科学技術庁長官が廃棄施設の立地条件、放射線監視設備の整備状況排水口から排出される液体中の放射性同位元素の種別及び量等により、放射線障害が発生するおそれのないと認めた場合には、排液処理糟は、廃棄施設とその外部との境界における液体中の放射性同位元素の濃度を最大許容濃度の10分の1以下とする能力な有するものとすることができること。

七 排液処理槽は、放射性同位元素の濃度を測定し易いような構造とし、かつ、その出口には、止水栓を設けること。

八 廃棄しようとする放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物を保管する場合には、容器を備え、かつ、その容器の置場所を設けること。

九 容器又は容器の置場所は、放射線に対し有効なしやへいを行うことができる構造とすること。

十 容器は、液体が浸透しにくい材料を使用すること。

十一 容器の置場所には、容器のき裂、破損等の事故が生じた場合に、保管物を安全かつ容易に回収し、又は放射性同位元素による汚染を除去することができるような設備を設けること。

十二 放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物を焼却する場合には、焼却炉を設けること。

十三 焼却炉は、その中の気体の漏えい及び灰の飛散のないような構造とすること。

十四 放射性同位元素又は放射性同位元素によって汚染された物について焼却、圧縮等の廃棄処理を行う室(以下単に「廃棄処理室」という。)には、第8条第五号に規定するしやへい壁又はしやへい物を設けること。

十五 廃棄処理室を有する廃棄施設には、1の第七号に規定する管理室を設けること。

十六 廃棄処理室及び管理室の内部の壁及び床には、1の第十一号及び第十二号に規定する措置を講ずること。

十七 排液処理槽のうち地表に開口する箇所は、ふのできる構造とし、又はその周囲にさく囲等を設け、かつ、見易い場所に標識をつけること。

十八 流しと排水口との間の排水管のうち地表に露出する箇所及び地下に埋没している箇所の真上付近の地表には、適当な距離を置いて標識をつけること。

十九 容器及び焼却炉の見易い箇所に標識をつけること。

二十 1の第一号、第二号本文、第三号、第九号本文、第十六号、第十八号から第二十号まで、第二十二号及び第二十三号の基準。

(準用規定)
2 1の第四号、第八号、第十号、第十三号本文、第十四号、第十五号、第十七号及び第二十一号の規定は、廃棄施設の位置、構造及び設備の技術上の基準に準用する。

(詰替施設の基準)
4 1の各号の規定は、法第7条第一号の規定による詰替施設の位置、構造及び設備の技術上の基準に準用する。

三 放射線取扱主任者の試験の内容及び資格認定の基準
 放射線取扱主任者の試験の内容及び資格認定の基準は次のとおりとすることが適当である。

(試験の科目)
 試験は、放射線障害の防止に関して必要な知識及び経験についての筆記による学科試験とし、学科試験は、左に掲げる課目について行う。

一 放射性同位元素、放射性同位元素装備機器及び放射線発生装置による放射線障害の防止に関する法令

二 放射性同位元素、放射性同位元素装備機器及び放射線発生装置による放射線障害の防止に関する管理技術

三 放射線に関する測定技術

四 放射線に関する物理、化学及び生物学

(受験資格)
 試験は、左の各号の一に該当する者でなければ受けることができない。

一 学校教育法(昭和22年法律第26号)第56条第1項の規定により大学に入学することができる者、旧中等学校令(昭和18年勅令第36号)による中等学校を卒業した者若しくはこれと同等以上の学力を有すると認められる者で、放射性同位元素の使用若しくは詰替又は放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置の使用の実務に2年以上従事したもの又はこれらの実務に1年以上従事し、かつ、科学技術庁長官が指定した講習を受けてこれを修了したもの。

二 学校教育法による大学、旧大学令(大正7年勅令第388号)による大学若しくは旧専門学校令(明治36年勅令第61号)による専門学校を卒業した者若しくはこれと同等以上の学力を有すると認められる者又は診療エックス線技師で、放射性同位元素の使用若しくは詰替又は放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置の使用の実務に6月以上従事したもの又は科学技術庁長官が指定した講習を受けてこれを修了したもの。

(資格設定基準)
 法第35条第1項第二号の規定による認定は、次の第一号及び第二号又は第三号に適合する者について行うものとする。

一 学校教育法(昭和22年法律第26号)による大学(短期大学を除く。)、旧大学令(大正7年勅令第388号)による大学、学校教育法による短期大学で科学技術庁長官が指定したもの若しくは旧専門学校令(明治36年勅令第61号)による専門学校において理学(数学を除く。)、工学(工業経営に関する学問を除く。)、農学(農業経済に関する学問を除く。)、医学(看護学に関する学問を除く。)、歯学若しくは薬学に関する正規の課程を修めて卒業したこと若しくはこれと同等以上の学力を有すると認められること又は診療エックス線技師法(昭和26年法律第226号)に基く免許を受けたこと。

二 放射性同位元素の使用若しくは詰替又は放射性同位元素装備機器若しくは放射線発生装置の使用の業務に3年以上従事したこと又はこれらの業務に2年以上従事し、かつ、科学技術庁長官が指定した講習を受けてこれを修了したこと。

三 前二号に規定するものと同等以上の知識及び経験を有すると認められること。

2 前項の規定にかかわらず、放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を診療のために用いる使用者が放射線取扱主任者として選任することができる者についての認定は、診療エックス線技師法に基く免許を受け、かつ、科学技術庁長官が指定した講習を受けてこれを修了した者について行うことができる。

3 第1項の規定にかかわらず、放射性同位元素、放射性同位元素装備機器又は放射線発生装置を、医師法(昭和23年法律第201号)、歯科医師法(昭和23年法律第202号)、薬事法(昭和23年法律第197号)又は獣医師法(昭和24年法律第186号)に基く国家試験に合格した者の行う医学、歯科医学、薬学又は獣医学に関する研究のために用いる使用者が放射線取扱主任者として選任することができる者についての認定は、第1項第二号中「3年」を「2年」、「2年」を「1年」と読み替えて行うことができる。